ユニコーンS(2018年)はSeattle SlewかNureyevか、それが問題ーールヴァンスレーヴ・グレートタイム・イダペガサスについて

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ダート路線の出世レースと言われる3歳限定の重賞・ユニコーンSは、東京競馬場の1600mを舞台に行われます。2015年の勝ち馬ノンコノユメ、16年のゴールドドリームがフェブラリーS(GⅠ・東京ダート1600m)を制したように、今後のダート界の中心となる馬が出走することの多い注目の1戦です。

デビューから3連勝で全日本2歳優駿を制したルヴァンスレーヴ、地方交流重賞7勝のミラクルレジェンドを母にもつグレートタイムが上位の人気を集めるユニコーンS。今回の記事では、東京のダート1600mを好走するにはどのような適性が求められるのかを考察し、注目馬をピックアップします。

 

ストライドで走る馬を探そう!

東京競馬場のダートコースは最後の直線が501.6mとJRA全10場の中で最長を誇ります。そのため、ビュンと俊敏に加速できることよりも、直線でズドーンと末脚を伸ばせることが重要なコースです。

 

直線の長いコースはストライド走法が優勢

直線が長く広々とした東京競馬場は、フォームの大きな競走馬にとって走りやすいコース。身体を伸縮させて前脚をグイッと伸ばす大きなフォームは直線で高いスピードを出すことができます。その反面、コーナーでスピードを上げようとすると、遠心力のために外へ膨れてしまうのが「ストライド」と呼ばれるフォームの欠点です。

ストライドの大きな馬がスピードを落とさずにコーナーを曲がるには、距離のロス(遠心力で外へ膨れる分だけ走る距離が長くなる)を覚悟しなければなりません。

ストライド走法は完歩を大きく(広く)することで加速するため、直線の長いコースの方がよりスピードを上げやすくなります。つまり、東京競馬場はフォームの大きな馬がより力を発揮できるコースと言えるのです。

 

Seattle SlewかNureyevか

東京のダートコースを得意としている種牡馬はSeattle SlewとNureyevの2つ。前者はA.P. Indy→Pupit→Tapitとつながる北米の主流血統、後者はKingmanbo→キングカメハメハのラインやゴールドアリュールの母父などとして知られています。

Seattle Slewは高い確率で「ストライド走法」を伝えるのが大きな特徴です。この血を引く馬は胴の長さを受け継ぐことが多く、自然とフォームの大きなストライド走法になります

Nureyevらしさがもっとも表現されているキングカメハメハは、ストライド走法のドゥラメンテ、ピッチ走法のラブリーデイ、名スプリンターのロードカナロア、ダート・チャンピオンのホッコータルマエなど、芝・ダートを問わない万能な種牡馬。母系の良さをストレートに引き出す種牡馬のため、どのような配合になっているかで、ストライドがピッチかに分けられます。

 

軽いダートならSeattle Slew

Seattle Slew→A.P. IndyのラインはPupitやTapit、パイロ、シニスターミニスターなど、日本でも枝葉が広がる父系です。それらの産駒の多くはストライドで走るため、直線の長い東京や中京コースを得意としています。また、雨が降って軽くなった(時計の速い)ダートがベターというのも特徴のひとつです。

 

時計がかかるならNureyev

昨年のユニコーンSは父ゴールドアリュールのサンライズノヴァが1着、父ファスリエフのハルクンノテソーロが2着と父系にNureyevの血を引く馬がワンツーを決めました。この血はスピードだけではなくパワーをより伝えるので、時計のかかる馬場だと力を発揮します。ユニコーンSが1分35秒後半〜36秒台の決着になるなら、Nureyevが優勢でしょう。

 

ルヴァンスレーヴとグレートタイム

今年のユニコーンSで上位の人気に支持されているルヴァンスレーヴグレイトタイムの2頭は、前者がSeattle Slew、後者がNureyevの血を引きます。

 

ルヴァンスレーヴ

ルヴァンスレーヴは父シンボリクリスエスらしい「胴長+脚長」の体型をした中距離馬。ただ、新馬戦の豪快な捲りや小回り川崎で行われた全日本2歳優駿の走りからも、Roberto3×5のクロスらしいパワーが前面に出ています。デビューから2戦目のプラタナス賞(500万下)は東京ダート1600mを「しなやかに差した」というより「パワーで捲った」という走り。

Seattle Slewらしさよりも、Robertoらしさが発現しており、東京ダート1600mならパワー優先の時計のかかる馬場がベターでしょう。また、シンボリクリスエス×ネオユニヴァース×ティンバーカントリーの配合はあきらかに中距離馬のもの。前半のペースが速すぎると追走に脚を使ってしまうため、マイル戦のハイペースだと苦しくなります。

 

グレートタイム

父キングカメハメハは母系の良さをストレートに引き出す種牡馬なので、グレートタイムも母ミラクルレジェンと同じダート馬に出ました。父系に入る名牝Miesqueと母系に入るHighland Legendが似たような配合(どちらもSanta Quillaの孫)のため、Nureyevのパワーがオンになっています。

トゥザグローリーに似たパワフル・ストライドなので、直線の長い東京コースはOK。ただ、追ってしなやかに伸びるわけではないので、前々好位から抜け出すレースがベターでしょう。この馬も本質的に中距離馬ですから、マイル戦のハイペースだと割引です。

 

注目馬はイダペガサス

人気の薄いところだと、血統と走法から楽しみな馬はゴールドアリュール産駒のイダペガサスでしょう。

 

イダペガサス

母カロンセギュールは父Forest Camp(その父Deputy Minister)×母父Summer Squallなので父母相似の配合。また、Eight ThirtyとWar Relicのニアリークロスをもつため、フジキセキ×Awesome Again(その父Deputy Minister)のミラクルレジェンドと配合形が似ています。

イダペガサスはそこにゴールドアリュールが配され、Nureyev的なパワーがオンになったストライドで走るのが特徴です。いかにも東京ダート向きの馬で、1分36秒ソコソコのタイムに対応できるならチャンスもあります。

ストライドの大きな馬とあって、できるなら中から外枠がベター。ノーザンファーム生産馬なので、仕上がりに関しては不安はありません。後は嘉藤騎手が重賞で勝ち負けできるのか、その1点ですね。

 

まとめ

ルヴァンスレーヴとグレートタイムはそれぞれ東京コースに強いSeattle SlewとNureyevを引きますが、中距離馬とあって時計の速い決着には不安が残ります。また、前者は本質的にRobertoクロスらしい小回り・内回り向きの馬ですから、適性に勝るほどの競争能力をもっているのかに注目したいところです。

ユニコーンSは出世レースと言われるだけに、今から各馬の走りが楽しみになります。

以上、お読みいただきありがとうございました。