美しく、そして大胆にソウルスターリングが第78回優駿牝馬(オークス)を戴冠

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ため息が出るほどに美しいフォームで東京芝2400mを駆け抜けたぴかぴかの良血牝馬ソウルスターリングと、大胆かつ繊細な騎乗を見せたルメール騎手のコンビが第78回優駿牝馬(オークス)を制しました。藤沢和雄調教師はこれで節目の重賞100勝目を達成。

デビューから6戦連続でソウルスターリングの手綱を取ったルメール騎手は、この馬の強さも物足りなさも理解した上での大胆な騎乗で栄冠を勝ち取りました。勝利ジョッキーインタビューで同騎手が「(ソウルスターリングについて)距離がわからなかった」と発言していますが、4角で先頭に並びかける強気の競馬。長く良い脚を使えるというこの牝馬の最大の武器を活かすために、ホームストレッチの坂下から仕掛けた騎乗もコンビとしての信頼関係が築かれていたからでしょう。

分かり合えているからこそ、美しく大胆にーーオークス('17)予想 - ずんどば競馬

 

美しきパワフルストライド

ホームストレッチの馬場の真ん中をパワフルなストライドで抜け出したソウルスターリング。レースの上り3Fの11.3 - 11.2 - 11.6という数字以上に、坂を駆け上がってからゴール板までのストライドの伸びが他馬とは違っていました。後肢に比べると短い前脚を「これでもか!」と前へ投げ出すソウルスターリングのフォームは父フランケルの欧州的なパワーとしなやかさが融合した美しいストライド。「パワフルなストライド」とルメール騎手がインタビューでこの馬を称賛したように、東京芝2400mのGⅠを制するのに相応しいフォームでゴールまで駆け抜けたのだと言えます。

 

スタートから出して行くポジション取り

ソウルスターリングは最内枠に入ったこともあり、戦前から予想された通り前々のポジションを取り切ることができました。好スタートから、ハナを切ってもOKというほどルメール騎手が抑えることなく出して行き、結果として逃げたフローレスマジックの直後のインのポジションを確保。これは、ルメール騎手がこの馬のことを信頼していたからこそだと思います。

 

1. スタートから出して行っても引っ掛からずに抑えられる

2. 押し出されて逃げる形になってもOK

 

オークスの2400mという距離をソウルスターリングが走りきれるかどうかは騎手にとっても不安もあったと思いますが、自信を持って(腹を括って)GⅠという舞台でも恐れずに前へと出して行けたことが最大の勝因として挙げられます。

デビューから手綱を取り、2〜3歳春までの成長の過程も肌で感じ取り、桜花賞での敗戦を経験したこともこのコンビの信頼関係を深める上では重要なキーポイントだったのでしょう。

 

今後に向けて

秋には牝馬クラシックの最終戦「秋華賞」が行われます。前脚の短いソウルスターリングはストライドで走るものの、コーナーでの加速も上手なタイプですから内回りの京都コースはそれほど苦にはしないはずです。

血統表を見ても強いクロスがないので、夏を越して、さらには古馬になっても成長が見込めます。秋にどのような馬体でターフに戻ってくるのか今からワクワクしますね。

春のクラシックは全休となったファンディーナと秋華賞の舞台で対決となれば、また一段とレースが盛り上がることになるでしょう。

 

モズカッチャン

最内枠から好スタートを決めてソウルスターリングのすぐ直後のポジションを取り切ります。勝馬の仕掛けに合わせて、直線で鋭く反応しての2着。これでハービンジャー産駒は皐月賞のペルシアンナイトに続いてGⅠに後一歩届かず、産駒のGⅠ初勝利はお預けとなりました。

ストライドがそれほどのびる馬ではないので、スローからの上り勝負になったのはこの馬にとっては願ってもない展開。ただレースは4Fからの仕掛けだったため、ラストの1Fでソウルスターリングに突き放されてしまったのはピッチで走るこの馬の適性面からすると納得の結果だと言えます。

脚の回転の速さで抜け出せること、小倉の未勝利戦で見せたコーナーでの加速力を見ても、秋華賞の行われる京都内回りのコースは適性としては合っている舞台ですから、オークスよりもパフォーマンスは上がるはずで、期待がもてますね。

オークス('17年)はハービンジャー産駒が大攻勢?ーーモズカッチャン他 - ずんどば競馬

 

アドマイヤミヤビ

大外枠から少しだけ出負けして後方の外へポジションを取ります。4角手前から仕掛けて最後の直線では大外へ出して伸びてきました。内で粘るディドアドラをゴール前で交わして3着を確保。パワー溢れる重厚なストライドで伸びてくる脚はいかにも中距離馬のもので、今日の走りを見る限り桜花賞での大敗はしっかりとケアできていました。

レースはスローで流れた上に4Fから動き出し、終始外を回らされたこの馬には厳しい展開に。最後にディドアドラを捕らえたのはさすがの脚だっただけに、持てるポテンシャルは見せた敗戦だったと言えます。

週中のオークスを展望した記事にも書きましたが、ハーツクライ産駒は京都の大レースでは好走すれど勝てずのレースが続いており、さらに秋華賞は内回りコースですからストライド走法のアドマイヤミヤビにとっては舞台としてはマイナス。また、Northern Dancerのクロスが詰まった配合からも古馬になってぐんぐん成長するのかは微妙なところです……。

無事に夏を越せば、ローズSからの復帰になると想定されるので、阪神外回り(急坂)のずんどばな舞台でどのようなパフォーマンスを見せられるのかを注目したい1頭。

ハーツクライ産駒はオークス>秋華賞?ーーアドマイヤミヤビとリスグラシュー - ずんどば競馬

 

ディアドラ

少し出負けして道中はアドマイヤミヤビと同じような後方待機でしたが、こちらは岩田騎手らしく内ラチをぴったりと追走しました。最後の直線では最内をついて伸び、外からアドマイヤミヤビに交わされたの4着。

インをズバッと差して2着とに入線したアネモネSからは馬群を割って伸びることができるようになり、全体の地力がアップ。桜花賞・オークスでともに上り最速を記録したように、この馬はキレるハービンジャー産駒で、直線の長い東京や外回りコースがずんどばの適性です。ゆったりとした馬体を見ても2000m前後の距離が合う中距離馬で、オークスでは中1週のローテーションを跳ね除けて4着に好走したのは立派の一言。

獲得賞金としては2勝馬なので、この後どのようなローテーションが組まれるのかは注目しなければいけません。ここまで使い詰めで来たこともあり、夏は休養して秋からの復帰が考えられますが、2勝馬なので秋華賞トライアルで権利が取れないと……。今後に向けてはどのレースを使うのかがもっとも大切になってきます。

 

リスグラシュー

アドマイヤミヤビと同じハーツクライ産駒で、小柄な馬体にも関わらずパワフルなストライドで直線を伸びて5着。

マイナス4キロの数字以上に馬体を細く見せました。マイルから中距離仕様への仕上げかとも思ったのですが……長距離輸送で減らしてしまったのかもしれません。スパッとキレる馬ではないので、ジリジリと伸びて掲示板を確保したのは納得。

ハーツクライ産駒、ストライド走法などから京都内回りコースは適性としてはマイナスです。東京コースはアルテミスSの内容を見てもずんどばの舞台ですからオークスで好結果を出したかったのですが……外枠に入り4Fからの上り勝負ですから、やはりレースの組み立てが厳しかったとは思います。

こちらも重厚なストライドで走るので阪神外回りコースはベストな舞台。成長も含めてローズSでの走りに注目したいですね。

 

フローレスマジック

ソウルスターリングを制してハナを切りましたが、直線に入ってすぐに勝ち馬に交わされてしまい6着と敗退。内で包まれて動けなくなることを考えれば、戸崎騎手の逃げは納得のレースプランでした。2000mがベストのこの馬にとって、あれ以上ペースを上げるのは騎手にとってもリスキーだとは思います。

母マジックストームの産駒は3歳秋以降にグングンと成長するので、ここでの6着は今後に向けての大きな糧になるはずです。

ストライド走法なので、京都内回りの秋華賞は割引ですが、姉のラキシスの勝ったエリザベス女王杯は適性としてはずんどばの舞台。夏は成長を促してきっちりと秋に備えたいところです。

フローレスマジックとブラックスビーチーーオークス('17年)を狙うディープインパクト産駒 - ずんどば競馬

 

レーヌミノル

道中は先行勢を見る形で外目を追走。4角から仕掛けますが、直線では反応を見せずに13着と後退したことからもやはり距離の問題なのでしょう。

阪神外回りの桜花賞馬とは言え、「おおっ!」と声が上がるほどの脚を使ったのは内回りコースで行われたフィリーズリビュー。父ダイワメジャー×母父タイキシャトルなのでHaloクロスがあることからも、素軽い先行力で器用に立ち回れるのがこの馬の最大の武器です。

京都内回りの秋華賞は、距離を脇におけば適性としては合っています。レーヌミノルが秋の復帰戦でどのレースを選択するのかは未知なものの、紫苑S>ローズSだとは思います。

クラシック路線ではなく、早くからマイル以下に路線を変更するのかも注目したい1頭ですね。

 

まとめ

美しく、そして大胆な騎乗でオークスを制覇したソウルスターリングの走りは、'25年頃、この馬の息子や娘が東京芝2400mを走っている姿をイメージさせるには十分なものでした。

クラシックディスタンスのGⅠを制したことで、競走馬としただけではなく繁殖牝馬としても高い評価を受けることは間違いなく、引退後の初年度の種付けとしてどの馬が選ばれるのかも今から注目したいですね。

欧州のパワー系マイラーのフランケルが母父になるわけですから、やはり……ディープインパクトとのなるのでしょうか?

もし、数年後のダービーやオークスにソウルスターリングの仔が出走することになったら、この'17年のオークスは貴重な参考レースになります。この馬の走りを目に焼き付けて……。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。