サマー2000シリーズの第1戦GⅢ七夕賞が7月9日(日)、福島競馬場を舞台に行われます。ローカル開催のハンデキャップ重賞とあって、毎年一筋縄ではいかない決着になることもある七夕賞。今年はどのような結末が待っているのでしょうか?
今回の記事では出馬登録をしている14頭の中から小回り福島コースに向く器用さをもったディープインパクト産駒3頭をピックアップしてご紹介します。
パシフィックプリンセス牝系の2週連続重賞制覇となるのか?!
GⅢラジオNIKKEI賞を勝ったセダブリランテスはナリタブライアン、ビワハヤヒデ、キズナなど錚々たるGⅠ馬を多数輩出するパシフィックプリンセス牝系の出身。今もなお日本競馬に子々孫々の枝葉を広げ続けるこの牝系の活力は目を見張るものがあります。
今週の七夕賞に出馬登録をしているゼーヴィントもこの名門牝系の出身です。昨年のラジオNIKKEI賞の覇者が1年ぶりに福島競馬場の重賞を制することができるのか、また、パシフィックプリンセス牝系の出身としてセダブリランテスに続くことができるのかに注目が集まります。
ゼーヴィント 4歳牡馬
父:ディープインパクト
母:シルキーラグーン(母父:ブライアンズタイム)
厩舎:木村哲也(美浦)
'16年のラジオNIKKEI賞の勝ち馬。3歳の春以降は中山と福島コースに絞って出走し、この馬の長所と言える器用さを活かすローテーションが組まれています。
セントライト記念(GⅡ中山芝2200m)を皐月賞馬ディーマジェスティの2着と好走したものの、距離とコースへの不安からGⅠ菊花賞を回避しました。クラシックを回避して臨んだGⅢ福島記念(福島芝2000m)は、七夕賞に出馬登録している逃げ馬マルターズアポジーを捕らえられずに2着。年明け初戦となったAJCC(GⅡ中山芝2200m)はタンタアレグリアに内をすくわれての2着とここ3戦は勝ち切れないレースが続きました。
木村哲也厩舎
ゼーヴィントを管理する木村哲也調教師は開業7年目、関東の期待を背負う若手です。全国調教師リーディングも'15年に21位、'16年に9位と躍進しました。今年はこれまで厩舎の看板を背負っていたアルビアーノが引退し、その影響が出たのかリーディング110位と奮いません……。ゼーヴィントが七夕賞で好走すれば、厩舎に勢いをもたらすはずですから、ここは力が入る1戦になります。
七夕賞に向けて
小回りコースをパワーで捲るのがゼーヴィントの最大の長所ですから、福島芝2000mの舞台は適性としてはずんどばです。
昨年の福島記念は勝ったマルターズアポジーが斤量54kg、2着のゼーヴィントが55kgと斤量差がありました。七夕賞はマルターズアポジーが57.5kg、ゼーヴィントが57kgと0.5kgのアドバンテージをもらえることに(ゼーヴィントは56.5kgで止まると思ったのですが、57kgですか……)。
休養明けも苦にしない馬なので、サマー2000シリーズに向けてここは結果を出したいところでしょう。
最強の条件馬が前走快勝で臨む1戦
ソールインパクトは全成績(4 - 4 - 9 - 10)と3着の回数が多い馬で、4歳以降掲示板を外したのは1回(1番人気6着)のみという「堅実派」。その反面、勝ち味に遅く前走1000万下クラスの芦ノ湖特別を勝つまでは4戦連続3着と歯がゆいレースが続きました。
2歳時にはGⅢ東京スポーツ杯2歳Sでサトノクラウンと0.1秒差3着があるように、早い時期から重賞でも見せ場を作っていた素質馬。まだ1600万下条件の身ですが、確かな能力と相手なりに走る安定感が魅力の1頭です。
ソールインパクト 5歳牡馬
父:ディープインパクト
母:クリームオンリー(Exchange Rate)
厩舎:戸田博文(美浦)
2〜3歳時は重賞にも挑戦していたものの、好走しても賞金を積み重ねることができず、500万下から一歩ずつ実績を積み上げることになりました。
とにかく、勝ち味に遅い馬でコースや距離を問わずに2、3着の山を築いています。そんなソールインパクトが前走は少頭数やメンバーに恵まれたとはいえ、余力十分に快勝しました。
ディープインパクト産駒としては瞬発力がそれほどあるわけではなく、また、使える末脚も短いため中山などの小回りがベストコースです。母クリームオンリーはいかにもアメリカ血統というパワーを伝える繁殖牝馬で、ディープインパクトを配合してもストライドがそれほど伸びない仔を産みます。
七夕賞に向けて
1600万下の条件馬ですから、七夕賞での斤量は53kg。ゼーヴィントと4kg差、マルターズアポジーと4.5kg差があるのは好材料で、相手なりに走れることを考えるとここはチャンスが巡ってきました。
器用さとパワーがある分、小回りコースはプラス。3〜4コーナーでインをロスなく立ち回って加速し、直線でもう一脚を引き出せれば馬券圏内に突入も十分にありえるメンバー構成です。
スローだとキレ負けするため、マルターズアポジーのハイペース逃げで上りがかかるレースになれば……。
馬群に揉まれてもまったく問題のない馬なので、内枠が当たるとよりチャンスが広がります。
雨が降れば母スキッフルのパワーが活きる
フェルメッツァの母スキッフルは、GⅢ中京記念(中京芝1600m)を連覇したフラガラッハ(父:デュランダル)、重賞でも好走した経験のあるイリュミナンス(父:マンハッタンカフェ)やエスティタート(父:ドリームジャーニー)など活躍馬を多く出す名繁殖牝馬。
七夕賞に出走予定のフェルメッツァの父はディープインパクトですから、どんな種牡馬を交配しても外れなく活躍馬を出すスキッフルは遺伝力が強いのでしょう。
スキッフルの伝える大きな特徴は重厚なフォームとパワーです。フラガラッハもイリュミナンスもエスティタートも、そしてフェルメッツァも道悪や荒れ馬場が得意。この季節は雨の影響を受けやすいので、馬場が悪化するようならフェルメッツァにもチャンスは出てきます。
フェルメッツァ 6歳牡馬
父:ディープインパクト
母:スキッフル(母父:トニービン)
厩舎:松永幹夫(栗東)
GⅢアーリントンカップ(阪神芝1600m)3着と3歳時から重賞でも好走していた馬。母スキッフルらしい緩やかな成長曲線を描き、6歳にしてオープン入りを果たしました。ディープインパクト産駒としてはキレ味は「並」で瞬発力勝負よりも上りのかかるレースに向いています。
前走の福島民報杯はステイインシアトル、シャイニングレイ、マイネルミラノの作ったハイペースを先行し、直線だしぶとく脚を伸ばしての2着。このレース後にステイインシアトルはGⅢ鳴尾記念を、シャイニングレイはGⅢCBC賞を制していることから、レベルの高い1戦だったことがわかります。
前走から再び福島への遠征となりますが、十分な間隔を取っての出走とあって、厩舎としてもここは力の入るレースです。
七夕賞に向けて
斤量55kgはゼーヴィントの57kg、マルターズアポジーの57.5kgとは2kg以上の斤量差をもらえました。
2走前の日経賞12着は骨っぽいメンバーだったことと距離の2500mも合わなかったのでしょう。重賞でもメンバーによっては好走のチャンスもあるので、この七夕賞は力が入りますね。
フェルメッツァはストライドがそれほど伸びない馬なので、小回りをパワーで捲るタイプに出ました。ハイペースは前走の福島記念でも好走していますし、上りのかかるレースはぴったりです。マルターズアポジーが作るペースはこの馬にとっては願ってもない流れ。内枠を取れるなら、ここはチャンスが広がります。
まとめ
小回り・内回りコースに適性のあるディープインパクト産駒が揃って参戦し、現役屈指のハイペースメイカー・マルターズアポジーの逃げに立ち向かいます。
3頭ともに瞬発力に優れたタイプというよりも器用にコーナーを捲るパワーに優れ、上りがかかった方がベター。
少なくともスローにはならないメンバー構成ですから、好走のチャンスは十分にあります。
GⅠ大阪杯でもキタサンブラック相手に果敢な逃げで見せ場を作ったマルターズアポジーが参戦するとあって、注目が集まる七夕賞。週末のレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。