チンギスシークレットはデインドリームに続き、ドイツ調教馬として凱旋門賞を制することができるのか?

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欧州のクラシックディスタンスで争われるGⅠのなかで、世代限定戦のダービーやオークスをのぞけば、凱旋門賞が世界中の競馬関係者にとってもっとも「特別」なレースの1つであることは間違いのないことでしょう。

国際的に開かれたレースにもかかわらず、凱旋門賞はヨーロッパ調教馬からしか優勝馬が出ていません。さらに付け加えるなら、勝ち鞍はフランス馬が圧倒しています。以下は過去95回における優勝馬の「調教国別の勝ち鞍」です。

 

凱旋門賞の調教国別勝ち鞍

フランス:66頭

イギリス:13頭

アイルランド:8頭

イタリア:6頭

ドイツ:2頭

 

日本調教馬はエルコンドルパサー(1999年)、ナカヤマフェスタ(2010年)、オルフェーヴル(2012、13年)と2着が4回あるものの、未だ優勝馬が出ていません。ヨーロッパ以外からの挑戦は日本にかぎらず厳しい結果となっています。

21世紀に入ってからはフランス馬の優勢が少しずつ薄れつつあります。2001年〜16年までの調教国別の勝ち鞍は以下の通り。

 

2001年〜16年凱旋門賞の調教国別勝ち鞍

フランス:7頭

イギリス:4頭

アイルランド:3頭

ドイツ:1頭

 

イギリスとアイルランドを合わせるとフランスと勝ち馬の数は互角。ドイツ調教馬は1975年のシュターアピール(Star Appeal)以来となる2011年に3歳牝馬のデインドリーム(Danedream)がこのレースを制覇しています。そして、第96回凱旋門賞にドイツ調教馬のチンギスシークレットが出走予定。前走のフォワ賞(GⅡ・シャンティイ競馬場芝2400m)では日本から遠征したサトノダイヤモンドを退けて勝利し、好調を維持したまま本番へ向かいます。デインドリーム以来となるドイツ調教馬の凱旋門賞勝利となるのでしょうか?

 

チンギスシークレット 4歳牡馬

父:Soldier Hollow

母:Divya(母父:プラティニPlatini)

厩舎:M・クルーク(ドイツ)

3歳時は独ダービー(GⅠ・ハンブルグ競馬場芝2400m)3着と好走したものの、GⅠは未勝利に終わりました。4歳になった今年はベルリン大賞(GⅠ・ホッペガルテン競馬場芝2400m)でGⅠ初制覇を飾り、続く凱旋門賞のトライアルレースの一つフォワ賞を完勝。ドイツ血統らしいゆっくりとした成長曲線を描いており、フランス・イギリス・アイルランドのトップホースが集まる凱旋門賞でも好走の期待がもてる1頭です。

 

血統

ドイツ血統と言えば、日本でも母系にその血を引く馬の活躍が目立ちます。今春のオークスを勝ったソウルスターリングは母父Monsunがドイツのリーディングサイアーに輝いた名種牡馬の血を引いています。

チンギスシークレットの父Soldier Hollowは2005、07年の独GⅠダルマイヤー大賞(ミュンヘン競馬場芝2000m)を制した中距離馬で、種牡馬としては日本のジャパンカップにも出走したアイヴァンホウ(Ivanhow)など芝の中距離を得意とする産駒を多く出し、独リーディングサイアーにも輝いています。

チンギスシークレットの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

Soldier Hollowは自身がNorthern Dancer3×5・5と強いクロスをもち、このNorthern Dancerのクロスは血統構成の似ている父父Sadler's Wellsと母母レイクアイル(SpecialとLisadellのクロス)を経由していることから、より濃いインブリードになっているのが大きな特徴です。

Soldier Hollowの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

母Divyaはプラティニ×Rainbow Quest×Northern Dancerという配合で、Red God4×4とNorthern Dancer5×3というクロスをもちます。その父プラティニは日本ダービーと天皇賞・秋を制したエイシンフラッシュの母父としても知られ、ドイツ固有の血脈で固められたSurumuの直仔。

母Divyaは名血・名配合だとは思うものの、さらにクロスのうるさいSoldier Hollowというのはちょっと……これなら5代アウトの種牡馬のほうがマッチするのですが……。ただ、Northern Dancerがしつようにクロスされているため、チンギスシークレットはスタミナとスピードの持続力に優れ、(Hyperion的な)しぶとさをもった先行馬として良績を上げているのは納得。

ドイツ血脈特有のスタミナと粘り強さと柔らかさ、そして母系に入るBlushing Groomらしいしなやかさが感じられるチンギスシークレットは、重馬場でも良馬場でも力を発揮できるのが強味と言えます。

Divyaの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

(このDivyaはスタセリタと同じように、社台系が買い付けたら日本の芝にマッチする仔を産むのでは……と期待したくなる配合。ここにディープインパクトを種付けするといかにも完成が遅くなりそうなので、アウトブリード+マイラーのRaven's Passをアイルランドで種付けした仔から牝馬が産まれれば……完璧です)

 

凱旋門賞に向けて

「1強」と言われ、大本命に推されている3歳牝馬のイネイブルはSadler's Wells3×2という強いインブリードをもち、父Nathanielの母系から日本でもお馴染みのRobertoを引くので、パワーとスタミナでゴリゴリと先行したときに強さを発揮する馬。まだ極端に馬群で揉まれた経験のない馬だけに、アイルランドのA・オブライエン調教師が出走させるGalileo軍団がどのような「包囲網」をしくのかはレースのカギを握ります。

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もし、オブライエン調教師のGalileo産駒たちとイネイブルがスタミナを削り合う昨年の凱旋門賞のようなハイペースにするのなら、フランス勢には不利な流れになり、重馬場でペースが緩むのであれば、道悪適性がはっきりと出てしまう結果になるのでしょう。チンギスシークレットにとってはどちらの質のレースになったとしても対応できます。イネイブルやオブライエン調教師の管理馬、そして、地元フランスの馬に注目が集まれば集まるほど、11番人気で快勝したデインドリームのような波乱を演出する可能性も高くなり、真ん中よりも内側の枠が引ければチャンスも十分に。

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まとめ

日本でも活躍馬を多く出しているドイツ固有の血脈が、凱旋門賞という国際的なGⅠでふたたび輝きを見せることができるのでしょう?

チンギスシークレットはドイツ調教馬としてデインドリームに続くことができるのでしょうか?

凱旋門賞が今から楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。