開幕から3週目の阪神の芝は日曜日のメイン・レース米子S(オープン 芝1600m)で1分31秒9のレコードタイムが飛び出しました。今春のJRAはどこもかしこも馬場が高速化していて、「びっくり!」よりも「またか……」といくらか食傷気味ではありますね。
もともと時計のかかりやすい阪神競馬場、それに加えて梅雨の時期にあたる6月開催は馬場が悪化して外差しになるのがデフォルト。今年はここまで好天に恵まれているため速い時計が出ていますが、それにしても、ここまで高速化するとは……。開催が進むにつれて外差しになる「いつもの阪神芝コース」はどうなってしまったのでしょうか?
阪神競馬場の芝は? 6月17、18日を振り返ると
宝塚記念が行われる6月開催は雨が降りやすい季節ということもあって、芝コースは馬場が悪くなる=時計がかかるのがデフォルトです。今年はまとまった雨が降っていないため、速い時計が連発しています。
開幕週<2週目<3週目とはっきりと馬場が軽くなっているのは、これまでの阪神の馬場傾向と大きく異なるものです。
これは芝とそれを支える路盤の含水率が低く、馬場が硬くなっているからでしょう。ここまで乾いたのは雨が降っていないこと、そして、「芝の育成」のための散水の実施が少ないからだと考えられます。
6月17、18日の2日間で芝のレースは11鞍(障害レースを除く)が組まれました。ここでは極端なスローペースになりやすい2歳戦と力差のばらつきが大きい3歳未勝利戦を除くレースを振り返ります。
6月17日(土)
2歳戦と3歳未勝利戦を除くと、この日の阪神競馬場の芝のレースは4鞍が行われました。
8R 3歳500万下牝馬限定 芝1800m
勝ちタイム:1分45秒2
1着 テーオービクトリー 上り:33.6
父:ブラックタイド
母:タイキクララ(母父:デヒア)
2着 クイーンズベスト
父:ワークフォース
母:ラスティングソング(母父フジキセキ)
3着 パーシーズベスト
父:ディープインパクト
母:パーシステントリー(母父:Smoke Glacken)
解説
勝ちタイムの1分45秒2はカレンミロティックのマークしたレコードに0.7秒差の好タイム。このレースは2着クイーンズベストと3着パーシーズベストが1000万下クラスで好走していた降級馬で、500万下としてはハイレベルなレースになりました。
勝ち馬のテーオービクトリーと2、3着馬ともにインコースから伸びてきており、このタイムの決着+上り勝負の競馬になると外差しは効きません。
9R 小豆島特別 3歳1000万下 1600m
勝ちタイム:1分33秒6
1着 ラプソディーア 上り:32.7
父:ディープブリランテ
母:ハルーワソング(母父:Nureyev)
2着 ワントゥワン
父;ディープインパクト
母:ワンカラット(母父:ファルブラヴ)
3着 イレイション
父:ディープスカイ
母:フェリシタス(母父:キングズベスト)
解説
8頭立てのレースになり、最内枠から逃げたラプソディーアがスローペースに持ち込んで逃げ切り勝ちを上げました。その勝ち馬の上りは32.7と驚きの瞬発力。2着には外から瞬発力を活かしたワントゥワンが入り、これだけ瞬発力勝負のレースになるとディープインパクト産駒のキレがないと外からは差すのは難しい……。
10R 水無月S 3歳1600万下 芝1200m
勝ちタイム:1分7秒1
1着 ファインニードル 上り:33.7
父:アドマイヤムーン
母:ニードルクラフト(母父:Mark of Esteem)
2着 アドマイヤナイト
父:アドマイヤムーン
母:アドマイヤカグラ(母父:スペシャルウィーク)
3着 ラクアミ
父:ダイワメジャー
母:レイズアンドコール(母父:サクラバクシンオー)
解説
ビリーヴのマークしたコースレコードと同タイムの決着。ラクアミとオヒアが競り合う形でレースを先導し前半3Fは33.0とハイペース。ただ、このペースでも1〜3着馬は先行勢の決着となり、外から差してくる馬は見当たりませんでした。
12R 3歳500万下 芝1600m
勝ちタイム:1分32秒3
1着 オーマイガイ 上り:34.1
父:パイロ
母:リスティアアスリー(母父:スピニングワールド)
2着 エルビッシュ
父:キングカメハメハ
母:シーズオールエルティッシュ(母父:Eltish)
3着 エンヴァール
父:ダイワメジャー
母:カリズマティックゴールド(母父:カリズマティック)
解説
500万下クラスで、コースレコードに0.3秒差の好タイムがマークされました。1着のオーマイガイは1000万下クラスからの降級馬とはいえ、逃げてこのタイムが出るのは明らかに高速な馬場。
1〜3着馬は全て降級馬。また、2着のエルビッシュは道中で中団の後ろにいたものの、直線で最内を突いて差してきたようにやはりイン有利の馬場だと言えます。
6月18日(日)
土曜日に引き続いて高速馬場の決着になった日曜日。2歳新馬戦と3歳未勝利戦を除くと、芝のレースは3鞍が行われました。
8R 3歳500万下 芝2000m
勝ちタイム:1分57秒9
1着 トライブキング 上り:34.5
父:ディープインパクト
母:ブロームフォンテン(母父:Cape Cross)
2着 ジャーミネイト
父:ハービンジャー
母:クラックシード(母父:キングカメハメハ)
3着 ビービーブレスユー
父:ブラックタイド
母:プレインエンジェル(母父:トニービン)
解説
サトノノブレスがマークした1分57秒6のコースレコードに0.3秒差の好タイムが500万下クラスでマークされるという馬場の速さ……。
1000万下クラスでも好走していた降級馬ビービーブレスユーが人気になっていたものの、勝ったのは中団から差してきたトライブキング。
レースは大きく緩むことなく進み、中団に構えたトライブキングがディープインパクト産駒らしい瞬発力を発揮しました。2着のジャーミネイトはインをロスなく回っての好走。
中距離になるとディープインパクトやハービンジャー産駒のキレが優位になりますね。
11R 米子S オープン 芝1600m
勝ちタイム:1分31秒9(レコード)
1着 ブラックムーン 上り:32.4
父:アドマイヤムーン
母:ロイヤルアタック(母父:ジェネラス)
2着 サトノラーゼン
父:ディープインパクト
母:トゥーピー(母父:Intikhab)
3着 グァンチャーレ
父:スクリーンヒーロー
母:チューオーサーヤ(母父:ディアブロ)
解説
ダノンメジャーの逃げは前後半の800mが47.1 - 44.8の極端なスローペース。このペースでコースレコードが出てしまうのが今の阪神の馬場の恐ろしさです。
スローからの瞬発力勝負になり、勝ったブラックムーンの上りは32.4。このレースは中団〜後方にいた馬の外差しになりましたが、瞬発力のある馬が届いてしまう馬場なだけで、外差し馬場へ変化したからではありません。
これだけ時計が速いと、スローのため逃げは後ろから瞬発力のある馬に差される可能性があるので、逃げるのであればそこそこペースを引き上げたいですね。
12R 3歳500万下 芝1200m
勝ちタイム:1分8秒3
1着 サトノフラム 上り:33.8
父:マンハッタンカフェ
母:タイキマドレーヌ(母父:ブライアンズタイム)
2着 ワンアフター
父:アドマイヤムーン
母:エキゾチックエレガンス(母父:Storm Cat)
3着 ビックリシタナモー
父:タートルボウル
母:ノンキ(母父:サンデーサイレンズ)
解説
このレースはそれほど速いタイムは出ませんでしたが……。逃げたワンアフター、インの3番手から抜け出したサトノフラムのワンツー。3着のビックリシタナモーは馬場の真ん中を差してきましたが、道中はラチぴったりをロスなく回る走りでした。
ここまで見ると、1600m以下の距離ではアドマイヤムーン産駒の活躍が目立ちました。
宝塚記念の行われる日曜日の馬場は?
このまま馬場の含水率が低ければ、時計の速いコンディションも継続する可能性が高まります。月〜金曜日にかけての雨量がどの程度あるのかによって、時計の出方は大きく変わるでしょう。
週中の宝塚市の天気は曇りまたは雨の予報。注意しなければならないのは、次のような状況になった時は「阪神競馬史上最速の馬場」が出来上がってしまうことです。
高速馬場の作られ方
1. 金〜日曜日にかけて雨の予報
2. 馬場造園課が週末の散水を控える
3. 雨が降らない→馬場が乾く
4. 史上最速馬場の出来上がり
天気だけは誰にも読むことができませんから、馬場造園課としても雨の予報が出ていれば週中〜末にかけての散水は控えます。これが裏目に出て先週以上の高速馬場になると……。
え?!ディープインパクト産駒の馬場!ということにも……。
キタサンブラックにとってはマイナス
もし、宝塚記念の週に高速の馬場が出現したとしたら、キタサンブラックにとってはマイナス。
上り3Fの速いレースは、持続力勝負に持ち込みたいキタサンブラックにとっては避けたい展開です。とくに、今年の宝塚記念は逃げ馬が不在で、おそらくキタサンブラックが押し出されてハナに立つレースをするはずで、武豊騎手が道中のペースを引き上げられるかは重要なポイントになります。
スローペースに落とすようだとキレのあるタイプの馬にうっかり差し込まれることもあり得るので、馬場状態のチェックは欠かさないようにしましょう。
散水の有無はJRAのHPでチェック
芝の育成を目的とした散水が行われたかどうかは、JRAのHP内にある「週末の馬場情報」でチェックできます。少なくとも金曜日にはアップされるので、週中の天気と合わせてしっかりと見ておきたいところですね。
まとめ
阪神競馬史上最速の馬場が出来あがる下準備は整いました。今週末は春のグランプリ宝塚記念が行われますし、圧倒的な支持を受けると予想されるキタサンブラックが出走するわけですから、どのような馬場になるのかのチェックを欠かすことはできません。
以上、お読みいただきありがとうございました。