古馬の長距離チャンピオンを決める天皇賞・春は5月3日(日)、京都の芝3200の外回りコースを舞台に行われます。昨年は1人気のフィエールマンが1着となったものの、2着に6人気、3着に8人気の馬が入線しては紐荒れという結果となりました。
今年もフィエールマンが人気の中心として出走するとあって、人気薄の好走があるのかに注目が集まります。とくに2桁の人気薄は2016年2着のカレンミロティックから好走がないため、ソロソロの気配が……漂っているようないないような……。
今回の記事では過去10年の「人気薄の好走馬」を振り返り、今年の出走予定のなかに該当する馬がいるのかを検証します。
過去10年における人気薄の好走馬
「人気薄」の定義は個人差が出てきてしまうので、今回は簡単な基準を定めます。「2桁人気」としてもよかったのですが、それだとサンプル数が少なくなるのでオミットしました。算定式は以下の通りです。
【人気薄の定義】
算定式=出走頭数÷2
計算をわかりやすくするため、出走頭数の半分よりも下の人気であれば「人気薄」と定義しました。例えば、出走頭数が16頭の場合、「16÷2=8」なので9人気以下の馬が該当となります。
人気薄の好走馬
それでは過去10年における人気薄の好走馬をチェックしましょう!
【2010〜19年の天皇賞・春における人気薄好走馬】
▼2010年
3着:メイショウドンタク(16人気)
枠番:2枠4番
通過順:6 - 6 - 5 - 3
-----
▼2012年
1着:ビートブラック(14人気)
枠番:1枠1番
通過順:2 - 2 - 2 - 1
-----
▼2014年
3着:ホッコーブレーヴ(12人気)
枠番:3枠6番
通過順:9 - 9 - 10 - 10
-----
▼2015年
3着:カレンミロティック(10人気)
1枠2番
通過順:2 - 2 - 3 - 1
-----
▼2016年
2着:カレンミロティック(13人気)
通過順:3 - 3 - 3 - 3
-----
▼2019年
3着:パフォーマプロミス(8人気)
通過順:6 - 5 - 4 - 5
ぱッと見て気付くことは連対を果たした2頭、ビートブラックとカレンミロティックに共通点があることです。この2頭は天皇賞・春で連対をする以前に、GⅠ3着の好走歴がありました。すでにGⅠで好走歴のある馬がドカンと人気を落としていたら、積極的に1・2着に固定したいところですね。
また、出走頭数が13頭と少なかった昨年を除き、人気薄で好走するのは1〜3枠まで。とくに2桁人気であれば4枠〜の馬は全消しでOK。
血統的な特徴は?
前回の記事でも書いたように、天皇賞・春の勝ち馬は2013年のフェノーメノから2019年のフィエールマンまで、すべてPrincely Giftの血を引いています。これはPrincely Giftの血が京都外回りコースの名物とも言われる「淀の下り坂」に高い適性があるからです。
それでは、この種牡馬の他に下り坂を得意とする血はどのようなものがあるのでしょうか?
Habitat
Caerleon
Cozzene
Drone
Sir Gaylord
Secretariat
(Princely Gift)
前脚をしなやかに伸ばせる柔らかな血が入ることで、京都の下り坂を効率よく走ることができます。京都の外回りコースの重賞を予想するとき、上記の7頭の種牡馬が血統表に入っているかどうかをチェックするのがベター。
先に上げた人気薄の好走馬のなかから上記の血を引く馬をピックアップしてみましょう。
▼ビートブラック
→Secretariat
▼ホッコーブレーヴ
→Princely Gift
▼カレンミロティック
→Cearleon&Secretariat
▼パフォーマプロミス
→Princely Gift
メイショウドンタクを除く4頭はPrincely GiftかSecretariatをもっていました。やはり、下り坂を苦にしない血をもつかは大切なポイントです。
人気薄の注目馬は?
過去10年をザックリと振り返ったので、次は人気薄が想定される馬をチェックしましょう。8〜14人気の馬は以下の通りです。
エタリオウ
ダンビュライト
スティッフェリオ
ミライヘノツバサ
シルヴァンシャー
メロディーレーン
ハッピーグリン
ダンビュライトとハッピーグリンを除く5頭はすべてPrincely Giftの血を引きます。エタリオウは菊花賞2着の実績があるため、1・2着の可能性も……。ダンビュライトは皐月賞3着があるものの、下りよりも上り坂を得意とするタイプなので、トニービンの血が活きる流れになればチャンスも……。
エタリオウとダンビュライト以外の5頭を買うのであれば、3着固定でOK! 個人的に注目しているのは高速馬場が得意なスティッフェリオ。この馬が1・2枠に入ったら、3着固定の3連単を買います。
スティッフェリオ 6歳牡馬
父:ステイゴールド
母:シリアスアティチュード(母父Mtoto)
厩舎:音無秀孝(栗東)
生産:社台ファーム
福島記念(GⅢ・福島芝2000m)を1分58秒3、オールカマー(GⅡ・中山芝2200m)を2分12秒0の好タイムをマークしていることから、京都の高速馬場もOKなタイプ。
昨年は大阪杯7着、宝塚記念7着、天皇賞・秋12着、有馬記念13着とGⅠで結果を残せなかったものの、中距離の層の厚さを考えれば悲観する内容ではありません。
血統
父ステイゴールドは言わずもがなの「天皇賞・春御用達」の血統。また、母父MtotoがAlycidonを引き、母母ザミリアがNorthern Dancer4×4のクロスをもつことから、3冠馬オルフェーヴルと配合のアウトラインは似ています。
スティッフェリオは父からPrincely Gift、母系の奥からHabitatを引くため、京都の下り坂をスムーズに走れるタイプ。京都記念や京都大賞典などに使われていなかったのが不思議なくらいです。
この馬自身は5代アウトブリードなので、6歳になっても力の衰えは感じません。今走は菊花賞以来となる長距離重賞ですが、母系にもDonatelloのクロスやAlycidonを引くのですから、本質的なスタミナは豊富です。
天皇賞・春に向けて
現在の長距離路線は層の薄い状態が続いています。レベルの高い中距離路線で重賞を3勝し、昨年はGⅡのオールカマーを制しているのですから、実力に不安はありません。
前述したように、GⅠで結果が出ていないとはいえ、それはリスグラシューやアーモンドアイなど超A級馬が中心のレース。今走の天皇賞・春はA級と言えるのがフィエールマン、キセキの2頭で、ユーキャンスマイルは準A級ですから、ガクンとメンバーレベルが落ちます。
AJCC8着→日経賞3着と余力をもって負けているのは好印象。主戦の丸山元気騎手が乗れないのはマイナスとは言え、北村友一騎手を確保できたのは大きなプラスです。1・2枠に入ればチャンスがグッと広がるので、後は枠順だけだと思います。
まとめ
現在のJRAは長距離の層がかなり薄くなっています。昨年の天皇賞・春の出走頭数が13頭とフルゲートに満たないのもその影響でしょう。また、京都の芝がかなり高速化していることで、中距離馬であっても道中でロスなく走れば3200mの距離も十分にこなせます。
今年はあっ!と驚く人気薄の好走があるのか、今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。