NHKマイルカップ(2017年)ーー前哨戦から注目馬をピックアップ

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東京競馬場は5月7日のNHKマイルカップから5週連続でGⅠレースが組まれ、もっとも華やかな開催となります。

3歳馬のマイル王を決めるNHKマイルカップ、今年は確たる中心馬が不在で混戦模様。牡馬と牝馬のレベル差が取りざたされた今年の3歳世代らしく、桜花賞から3頭の牝馬が参戦することもあってカオスなレースに。

今回の記事ではNHKマイルカップの主要な前哨戦を取り上げ、その中から注目馬をピックアップします。

 

どの前哨戦を振り返るか?(ローテーションとして)

NHKマイルカップの前哨戦は優先出走権が与えられるNZT(ニュージーランドトロフィー)がメインですが、近年では皐月賞や桜花賞などのGⅠからの参戦も増えています。また、毎日杯やファルコンS、アーリントンC、シンザン記念、共同通信杯など1400〜1800mの重賞から挑戦してくる馬も多く、さまざまなローテーションから好走馬が出ているのもNHKマイルカップの特徴です。

ここでは、皐月賞、桜花賞、NZT、アーリントンC、スプリングSを振り返ります。

 

皐月賞(GⅠ 中山芝2000m)

勝ちタイムが1:57.8のレースレコードになったように、1着アルアイン、2着ペルシアンナイトともに1600〜1800mに実績のあるスピード上位の馬での決着になりました。当日の中山芝は開催最終週としてはかなりの「高速馬場」だったことから、中団より後方でレースを進め、直線外に出した馬にはノーチャンス。

皐月賞からNHKマイルカップに出走を予定している3頭、アウトライアーズ、トラスト、プラチナヴォイスについて簡単に触れておきます。

 

アウトライアーズ

スタートは五分に出たものの外枠から先行各馬が内へ続々と入ってきたため、1角では下げて後方へ。向こう正面から徐々に外へと進路を取り3角過ぎからペースアップをして直線では大外に出しますが……。ひいらぎ賞やスプリングSで見せた捲りの脚が出せずに12着と大敗を喫しました。この高速馬場で外に出してしまうとノーチャンスだったとは言え、まったく伸びなかったのは不満があります。

父のヴィクトワールピサは桜花賞馬のジュエラーや今年のファルコンS勝ちのコウソクストレートなど、外回りや直線の長いコースで重賞馬を出しています。東京に替わって末脚を引き出せることができるのかに注目です。

 

トラスト

大外枠から好スタートを切りますが、ハナを譲らない構えのアダムバローズを先に行かせて2番手でレースを進めます。4角手前で先頭に立ったものの、ぴったりと外に張りついていたクリンチャーに直線の入口で交わされるとずるずると後退しての13着。

一定のスピードを見せはしたレースで、この馬にとっては速いタイムの決着は厳しかったという内容。一線級相手でも先行力を利した粘りを見せているので、スムーズなら東京コースでも十分にチャンスはあるはずです。

 

プラチナヴォイス

スタートを五分に出て、道中は勝ち馬アルアインの直後につけます。3角過ぎから徐々にペースを上げて直線を向いても伸びずばてずの内容で10着。

エンパイアメーカー産駒のこの馬が好走するには全体の時計も速過ぎたという内容でした。ストライドが伸びる馬なので中山→東京替わりはプラスだと思います。スプリングSでも合うトライアーズと差のない競馬をしていることからもチャンスは十分にあるはずです。

 

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桜花賞(GⅠ 阪神芝1600m外回り)

土曜日に降っていた雨も日曜日には上がり、馬場は桜花賞発走の前に稍重に回復しました。単勝1番人気のソウルスターリングが直線で伸びあぐねるなか、好位で流れに乗ったレーヌミノルがぎりぎりまで仕掛けを我慢して直線の半ばから追い出すと、外から追い込んだリスグラシューを抑えて1着。ソウルスターリングが3着に入線し、昨年の阪神JFの1〜3着の順位を入れ替えた結果になりました。

NHKマイルカップに出走を予定しているカラクレナイ、アエロリットともに直線の外から追い込んでそれぞれ4着、5着。ミスエルテは道中は2着馬と同じような位置取りでしたが直線で伸びずに11着と大敗。

 

カラクレナイ

道中は後方から進めて、直線に向いてから追い出すと馬群を割って伸び、最後はリスグラシューと馬体を併せての追い比べで見劣っての4着。直線の半ばまでは「おおっ!」と思わせる伸び脚でしたが、ゴール前でリスグラシューに差し返されてしまいました。

活躍馬レッドチリペッパーの孫で、そこにアグネスタキオン、ローエングリンと掛けられたカラクレナイはストライドで走るパワーマイラー。2走前のフィリーズレビューでは桜花賞馬のレーヌミノルを並ぶ間もなく交わした脚が素晴らしく、外回りの桜花賞を最後まで伸び続けた脚は東京でもと思わせます。

桜花賞は上位馬が中団よりも前でレースを進めた馬たちの決着になったことからも、後方から伸びて最先着を果たしたカラクレナイにとってはやや不利な流れでした。

 

アエロリット

道中はほぼカラクレナイと同じような位置取りで、直線は大外に出すとグイグイとストライドを伸ばしての5着。エンジンがかかってからの伸びは素晴らしく、2走前のクイーンCからもスピードを持続させる脚に長けていることが分かります。

桜花賞は出遅れて後方からのレースになりましたが、本来は素軽い先行力があり追ってしぶといタイプです。クイーンCでは直線早目に抜け出してアドマイヤミヤビと接戦を演じての2着ですが、1分33秒台前半で走破していることからも時計勝負もOK。

 

ミスエルテ

道中はリスグラシューの内で折り合います。直線では目立った反応がなく11着と大敗。

レースを使い込むとテンションが上がり、馬体重を減らしてしまうことから桜花賞は朝日杯FSからの直行が選択されました。調教でも素軽い動きを披露していたことから桜花賞で上位人気に支持されましたが……。

2歳時は抜群の瞬発力で新馬戦→ファンタジーSと連勝して、同じフランケル産駒のソウルスターリング以上の評価も受けた才女。ただ、血統的にクロスがうるさく早熟の可能性も否定できないので取捨が難しいですね。

胴が長くしなやかなストライドで走るので東京コースは適性としては合っていますし、朝日杯FSくらい走れればこのメンバーでも十分に戦える力はありますが……。初の長距離輸送も含めて不安が先立ちます。

 

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NZT(GⅡ 中山芝1600m)

池江寿厩舎のクライムメジャー、フローラルウォーク賞を鮮やかに差し切ったスズカメジャーのダイワメジャー産駒2頭が人気の中心になりました。

レースは、メイソンジュニアとボンセルヴィーソの先行で始まり、馬場がいくらか悪かったとしてもスローの流れ。中団〜後方に控えたダイワメジャー産駒の2頭は上りの脚に限界のあるタイプですから、この流れだと追い込むのが難しく……。

メイソンジュニアとボンセルヴィーソが前々で粘るところを、道中インの好位にいたジョーストリクトリが内から伸びて1着。逃げたメイソンジュニアが2着で、ダイワメジャー産駒のボンセルヴィーソは伸びずバテずの3着という結果に。

 

ジョーストリクトリ

3歳世代のジョーカプチーノ産駒は種付け頭数が少ないなかで、オープン馬が2頭(ジョーストリクトリ、マイネルバールマン)と高い確率で活躍馬を輩出しています。父の産駒はフワリとした先行力としなやかなストライドで走る馬が多く、ジョーストリクトリもそのタイプに当てはまります。ストライドで走る馬なので、東京>中山という適性にも関わらずNZTをインから差したのには脱帽。

もちろん、スローペースで後ろから差す馬はノーチャンスだったことなど展開面を見方に付けられたこと、インからコースロスなくレースを進められたことなど恵まれた面もあったものの、重賞を勝ち切ったのは素晴らしいの一言です。

ただ、ベストは1400mですから、東京のマイルの距離であればやはりスローの流れが希望。ファルコンS(6着)のように時計が速くなるのはマイナスです。

 

ボンセルヴィーソ

中山マイルの大外枠ということもあり、ハナを切ることができなかったNZTでしたが、しぶとく粘っての3着。というよりも、ダイワメジャー産駒らしく鋭い脚がないので、この馬にとっては「もう少しペースが流れれば……」と感じさせる走りでした。

血統構成も走りもメジャーエンブレム(阪神JF、NHKマイルカップ勝ち)に似ているので、「肉を斬らせて骨を断つ」ような他馬に道中で脚を使わせるレースが展開が合っています。もちろん、気性的に逃げなくとも競馬ができますが、スローになるくらいなら自らがペースメイクをした方が勝ち味はあると思います。先行して粘るレースができるので、重賞戦線でも好走しますが、勝ち味に遅いのが難点。

ここ2戦は噛み合ないレースでしたから、主戦の松山騎手もNHKマイルカップでは思い切った騎乗をするはずです。

 

タイムトリップ

大外枠+出負けして後方からの競馬に。スローペースを折り合って、3角過ぎから少しずつペースを上げて捲って直線は大外に出します。このペースでは前がなかな止まらず、追い上げての5着が精一杯という内容。

ピッチ走法なので、俊敏に加速できるのがこの馬の最大の長所。適性としては中山>東京ですから、直線の長いコースであればスローが希望です。2走前、東京のクロッカスS(OP)を鮮やかに差し切りましたが、これは「高速馬場+スロー」とピッチ走法が好走できる条件が揃ったレース。NHKマイルカップでもスローからの上り勝負であればチャンスは十分にあります。NHKマイルの出走予定馬を見ても、前はかなり薄いメンバーになりそうですし……。

 

ナイトバナレット

最内枠からのスタートで行き脚がつかずに道中はほぼ最後方からの競馬に。終始内を回って直線でも外には出さずに追われますが……伸びずの10着。ディープブリランテ産駒らしくしなやかなストライドで走る馬で、もう少しのびのびと外に出したほうがよかったのかもしれません。

3走前のジュニアCを大外から豪快に捲り追い込んだように、能力は確かなものがあるのですが、引っかかりやすい気性など難しい面も残る馬。

ディープブリランテ産駒ですから、本来はフワリと先行して押し切る競馬の方が合っているようにも思いますが……。ファルコンS、NZTの連続凡走で人気も急落するでしょう。ただ、東京コースに替わるのはプラスで、きっかけを掴めればガラリ一変があっても驚けません。

 

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アーリントンC(GⅢ 阪神芝1600m外回り)

最内枠からカロスが注文をつけてハナに立ち、レヴァンテライオンがそれをぴったりとマークする展開に。人気のペルシアンナイトは後方から外目をスムーズに追走します。折り合いがつかないミラアイトーンが3〜4角から徐々に進出したことで、息の入りにくい流れになりました。

直線では、内を捌いて馬群を割ったディバインコードが伸びるところを大外から1頭だけエンジンが違うという走りでペルシアンナイトが並ぶ間もなく交わして先頭に立つとそのまま押し切りました。2着には大外からレッドアンシェル、3着にはディバインコードが入り、人気のキョウヘイは後方から伸びずの7着。

 

レッドアンシェル

朝日杯FS8着からの休み明け初戦でしたが、気負うところのない走り。大外枠からのスタートで自然と後方へ下げると、道中はペルシアンナイトを見る形でレースを進めます。4角から少しずつペースを上げて、直線はペルシアンナイトの外へ出して伸びてきます。1着馬からは離されましたが、3着のディバインコードを交わしたのはさすがの脚力でした。

父マンハッタンカフェ×母父Storm Catという血統で前駆が勝ったピッチ走法。坂のある阪神はどんと来いのタイプですが、外回りなどの直線の長いコースだと脚を持続させるのが難しいタイプです。

アーリントンCから間隔が空きますが気性的には休み明けも苦にしないタイプ。東京であればスローが希望で、ピッチ走法が活きる展開になればチャンスもあります。

 

ディバインコード

好スタートから、鞍上がなだめてインの5番手あたりで折り合います。直線では馬群を割って伸びて来る味のある競馬を見せますが、ペルシアンナイトとは力の差があったという内容の3着。

京王杯2歳ステークス3着(勝馬はモンドキャンノ)、前走の橘Sの快勝を見てもベストは1400mではないかと思います。折り合いの難しさはつきまといますが、1600mも守備範囲。

ディバインコードの母ツーデイズノーチスは好繁殖牝馬で半姉のワンスインナムーンもオープンで活躍しています。ただし、GⅠ級の大物が出せるのかは?で、ディバインコードも力を出し切ったアーリントンCでペルシアンナイトに完敗……。東京コースのGⅠで好走すれど……というタイプに見えます。

 

ジョーストリクトリ

五分のスタートから中団へ下げ、道中はディバインコードの直後の位置で進めます。直線では進路が取り辛いシーンもありましたが、しぶとくジリジリと伸びての5着。

ストライド走法ですから阪神の外回りの舞台は合っているものの、ちょっと伸びあぐねたのはペースが締まった流れだとマイルはいくらか長いのかな、という印象。

 

キョウヘイ

スタートから自然と最後方へ下げると、道中もスムーズに折り合います。4角から直線で大外に出して追いますが伸びずの7着。

リーチザクラウン産駒らしいストライドで走るので外回りも合うはずですが、道悪だったシンザン記念のような差し切りはできませんでした。完敗に近い内容で、レースとしてはNHKマイルカップへつながるとは……。

 

スプリングS(GⅡ 中山芝1800m)

内枠を利して逃げたサウンドテーブルをオールザゴーが突つき、1000mの通過が60.2秒のミドルペースになりました。プラチナヴォイスが直線の入口で先頭に立つような捲りを打ったのに合わせて、ウインブライト、アウトライアーズも仕掛けて、直線はこの3頭の叩き合い。1着は大外を捲ったウインブライト、2着は馬群を捌いたアウトライアーズ、3着は直線で内ラチ一杯を走って粘ったプラチナヴォイス。モンドキャンノは終始気負った走りで直線伸びずの10着、エトルディーニュは先行して粘れずの6着に敗れました。

 

アウトライアーズ

道中は後方のインで折り合いもスムーズに追走します。プラチナヴォイスの仕掛けに合わせて動いたウインブライトを見る形で徐々に外目にもち出しながらコーナーを回り、直線では勝ち馬を追い上げますが届かずの2着。

ヴィクトワールピサ産駒としては機動力も備えているので、小回りにも十分に対応できます。皐月賞に向けて馬群から抜け出すようなレースを試したトライアルらしい走りでした。スプリングSの内容を見ると、コーナーで加速する力に秀でているように見え、本質的に東京コースでパフォーマンスが上がるのかは「?」なものの、血統的には東京コースはOK。

 

プラチナヴォイス

和田騎手らしい早目の捲りで直線先頭。直線で内へ大きくささってしまったロスが痛かったものの、皐月賞への優先出走権をしっかりと取る走りを見せました。ストライドが伸びるので、本質的には小回りよりも直線の長いコースに向きます。

 

エトルディーニュ

五分のスタートから先行すると、4角でプラチナヴォイスの仕掛けに合わせてペースを上げます。直線では捲った上位3頭に交わされますが、伸びずばてずのいつものエトルディーニュらしいレースで6着。

とにかくしぶとい脚が身上の馬で、コース、距離、メンバーを問わずきっちりと自身のもてる能力だけは走る馬です。素軽い先行力があるので、強敵相手でも接戦にもちこめるのが強味。

スローであれば直線の長い東京コースでもしぶとい脚を見せられるはずで、問題は極端に上りが速くなった時や高速馬場になった場合には割引。

 

モンドキャンノ

好スタートから外目の3、4番手のあたりで折り合いに専念しますが、初めての1800m戦ということもあって、向こう正面でも引っかかり気味の追走。道中でスタミナをロスした分もあって4角では手応えがなくなり、直線でズルズルと後退しての10着。

初めからNHKマイルカップへ出走することが決まっていたなかでのスプリングS出走ですから、1800mの距離をこなせなかったことはそれほど問題ではありません。気負った走りに終始したので、これがガス抜きになって折り合えれば、東京コースで自慢の末脚が前回になるシーンも十分に考えられます。

血統的には1400mがベストですが、体型的にはマイルも十分にこなせる範囲です。

 

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まとめ

今年のNHKマイルカップは出走メンバーを見渡しても、前に行く馬が薄いのが特徴です。人気の上位に押されそうな馬たちがこぞって差し・追い込みというのは……。

スロー〜ややスローの流れであれば怖いのは一瞬のピッチで抜け出せる馬で、そうなるとーー

 

タイムトリップ

レッドアンシェル

 

もし、ペースがそこそこ流れるとすれば、先行できるボンセルヴィーソアエロリットの持続力型が力を発揮するレースになります。

いずれにしても、どの馬からでも狙いが立つ混戦のNHKマイルカップになりそうですから、今から「ああでもないこうでもない」とレースを予想するのが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。