東京競馬場は10月14(土)〜22日(日)にかけ、2週(開催4日間)続けて雨が降るなかでのレースとなりました。超大型の台風21号の影響を受けた21日と22日はかなりの雨量があり、芝コースは「不良」馬場まで悪化。日曜日の芝レースでは上り3Fが37秒〜39秒台と時計がかかり、道悪馬場への適性が結果を大きく左右したと言えます。
28日(土)と29日(日)は雨の予報
24日(火)に発生した台風22号は日本に向かって北上し、今週末は先週に続いて雨の予報。この台風の進路によっては東京競馬場の芝コースがまた「重〜不良」へと悪化することも考えられます。
雨で不良となった菊花賞はタフなレースに
22日(日)、大雨の影響を受けた菊花賞(GⅠ・京都芝3000m)は、キセキを勝利に導いたM・デムーロ騎手が「今日の馬場はヨーロッパでもなかなかない」とコメントするほどの道悪になりました。体力をロスした先行馬が次々と脱落していくサバイバル戦。後方から直線でグイグイと伸びたキセキの上り3Fが39.6ですから、心身ともにタフさの求められるレースに。
不良馬場のGⅠ菊花賞(2017年)は上り3F39.6の脚でルーラーシップ産駒のキセキが1着ーーレース回顧 - ずんどば競馬
天皇賞・秋も不良馬場でタフなレースに?
東京競馬場は2002年と06年に「暗渠排水管」を設置したことで馬場の排水性が向上し、1年を通して芝が荒れにくくなっています。ただ、週中に馬場が乾いたとしても、週末にかけて雨が降ればふたたび不良馬場へ逆戻りに……。雨量によっては菊花賞と似たような馬場コンディションで天皇賞・秋が行われる可能性も十分です。
重馬場適性だけではなくコース取りもポイント
22日(日)、東京競馬場の芝コースは時計のかかるレースとなりました。騎手の多くは内ラチ沿いを避け、馬場の真ん中よりも外へと馬を誘導。インコースを通る馬はほとんどいませんでした。
菊花賞は先行馬+インコースを通った馬が大敗したことから、タフなレースになると重馬場適性だけではなくコース取りもポイントになります。もし、天皇賞・秋が芝に水の浮くような馬場でのレースとなったら……体力を無駄にロスすることなく、ゴールまで駆け抜けるのはどの馬なのでしょうか?
不良馬場でのレースとなった菊花賞1〜3着馬をふり返ると
菊花賞は京都芝3000m、天皇賞・秋は東京芝2000mで行われるため、距離もコースも異なるものの、不良馬場でどのような馬が好走したのかはヒントになります。それでは、今年の菊花賞の1〜3着馬をふり返ってみましょう。
母系にRobertoとDanzigをもつ馬
▼2017年菊花賞
1着キセキ:Danzig
2着クリンチャー:Roberto、Danzig
3着ポポカテペトル:Roberto
(ちなみに、4着マイネルヴンシュも母系にRobertoを引く)。
キセキの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com
クリンチャーの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com
ポポカテペトルの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com
RobertoとDanzigと言えばグラスワンダー
パワー型のRobertoとDanzigは菊花賞の行われた京都の芝外回りコースが合っている血ではありません。日本でこの2つの血をもつ種牡馬としてパッと思いつくのは、パワーあふれる捲りで小回り・内回りコースの有馬記念と宝塚記念を制したグラスワンダーでしょう。
グラスワンダーの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com
父Silver Hawk(Roberto直仔)×母父Danzigという血統のグラスワンダーは前脚を力強く芝に叩きつけるピッチ走法の馬。この馬の走りからもわかるようにRobertoとDanzigはパワーを伝え、小回り・内回りを得意とする馬を多く出しています。3〜4コーナーから下り坂になり、直線が平坦の京都外回りはRobertoやDanzigのパワーを必要としないコースです。菊花賞でこの血をもつ馬が活躍したということは、それだけ不良馬場の影響が大きかったのでしょう。
天皇賞・秋の出走馬のなかでRobertoとDanzigを母系にもつのは?
天皇賞・秋に出走予定の馬から母系にRobertoとDanzigの血を引く馬をピックアップしてみましょう。
▼Robertoを引く
Robertoのみを引く該当馬はナシ
▼Danzigを引く
グレーターロンドン
ステファノス
ディサイファ
ワンアンドオンリー
▼RobertoとDanzigを引く
ヤマカツエース
(50音順に並べてあります)
(ステファノスは母父クロフネなので、5代血統表外にRobertoをもつので、Danzigのみにエントリー)
予想通りと言えばそれまでですが、パワーとスタミナを伝え、小回り・内回り向きのRobertoを母系に引く馬はヤマカツエースのみ。直線の長い東京コース向きの血ではないため、天皇賞・秋の出走馬に該当馬がいないのは納得できます。
Danzigもちはグレーターロンドン他、全部で4頭がエントリー。馬名を見てもわかるように、小回り向きの器用さがあるタイプが揃いました。しなやかにストライドを伸ばすというより、パワー・ストライドで走る馬たちですから、いかにも道悪馬場は合いそうですね。
グレーターロンドンは菊花賞を制したキセキの母ブリッツフィナーレの全弟ですから、重馬場への適性はあります
母父がグラスワンダーのヤマカツエースは母系にRobertoとDanzigを引くパワータイプの馬。これまで道悪馬場では(2 - 0 - 1 - 4)とソコソコの成績を上げており、タフな馬場になればなるほどグラスワンダーのパワーが活きるはずです。
不良馬場のタフなレースを得意な馬は?
馬場が不良まで悪化し、上り3Fが37秒以上かかるタフなサバイバル戦になったとすると、どの馬が好走する可能性があるのでしょうか?
菊花賞は1周目のホームストレッチで1〜6番手を走っていた先行馬が、すべて13〜18着に大敗しました。2周目の3コーナーから先頭を走っていた馬が次々に入れ替わるサバイバル戦。いかに集中力を切らすことなく、そして体力をロスすることなく走れるかがポイントになりました。
血統的な面を含めて、タフなサバイバル戦を得意とする馬をピックアップしてみましょう。
▼タフなサバイバル戦を得意とする馬
(サトノクラウン)
シャケトラ
ステファノス
ディサイファ
ネオリアリズム
ヤマカツエース
ワンアンドオンリー
ロングスパート戦だとハイパフォーマンスを発揮するサトノクラウンはタフなレースを得意としています。ただ、胴長+細身の馬体をもち、しなやかなストライドで走るため、不良まで悪化するレースだとパワー不足かもしれません。
パワーピッチで走るシャケトラはタフなレースは「ドンと来い!」のタイプ。母系に重厚なスタミナが入り、重心のブレないフォーム(パワーのあるピッチ走法)は不良馬場に向いています。シャケトラの重馬場適性については、以下の記事に詳しく書いているので、よければご覧下さい。
このなかで、不良馬場でのタフなレースを乗り切れそうな馬は、シャケトラ、ディサイファ、ネオリアリズム、ヤマカツエースの4頭が上げられますね。ネオリアリズムは天皇賞・秋に向けて詳しい解説記事を書いているので、よければそちらをご覧下さい。
折り合いの難しいネオリアリズムはシュタルケ騎手を背に重馬場のGⅠ天皇賞・秋を好走できるのか? - ずんどば競馬
不良馬場だとパワーピッチで走る馬が有利
全身をしなやかに伸縮させ、1完歩をグイッグイッと伸ばしながらスピードを上げるストライド走法は体力のロスが大きく、パワーに欠ける面があります。そのため、時計のかかる不良馬場ではスタミナをロスし、しなやかな動きができずにスピードを上げられないことがままあるのです。
それに対して、まち前のパワーでフットワークの回転を上げるピッチ走法は重心のブレが少なく、ストライドよりも重馬場を得意とします。スタミナを大きくロスせずに、パワーでグイグイと伸びることが可能です。
天皇賞・秋におけるピッチとストライド走法については詳しい解説を書いているので、よければ以下の記事をご覧下さい。
天皇賞・秋はペースと重馬場、そして「ピッチかストライドか?」がポイントーー展望 - ずんどば競馬
まとめ
台風22号の発生によって、天皇賞・秋の行われる日曜日は雨の予報が出ています。東京競馬場はすでに開催4日間、2週続けて雨のなかでレースが行われており、芝はかなりのダメージを負っているはずです。もし、台風の影響を受けて土日ともに雨が降るとすれば、不良馬場でのレースを覚悟しないといけません。
今年の天皇賞・秋はレースだけでなく、天気についてもしっかりと注意をしておきたいですね。
▼天皇賞・秋の予想記事
以上、お読みいただきありがとうございました。