折り合いの難しいネオリアリズムはシュタルケ騎手を背に重馬場のGⅠ天皇賞・秋を好走できるのか?

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今春、香港のクイーンエリザベス2世Cで初GⅠを制したネオリアリズム(6歳牡馬)は、10月29日(日)の東京競馬場で行なわれる天皇賞・秋(GⅠ・東京芝2000m)に出走します。夏の札幌記念(GⅡ・札幌芝2000m)を蹄の不安で回避し、今走は6ヶ月ぶりの実践。ネオリアリズムは休み明けを苦にしない気性の勝ったタイプ。関東の名門・堀宣行厩舎の管理する素質馬が天皇賞・秋でどのような走りをするのかに注目が集まります。

 

天皇賞・秋の展開を握るネオリアリズム

今年の天皇賞・秋は純粋な逃げ馬(気性的に逃げないと力を発揮できない馬)が不在。「世界のモーリス」を相手に昨年の札幌記念で逃げ切り勝ちを上げたネオリアリズムがハナに立ってレースを先導するとしても、驚けないメンバーとなりました。

ネオリアリズムの他に前々でレースの流れに乗りたい先行馬は、天皇賞の春秋連覇を目指すキタサンブラック、今年のオークス馬ソウルスターリング、金鯱賞(GⅡ・中京芝2000m)2着のロードヴァンドールの3頭。昨年のマイルCS(GⅠ・京都芝1600m)を楽々と2番手で追走したネオリアリズムにとっては、この組み合わせならポジションを取るのも苦にならないでしょう。

 

折り合いの難しい馬

ネオリアリズムはこれまで数々の一流騎手を鞍上に迎えましたが、折り合いの巧みなJ・モレイラやC・ルメールをもってしてもなだめるのに苦労するほど前向きな気性のもち主です。

J・モレイラ騎手の乗った今年のクイーンエリザベス2世Cでも、スローペースで折り合うことが難しかったために途中からハナに立って押し切り勝ちを上げたように、とにかく前進気勢の強い馬。自分のペースでスムーズに走ったときはハイレベルのパフォーマンスを出せる馬ですから、「逃げ」るプランを天皇賞・秋で実行する可能性も十分にあります。

 

鞍上がA・シュタルケ騎手なので「折り合えない」可能性は大

ネオリアリズムの鞍上は来週から短期免許で来日するドイツのA・シュタルケ騎手。デインドリームで凱旋門賞を勝つなどドイツを代表する騎手の1人ですが、腕っぷしで馬をコントロールするタイプで、折り合いが巧みとは言いにくく……。

ただ、シュタルケ騎手のJRA初重賞制覇となった2014年マイラーズC(GⅡ・京都芝1600m)は、皐月賞もダービーも追い込んで届かずの「未完の大器」ワールドエースを先行で勝たせたように、前々でレースの流れに乗れればガッツリと粘らせる腕っぷしの強さは一級品です。

ネオリアリズムにシュタルケ騎手が乗るとなれば、「折り合い」については馬とケンカしているシーンしか思い浮かばないものの、積極的なレースをすることだけは間違いありません。

10月22日(日)終了時点でのシュタルケ騎手は、4コーナーで先頭に立って押し切ったレースを除くと、57勝の内「逃げ」での勝ち鞍が「0」という成績。道中を2〜5番手で通過して直線粘り込むレースが得意なので、折り合えずに「逃げ」てしまったときは不安が残りますね

 

堀宣行厩舎の2頭はともにロングスパート戦が得意

天皇賞・秋に出走する堀調教師の管理馬ネオリアリズムとサトノクラウンの2頭は、上り3Fの速い瞬発力勝負よりもロングスパート戦を得意としています。直線の長い東京芝2000mはどうしても瞬発力勝負型に有利なコース。また、1人気の支持を受けるキタサンブラックが4Fからの持続戦に強いタイプとあって、残り5Fからペースアップするようなロングスパート戦になるのかは「?」がつきます。

この2頭の力を最大限に発揮するため、堀先生が素軽い先行力のあるネオリアリズムにロングスパートのレースプランを出す可能性も捨てきれません。上りの時計がかかり、スタミナの質を問われるレースになれば「堀厩舎のワンツー」も十分にあり得ます。

宝塚記念馬サトノクラウンは天皇賞・秋を好走できるのか?ーー今週も重馬場に……? - ずんどば競馬

 

ネオリアリズム 6歳牡馬

父:ネオユニヴァース

母:トキオリアリティー(母父:Meadowlake)

厩舎:堀宣行(美浦)

生産:ノーザンファーム

昨年の札幌記念でモーリスを相手に逃げ切り勝ちを上げ、重賞を初制覇。今春は中山記念(GⅡ・中山芝1800m)→クイーンエリザベス2世Cと重賞を連勝し、素質馬がいよいよ本格化の時を迎えました。

昨秋はマイルCS→香港マイルと1600mのGⅠを2戦しましたが、1800mがベストの中距離馬。東京コースも(3 - 0 - 0 - 1)と苦にしないだけに、天皇賞・秋への出走が楽しみな1頭です。

 

血統

母トキオリアリティーはGⅠ馬リアルインパクト(父ディープインパクト)やアイルラヴァゲイン(父エルコンドルパサー)などの重賞馬を出した名繁殖。母がバリバリのパワー・スプリンターのため、中距離の種牡馬を配すると産駒は前進気勢の強い先行脚質を受け継ぐのがデフォルトです。

この母の産んだ活躍馬はスピードとパワーで小回り・内回りを先行して粘り込むタイプが多いものの、3歳で安田記念を勝ったリアルインパクトのように、父ディープインパクトらしいしなやかさで直線の長いコースを好走するタイプも出ています。

ネオリアリズムはリアルインパクトの4分の3弟。父がネオユニヴァースに替わり、より母系のパワーが強調されているため、ベストは小回り+直線急坂の中山芝1800mでしょう。走らせるとサンデーサイレンス系らしいしなやかさも感じさせる馬で、兄と同じく東京コースは苦にしません。リアルインパクトとアイルラヴァゲインは高齢になっても重賞で好走していましたから、6歳のネオリアリズムはまだまだ成長するでしょう。

ネオリアリズムの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

重馬場は得意

東京競馬場は14日(土)〜22日(日)にかけ、2週続けて雨が降るなかでレースが行われました。超大型の台風21号の影響を受けた21、22日はかなりの雨量があり、芝コースは不良馬場まで悪化。天皇賞・秋の行なわれる29日(日)も雨の予報が出ており、タフなコンディションでのレースとなる可能性もあります。

ネオリアリズムは稍重でレースが行われた昨年の札幌記念を逃げ切っているように、時計のかかる馬場が得意。母系のパワーを受け継いだ手先(前脚)の強い走りが特長で、直線の長い東京なら渋った馬場がベター。他馬が道悪を苦にする分だけ、この馬にはアドバンテージとなるでしょう。

「天皇賞・秋」出走馬の重馬場適性については、以下の記事で詳しく解説しているので、よければそちらもご覧下さい。

GⅠ天皇賞・秋(2017年)は台風の影響で「重〜不良」馬場でのレースとなるのか?ーー重馬場が得意な馬は? - ずんどば競馬

 

天皇賞・秋に向けて

天皇賞・秋に向けての不安点は2つあって、1つは蹄の不安による6ヶ月の休み明けで仕上がり具合がどうなのか、もう1つはベストとは言えない東京コースのGⅠでシュタルケ騎手が折り合って走らせることができるのか……。

休み明けについては、堀厩舎+ノーザンファーム生産馬ということからそこまで大きな不安はないものの、80%ほどの仕上がりで強敵相手のGⅠを勝ち切れるのかどうかは「?」がつくのも致し方ないところです。

休み明けよりも「鞍上がシュタルケ騎手」というのは大きな不安となります。まず、折り合いについては期待ができないだけに、どのようなペースで走らせるのかが……。ロングスパート戦にも高い適性を見せているため、積極的な仕掛けが功を奏せばアレヨアレヨの好走も……。

折り合いの難しさを考えると、雨が降って時計のかかる馬場がベターで、キタサンブラックの先行に真っ向勝負を挑んで欲しい馬。スムーズに力を出せれば昨年の天皇賞・秋の勝ち馬モーリスを撃破できるわけですから、このメンバーに入っても臆することはありません(ネオリアリズムは上位人気に支持されるリアルスティールを中山記念で破り、サトノアラジンにマイルCSで先着)。

 

まとめ

堀調教師の管理馬2頭はともにロングスパート戦で力を発揮できる馬だけに、天皇賞・秋でネオリアリズムがどのようなペースで先行し、レース全体のペースを引き上げるのかには注目です。逃げ・先行馬が少ないことからも、今年の天皇賞・秋の展開の鍵を握るのは間違いなくネオリアリズムとシュタルケ騎手のコンビ。

ドイツを代表する騎手が積極策でネオリアリズムをGⅠ馬へと導くことができるのか、今からレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。