テイエムジンソクは同じMy Juliet牝系出身アエロリットのようにチャンピオンズCを制することができるのか?

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今夏の北海道シリーズ(函館・札幌)は、3頭のクロフネ産駒がOPと重賞で活躍を見せました。アエロリットとジューヌエコールの3歳牝馬2頭が重賞を勝ち、5歳牡馬のテイエムジンソクがOPの大沼SとマリーンSを連勝後に、エルムS(GⅢ・札幌ダート1700m)2着と好走。

3頭ともに前向きな気性と豊かなスピードを活かし、4コーナーをしびれる手応えで回ってくるレースぶりが似ています。ジューヌエコールは名繁殖ソニンク牝系、アエロリットとテイエムジンソクは名繁殖My Juliet(✳︎)にさかのぼる同牝系の出身です。

✳︎My Julietの母My Bupersも名繁殖牝馬で、日本ではアイリッシュダンスとハーツクライ母子などの活躍馬を出しています。

ソニンク(父Machiavellian)もMy Juliet(父Gallant Romeo)も前向きな気性を伝える名繁殖で、これが父クロフネのもつスピード&パワーとマッチするのでしょう。とくに、テイエムジンソクとアエロリットの2頭は、豊かなスピードで直線先頭に立つレースぶりが似通っています。

 

テイエムジンソクとアエロリットに共通するものは?

テイエムジンソクの3代母マイサクセション(父クリミナルタイプはAlyder直仔)はアエロリットの3代母ステラマドリッド(父Alyder)の4分の3妹。アエロリットがNureyevらしい重厚なストライドで走るのに較べ、テイエムジンソクが小気味良いフットワークで捲るのは、母系に入るダンシングブレーヴの重厚さがオフになっているからだと考えられます。

 

素晴らしいパワー

このMy  Juliet牝系出身のJRA重賞勝ち馬はアエロリット、テイエムジンソク、ミッキーアイル、ダイヤモンドビコーを見てもパワーに優れているのが特徴。いずれも逃げ・先行馬ですから、スピードとパワーがONになっている産駒ほど活躍できると言えるでしょう。

ただ、この溢れるパワーはレースにおいて「諸刃の剣」ともなります。この牝系の重賞馬たちは高い競走能力をもつ替わりに、レースでそれをコントロールするのが難しいほどのエンジンをもっているのです。

 

テイエムジンソク 5歳牡馬

父:クロフネ

母:マイディスカバリー(母父:フォーティナイナー)

厩舎:木原一良(栗東)

生産:日高テイエム牧場

今春に1600万下を快勝すると、夏の北海道シリーズの3戦はこの馬の能力の高さを見せつけるものでした。初重賞挑戦となったエルムS(GⅢ・札幌ダート1700m)はしびれる手応えで4コーナーを回ったもののスッと反応できず、ロンドンタウンに差されて2着と敗退しました。

エルムSは鞍上の古川吉洋騎手がテイエムジンソクのスピードとパワーをコントロールしてしまい、後続の脚を削ぐ競馬ができませんでした。その教訓を活かし、前走のみやこSは4コーナーで先頭に立っての押し切り勝ちを上げ、重賞を初制覇。

もてるスピードとパワーをコントロールせずに「出し切る」競馬を心がければ、重賞級の能力があることをはっきりと示しました。この勢いに乗ったテイエムジンソクはGⅠチャンピオンズC(中京ダート1800m)に出走します。コパノリッキーやアウォーディー、サウンドトゥルーといったダート一線級の馬との初対戦に注目です。

 

チャンピオンズCに向けて

クロフネ産駒のダート重賞勝ち馬はテイエムジンソクとマイネルクロップの2頭のみ。産駒の重賞勝ち数37の内ダートは2勝だけですから、いかに芝向きの種牡馬かがわかります。また、産駒のGⅠ勝ちはすべてマイル以下の距離ですから、父からスピードを受け継いだ仔でないとトップレベルになれないのも大きな特徴です。

テイエムジンソクはダート馬としてはスピードの勝ったタイプで、早目に先頭に立って押し切るレース・スタイルからも、父と母系の特長を上手く受け継いでいます。母系の質は高く、GⅠで格負けするような配合ではありません。

 

中京ダート1800mの適性

中京のダートコースはコーナーがキツいため、3〜4コーナーで外から押し上げる差し・捲りの馬に有利とは言えないコースです。直線が長いものの、条件戦に限れば前目のポジションを取った馬にアドバンテージが生まれます。

ただ、チャンピオンズCはダートの一流馬が出走することから、ペースが流れれば差し・追込みであっても十分に好走できるレース。脚質の有利不利はペース次第と言えます。

 

テイエムジンソクのコース適性は?

テイエムジンソクは中京&左回りコースに出走した経験がありません。回りによって「手前をスムーズに替えられない」などのリスクも考えられますが、これは走ってみないとわからないことなので、無視するのがベターです。

重心がブレないファームなので、ストライドはそれほど伸びないのが特長。直線の長い中京コースがベストの舞台かと言われると「?」が付きますが、これだけスピードの持続力に長けた馬なので、大きなマイナスにはならないでしょう。

 

最大のポイントは力関係

今年のチャンピオンズCはダートの一線級の馬が集まります。いずれもスピードとスタミナに優れた馬たちなので、これまでのひと捲りのレースが通用するのかが最大のポイント。

アウォーディーやコパノリッキー、ケイティブレイブなど3〜4コーナーからズドンと捲れる馬が揃っているので、この馬たちを制して先に捲ってどこまで粘れるのか……が楽しみですね。

 

まとめ

My Juliet牝系は日本でも枝葉が大きく広がり、その活力を子々孫々に伝えています。この優れたスピードとパワーが発現すれば、4コーナーをしびれる手応えで回ってくる、素晴らしい逃げ・先行馬がまだまだ出てくるでしょう。

テイエムジンソクがこの牝系初となるダートのGⅠ馬となれるのかに注目です。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。