ハイランドリールを差し切った昨年の香港ヴァーズから、直線の長いコース+ロングスパート戦でサトノクラウンが負けたレースは、キタサンブラックとゴール前まで叩き合った今年の天皇賞・秋(GⅠ・東京芝2000m)のみ。
それだけに、上り3F12.0 - 12.7 - 14.0とレースのスピードがガクンと落ちた最後の1F、細かく言えば、直線の坂を駆け上がってからゴールまで残り100mの区間で、サトノクラウンが前で粘る現役最強馬をしぶとく追い詰めながらも交わせなかった姿には、胸がキューっと締め付けられたのでした。
ジャパンカップで再戦する2頭
サトノクラウンとキタサンブラックの2頭はともに、天皇賞・秋→ジャパンカップ→有馬記念のローテーションが組まれているため、再び府中の長い直線を舞台に戦います。
日本や香港やドバイの芝2400mあれば、この日本が誇る2頭の名中距離馬は欧米のトップホースが相手だったとしても、「天皇賞・秋のようなマッチレース」を演じることができるでしょう。
そう、「レースのすべてを支配できる現役最強馬」と「ロングスパート戦の現役NO.1の馬」の対決を、「チャンピオン・コース&ディスタンス」と呼ばれる府中の芝2400mで観られるのはとても幸せなことなのです。
雌雄を決するのにふさわしい舞台
東京芝2400mはこの2頭にとって、ベストパフォーマンスを発揮できる舞台。だからこそ、ジャパンカップは雌雄を決するのにふさわしいレースと言えます。
どのようなレースでも高いパフォーマンスを発揮できるキタサンブラックと、自分の得意なゾーンに入ればベストのパフォーマンスを叩き出せるサトノクラウン。個性の異なる2頭のどちらがジャパンカップを制するのでしょうか?
有馬記念よりもジャパンカップ
ストライドで走る2頭にとって、小回りの中山芝2500で行われる有馬記念は本質的に不向きな舞台です。また、キタサンブラックは休み明け3戦目にパフォーマンスを落とす傾向にあることから、チャンピオンを決めるのはジャパンカップこそがふさわしいと言えます。
天皇賞・秋のダメージは?
「あの!」とエクスクラメーション・マークを付けたくなるほどの不良馬場だった天皇賞・秋は、心身ともにタフな戦いでした。柔らかい馬場だったことから、脚元への負担は少ないレースだったは言え、出走馬に疲労が蓄積されたのは間違いないでしょう。
死力を尽くして叩き合った2頭は、そのダメージが抜けているのかが心配されます。ただ、体調面が整っているのかどうかは走ってみないとわかりません。私たちにわかっていることは、天皇賞・秋がタフな戦いだったということだけです。
天皇賞・秋のダメージを予測することはできない
「天皇賞・秋のダメージが残っているから、キタサンブラックもサトノクラウンも買わない」というのは、予想のスタンスとして正しいですし、「ダメージのケアはしているだろうし、これだけの馬だから、ジャパンカップも大丈夫」というのも正しい見解。
今年の宝塚記念を敗れたキタサンブラックについて、武豊騎手が「敗因はよくわからない」と語ったように、一流馬であってもほんのちょっとしたことで負けてしまうことはあるのです。そして、私たちはその原因を推測することしかできません。
東京芝2400mであればサトノクラウンに◎
サトノクラウンはジャパンカップに向けて、多くの不安要素を抱えています。パッと思いつくところでは以下の3つ。
1. 騎手が未定
2. 天皇賞・秋のダメージ
3. 得意のロングスパート戦にならない
最大の懸念は「騎手が未定」という点。A・オブライエン調教師の管理馬アイダホがジャパンカップに出走することから、当初サトノクラウンの鞍上に予定されていたR・ムーア騎手が「専属契約」によって乗れなくなりました。
これまで主戦を務めていたM・デムーロ騎手はシュヴァルグランの先約が入っていることもあり、未だに騎手の調整がついていません。「頂上決戦」に向けての準備としてはお粗末としか言えない事態に。
(追記)11月21日(火)、サトノクラウンの鞍上はM・デムーロ騎手とのこと。シュヴァルグランにはH・ボウマン騎手が騎乗します。う〜ん、またアレコレ言われるような騎手の配置になりましたね。
この時点で騎手が決まらないサトノクラウンは、大きな不安を抱えてジャパンカップへと出走することになります。「良い」「悪い」の問題ではなく、このような事態に陥ったことが残念でなりませんね。
でも、サトノクラウンに◎
先に述べたような不安があるから「買えない」というのも正論ですが、キタサンブラックとの雌雄を決するジャパンカップの◎はサトノクラウンにふさわしいもの。
凱旋門賞へは向かわず、秋は国内に専念するという報道が出たときから、今年のジャパンカップでの◎はサトノクラウン。前脚を突っ張るように高く上げ、細身の身体をしならせて走るこの名中距離馬は東京芝2400mのチャンピオンだと信じています。
まとめ
天皇賞・秋のような、あの胸を締め付けられるような叩き合いと、ゴール前までタフであり続けるサトノクラウンの走りに期待して。
今年のジャパンカップはどのような結末が待っているのでしょうか?
以上、お読みいただきありがとうございました。