福島競馬場の開幕を告げる重賞「ラジオNIKKEI賞」は3歳のハンデ戦として行われます。今年は前走OP競走の白百合Sを快勝したサトノクロニクル、GⅢフェアリーS→OPアネモネSを連勝したライジングリーズンが人気の中心。この2頭はOP競走での実績をもつだけに、重いハンデを背負うことになります。
昨年はハンデ頭57kgのブラックスピネルが6着に敗退するなど、実績馬であっても掲示板を外してしまうことのあり、格下の馬でも好走するチャンスは十分にあるレースです。
新馬→早苗賞(3歳500万下)を連勝したセダブリランテス(3歳牡馬)は、昨年のラジオNIKKEI賞を勝ったゼーヴィントと同じパシフィックプリンセス牝系。日本の競馬において発展を遂げ続けているこの名門牝系出身のセダブリランテスが、若手の石川騎手を背に重賞でどのような走りを見れるのでしょうか?
今回の記事では、セダブリランテスがラジオNIKKEI賞で好走することができるのかを展望します。
セダブリランテス 3歳牡馬
父:ディープブリランテ
母:シルクユニバーサル(母父:ブライアンズタイム)
厩舎:手塚貴久(美浦)
セダブリランテスはここまで2戦2勝の成績。中山ダート1800mの新馬戦でデビュー勝ちをしたものの、骨折により休養に入ります。新潟芝1800mの早苗賞(3歳500万下)で5ヶ月ぶりに戦列に復帰すると、初芝+休み明けをあっさりと克服しての快勝。3連勝を目指してラジオNIKKEI賞へ向かいます。
血統
母シルクユニバーサルは日本の競馬で広く枝葉を伸ばしているパシフィックプリンセス牝系の出身。3冠馬ナリタブライアン、その兄でGⅠ3勝のビワハヤヒデ、2冠牝馬ファレノプシス、ダービー馬キズナを出した牝系は現代においても活力を保っています。
セダブリランテスの半兄モンドインテロ(父ディープインパクト)は6勝を上げている現オープン馬。父がディープブリランテに替わっても、パワーとスタミナに富む重厚な走りは兄に通じるものがあり、瞬発力勝負よりも時計のかかるレースに向くタイプです。
ディープインパクト×ブライアンズタイムの配合からは昨年の皐月賞馬ディーマジェスティ、ラジオNIKKEI賞勝ち馬のゼーヴィントなど内回り・小回りを捲るスタミナとパワーに優れた馬が出ています。祖父がディープインパクト×母父ブライアンズタイムのセダブリランテスは、ゼーヴィントと同じパシフィックプリンセス牝系出身+相似の血統構成。馬のスケールや能力は別としても父母を通して伝わっている大まかな特徴はモンドインテロやゼーヴィントと同じだと考えられます。
2戦2勝の内容は?
5ヶ月の休養を挟みながらもダート→芝と2連勝したのは確かな能力があるからこそです。この2戦のレース内容がどのようなものだったのか、振り返ってみましょう。
新馬戦 中山ダート1800m
デビューは中山ダート1800m戦。まずまずのスタートから内田騎手が促して、外目の4、5番手を追走します。1000m通過が1分5秒5のスロー、セダブリランテスは3〜4コーナーで前から少し離される行きっぷりの悪さで、ズブさが目立ちました。
直線に入ってから粘りこみを図るエポックメーカーとの差は大きく開いており、「ちょっと届かないかな」という脚色。ところが、直線の半ばからエンジンがかかったのかグングンと前との差を詰めての差し切り勝ち。
ディープブリランテ×ブライアンズタイムらしく、いかにもパワーが優ったキレない馬という印象でした。
早苗賞 3歳500万下 新潟1800m
5ヶ月の休養明けを挟んでのレース。好スタートからマイネルエパティカとフィアーノロマーノを行かせて4番手の位置を取ります。初芝とは思えないほどの素軽い走り。
直線に向いても抜群の手応えでポジションを押し上げ、残り300mから追い出すといくらか右にササッたものの危なげなく押し切り勝ち。ゴール前の余力も十分で休み明けとしては満点の内容でした。
ラジオNIKKEI賞に向けて
ダート、芝と全く異なる条件を走り、休み明けの2戦目でパフォーマンスを上げてきたのは好印象です。
コース適性
小回り福島の1800mはパワーで捲るセダブリランテスにとってプラスのコース。距離はもう少し長い方がベターでしょうか。
2戦目の芝では素軽い先行力を見せていたように器用さもあるタイプ。開幕週の福島で時計が速くなるようだと苦しいですが、ペースが流れて上りのかかる展開になればOK。
少頭数は歓迎
今年のラジオNIKKEI賞はフルゲートを割る頭数で行われるため、レース経験の少ないセダブリランテスにとっては大きなプラス。
不安点は3つ
セダブリランテスの不安点は3つあります。
1. 骨折休養明けを叩いた反動
ラジオNIKKEI賞は5ヶ月の骨折休養明けを叩いて2戦目となります。気になるのは初芝だ好走した反動。前走から1ヶ月以上の間隔を空け、その間はリフレッシュ放牧に出されていることから、体調面と精神面のケアがなされているのかはパドックの気配に注目したいですね。
2. ササり癖
前走は早苗賞は左回りの影響もあったのか、直線で右へササる仕草が見られました。今回は右回りに替わり、この癖がレースに悪影響を与えなければ……。
3. ハイペースへの対応
今回はニシノアップルアイ、ウインガナドルとスピードタイプの逃げ・先行馬が揃い、道中のペースが速くなることが予想されます。
セダブリランテスの走ったここ2戦とは異なるペースになる可能性が高く、スタミナタイプのこの馬にとって追走で脚を使わされてしまうと苦しい展開に。
まとめ
近親のゼーヴィント、半兄のモンドインテロを見ても、セダブリランテスにとって福島は適性として合っているコースですから、石川騎手がタイミングよく捲りを打てればチャンスも十分です。
パシフィックプリンセス牝系出身の期待馬がここを秋への足掛かりとすることができるのか?
注目の1戦になります。
以上、お読みいただきありがとうございました。