横山典騎手とゴールドアクターが紡ぐ2分10数秒のドラマーー宝塚記念展望

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横山典騎手とゴールドアクターは、天皇賞・春に続いて宝塚記念でもコンビが継続されます。NHKマイルCをアエロリットで制し、東京優駿を人気薄のマイスタイルで4着と存在感を見せつけている横山典騎手。馬とのコンタクトにおける確かな技術とレースの中での冷静な判断力、そして常識に囚われないレースメイクから今まで数々の名騎乗を見せてきた天才騎手が、ゴールドアクターで挑む宝塚記念でどのようなレースを観せるのでしょうか?

横山典騎手がゴールドアクターと紡ぐ2分10数秒のドラマーーそこにはどのような結末が待ち受けているのでしょうか?

 

馬を気持ちよく走らせる天才

横山典騎手の名騎乗と言えばゴールドシップを勝利に導いた'15年天皇賞・春、そして、折り合いの難しいアンビシャスを先行させてキタサンブラックをねじ伏せた'16年大阪杯などが挙げられます。

この2つのレースは横山典騎手がその馬の特性を理解し、レースで「馬を気持ちよく走らせた」ことによってつかんだ勝利でした。馬がレース中に引っかかったり集中力を欠いたりしないように繊細な注意を払ってる騎乗する、それこそが「天才」横山典弘の真骨頂。

 

'16年大阪杯ではキタサンブラックを破る金星

GⅠ昇格する前の'16年大阪杯(GⅡ)で折り合いの難しいと言われたアンビシャス(5歳牡馬、音無厩舎)に騎乗した横山典騎手は、誰もが「えっ!」と驚く先行策でキタサンブラックを破る金星を上げました。

走ることに前向き過ぎる気性のアンビシャスはレース中の折り合いが難しく、それまではほぼ後方から追い込む競馬をしていた馬。横山典騎手はそれをあっさりと裏切ってアンビシャスを先行させたのですから、その肝の座った騎乗には驚きだけではなく興奮を覚えました。

まだ「現役最強馬」と言われるほどのオーラを身にまとっていなかった頃のキタサンブラックだったとしても、粘り強い先行力を持った菊花賞馬を「横綱相撲」で競り落としたアンビシャスの走りは、横山典騎手でなければ引き出せなかったはずです。

 

横山典騎手とキタサンブラック

「現役最強馬」のキタサンブラックと武豊騎手とのコンビが結成されたのは昨年の大阪杯から。それまで主戦をつとめていた北村宏騎手が落馬負傷のアクシデントに遭ったため、有馬記念に出走を予定していたキタサンブラックの鞍上としてピンポイント騎乗を依頼されたのが横山典騎手でした。

偶然にも、横山典騎手がキタサンブラックで挑んだ有馬記念の優勝馬は宝塚記念でコンビを組むゴールドアクター。キタサンブラックの背中を知る天才騎手が有馬記念で苦杯をなめさせられたゴールドアクターに乗るのですから、競馬というのはドラマチックなものですね。

 

横山典騎手とゴールドアクターの紡ぐ2分10数秒のドラマは?

横山典騎手とゴールドアクターが紡ぐ2分10数秒のドラマが、6月25日阪神競馬場を舞台に開演します。

横山騎手はどのようレースプランでキタサンブラックと武豊騎手とのコンビに立ち向かうのでしょうか?

 

ゴールドアクターの長所を引き出すには?

横山典騎手はまずはじめに宝塚記念でゴールドアクターの長所を最大限に引き出すレースプランを考えるでしょう。その上で、キタサンブラックよりも先にゴール板を駆け抜けるにはどのようなレースが最適なのかをシミュレーションをするはずです。

 

ゴールドアクターの長所は?

ゴールドアクターの競走馬としての長所は5つあります。

 

1. 素軽い先行力

2. 息の長いじわじわと伸びる末脚

3. コーナーで加速できる器用さ

4. 時計勝負もOK

5. 操縦性の高さ

 

う〜ん、これだけ長所が揃うと横山典騎手も宝塚記念でのレースプランを「ああでもないこうでもない」といろいろと立てられるでしょう。

 

レースプランとして

初コンビだった前走の天皇賞・春はスタートのタイミング合わずに後方からの競馬になってしまったので、結果は7着に敗退。ただ、道中のスムーズな追走からも、レース映像を通して横山典騎手とゴールドアクターのコンタクトはきちんと取れていたように見えました。

横山典騎手は今回、ゴールドアクターの最大の長所でもある素軽い先行力を活かす乗り方をするはずです。馬とのコンタクトがしっかりと取れたことからも、積極的にスタートから出していきハナを取り切るレースプランが最善手になります。

 

どのような逃げになるか?

阪神内回り2200mはスタートから1コーナーまでの距離が長く、ハナを取り切ってしまえばペースを落としやすいコースです。また、1コーナーまでにゴール前の坂を上るので、ハナを取るのにもそれほどペースが速くならないのも特徴のひとつ。

枠順にもよりますが、ゴールドアクターがハナを主張した時にキタサンブラックがその外目を追走できる並びであれば、すんなりと武豊騎手は2番手に下げる可能性が高いと思います。

横山典騎手の逃げであれば、前半1000mはスローのペース。そこからキタサンブラックに出し抜かれないように少しずつペースを上げ、残り5Fからの持続戦に持ち込みます(可能性としてはかなり低いですが、もしこの時にキタサンブラックがゴールドアクターの直後のインのポケットで身動きが取れない状態になっていれば、横山典騎手は残り3Fまでペースを落とすことも考えられます。これはキタサンブラックにとっては最悪の展開なので、さすがに武豊騎手がそれをケアした騎乗をするはずですが……)。

キタサンブラックはジャパンカップにせよ、大阪杯にせよ、天皇賞・春にせよペースの違いはあっても仕掛けどころは全て残り4Fから。ここで後続にリードを保って粘り込むのがこの馬の勝ちパターンですから、これをゴールドアクターが崩すためには5Fからの持続戦で脚を消耗させるしかありません。

ゴールドアクターもキタサンブラックと同じように急加速の瞬発力勝負だと分が悪いですが、じわじわと加速する形であれば時計の速い勝負になってもOKなタイプ。武豊騎手も前を走るゴールドアクターだけではなく、後ろから捲ってくるシュヴァルグランやシャケトラの動きをケアしながらの騎乗になるわけで、残り5Fから4Fにかけてゴールドアクターが後ろを離せれば(3馬身ほどのリードが作れれば)勝つチャンスも生まれてきます。

 

ゴールドアクターに適する馬場は?

宝塚記念の行われる阪神競馬場は水曜日に相当な雨量があり、馬場への影響が心配されます。ただ、木と金曜日は晴れ+気温も高いために馬場も乾くでしょう。問題は土日の雨の予報が出ていることで、もしこのまま晴れまたは曇りであれば先週の高速馬場はそれほど大きな変化はないはずです。土日に雨の中でのレースになるといくらかタフな馬場へなることが予想されます。

ゴールドアクターは重馬場もそれほど苦にはしませんが、対キタサンブラックで考えるとパンパンの高速馬場の方が戦いやすくはあります。キタサンブラックはストライドで走るので本質的には直線の短い阪神内回りはマイナス。それに加えて前が止まらない高速馬場であれば差し損ねることも……。

ゴールドアクターにとっては、できれば先週までの高速な馬場の方が望ましいでしょう。

 

2分10数秒のドラマの結末は?

6月25日、15時40分に開演する2分10数秒のドラマ。現役最強馬キタサンブラックの走りに注目が集まる中、横山典騎手とゴールドアクターがスタートから「主役」を演じることができれば、新しい「名騎乗」が生まれるかもしれません。

このドラマはどのような結末をむかえるのか、今から宝塚記念が待ち遠しくなります。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。