JRAは現在、6週間におよぶ新潟・小倉・札幌の3場所開催。関東圏は「日本で唯一の直線1000m」のレースが行われる新潟競馬場がメインとなり、JRA最長を誇るホームストレッチ(芝外回りコースは658.7m)でのレースは迫力満点です。開幕3週目の新潟は金曜日の時点で芝が「良」、ダートが「稍重」のコンディション。芝は先週に引き続き速い時計の決着になるのか、土曜日のレースに注目です。
今回の記事では8月12日(土)、新潟競馬場で行われる糸魚川特別、三面川特別、新潟日報賞の特別3レースをドーンと予想していきます。
8月12日(土) 新潟競馬場の特別戦
8月12日(土)、新潟競馬場の特別戦は芝のレースが3鞍組まれました。メインの新潟日報賞(1600万下 芝内回り1400m)はフルゲート18頭が揃ったハンデ戦とあって、上位の人気も割れるレースとなりそうです。
9R 糸魚川特別 3歳以上500万下 芝2000m
10R 三面川特別 3歳以上1000万下 芝1800m 牝馬限定
11R 新潟日報賞 3歳以上1600万下 芝1400m内回り ハンデ
土曜日はM・デムーロ騎手が新潟競馬場に登場。今週はイギリスのアスコット競馬場で開催されるシャーガーカップに戸崎騎手が出場するとあって、新潟競馬場はミルコの独壇場になる可能性も……。サンマルティンに騎乗するため小倉に遠征した戸崎騎手に替わって、8月7日(日)の新潟競馬場ではC・ルメール騎手が(4 - 3 - 1 - 3)という好成績を上げていました。ミルコに印が集中する土曜日になりそうでイヤな予感がしますね。
それでは、1戦ずつレースを見ていきましょう。
9R 糸魚川特別 3歳以上500万下 芝2000m
「こ、これは…」と開いた口がふさがらないほどの混戦。「出走する11頭のすべてに勝つチャンスがあるのでは?」と思えるほどです。上位の人気は降級馬のミュートロギア。前走で同じ新潟の芝2000mを2着していることから、前日の段階では1番人気に支持されています。M・デムーロ騎手のオーダードリブンは現在(8月11日21:00時点)は2番人気ですが、レース前にはミュートロギアと入れ替わるかもしれませんね。
加藤征弘厩舎+M・デムーロ騎手のオーダードリブン
加藤征弘厩舎はC・ルメール騎手とのコンビで好成績を上げています。そのため、出走表を見たときは「えっ!?」と驚きました。ちなみに、2016年1月5日〜17年8月6日までの期間で、加藤征厩舎+M・デムーロ騎手のコンビは(1 - 0 - 0 - 2)の成績。オーダードリブンが好走するかどうかは別として、イレギュラーな組み合わせであることは間違いありません。この馬の取捨は悩ましいですね……。
逃げるのはクイックモーション
逃げるのは4歳牝馬のクイックモーション。前走は東京の芝2000mをスローで逃げ、勝ち馬のブラックプラチナムに3馬身差を付けられたものの、しっかりと粘って2着を確保しました。そのブラックプラチナムはオープン級の能力をもつ馬ですから、この馬に完敗を喫したのは仕方のないところで、福島をスキップしてふたたび左回り+直線の長い新潟に照準を合わせたローテには好感がもてます。
木村哲也厩舎はゼーヴィントで七夕賞を勝つまで、調教師リーディングが100位台と絶不調。ところが、それ以降の成績は(6 - 1 - 1 - 8)と勝ち星を量産しています。牝馬にあたりの強い内田騎手が乗るというのは割引も、前走と同じようにマイペースにもち込めるメンバーだけに、ここでも期待したいですね。
◎クイックモーション 4歳牝馬
父:ディープインパクト
母:クイックリトルミス(母父:Freud)
厩舎:木村哲也(美浦)
母クイックリトルミスはFreud(Storm Cat直仔)×Unbridledという血統ですから、ディープインパクトと相性の良い種牡馬ばかりが揃っています。大きなストライドで走るので先行馬ながら新潟の外回りコースはベストの舞台。前走は高速馬場だったとは言え、2000mを1分59秒台で走ったように時計の速い決着にも対応できます。
不安要素は牝馬に乗る内田騎手くらいで、このメンバーであれば先手をとってからの逃げ切りに期待したいですね。
2着候補は3頭
クイックモーションの逃げであれば極端なスローにはならないと想定して、ズドーンと長く脚を使える馬をピックアップします。
チェスナットコート 3歳牡馬
前走は古馬と初対戦+昇級初戦ながらしっかりと脚を使って2着に入線。前走から2ヶ月ほど間隔は空きますが、リーディング上位の矢作厩舎ですから仕上げに不安はありません。骨っぽい相手のいない500万下とあって「あっさり」も期待できます。ハーツクライ産駒は新潟競馬場だと上りが速くなったときに取りこぼしがあることで、もしスローになったときに頭まで突き抜けられないことも……。
オーダードリブン 4歳牡馬
M・デムーロ騎手は新潟コースと好相性。ぎゅんと加速する乗り方が野芝で直線の長い新潟の外回りコースと合っています。戸崎騎手が不在とあって、ケアしないわけにはいかず……。
ヒカリエリントン 7歳牡馬
前走5着は今回1番人気が予想されるミュートロギアから0.4差しか負けていません。ダイワメジャー産駒らしくビュンとキレる脚に欠けるため、クイックモーションの引っ張る流れはこの馬に向くはずです。前走から引き続き岩田騎手が騎乗するとあって、インからスルスルと脚を伸ばせれば。
買い目
クイーックモーション1着付けの馬単で。
馬単
8 → 10. 6. 1
10R 三面川特別 3歳以上1000万下 芝1800m 牝馬限定
降級馬のレッドアヴァンセにM・デムーロ騎手が乗り、現時点では単勝2倍台の1番人気の支持を受けています。このレースは牝馬限定戦ながら楽しみな馬が揃いましたね。
レッドアヴァンセ 4歳牝馬
父:ディープインパクト
母:エリモピクシー(母父:ダンシングブレーヴ)
厩舎:音無秀孝(栗東)
母エリモピクシーはリディル、クラレント、レッドアリオン、サトノルパンと4頭の重賞馬を産んだ名繁殖牝馬。父が替わってもオープン級の仔を輩出する母の遺伝力は相当なもので、レッドアヴァンセも重賞制覇の期待がかかります。
エリモピクシーの仔は気難しく揉まれ弱い仔が多く、外目をスムーズに先行したときに強さを発揮しています。この傾向はレッドアヴァンセにも当てはまり、揉まれずに走ることができるのかが最大のポイント。今回は内目の枠に入ったことからM・デムーロ騎手の手綱さばきに注目です。
◎エマノン 5歳牝馬
父:ハーツクライ
母:ピラミマ(母父:Unbridled's Song)
厩舎:平田修(栗東)
桜花賞で大逃げを打ったカワキタエンカが出走するとあって、そこまでペースも緩まないだろうと考えてハーツクライ産駒のエマノンに期待します。母ピラミマはバンドワゴン、スワーヴリチャードといった活躍馬を出している好繁殖牝馬。
エマノンは直線に向いて5番手以内にいれば(2 - 0 - 0 - 1)といかにもハーツクライ産駒らしい長く良い脚が使える典型的なタイプです。全弟のスワーヴリチャードと同じようなストライド走法で直線の長いコースはずんどばの舞台。前走はサンマルティンの勝ったむらさき賞で6着と掲示板を外しましたが、直線で追い辛くなるシーンがあったことも響いてのもので、降級戦のここなら負けられません。1番人気のレッドアヴァンセとこれだけ人気に差があるのなら、この馬に◎を。
その他の有力馬について
3歳牝馬のカワキタエンカは内田騎手がどのようなペースで逃げるのかがポイント。しっかりとペースが作れれば簡単には止まらないでしょう。ただ、先行したエマノンが早目先頭に立つような競馬をするなら苦しくなります。
ダイワドレッサーはネオユニヴァース産駒らしい器用さが売りの牝馬で、外回り<内回り・小回りという適性。新潟の外回りでバキューンとキレるのかは「?」が付くので割引。
レッドアヴァンセは揉まれなければ好走の目もありますが、音無先生だと「差し」の競馬を指示しそうなので、内枠に入った今回はレースの組み立てが難しくなりました。
2着候補として
上位人気の馬たちに不安な要素があるので、2着候補には人気薄の馬をピックアップします。
コーラルプリンセス 3歳牝馬
GⅢフェアリーSでは3番人気の支持を受けた馬。2歳〜3歳春まではアエロリット、リスグラシューといった素質馬相手の重賞でソコソコの競馬をしており、クロフネ産駒らしい重厚なストライドは外回りのコースに向いています。ぴゅっとキレる脚がないので、カワキタエンカがペースを緩めずに逃げるのであればチャンスも十分にでてきます。好調な新潟マイスターの吉田隼人騎手というのも魅力。
ラヴアンドドラゴン 3歳牝馬
ダービー馬ディープブリランテの全妹という良血馬。血統的な魅力というよりは藤原英昭調教師+岩田騎手という組み合わせが魅力の1頭。藤原英厩舎の3着内率の高さ(0.446)を考えると、ソコソコ好走してしまいそうで……。あまりにも人気になるようであればスルーします。
買い目
エマノンの単勝と馬単を。
単勝
9
馬単
9 → 7. 6
11R 新潟日報賞 3歳以上1600万下 芝1400m内回り ハンデ
1番人気が3歳牝馬のラプソディーアで友道厩舎+吉田豊騎手という組み合わせ……。イヤ、もう、これはムリと言いたくなります。だって、吉田豊騎手は夏の福島開催から不調が……。
▼吉田豊騎手の7月1日〜の特別戦での成績
日付 | 開催 | 馬 名 | 着順 | 人気 | クラス | コース |
8/6 | 新潟 | サルサディオーネ | 2 | 12 | 3歳GⅢ | ダ1800m |
8/6 | 新潟 | ジュンファイトクン | 5 | 7 | 500万下 | 芝1400m |
8/5 | 新潟 | マハロマナ | 14 | 10 | 1600万下 | ダ1200m |
8/5 | 福島 | シャインカメリア | 2 | 5 | 2歳OP | 芝1400m |
7/30 | 新潟 | ワキノハガクレ | 8 | 5 | 1000万下 | ダ1200m |
7/30 | 新潟 | メモリーミネルバ | 4 | 11 | 500万下 | 芝1400m |
7/30 | 新潟 | タガノカムイ | 8 | 10 | 1000万下 | 芝1600m |
7/23 | 福島 | ノワールギャルソン | 7 | 12 | 1000万下 | ダ1700m |
7/23 | 福島 | ヨシノザクラ | 2 | 2 | 500万下 | 芝1800m |
7/22 | 福島 | ダイトウキョウ | 7 | 2 | 1000万下 | 芝1200m |
7/22 | 福島 | アポロナイスジャブ | 4 | 7 | 500万下 | ダ1700m |
7/16 | 函館 | ツクバアズマオー | 10 | 6 | GⅢ | 芝2000m |
7/16 | 函館 | エクストラペトル | 8 | 13 | 1000万下 | ダ1700m |
7/15 | 福島 | クロフネビームス | 5 | 6 | 1600万下 | ダ1700m |
7/15 | 福島 | サブライムカイザー | 3 | 3 | 1000万下 | 芝2600m |
7/9 | 福島 | バーディーイーグル | 10 | 10 | GⅢ | 芝2000m |
7/9 | 福島 | タニセンジャッキー | 7 | 8 | 1000万下 | ダ1700m |
7/9 | 福島 | ゴールデンハープ | 5 | 10 | 500万下 | 芝2000m |
7/8 | 福島 | カカドゥ | 5 | 4 | 1000万下 | 芝2000m |
7/8 | 福島 | マコトギンスバーグ | 5 | 5 | 500万下 | 芝2600m |
7/2 | 福島 | ニシノアップルパイ | 12 | 4 | GⅢ | 芝1800m |
7/2 | 福島 | セイウングロリアス | 3 | 5 | 500万下 | 芝1800m |
7/1 | 福島 | ニシノラッシュ | 13 | 8 | 1600万下 | 芝1200m |
7/1 | 福島 | アルファアリエス | 11 | 9 | 1000万下 | ダ1700m |
7/1 | 福島 | キークラッカー | 5 | 3 | 500万下 | 芝2000m |
先週こそ、GⅢレパードSをサルサディオーネで2着、2歳OPのダリア賞をシャインカメリアで2着と復調気配を見せましたが、世代限定戦+逃げ馬の恩恵を受けたことは確かで、ここで1番人気になるのはさすがに……。
最内にアポロノシンザンという逃げ馬がいるので、これをどのようにさばくのかは吉田豊騎手の腕の見せ所です。このレースで勝ち切るようであれば、復調なったとみてOKでしょう。今回は吉田豊騎手の調子をはかる上でのリトマス試験紙となる1戦。
◎ルグランパントル 5歳騸馬
父:マツリダゴッホ
母:ザッツザウェイ(母父:フサイチコンコルド)
厩舎:栗田博憲(美浦)
1600万下に昇級したここ2戦は11着、9着と大きく負けていますが、着差は1秒以内に留めています。小回り・内回りをフワリと先行・捲りで勝負するタイプの馬で、新潟の内回りコースはベストの舞台。逃げ・先行馬が揃った今回は、柴田善先生のソフトな捲り(ワンテンポ、ツーテンポ遅れた捲り)がグイっとはまりそうで、インコースがガラリと空けば突っ込めるのでは……と期待して。
混戦だけに
ルグランパントルの相手を絞るのは難しいメンバーです。ピンストライプ、ビップライブリー、アポロノシンザンはどれも好走できるだけの下地は十分ですが、いずれもワンパンチ足りず……。人気のないマリオーロあたりまで突っ込んできてもおかしくない組み合わせですから悩ましいですね。相手はパドックの気配を見てからになりそうなので、とりあえずルグランパントルの単勝で。
買い目
ルグランパントルの単勝。
単勝
6
まとめ
8月12日(土)の新潟競馬場はM・デムーロ騎手の参戦に加えて、混戦模様の芝の特別レースが3鞍組まれ、馬券的にも楽しみな1日になりますね。これで当たれば上々なのですが……。皆様にとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。