名門・堀宣行厩舎のアルバートはオールカマーで好走し、国内レースに専念するのか?ーー展望

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豪州の長距離GⅠメルボルンC(フレミントン競馬場 芝3200m)に出馬登録をしているアルバート(6歳牡馬 堀宣行廐舎)は、GⅡオールカマーから今秋のローテーションをスタートさせます。2015、16年のステイヤーズS(GⅢ 中山芝3600m)を連覇し、今年はダイヤモンドS(GⅢ 東京芝3400m)を制したステイヤーが芝2200mのオールカマーでどのようなレースを観せるのでしょうか?

 

「アルバート+R・ムーア+ステイヤーズS」という暮れの風物詩

4歳の夏まで中距離路線を使われていたアルバートは、J・モレイラ騎手の「長い距離に向く」という助言に従って、2015年の秋以降は芝2400m以上の距離を走るようになりました。オールカマーへの出走は15年夏の札幌芝2000m(500万下)1着以来となる芝2200以下のレースです。

これまでに上げた重賞3勝はすべて芝3000m以上+R・ムーア騎手の手綱によるもので、「アルバート+R・ムーア+ステイヤーズS」というのがここ2年の暮れの風物詩だっただけに、オールカマー後にメルボルンC(2017年11月7日)に出走するのか、それとも国内で同一重賞3連覇を狙うのかは注目です。アドマイヤラクティ(22着)以来となる日本調教馬によるメルボルンC出走は素晴らしい挑戦ではあるものの、「暮れの風物詩」が観れなくなるというのもどことなく寂しさが募ります。

 

アルバートがオールカマーに出走する意図は?

2年ぶりに芝2200m以下の中距離戦に出走することとなったアルバート。関東の名門・堀宣行調教師は「なぜ?」この馬をオールカマーに出走させるのでしょうか?

 

メルボルンCへの叩き台として

アルバートがオールカマーに出走する理由としてもっとも有力なのは、11月7日(火)に行われるGⅠメルボルンカップに向けての叩き台としたというものです。天皇賞・春からのぶっつけで海外GⅠを制するのはハードルが高く、レース間隔としてもここを叩くのがベストでしょう。芝2400mの京都大賞典も叩き台の1戦としては候補の一つに入っていたのかもしれませんが、200mの距離延長を求めてわざわざ関西圏へ長距離輸送をするのも……。

 

海外遠征はあくまでオールカマーの結果次第

堀宣行調教師としては、アルバートが海外遠征をするかどうかはあくまでオールカマーの結果次第という意向を示していることから、もしここで中山の芝2200mを1着に好走するようなことがあれば、今秋の最大目標を有馬記念に置く「国内専念プラン」へ切り替わる可能性も十分にあります。メルボルンC or 国内専念かを決めかねているのは、それだけこの馬の能力を堀先生が買っているからです。

 

堀宣行厩舎の現在の看板馬はサトノクラウン

ドゥラメンテ、モーリスなど数々の名馬を育てた堀宣行厩舎の現在の看板馬は、宝塚記念と香港ヴァーズの国内外のGⅠを制したサトノクラウンが務めます。

サトノクラウンは今秋、国内専念の意向がすでに発表され、天皇賞・秋→ジャパンカップ→有馬記念のローテーションが有力です。宝塚記念の予想でも書きましたが、この馬はしなやかで伸びのあるストライドで走るため、直線の長い東京競馬場の中距離GⅠは適性としてはずんどば。今の充実度を考えると、気性的な難しささえ出さなければ、天皇賞・秋とジャパンカップはともに楽しみなレースと言えます。

宝塚記念はM・デムーロ騎手の「神がかった」好騎乗によってキタサンブラック以下を打ち負かしたものの、本質的には小回り・内回りコースは適性とずれているので、中山芝2500mの有馬記念は割引です。

 

アルバートは有馬記念を取るために?

アルバートは獲得賞金上、堀宣行厩舎のNO.2に位置します。そのため、厩舎としても「どこかでGⅠを!」と考えているはずで、だからこそのメルボルンCへ出馬登録をしているのでしょう。もし、オールカマーで好走するようなことがあれば、ステイヤーズS3連覇からの有馬記念制覇も描けるだけに、秋の始動戦としてここを選択した堀調教師の意欲を買いたくなりますね。

 

アルバート 6歳牡馬

父:アドマイヤドン

母:フォルクローレ(母父:ダンスインザダーク)

厩舎:堀宣行(美浦)

生産:ノーザンファーム

4歳の秋からは2400m以上のレースに使われるようになり、オープンまで駆け上がりました。3400m以上の重賞を3勝とスタミナに優れた馬で、2015年の日経賞を勝ったアドマイヤデウスと同じアドマイヤドン産駒の活躍馬です。

鋭さで負けたとしてもバテてジリジリと下がることは少ない馬で、5Fからのロングスパート戦になりやすい中山コースはスタミナをふり絞れるアルバートには合っている舞台。

 

血統

種牡馬アドマイヤドンはアルバートとアドマイヤデウスの2頭の重賞勝ち馬を出しています。そして、この2頭は配合も似通っているのが大きな特徴です。アルバートの母母アンデスレディーはLady Angelaを通じてHyperionをクロスし、アドマイヤデウスの母母アドマイヤラピスはHyperionの5・5×5のクロスをもつ繁殖牝馬。

アンデスレディーの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

アドマイヤラピスの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

アドマイヤドンはその母ベガがHyperionの4×5、父母Fall AspenがHyperionの3×4ですから、アルバートもアドマイヤデウスもこの血がギュっと詰まった配合になっています。

アドマイヤドンの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

アルバートもアドマイヤデウスも母父にサンデーサイレンスの血を引くのも同じで、この2頭が2400m以上の芝の重賞を勝っているのは、Hyperionのスタミナとジリジリと粘り強く走れる特徴が全面に出ているからでしょう。古馬になってからもジワジワと成長するHyperionの血から、6歳秋になったアルバートもまだまだ昨年以上の走りができるはずです。5F以上のロングスパート戦になれば、スタミナをふり絞って好走できる配合。

アルバートの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

アドマイヤデウスの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

オールカマーに向けて

今年の天皇賞・春5着以来、約5ヶ月ぶりのレースとなるアルバートですが、もともと休み明けは苦にしませんし、ノーザンファーム生産馬ということもあって仕上がりに大きな不安はありません。前走の天皇賞・春は従来の勝ちタイムを0.9秒更新するレコード決着となり、時計の速い馬場でアドマイヤデウスとアルバートが仲良く4、5着になったのは父アドマイヤドンの「高速芝適性」によるものでしょう。アルバートは2015年の札幌芝2000mを1分59秒台で走っていることから、レース全体の時計が速くなるのはOKのタイプで、上り3Fが極端に速くならなければ問題ナシ。

今の中山は時計が速く、金〜土曜日にかけて関東地方の太平洋側で雨が降ったとしても、オールカマーの行われる24日(日)は晴れの予報のため「良」馬場でレースが行われる可能性が高く、アルバートにとってはロングスパート戦からの上り34秒半ばくらいのレースになるのがベスト。有力馬のステファノスとタンタアレグリアが3〜4コーナーからしっかりと動くタイプの馬なので、全体の時計が速くなったとしても、上りはそこまで速くならないことが想定されます。

今走は内枠をゲットしたので、中団よりも前のインにつけられるようなら、3〜4コーナーから器用にペースを上げての捲り差しに期待できます。石橋脩騎手も堀宣行厩舎の有力馬に多く乗る騎手ですから、この乗り替わりはそれほど不安はありません。アルバートにはメルボルンCへの出走を迷ってしまうような、オールカマーでの快走を期待しています。

 

まとめ

サトノクラウンがジャパンカップを制し、アルバートが有馬記念を制したとしたら、堀先生としてはウハウハ。ネオリアリズムが香港国際競争に回るでしょうから、今秋も関東の名門厩舎として素晴らしいラインナップが揃っています。

アルバートがオールカマーでどのような走りをするのか、今からレースが楽しみです。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。