牡馬クラシックの1冠目GⅠ皐月賞は中山開催の最終週に行われます。春開催の中山は内側の芝の傷みが目立つコンディションがデフォルトでしたが、'14年の路盤改修によって排水性(水はけのよさ)が向上し、馬場が荒れにくくなりました。
路盤改修後に行われた'15と'16年の皐月賞の勝ちタイムを見ても、ペースに左右されることなく(*)1:58.0前後の速い時計になっています。
*Hペースになると全体の時計は速く、スローだと遅くなるのが一般的です。
先週の重馬場からガラリ一変の中山芝
先週の中山は土日ともに終日雨が降ったなかでレースが行われたため、日曜日の芝は時計のかかる重馬場になりました。4月9日の中山の芝レースは5鞍ありましたが、上りのかかる馬場だったことも影響し、コースや位置取りがそのまま反映される結果に。その5鞍の勝ちタイムと上り3Fを見てみるとーー
4R 3歳未勝利 芝2000m
勝ちタイム:2:05.8
レース上り:37.6
逃げ馬:エミットライト1着(5人気)
5R 3歳未勝利 芝1600m
勝ちタイム:1:39.5
レース上り:37.3
逃げ馬:タックボーイ2着(5人気)
8R 4歳以上500万下 芝1600m
勝ちタイム:1:37.3
レース上り:38.2
逃げ馬:ヴィータファン3着(12人気)
9R デイジー賞 3歳以上500万下 芝1800m
勝ちタイム:1:53.6
レース上り:37.1
逃げ馬:クイントゥープル2着(11人気)
10R 隅田川特別 4歳以上1000万下 芝1600m
勝ちタイム:1:35.9
レース上り:36.6
逃げ馬:ハッチャンハッピー7着(13人気)
上りがかかることから逃げ先行馬が有利で、中団から差すとしても3〜4角でポジションを押し上げていかないと好走できませんでした。
ところが中山の芝が高速馬場に!?
排水性を向上させるために行われた路盤改修の効果が出ているのか、先週の重馬場もなんのそので4月15日(土)の中山は打って変わっての高速馬場へと変化しました。レースの勝ちタイムと上りを見てみるとーー
4R 3歳未勝利 芝2000m
勝ちタイム:2:00.4
レース上り:34.5
5R 3歳500万下 芝1200m
勝ちタイム:1:08.6
レース上り:34.5
8R 4歳以上1000万下 芝1200m
勝ちタイム:1:08.6
レース上り:33.8
9R 山藤賞 3歳500万下 芝1800m
勝ちタイム:1:48.9
レース上り:34.1
週中も降雨があり、中山の芝がここまでガラリ一変とは…GⅠ皐月賞に向けてJRAの造園課が高速馬場を作ってきたのではないかと疑ってしまうほどの変わりぶり。上りの時計も速いことから、これは「ディープインパクト産駒馬場」なのではないか? むしろ、ファンディーナ用の馬場を作ってきたのか? などと妄想が膨らみます。皐月賞を予想する上でも時計勝負になることを頭に入れておかなければなりません。
芝の内と外のどちらが伸びる?
中山の芝は内ラチ沿いがややはげていて、馬のキックバックで土埃が上がっていました。直線でインに進路を取る騎手も少なく、ラチから4頭分ほど外の芝がもっとも伸びるコンディション。時計が速いこともあって、大外は見た目に馬場がよさそうでもほとんど伸びて来る馬が見当たりませんでした。
4角手前からスピードに乗せて、直線では馬場の真ん中よりも若干内側がもっとも伸びるコースになります。皐月賞でもここを通れる馬が有利になりそうです。
皐月賞に出走するディープインパクト産駒
2017年の皐月賞に出走する18頭のうち、ディープインパクト産駒は4頭。このなかで時計勝負と上りの速さに対応でき、3〜4角から捲れる馬はいるのでしょうか?
4頭のディープインパクト産駒
確定した枠順の内から順番に挙げると、ディープインパクト産駒はカデナ、ファンディーナ、アルアイン、サトノアレスの4頭がゲートイン!
上り3Fの記録が速い順に並び替える(良馬場に限定して平均値をとる)とーー
1位:カデナ 上り平均33.86
2位:ファンディーナ 34.06
3位:サトノアレス 34.46
4位:アルアイン 34.65
(小数点3位以下は切り捨て)
1位は平均が34秒台を切っているカデナ。ただ、カデナはスローの上り勝負のレースばかりだったことからも平均的にペースが流れる皐月賞で鋭い脚が使えるかは「?」がつきます。
上り最速はファンディーナがつばき賞で記録した33.0。中山芝1800mで行われたフラワーCの上り34.9は手綱を緩めただけの仕掛けでマークしたもので、時計はもう少し詰められるはずです。
サトノアレス、アルアインともにそこそこペースが流れて記録した上りですから、平均値が34秒台であればディープインパクト産駒らしい斬れもあることが分かります。
予想
JRAが牝馬ファンディーナの斬れを活かせるような高速馬場を作ったと仮定して予想します。
クラシックは伝統のあるレースで、トライアルなどのレース体系もほぼ変わりません。もちろん、血統や育成技術、外厩制度などトレンドの変化はありますが、これまで培ってきた伝統は大きく変わらないのがGⅠクラシック。そのため、いくつかのファクターから好走の可能性がある馬を探します。
生産者と厩舎
生産者にとってはダービーが1年間の節目。それ以降は新たに2歳馬がデビューするため、世代の入れ替わりが起こります。そのため、皐月賞やダービーという春のクラシックはGⅠのなかでもより特別な舞台ですから、力の入り方も違うのです。
過去4年の皐月賞の結果を見ても、社台系ファーム生産の馬が複数頭1〜3着内に好走しています。
'16年
2着 マカヒキ:ノーザンファーム 友道厩舎
3着 サトノダイヤモンド:ノーザンファーム 池江寿厩舎
'15年
1着 ドゥラメンテ:ノーザンファーム 堀厩舎
2着 リアルスティール:ノーザンファーム 矢作厩舎
'14年
1着 イスラボニータ:社台コーポ白老ファーム 栗田厩舎
2着 トゥザワールド:ノーザンファーム 池江寿厩舎
'13年
1着 ロゴタイプ:社台ファーム 田中剛厩舎
2着 エピファネイア:ノーザンファーム 角居厩舎
3着 コディーノ:ノーザンファーム 藤沢和厩舎
社台系ファームは、社台ファーム、社台コーポ白老ファーム、ノーザンファーム、追分ファームなどが挙げられ、ここ数年はノーザンファーム生産馬の連対がデフォルトになっています。社台系の馬を多く手掛ける関西・関東の名門厩舎が活躍するのも特徴です。
2016年皐月賞出走馬のなかで社台系ファームの馬は?
2016年の皐月賞出走馬のなかで、社台系ファーム生産馬は9頭。最大勢力はノーザンファームの6頭で、出走馬の3分の1を占めるという大攻勢です。
ノーザンファーム生産馬
スワーヴリチャード 庄野厩舎
レイデオロ 藤沢和厩舎
アウトライアーズ 小島茂厩舎
ダンビュライト 音無厩舎
アルアイン 池江寿厩舎
キングズラッシュ 久保田厩舎
ノーザンファームと好相性なのは池江寿厩舎で、今年もこの組み合わせからはアルアインが皐月賞にゲートイン。生産者と厩舎との関係から好走する可能性の高い馬をピックアップするとすれば、アルアイン、レイデオロ、そしてぎりぎりスワーヴリチャードでしょうか。ノーザンファーム生産馬の選択を間違えなければほぼ当たるのが皐月賞です。
社台ファーム
アメリカズカップ 音無厩舎
サトノアレス 藤沢和厩舎
老舗の社台ファームからは2頭が出走。クラシックで勝てないと言われる藤沢厩舎ですが、2、3着は多くありますし、2歳牡馬チャンピオンのサトノアレスには注目です。
追分ファーム
ペルシアンナイト 池江寿厩舎
社台グループの創設者・吉田善哉の三男、吉田晴哉氏が代表を務めるのが追分ファーム。ペルシアンナイトの馬主であるGⅠレーシングは吉田晴哉氏の長男が代表を務めています。池江寿厩舎というのも不気味ですね。
生産者と厩舎からのピックアップ馬
生産者と厩舎との相性からピックアップするなら、以下の5頭。ランク付けをすると以下の通りです。
A:アルアイン
A:レイデオロ
B:スワーヴリチャード
B:サトノアレス
C:ペルシアンナイト
スワーヴリチャードはどうしても庄野厩舎というのが引っかかるところで、ノーザンファーム生産馬ですから外厩をきちんと使えるという部分の評価でBにしました。ただ、どちらかと言えばCに近いB評価。
ローテーション
前述しましたが、クラシックはトライアル・レースの番組体系がしっかりと出来上がっているので、そこから外れた馬はどうしても厳しくなります。皐月賞で好走できるのは前走が共同通信杯、きさらぎ賞、弥生賞、スプリングS、若葉Sのみ。
有力馬のなかで、体調が整わずにホープフルSからの直行となったレイデオロ、アーリントンCの圧勝から皐月賞への参戦が決まったペルシアンナトにとっては厳しいローテーションになっています。
共同通信杯からのローテ
3年連続で皐月賞の勝ち馬を出している共同通信杯からはスワーヴリチャードが参戦。共同通信杯と皐月賞の結びつきが強くなった理由は2つあります。
1. レース間隔を空けられるので、外厩が使える
2. 路盤改修工事によって時計が速くなり、1800m寄りのスピードも求められる
スワーヴリチャードにとっては「しがらき」を経由しての皐月賞参戦になるので、仕上げに関しては問題がないでしょう。
展開と枠順
1〜5人気の馬がすべて4枠から内へ入り、逃げ・先行馬が軒並み外枠へ入りました。この枠の並びだとマイスタイルとアダムバローズの逃げ争いになりそうです。先行勢が揃って外枠から内へ進路を取りに動くので、内の各馬はすっと下げる形に。
ファンディーナ揉まれる問題
この枠の並びでもっとも問題なのはファンディーナが馬群に揉まれる心配があることです。ファンディーナは大きなフォームで走る(ただ、脚の回転が速いのでピッチ走法でもある)ので、馬群の中よりも外目でスムーズに追走する方が力を発揮できるタイプ。
外枠から先行馬たちに被されたときに一旦は下げることになるため、どの地点で外目に出せるかが問題です。終始内々を回らされるようだと、ペースの上がる3〜4角にかけてスムーズに進路を取れるのかは「?」がつきます。
スワーヴリチャードは内枠だと後方へ下げてしまう問題
スワーヴリチャードは最内枠に入ってしまったため、よほど好スタートを決めるか騎手が出して行かない限りは中団よりも後ろの位置での競馬になります。阪神芝2000m内回りコースの未勝利戦を勝ったときもそうでしたが、しなやかなストライドで走る馬なので、コーナーでスピードを上げると他の馬からどうしても置かれてしまうのが難点。この枠だと、スムーズに3〜4角を回って来れるのかが心配です。ドゥラメンテ級の怪物であればコースロスを覚悟で大外をブン回すことも可能ですが…
皐月賞は平均ペースの流れになることが多い
同じ舞台で行われる弥生賞とは異なり、皐月賞は平均的なペースで進み、3〜4角から少しずつスピードが上がるのがデフォルトです。残りの1000mは持続的な脚で追走しながら、さらに直線で一脚使える馬が適性としてはずんどばで、スローペースしか経験のないカデナにとっては真価が問われる1戦になります。
◎サトノアレス
ディープインパクト産駒+社台ファーム生産馬+藤沢和厩舎+ローテーションと3着内に入る馬として、もろもろのファクターが揃っています。不安な点は2つ。
1. 藤沢和厩舎はクラシックを勝てない
2. スプリングSでは4着と馬券内を外してしまった
先週の桜花賞でも藤沢和厩舎は1人気のソウルスターリングで3着。ただ、勝てないだけであって、2、3着には好走しています。スプリングSの敗戦がガス抜きになったと考えれば、皐月賞への好走に期待もできます。
また、ピッチ走法で走るディープインパクト産駒で、中山の舞台は適性としてはずんどばなはず。7枠というのも揉まれないことを考えればプラスに捉えたいですね。
◯アルアイン
ディープインパクト産駒+ノーザンファーム+池江寿厩舎とこちらももろもろの要素が揃っています。不安な点は2つ。
1. しなやかなフォームなので、本質的には直線の長いコース向き
2. 毎日杯からのローテーションが…
外枠に入ったので、外目をスムーズに先行することができれば、フォームに関してはカバーができると思います。問題は毎日杯からのローテーションで、間隔が詰まっての長距離輸送がどう出るのか…当日のテンションはしっかりと見極めが必要です。
▲ペルシアンナイト
この馬は切れる脚のあるハービンジャー産駒です。池江寿厩舎が十分なレース間隔をとって皐月賞に出走させるのは不気味。ローテーションとしては「?」がつきますが、皐月賞のM・デムーロ騎手ですからその分でカバーができるはずです。
後は揉まれなければチャンスがあります。
以下は3着候補で
△スワーヴリチャード
△アウトライアーズ
△ウインブライト
△アダムバローズ
△プラチナヴォイス
買い目
サトノアレス、アルアイン、ペルシアンナイトを1、2着に固定する3連単で。ファンディーナが3着に入るのが怖いので、この3頭の馬単も。
3連単
1着:13. 11. 7
2着:13. 11. 7
3着:13. 11. 7. 2. 6. 17. 15. 9
馬単
13→11. 7
11→13. 7
まとめ
大物牝馬ファンディーナと牡馬勢との対決が楽しみな皐月賞。馬券的にも楽しみなレースになりました。
皆様にとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。