レース前から「大混戦」と言われた高松宮記念は、直線で馬場の真ん中を1頭だけスイスイと伸びたセイウンコウセイが1着、2着と3着には内を突いたレッツゴードンキとレッドファルクスが入線する結果となりました。勝ちタイムは1:08.7(稍重)。
馬場と枠順の影響
今年の高松宮記念は1日中降ったり止んだりを繰り返す雨の影響を受けたレースとなりました。掲示板に載った5頭はすべて内枠に入った馬。直線、馬場の真ん中を伸びたセイウンコウセイよりも外に進路をとった馬たちは伸びあぐね、内ラチ一杯を回って、直線でインを突いたレッツゴードンキ、レッドファルクス、ティーハーフの3頭が2〜4着争いをしたことからも、枠の内外の差が着順にも大きく影響したと言えます。
日曜日の中京の芝はインコース+逃げ・先行馬が有利な馬場が7Rまで続き、馬場の外を差してくる馬は見当たりませんでした。Mデムーロ騎手が高松宮記念の前のレースで徹底してインの前目のポジションを取っていたことからも、内と外で馬場の差があったことは確かです。
セイウンコウセイについて
セイウンコウセイはアドマイヤムーン産駒らしい成長曲線で一気のスプリントGⅠ制覇となりました。4角から直線にかけて1頭だけ他馬と違うスピードで悠々と先頭に立ち、そこから押し切ったレース内容は、馬場のアシストがあったことを差し引いても素晴らしいの一言。
レース内容
抜群のスタートを切ったシュウジに被されないように、ラインスピリットの森一馬騎手が押して押してハナを取りきったため、先行勢と中団を追走をした組みの間にスペースができました。セイウンコウセイは馬群に揉まれることなく、逃げ・先行馬を見る形でスムーズに追走し、4角から抑えきれない手応えで馬場の真ん中へ進路を取ると、ゴールまでセーフティリードを保って快勝。
長所は?
高松宮記念でセイウンコウセイのマークしたラップは34.2 - 34.5とほぼイーブン。4角から直線半ばにかけてスムーズに加速でき、スピードに乗り切ってしまえば残りの200mは大きく失速せずに我慢ができるところがこの馬の長所です。
今後について
順調に行けば、秋には中山のスプリンターズSに向かうことになるセイウンコウセイ。
中山の1200m戦は前半の3Fが中京よりも速くなるのが特徴です。高松宮記念はイーブンのラップで押し切りましたが、スプリンターズSはよほどスローの流れにならない限り、前後半の差が1秒以上ある前傾ラップになります。33秒台前半の流れを先行して、後半に踏ん張れるレースがセイウンコウセイにできるかどうかは今後の課題です。
2〜5着馬について
2〜5着馬について、レース内容について解説します。
2着 レッツゴードンキ
スタートを五分に出ると、自然とポジションを下げて中団後方に位置を取ります。3〜4角にかけて岩田騎手が手綱を押さえて内ラチをぴったりと回り、直線では最内へ。直線で馬群がばらけたところを岩田騎手が迷いなく芝の荒れた最内へ誘導したのも、レッツゴードンキが瞬時に加速でき、パワーのあるタイプだと分かっていたからこその乗り方です。
2歳時から手綱を取り、レッツゴードンキの長所も短所も知り尽くしている鞍上のファインプレーが光った2着。スランプからは完全に立ち直り、1200〜1400mであれば牡馬に混じっても好走できることを証明したのは今後に向けて明るい材料になりました。
3着 レッドファルクス
スタートからMデムーロ騎手が積極的にポジションを取りに行ったのは、包まれたくなかったのと、追い込みが効かない馬場だという認識があったからだと思います。中団の前で流れにのると、4角手前から馬を促して直線で内へと進路を取ります。
レースのラップがほぼイーブンだったこと、稍重の馬場だったことなど、スプリンターとしてはしなやかなストライドで走るレッドファルクスにとっては不利な条件が重なりました。それでも、ゴール前までレッツゴードンキと2着を争ったのは地力の高い証拠で、この内容であればマイルに距離が延びてもこなせそうです。
4着 ティーハーフ
スタートがよく、中団で流れに乗ることができ、4角手前からレッドファルクスと一緒に上がって行き直線で内へ入ります。直線はレッツゴードンキとレッドファルクスの間でバテずに最後まで食い下がり、スランプから復調気配にあるのかもしれないと思わせるのに十分な走りでした。
最内枠を最大限に活かした乗り方ができたこと、洋芝のGⅢ函館SSを快勝したように時計のかかる馬場が合うことなど、好走の要因がいくつか重なったのだとしても、単勝16番人気の低評価を覆す走りは立派の一言です。
今年のサマースプリントシリーズに参戦するのであれば、注目したい1頭。
5着 フィエロ
母父Danehillのパワーが伝わっているフィエロは重馬場も得意です。1200mだと追走するのに手間取ってしまいますが、内枠だったこともあり、直線では馬場の真ん中よりも内を捌いて目を引く伸びを見せていました。
8歳になってもはっきりとした衰えはないものの、やはり1200m戦では追走するためのスピードが不足している印象です。かと言って積極的に出していくと脚が溜まらないので…
GⅠ級の力がある馬ですが、スプリントGⅠは距離が短く、勝ち切るまでは難しい…とは言え、マイル路線のGⅠは東京の安田記念、京都のマイルCSと直線の長い舞台で行われるため、ピッチ走法のフィエロにとってはプラスとは言えません。悩ましい馬ですね。
メラグラーナとシュウジについて
人気を裏切る形になった2頭についても簡単に触れておきます。
メラグラーナ
外枠からの発走で、意識的に下げて中団後方のポジションを取ります。そこから4角手前で騎手が促して外目を上がって行きますが、直線では弾ける脚を使えませんでした。
重馬場が不得手というのもあるかもしれませんが、今日は直線で外に出してもノーチャンスだったので、スタートで下げた時点で厳しいレースになりました。
スタートセンスの良い馬ですから、今後は無理に抑えることなく積極的に出して行ってパワーで押し切る走りにシフトチェンジできれば良いのですが…
シュウジ
後肢に筋肉がついているので、好スタートが切れるシュウジですが、今日も川田騎手がなだめることができずに逃げたラインスピリットを深追いしてしまいました。重馬場になった分、見た目はかからずに走れましたが、結果としてはオーバーペースだったのだと思います。
昨年の函館SSはマジックマンJモレイラ騎手が上手になだめながらの逃げを打ちましたが、あのようなレースができると…前に壁を作らないと折り合えないのであれば、もう無理してでも逃げてしまう方がベターなのかもしれません。
これだけのスピードと騎手が抑えられないほどのパワーをもっているのですから、もしアイビスサマーダッシュに出てきたとしたら、好走は間違いなしです。
◎ラインスピリットは13着
内で包まれるのを嫌がって、森一馬騎手がハナを主張することもあるかなと想定はしていたのですが、道中はシュウジに突かれてしまい息の入らない流れになってしまいました。
ただ、森一馬騎手は見せ場を作るためではなく、勝つための戦法として逃げを選択したわけで、その姿勢は本命にした甲斐がありました。
中京でも前半の3Fがそれほど速くなければ粘ることもできるので、メンバー次第といったところでしょうか。
まとめ
馬場が悪くなると外差しが決まりやすくなる中京ですが、今年の高松宮記念は内枠が有利な結果になりました。
また、今年のように力の差がそれほどないメンバー同士の戦いでは、馬場や枠順による影響が結果に直結しやすいとも言えます。
それにしても、馬場の真ん中を気持ちよく突き抜けたセイウンコウセイの走りは素晴らしく、これからの活躍にも期待したいところです。
以上、お読みいただきありがとうございました。