日本調教馬として2017年の凱旋門賞に出走するサトノダイヤモンド(4歳牡馬 池江寿厩舎)の前に立ちはだかるのは、断然の主役と目される7戦6勝の3歳牝馬イネイブル(Enable J・ゴスデン厩舎) とA・オブライエン厩舎が送り出す5頭のGalileo産駒。
3歳牝馬ながら牡馬相手のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを圧勝した才女イネイブルの背中には、凱旋門賞の歴代最多勝(現在4勝)がかかるL・デットーリ騎手が跨るとあって、人気はよりヒートアップするでしょう。
昨年のこのレースで1番人気に推されたポストポンドを撃破したのは、「凱旋門賞1〜3着の上位独占」という離れ業を演じた「チーム・オブライエン」のGalileo産駒。今年もオブライエン厩舎からは5頭のGalileo産駒が出走しており、どのような「イネイブル包囲網」をしくのかに注目が集まります。
今年は昨年のようなレコード決着にはならない?
ロンシャン競馬場の改修工事にともないシャンティイの芝2400mで行われた昨年の凱旋門賞は、1着のファウンドがマークした勝ちタイムが2分23秒61のコースレコード。まるで日本の芝のようなタイムが出ましたが、1〜3着を独占したのは「日本の芝では重すぎる血統」と言われるGalileo産駒でした。
昨年の凱旋門賞の上位を独占したアイルランドの名調教師A・オブライエンの管理する3頭のGalileo産駒は、ハイペースのスタミナ勝負にもちこみ、後続馬を完封。仮作移動によってできたグリーンベルトを通ったファウンドが1着、直線でラチ沿いを通ったオーダーオブセントジョージが3着に入ったことから、「イン有利+先行有利」の馬場コンディションも結果を大きく左右する一因になりました。
今年の馬場コンディションは「稍重」が想定されており、昨年のようなハイペースによるスタミナな削り合いにはならないと考えられます。パンパンの良馬場でなければペースも落ち着き、キレ味勝負の馬の好走もあるかもしれません。
Galileo産駒は凱旋門賞が苦手?
欧州の現リーディングサイアーGalileoは、昨年のファウンドが凱旋門賞での初勝利。また、連対したのも昨年が初めてのことで、大種牡馬Galileoは凱旋門賞が苦手なのでは、と揶揄されたこともしばしば。その昨年は先にも述べたようにハイペースの決着にもち込んでの勝利で、スタミナとパワーを存分に発揮したものでした。
今年の凱旋門賞はパンパンの良馬場にならないこと、「ペースメーカー」を含めた逃げ馬が不在なことから、ハイペースによるスタミナの削り合いにはならない可能性が大。スピードの持続力を問われない質のレースになれば、非Galileoの血を持つ馬たちが好走することも十分に考えられます。
イネイブル vs チーム・オブライエンは?
欧州の下馬評では1番人気がイネイブル、2番人気がオブライエン厩舎+R・ムーア騎手の3歳牝馬ウインターとなっています。オブライエン厩舎のエース・ライダー「R・ムーア」がウインターに騎乗するとあっての人気でしょう。残りのオブライエン厩舎の4頭がチーム・プレーでウインターをサポートするのかはわかりませんが、少なくとも内枠に入ったイネイブルをインに閉じ込めるような作戦をとることはほぼ間違いのないところです。
3歳牝馬のウインターは芝2400mの距離が初めての出走。そのため、稍重馬場のコンディションも考えあわせると、オブライエン厩舎はスローペースにレースをコントロール。ウインターやイネイブルを含めて有力馬が内にかたまり、インコースが大渋滞する可能性も……。昨年の結果を受けて、「今年もチーム・オブライエンで!」となればなるほど伏兵馬の激走も十分にあり得ます。
オブライエン厩舎のGalileo産駒については週中に記事を書いたので、よければそちらもご覧下さい。
GⅠ凱旋門賞(2017年)は今年もGalileo産駒+A・オブライエン厩舎の管理馬が好走するのか?ーーレース展望 - ずんどば競馬
地元フランス勢は?
1番人気イネイブルはイギリスのJ・ゴスデン調教師の管理馬、2番人気ウインターはアイルランドのオブライエン調教師の管理馬ですから、今年の凱旋門賞は上位人気が英愛の調教馬となります。
凱旋門賞は地元のフランス調教馬の優勝回数が圧倒的に多いのが特徴です。ただ、ここ21世紀に入ってからは「フランス対イギリス+アイルランド+ドイツ」は「7対8」の五分となっており、以前ほどの圧倒的な優位は薄らいでいます。ただ、フランス調教馬はホームアドバンテージがあることも確かですから、意地を見せたいところでしょう。
地元フランス勢の注目は、シャンティイ競馬場で行われた仏ダービーを大外一気の末脚で制した3歳牡馬のブラムト(JC. ルジェ厩舎)。前走のステップレースを出遅れて5着と敗れたものの、日本でもお馴染みのC・デムーロ騎手を背に地元の利を活かしての好走に期待がもてます。2番手には前走のフォワ賞を2着と好走した4歳馬クロスオブスターズ(A・ファーブル厩舎)。フランスの名伯楽ファーブル厩舎が送り出す馬とあって、大舞台での1発には注意が必要です。
重馬場でフランス血統の重厚なストライドが活きるのか?
凱旋門賞と好相性のフランス的な血と言えば、Never Bend直仔のMill ReefとRiverman。過去10年、フランス調教馬は3頭が凱旋門賞を勝利(4勝)していますが、いずれの馬も母系にMill ReefかRivermanの血を引いていました。
13・14年トレヴ:Riverman
12年ソレミア:Mill Reef
08年ザルカヴァ:Mill Reef
稍重馬場+スローでMill ReefやRivermanの重厚なキレ味が活きる可能性もあり、母系にこれらの血を引く馬をチェックしておきましょう。今年の凱旋門賞に出走するフランス調教馬のなかで、Mill ReefとRivermanのどちらかの血を引くのは以下の4頭です。
▼Mill ReefかRivermanの血を母系に引く馬
クロスオブスターズ(Mill Reef)
ザラック(Mill Reef)
シルバーウェーヴ(Riverman)
ドーハドリーム(Mill Reef)
凱旋門賞馬ザルカヴァを母にもつザラックは、ヴィブロスの制したドバイターフ4着馬。このドバイターフ出走馬からはザラックを含めて後にGⅠを勝つ馬がポコポコと現れています。ヴィブロスの評価を高めるためにもザラックには期待したいですね。
この4頭のなかでは、もっとも注目したいのはファーブル厩舎のクロスオブスターズ。父Sea The Stars×母父Kingmambo×母母父Shirly Heights(Mill Reef直仔)ですから、もう凱旋門賞はずんどばの配合。馬場がいくらな重くなって外差しが利くなら狙ってみたい1頭。
予想
凱旋門賞は荒れるGⅠとして知られているビッグレースのひとつ。とするなら、前評判とは反対の結果になると踏んで、1番人気のイネイブル+オブライエン厩舎のGalileo産駒はスパッと切り捨てます。
(✳︎L・デットーリ+R・ムーアが1〜3着ないに入るようだとサヨウナラの予想になります)
凱旋門賞(2017年)はR・ムーア騎手とL・デットーリ騎手のどちらが勝つのか? それともワンツー?ーー展望 - ずんどば競馬
波乱があるとすれば、仮柵のとれたインコースに馬が殺到して渋滞を起こすなか、外から重厚なストライドでズドーーーンと差してこれる馬をピックアップ。
◎チンギスシークレット 4歳牡馬
父:Soldier Hollow
母:Divya(母父:Platini)
厩舎:M・クルーク(ドイツ)
3歳時は独ダービー(GⅠ・ハンブルグ競馬場芝2400m)3着と好走したものの、GⅠは未勝利に終わりました。4歳になった今年はベルリン大賞(GⅠ・ホッペガルテン競馬場芝2400m)でGⅠ初制覇を飾り、続く凱旋門賞のトライアルレースの一つフォワ賞を完勝。ドイツ血統らしいゆっくりとした成長曲線を描いており、フランス・イギリス・アイルランドのトップホースが集まる凱旋門賞でも好走の期待がもてる1頭です。
血統や凱旋門賞に向けての展望は週中に詳しい記事を書きましたので、よければそちらもご覧下さい。
チンギスシークレットはデインドリームに続き、ドイツ調教馬として凱旋門賞を制することができるのか? - ずんどば競馬
デインドリームに続くドイツ調教馬の凱旋門賞制覇を期待して◎を。
◯クロスオブスターズ 4歳牡馬
父:Sea The Stars
母:Strawerry Fledge(母父:Kingmambo)
厩舎:A・ファーブル(フランス)
これぞ凱旋門賞らしい配合と言えるクロスオブスターズ。父Sea The Starsから大物が出て欲しいという私的な期待も含めて。ファーブル厩舎で人気がないなんて、もう「うわ〜ん」と喜んで飛びつきます。
サトノダイヤモンドの出走したフォワ賞の1、2着馬が、今年の凱旋門賞を外からズドーーーンというのはいかにもありそう。人気は英愛組に集まるでしょうから、こんな時こそ独仏で!
EUからの離脱を決定したイギリスを連合の盟主国ドイツ・フランスが迎え撃つなんて、そんなことがあってもいいじゃない!
買い目
もう、その他の馬はどれが3着にきてもおかしくはありませんから、2頭からの「総流し!」という手もありますが……。3着候補としてはSadler's Wells系×Danzig系の馬を何頭かピックアップする予定。後はオッズと相談して、◎◯から人気薄への3連複を。
3着にどれがきてもOKなように、◎◯馬連1点を中心に。
馬連
8. チンギスシークレット - 5. クロスオブスターズ
3連複
◎◯2頭軸にして人気薄へ
まとめ
サトノダイヤモンドがどのようなレースをするのか、デットーリとムーアの世界的名手がどのような手綱さばきをするのか、ドイツ調教馬のチンギスシークレットは好走できるのかなどさまざまな楽しみ方がある今年の凱旋門賞。今年も国際的なGⅠレースをドキドキしながら観戦できる幸せを噛み締めながら……。
皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。