GⅠ高松宮記念(2018年)は1400mベストのしなやかスプリンターが差し切れるレースとなるのか?

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現在のスプリント路線は、スピードとパワーでゴリゴリと押し切るようなピュア・スプリンターが不在です。「世界のロードカナロア」がターフを去ってから、香港スプリントをぶっこ抜けるようなハイレベルのスプリンターが現れず、1200m〜1400mのカテゴリーはレベルの低下が心配されています。

スプリント路線を引っ張るのは、16〜17年のスプリンターズSを連覇したレッドファルクス。ただこの馬は昨年の安田記念(東京芝1600m)を3着と好走したように、ベストの距離が1400mのスプリンターです。後傾ラップを得意とするのは、しなやかなストライドで走るタイプだからと言えるでしょう。

 

ゴリゴリのパワー・スプリンターが減少

日本競馬のレベルを大きく引き上げたサンデーサイレンスは、多くの産駒に「しなやかさ=柔らかさ」を伝えました。そのため、この血は中距離をしなやかに走るのに適しているものの、スプリンターに求められるパワーが足りません。サンデーサイレンス直仔が1200mのGⅠをなかなか勝てなかったのも、それを証明していると言えます。

サンデーサイレンスの血が広まるにつれ、パワースプリンターは減少していきました。この大種牡馬の血を引かないロードカナロアがスプリント路線の王者として君臨したのは自然なことだったのです。

 

パワースプリンターが減ることで

それではパワースプリンターが少なくなるとどのようなことが起こるのでしょうか?

サンデーサイレンスはゴリゴリのパワーを伝えることが少なく、ディープインパクトに代表されるよう細身でしなやかな馬が一流馬となります。それに対して、ポンとスタートを切って前半からゴリゴリと先行するようなタイプはほとんどいません(サンデーサイレンス産駒としてもっとも異質だったのはパワーマイラーのダイワメジャーでしょう)。

サンデーサイレンスの血が濃い馬同士のレースでは、どうしても前半からビュンビュンと飛ばす前傾ラップにならず、しなやかに差す馬が好走できる後傾ラップになりがちです。日本のスプリンターがパワフルな馬が集まる香港スプリントで好成績を上げられないのは、前傾ラップが得意な馬が少ないからだと言えるでしょう。

 

日替わりメニューのようなスプリント路線

ロードカナロア級の「王者」が不在のスプリント路線は、このカテゴリーの重賞レースにおいて勝ち馬が「日替わりメニュー」のようにコロコロと入れ替わります。

昨年のスプリンターズSから、3〜4歳以上の1200m〜1400mの牡牝混合重賞は7レースが行われ、その連対馬はすべて異なっているのです。

2017年

GⅠスプリンターズS(中山芝1200m)

1着:レッドファルクス

2着:レッツゴードンキ

GⅡスワンS(京都芝1400m)

1着:サングレーザー

2着:ヒルノデイバロー

GⅢ京阪杯(京都芝1200m)

1着:ネロ

2着:ビップライブリー

GⅡ阪神C(阪神芝1400m)

1着:イスラボニータ

2着:ダンスディレクター

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2018年

GⅢシルクロードS(京都芝1200m)

1着:ファインニードル

2着:セイウンコウセイ

GⅢ阪急杯(阪神芝1400m)

1着:ダイアナヘイロー

2着:モズアスコット

GⅢオーシャンS(中山芝1200m)

1着:キングハート

2着:ナックビーナス

日替わりメニューのように勝ち馬が替わるので、この路線は高配当の出る可能性が高くなっています。

 

今年の高松宮記念は……

今年の高松宮記念は上位の人気に推される馬にゴリゴリのパワースプリンターが不在ですから昨年のような重馬場にならない限り、また1400mベストのしなやかスプリンターが好走できる可能性が大きくなりました。

昨年のスプリンターズSの予想記事においても、前傾ラップにならなければレッドファルクスが有利と書きましたが、1200mがベストのパワースプリンターが活躍するようなレースにはなりそうになく……。

スプリント路線にパワーあふれるピュア・スプリンターが登場しない間は今の現状が続き、香港スプリントを勝ち切るような馬は現れないのではないかと不安になります。

 

前後半3Fの差が1.0秒以内なら

スプリンターズSの予想・展望記事で書いたことと重複しますが、高松宮記念の前後半3Fの差が1.0秒以内であれば、中山→中京へとコースが替わったとしても、1400mベスト+しなやかに差すスプリンターに有利なレースとなります。

前後半の3Fが33.9 - 33.7と「まさか」の後傾ラップとなった昨年のスプリンターズSは、1400mがベストのレッドファルクスとレッツゴードンキのワンツーとなりました。

✳︎歴史的なスローを逃げ切った桜花賞馬レッツゴードンキはピッチ走法のため、後傾ラップが得意です。

1400mベストのスプリンター

レッドファルクス

レッツゴードンキ

ソルヴェイグ

ダンスディレクター

上記の馬たちは1400mがベストなので、1200m戦であれば緩いペースでパフォーマンスが上がるタイプです。そのなかでもレッドファルクスはハイペースにならなければ大きく崩れることはなく、加齢による衰えさえなければここもチャンスが大きいのでしょうね。

✳︎シャイニングレイはここにきて母系のパワーが発現してきたとと前向きな気性から、1400mがベストな馬です。ただ、パワー型でハイペース適性もあるためここでは除外しました。

 

しなやかさ優位のスプリント戦は……

しなやかさ優位のスプリントGⅠは食傷気味なので、今年の高松宮記念はパワーとスピードを振り絞るようなレースを期待します。

理想は前後半3Fが33.0 - 34.5のようなラップ。ええ、どうせそんなレースになる可能性はほぼないことはわかっていますが、それでも……。

 

まとめ

今年の高松宮記念は1.5秒以上の前傾ラップになることを「希望(予想ではなく)」して、1200mベストの馬かパワー型のスプリンターに◎を打つことになるでしょう。

そんなペースになることはほぼないとは言え、その可能性に賭けてみたくなるのが「理想のスプリントGⅠ」です。

今年こそピュア・スプリンターが活躍できるレースとなるのか、今から高松宮記念が楽しみですね。