ハーツクライ産駒のリスグラシューは「鬼門」と言われる京都コースの秋華賞を勝てるのか?ーー展望

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牝馬クラシックのラスト1冠は京都芝2000m内回りコースで行われる秋華賞。オークス馬ソウルスターリングは毎日王冠→天皇賞・秋へ向かうことが発表されており、このレースに不出走となりますが、アエロリット、リスグラシュー、ファンディーナ、ディアドラ、ラビットランなど素質のある3歳牝馬たちが顔を揃えました。

桜花賞2着→オークス5着と好走したリスグラシューは秋の初戦となったローズSを3着と好走し、秋華賞へと向かいます。2歳時の阪神JF2着から、現3歳世代の牝馬路線を引っ張ってきた馬ですが、GⅠは未勝利。3歳牝馬クラシック路線のラスト1冠となる秋華賞は、リスグラシューにとって力の入る1戦。ハーツクライ産駒のこの素質馬は秋華賞を勝ち切ることができるのでしょうか?

 

ハーツクライ産駒は京都のGⅠレース未勝利

種牡馬ハーツクライは2010年に初年度産駒がデビューしてから、「4」のGⅠ勝利を数えます。この4勝はジャスタウェイの天皇賞・秋と安田記念、ヌーヴォレコルトのオークス、そして、ワンアンドオンリーのダービーとすべて東京コースでのもの。

スタミナと末脚の持続力に優れるハーツクライ産駒は直線が長い+長距離のGⅠ天皇賞・春と相性が良く、4年連続で2着馬を出しているのですが、まだ勝利に手が届いていません。また、エリザベス女王杯も2014、15年と2年連続でヌーヴォレコルトが2着など、直線が平坦な京都だとハーツクライ産駒はどうしてもあと一歩が足りないのです。

 

京都は下り坂+直線が平坦

京都の芝は内回りと外回りの2種類のコースがあります。どちらも3コーナーから下り坂が設けられ、最後の直線は平坦(実際はごく緩やかな下り坂)というレイアウトです。長く良い脚を使えるハーツクライ産駒にとって、ホームストレッチが平坦で瞬発力を要求されるような競馬は苦手。また、下り坂でスピードに乗るのがあまり得意ではないので、どうしてもGⅠクラスの大きなレースになると、その適性の差が出てしまうのです。

 

リスグラシューは?

牝馬クラシックの3冠目の秋華賞は京都の内回りコースで行われます。この条件はハーツクライ産駒にとっては大きなマイナス。京都の内回りコースはホームストレッチが短いため、直線の長い外回りコースよりも苦しいコース設定です。京都の外回りコースでもGⅠ勝ちがないのですから、内回りは鬼門……。直線が平坦な京都でリスグラシューがどのような差し脚を使えるのかは、武豊騎手の手腕にかかっていると言えます。

 

リスグラシュー 3歳牝馬

父:ハーツクライ

母:リリサイド(母父:American Post)

厩舎:矢作芳人(栗東)

生産:ノーザンファーム

阪神芝1800mの未勝利戦で2歳レコードを出したように、パワーに長けた持続力のある末脚がリスウラシューの最大の武器と言えます。GⅢアルテミスS(東京芝1600m)はスローペースをなだめながら追走し、直線で馬場の真ん中へもち出すと坂を駆け上がるときのバキューンと弾けた脚が素晴らしく、後ろから迫ったフローレスマジックを問題にしない完勝。いかにも長い直線で末脚の持続力を活かすハーツクライ産駒「らしい」勝利となりました。

GⅠ阪神JF(阪神芝1600m外回り)は長い直線を活かして外から猛然と脚を伸ばしたものの、最内枠の利を活かしてコースロスなく乗ったソウルスターリングを捕らえられず2着に敗退。この日の阪神芝コースはインコースを通った馬が有利な馬場コンディションで、大外枠に入ったリスグラシューは少しだけ運がありませんでした。

ソウルスターリングと3度目の対決となったGⅠ桜花賞(阪神芝外回り1600m)は、ライバルのソウルスターリングをぴったりとマークする形で進め、最後の直線はこの馬らしいパワーを活かしたストライドで伸びてきましたが、先に抜け出していたレーヌミノルを捕まえきれずにまたしても2着と惜敗。リスグラシューは胴の長い体型でマイラーではなく、この敗戦は2400mのオークスに向けて十分の内容だったと言えます。

期待されたGⅠオークス(東京芝2400m)は「マイナス4kg」の数字以上に馬体を細く見せ、もともと細身だとしてもギリギリの身体つき。それでも直線ではストライドを伸ばして5着を確保したのは能力のある証でしょう。今年のオークスはスローから残り4Fの瞬発力勝負になってしまい、持続力を活かしたいこの馬には苦しい流れになりました。

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ひと夏を越してリスグラシューの馬体がどれほど成長しているのかに注目が集まったGⅡローズ(阪神芝1800m外回り)は、オークスと較べて「+4kg」しか増えておらず、「えっ!?」と思わず声を上げてしまうほどの馬体重で出走。パドックでもお腹が巻き上がって細く映り、「う〜ん」と首をひねりたくなる馬体でした。ただ、その状態でも阪神の外回りコースはベストの条件だけに、直線でしっかりと脚を伸ばして3着を確保。春の実績馬として面目を保つ好走だったと言えます。さらに馬体を増やしながらの調整となる秋華賞はローズSから大幅な上積みがあるのでしょうか……。

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血統

母のリリサイドはクロスのうるさいマイラーで、その影響が出ているのか姉のプリメリアスターは気性が激しく、レースに行くと鞍上がなだめるのに苦労するほど。リスグラシューはその姉に較べると胴が長く気性もそこまでうるさくないので、2000m前後がベストの中距離馬。

母父American Postは仏2000ギニーを勝ったマイラーで、父ハーツクライ×母父マイラーはオークスを勝ったヌーヴォレコルトと同じような配合。また、この馬は母系に入るMill Reefの重厚なキレを受け継いでいて、阪神芝1800mの未勝利戦でレコードを出したのも納得です。

母がクロスのうるさい繁殖牝馬のため、2歳の早期からトモにしっかりと筋肉がつきやすい反面、3歳の夏を越して急速にグングンと成長するのかは「?」がつくため、完成度で他馬を上回れるかがキーポイントになります。

 

秋華賞に向けて

秋華賞の行われる京都の内回りは、ストライドで走るリスグラシューにとって割引となるコース。もちろん、ストライドで走るミッキークイーンが勝った2015年の秋華賞のように、ハイペースからの持続力勝負になればリスグラシューにもチャンスはあります。

 

アエロリットがハイペースの流れを作るのなら……

今年の秋華賞は1人気に支持されるアエロリットが最内枠に入りました。揉まれた経験のない馬にとってはスムーズに先行するために細心の注意が必要な枠に入り、もう1頭の逃げ候補カワキタエンカとの兼ね合いがキーポイントに。そのため、15年のときのようなハイペースになる可能性もあり、バキューンとこの馬の重厚なストライドが活きる展開になることも……。

 

馬体重に気を遣う調整

ローズSから秋華賞まではリスグラシューの馬体をどれほど回復させられるかがポイント。休み明けにより落ちていた筋肉量が戻ることで、馬体重が増えることもありますが、陣営にとって調整が難しいのも確かです。また、リスグラシューの適性は外回り>内回りですから、陣営としてはピークをエリザベス女王杯に定めていることも考えられます。もし、秋華賞を前走から+10kg以上の馬体重で出走するようなら、ピークは先かもしれません。

 

内枠を利して

リスグラシューよりも内枠に先行馬が入ったため、中団よりも前のインのポジションを取れる組み合わせ。ここであれば一か八かのレースも可能ですが、3〜4コーナーでスムーズにスピードを上げるにはインからだと苦しくなります。武豊騎手としても仕掛けどころが難しいレースになりましたね。2、3着を確保するようにセコく乗るならインにこだわってもOKですが、勝ち切るならミッキークイーンの秋華賞のようなレース(✳︎)が理想です。

(✳︎コーナーで外に膨れることを気にせずにスピードを上げ、コースロスを承知でストライドを伸ばす騎乗)

 

まとめ

戦績としてはいかにも2、3着がありそうなリスグラシューですが、秋華賞に向けての不安は山積しています。むしろ、エリザベス女王杯が適性としては合っているだけに、仕上がり具合も気になります。

ハーツクライ産駒のリスグラシューが秋華賞を勝ち切ることができるのかに注目しましょう。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。