ダート路線の出世レースと言われるGⅢユニコーンSは、東京競馬場の1600mを舞台に行われます。昨年の勝ち馬ゴールドドリームが今年のフェブラリーS(GⅠ東京ダート1600m)を制したように、今後のダート界の中心となる馬が出走することも多い注目の1戦です。
地方交流重賞の全日本2歳優駿を制し、NHKマイルCを2着と芝・ダートを問わない活躍を見せる牝馬リエノテソーロが出走することでも話題を集めるユニコーンS。今回の記事では、東京のダート1600mを好走するにはどのような適性が求められるのかを考察し、注目馬をピックアップします。
ストライドで走る馬を探そう!
東京競馬場のダートコースは最後の直線が501.6mとJRA全10場の中で最長を誇ります。そのため、直線での「走り」が重要なコースと言えるのです。
直線の長いコースと競走馬のフォーム
直線が長く広々とした東京競馬場は、フォームの大きな競走馬にとって走りやすいコース。身体を伸縮させて前脚をグイッと伸ばす大きなフォームは直線で高いスピードを出すことができます。その反面、コーナーでスピードを上げようとすると、遠心力のために外へ膨れてしまうのが「ストライド」と呼ばれるこのフォームの欠点です。ストライドの大きな馬がスピードを落とさずにコーナーを曲がるには、距離のロス(遠心力で外へ膨れる分だけ走る距離が長くなる)を覚悟しなければなりません。
ストライドで走る馬は完歩を大きく(広く)することで加速するため、直線の長いコースの方がよりスピードを上げやすくなります。東京競馬場はフォームの大きな馬がより力を発揮できるコースと言えるのです。
ストライドで走る馬をチェック!
現在、JRAのHPでは'15年3月28日以降の全レースを無料で観ることができます。ストライドで走るのか、それとも脚の回転の速いピッチ走法なのかは過去のレース映像でチェックすることが可能です。
東京コースで走った経験がない馬でも、直線の長いコースに適性があるかどうかはレース映像で走法をチェックすればOK!(あくまでも走法的に適性があるかどうかで、その馬の競走能力とは異なります)
ストライドで走る馬をピックアップ
それでは、ユニコーンSに出走を予定しているストライド走法の馬をピックアップしてみましょう。
ウォーターマーズ 3歳牡馬
父:シンボリクリスエス
母:ウォーターポラリス(母父:El Prado)
厩舎:岡田稲男(栗東)
父シンボリクリスエス譲りの胴長の馬体、そしてフォームを大きく伸ばす走りは直線の長い東京コースにぴったりです。
デビューから現在までの6戦は全て京都1800mのコースを走っており、ユニコーンSに出走すれば直線の長いコースは初めてになります。
ストライドの馬は急加速が得意ではないので、スタートでダッシュがつかずに後方からの競馬になることが多いのですが、この馬もそのクチ。今のところ追い込み一辺倒のレースしかできません。
初の長距離輸送+マイル戦+芝スタート、そしてデビューから使い詰めと不安は多いものの、東京コースの適性はバッチリですからどのような走りをするのかに期待したい1頭です。
サンライズノヴァ 3歳牡馬
父:ゴールドアリュール
母:ブライトサファイヤ(母父:サンダーガルチ)
厩舎:音無秀孝(栗東)
東京ダートのマイル戦でデビュー勝ちを上げました。前走の鳳雛S(京都ダート1800m)4着と前々走の伏竜S(中山ダート1800m)2着のオープン競走はともに直線の短いコース。この馬にとって、京都から東京へのコース替わりは大きくプラスです。
サンライズノヴァは母系に入るしなやかな血のサーペンフロ(Sir Ivor直仔)と父ゴールドアリュールがマッチして、ダート馬としては柔らかなストライドで走ります。
新馬戦は中団前に付けると、直線でジリジリとストライドを伸ばしての勝利。首を上手に使った大きなフォームから、いかにも東京向きな馬だと言えます。想定される鞍上が戸崎騎手とのことで、陣営の期待の高さも伺える1頭です。
シゲルベンガルトラ 3歳牡馬
父:プリサイスエンド
母:ローズヘイロー(母父:キングヘイロー)
厩舎:服部利之(栗東)
父プリサイスエンドはエンドスウィープ直仔で芝・ダートを問わないストライドで走る馬が多く出ます。シゲルベンガルトラは母系も芝向きのしなやかさの血が入っており、東京の1400〜1600mがベストの舞台と言えるでしょう。
東京に次いで直線の長い中京競馬場(ダートの直線は410.7m)で行われた500万下の寒椿賞をしなやかなストライドで差し切り勝ち。その後は3歳ダートのオープン戦を皆勤賞で出走するタフネスぶりを見せています。
東京のマイル戦はヒヤシンスS7着、青竜S3着と強いメンバーを相手に走っていることから、ここでも期待をしたい1頭です。
サンライズソア 3歳牡馬
父:シンボリクリスエス
母:アメーリア(母父:スペシャルウィーク)
厩舎:河内洋(栗東)
父シンボリクリスエスらしい胴長の馬体で、大きなフォームで走る馬。追い出されると頭が上がってしまいグイッグイッと前脚が伸びるとは言えないものの、そのゆったりとしたフォームはいかにも東京向きのストライドです。
前走の青竜Sは好位からレースを進めての押し切り勝ち。好メンバーが揃った1戦をあっさりと勝ち切ったのは、コース適性だけではなくこの馬の競走能力が高いからこそだと言えます。
前走と同じような競馬ができれば、ユニコーンSで大きくパフォーマンスを落とすことは考えにくく……ただ、フォームが大きいので、馬群の中での競馬は苦手。できれば、外枠からスムーズに走りたいところでしょう。
ハルクンノテソーロ 3歳牡馬
父:ファスリエフ
母:トウカイベルタ(母父:ワイルドラッシュ)
厩舎:高木登(美浦)
3走前から東京コースのダート1400〜1600m戦に出走すると、3着→1着→2着と成績が安定したように広いコースでのびのびと走るのが合っている馬です。
血統表の父系も母系もNearctic(Northern Dancerの父)が多く、また母父ワイルドラッシュ(Wild Again直仔)の影響で前肢が勝った走りをするのが特徴。NearcticからHyperionの血を引くため、東京コースでスタミナを振り絞るレースが合っています。
スタートが遅いのは前肢に比べて後肢に力がつき切っていないからで、成長してくればより大きなフォームで走れるようになるでしょう。現状では、後ろからの競馬になってしまうことからも直線の長い東京コースはベストです。
テイエムアンムート 3歳牝馬
父:パイロ
母:フィフスアベニュー(マンハッタンカフェ)
厩舎:柴田光陽(栗東)
父パイロはアメリカの大種牡馬Pulpit直仔でA.P.Indy系らしくコテコテのパワーよりもしなやかさを伝える馬。テイエムアンムートの母系はマンハッタンカフェ×マルゼンスキー×Rivermanと重厚なキレのある配合で、この馬がダートを走る馬としては細身なのは納得です。
追い出されると大きなフォームで走る馬で、中京の未勝利戦を勝っているように直線の長いコースは適性として合っています。馬体からはマイルをゴリゴリとパワーで押し切るよりもしなやかに差すタイプのため、距離は長い方がベターに見えますが……。
ユニコーンSが初めての東京コースなので、その走りに期待したい1頭です。
サンオークランド 3歳牡馬
父:ロージズインメイ
母:チアズスワロー(母父:フレンチデピュティ)
厩舎:角居勝彦(栗東)
胴長の造りからも本質的には中距離馬。伸びやかなフォームで走るので、東京の長い直線は合っています。
父ロージズインメイは強いクロスを持たないので、この馬もこれからじわじわと成長していくでしょう。馬の成長に合わせたローテーションを組む角居厩舎というのも好感がもてますね。
まだ緩いフォームなので、グイグイと前肢を伸ばして……というところまではいかないのですが、古馬になって東京ダート2100mがずんどばになりそうな馬です。現時点でどれだけ走れるのか注目したい1頭。
まとめ
ストライド走法の馬(フォームの大きな馬)を7頭ピックアップしました。意外に多いですね……。
抽選待ちの馬もおり、出走馬が確定しレースに出られるようなら期待したい馬たちです。
以上、お読みいただきありがとうございました。
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