トーセンビクトリーが3〜4角の内を抜群の手応えでするすると上がっていくのを観て、「やっぱり、中山のコーナーを上手く回るのはトゥザ兄弟と一緒だなぁ」と思ったのでした。
トゥザ兄弟とトーセンビクトリー
トゥザグローリー=トゥザワールド=トーセンビクトリーの全兄妹は、兄の2頭が有馬記念でも好走しているようにコーナーの加速力が抜群で、それに加えて母トゥザビクトリー〜母母フェアリードールのパワーも表現されているので、直線の坂も美しく駆け上がれます。
トゥザグローリーが鳴尾記念(阪神芝2000m 内回り)で、トゥザワールドが弥生賞(中山芝2000m)でベストパフォーマンスを叩き出したのですから、妹のトーセンビクトリーが美しいピッチで中山の重賞を制覇するのも納得です。
角居厩舎らしく、馬の成長を待ってじっくりとレースを使っているので、5歳牝馬、今からが充実期になるかもしれません。
予想
「スローをピッチ走法が駆け抜ける」中山牝馬Sになったのですが…
ですが…
ですが…
馬券は…ハズレ
レース
プリメラアスールが押してハナを主張し、サンソヴールが2番手追走の形でレースが落ち着き、1000mの通過が62.4のスロー。
トーセンビクトリーは控えて内の3番手で待機。マジックタイムもパールコードもフロンテアクイーンもビッシュもウキヨノカゼも3角手前で動かずにじっくりと前を見る形でレースが進みます。
トーセンビクトリー
4角からじわっとパールコードが進出し、トーセンビクトリーは進路を探しながら外へ持ち出してピッチで抜け出すと捲り差してきたマジックタイムを抑えて1着。
トーセンビクトリーの手応えの良さもあったのでしょうが、武豊騎手は4角過ぎて迷うことなくパールコードの外へ進路を取ったのは流石で、内に行けば詰まる恐れもありましたし、俊敏に動ける馬だと分かっているからこその好判断でした。
マジックタイム
マジックタイムは3角過ぎからの捲りで、前を行くフロンテアクイーンもコーナーでそれほど膨れずに回りましたから、その外からパワーのある走りで差してきての2着。スローペースの中、56kgを背負ってこの内容ですから中山適性の高さだけではなく能力もこのメンバーでは1枚上だったということでしょう。
クイーズミラーグロ
3着のクイーンズミラーグロは4角までトーセンビクトリーが通った後を追走して、直線で内へ。間を割ってよく伸びたという内容。中山+スロー+内枠と好走な条件が全て揃っての結果ですから、上位2頭とは力の差があったのだと思います。
パールコード
パールコードは外目をスムーズに追走して、サンソヴールが抜け出しにかかるところをねじ伏せて先頭に立ちますが、スローだと鋭さ負けをしてしまうという4着。この馬も直線では伸びていますし、休み明けの4歳馬で大外枠からのスタートでしたから、力は十分に見せたと思います。
操縦性が高く(折り合いがつきやすく)、コーナーをスムーズに曲がれるので、どのコースで走っても弱点のない馬。反対に言えばずんどばな適性がどこなのかが難しく…どのメンバー、どのコースで走っても掲示板に乗るという馬になりそうな…
◎シャルール
スタートから横山騎手が前に行く気配はなく、後方からの競馬になってしまいました。
2角で内をするすると上がって行きましたが…ピッチなので、長くいい脚が使えるわけではなく、やはりある程度のポジションは取って欲しかったな、というところ。
10Rの東風S、1枠に入ったミッキージョイで逃げずに後方へと控えた横山騎手の騎乗を観て、メインでもイヤな予感はしましたが…
この馬の適性としては中山とローカル小回りがスイートスポットだと思うので、東京や中京、外回りの競馬場に出てきたとき(ただし、どスローだとピッチの加速力が生きる場合もあります)は下げの評価で。
マジックタイムについて
2歳から息の長い活躍を続けたのは晩成傾向にある父ハーツクライ譲りのもので、早い時期から好成績を残しているのはそれだけ高い競走能力があったということを示しています。
3歳時にはオークスまで駒を進め、その末脚から東京や新潟などの外回りコースを中心に使われましたが、重賞勝ちはGⅢダービー卿CTとターコイズSですから、中山での適性も高かった馬。
これは、母父に入るブライアンズタイムからパワー捲りの血を受け継いでいるからで、ディーマジェスティやゼーヴィント(いずれも母父ブライアンズタイム)がディープインパクト産駒ながら中山で捲った時に強さを発揮するのと同じことだと思います。
数年後に中山を美しく捲るマジックタイムの仔が観れるのではないか、と期待しています。
トーセンビクトリーの今後は?
もともと3歳の秋にはローズSで、タッチングスピーチ、ミッキーアイルの3着になるなど重賞でも活躍していた馬ですから、重賞勝ちは順当とも言えるのですが、この勝利で今後のレース選択も難しくなりました。
古馬牝馬戦線は、ヴィクトリアマイルが春の最大目標になるわけで、ピッチのトーセンビクトリーにとって東京の長い直線はマイナスです。
東京でもスローであればジェンティルドンナのようにピッチ加速で抜け出せますが、ヴィクトリアマイルはハイペースになることが多いGⅠですし…
秋のエリザベス女王杯も京都の外回りコースですから、ペースが流れるとマイナス。
いずれにせよ、内回りや小回りでは評価を上げて、外回りや東京、新潟、中京などではスロー限定での狙いになると思います。
まとめ
もう、もう、JRAの重賞はスローペースが多いので、ピッチ走法の馬たちが活躍できるレースは増えてきています。
トーセンビクトリーが今後どのようなレース選択をするのかは注目です。