GⅠフェブラリーSと同じ距離とコースで行われるユニコーンSは、今後のダート路線の中心となる馬が現れる出世レース。昨年の覇者ゴールドドリームが今年のフェブラリーSを制したように、GⅠへとつながる大切な1戦です。
今年は、NHKマイルC2着の牝馬リエノテソーロ、ヒヤシンスSでエピカリスの2着に入ったアディラートの2頭が人気の中心に押されています。この1、2番人気がすんなりと好走するレースになるのでしょうか?
今回の記事ではこの2頭に焦点を当てて、好走する可能性について考察します。
リエノテソーロとアディラートともに不安も?
リエノテソーロとアディラートの2頭は好走に「?」がつくローテーションでユニコーンSへ臨みます。
リエノテソーロの不安点
リエノテソーロは3歳の芝マイル王を決めるNHKマイルC2着からの参戦。2歳時にエーデルワイス賞、全日本2歳優駿の地方重賞を2連勝しているので、ダートの実績は十分にあります。
気になるのは、ダート→芝→再びダート戦というローテーション。JRAの3歳ダート路線はオープンまで上がってしまうと、使える番組がどうしても限られてしまう現状。そのため、芝を使う馬もいますが、ユニコーンSに関しては芝→ダート替わりの臨戦はプラスではありません。
GⅠ芝→ダート替わり
'14年のユニコーンSは、前年の2歳チャンピオンを決めるGⅠ朝日杯を制し、スプリングS2着→皐月賞6着から参戦したアジアエクスプレスが圧倒的1番人気に支持されました。新馬、オキザリス賞とダートを2連勝していたことと血統的背景などから単勝1.3倍の支持を受けたものの、12着と敗退。
アジアエクスプレスはその後、GⅢレパードS(新潟ダート1800m)を1着になったように、高いダート適性をもつ馬でしたが、それでもGⅠの芝レースからユニコーンSというローテーションでは力を発揮することができませんでした。
NHKマイルCからユニコーンSに臨むリエノテソーロにとっても、疲労残りの心配があるこのローテは鬼門となります。
アディラートの不安点
ユニコーンSと同じ舞台で行われたヒヤシンスSで、今年の3歳ダート路線の中心とされるエピカリスの2着と好走したアディラート。その後はUAEダービー(ドバイ、メイダン競馬場ダート1900m)に参戦し、ユニコーンSは海外帰り初戦となります。
そのUAEダービーはエピカリスにハナを叩かれてしまい、4角手前から徐々に後退して12着と大敗を喫しました。はこべら賞とヒヤシンスSの内容から、現状ではスムーズに逃げられないと力を発揮できない印象を受けます。
ドバイ遠征帰りは?
「ドバイ遠征」からの帰国初戦としてユニコーンSに参戦した馬は過去に3頭。
'15年
ゴールデンバローズ:4着(1人気)
タップザット:13着(6人気)
'13年
ケイアイレオーネ:3着(11人気)
掲示板に載った馬が2頭いて、ドバイに遠征したとしても大きな不利にはなりません。ただ、3歳のこの時期の海外遠征は疲れも溜まるので、プラスとは言えないでしょう。
逃げられるかどうか?
ドバイ遠征帰りよりも不安なのが、アディラートはユニコーンSで「逃げられるのか?」という点です。
UAEダービーは距離の1900mも長かった印象でノーカウントだとしても、国内のダート3戦は逃げて好走しており、まだ砂を被った経験がありません。もし、内枠に入り後手を踏むような展開になると、凡走の不安も……。
2頭が好走するには?
ここまでは2頭のマイナス面を挙げました。次はプラス面を考えてみましょう。
リエノテソーロ
父:Speightstown
母:Akilina(母父:Langfuhr)
厩舎:武井亮(美浦)
父Speightstownは現役時代BCスプリント(米GⅠダート1200m)などを勝った一流のスプリンター。この父はGone West×Storm Catですからゴリゴリのパワーというよりもしなやかさもあるパワー血統。リエノテソーロは母系がパワー溢れるダート血統なので、父系のしなやかさとマッチした好配合と言えます。
馬体を見ても1400mベストのマイラー体型で、もう少し筋肉がついていくにつれて、スプリンターへとシフトするかもしれません。
戦歴とコース適性
リエノテソーロはアネモネS(中山芝1600m)で見せた3〜4角での素軽い捲り、1分32秒5の好タイムで2着に上がったNHKマイルCの内容から、1400mがベストのスピード型マイラー。
札幌競馬場の新馬→すずらん賞を連勝したように、小回り向きの器用な脚がセールスポイントです。NHKマイルCでも見せたように、一瞬鋭い脚を使えるのはこの器用さによるところが大きいと言えます。
東京コースのダートのマイル戦であれば、短距離指向の馬が好走できる締まったペースになるのが理想。ただし、前傾ラップでもダート戦特有のゴールに向かってどんどん失速するラップだと持ち前のスピードが活かされないのでマイナス。
好走するには?
地方のダート重賞を好位からの競馬で勝っているとは言え、馬群に揉まれる競馬になるのは避けたいところでしょう。やはり、内枠よりは真ん中よりも外の枠に入るのが理想。
直線の長い東京コースであれば、ダート戦としては上りの速い決着になりやすいため、スピードを活かしたいリエノテソーロにとってはプラスで、後は消耗戦のようなペースにならなければ……。
前走のNHKマイルCがピークの出来だとすると、体調面での不安はあります。とは言え、牝馬にとっては長距離輸送がないのはプラスです。
アディラート
父:ルーラーシップ
母:ナリタブルースター(母父:マンハッタンカフェ)
厩舎:須貝尚介(栗東)
祖母のストームティグレスは中山芝1200mのフェアリーS2着馬のスプリンターで、そこにマンハッタンカフェ、ルーラーシップと中距離馬が掛けられて産まれたのがアディラートです。
父と母父からは中距離の芝で走っていそうな血統ですが、母系に流れる早熟さとスピードがこの馬にも受け継がれていて、ダートの短距離で良さが出てきました。
馬体を見てもマイラーで、東京の1600mはギリギリの距離でしょう。
好走するには?
揉まれた経験がないことからも、好走するにはすんなりとハナに立つ競馬がベスト。母系はスピード色が強く、馬場が渋って時計が速くなればチャンスは広がります。
キングカメハメハ直仔(その父Kingmambo)のルーラーシップ産駒ですから、東京のダートは合うはずです。
とにかく、砂を被らないことがポイントで、ヒヤシンスSのようなペースに持ち込むことができれば粘り込みも十分に。
まとめ
今年の上位人気馬の2頭はそれぞれ不安がある中での出走になるユニコーンS。
出世レースとして名高いレースですから、結果だけではなく内容も問われる1戦いになりそうです。
以上、お読みいただきありがとうございました。