開業4年目の中内田充正厩舎は10月1日(日)終了時点で全国調教師リーディング6位と好成績を上げています。今年はすでに35勝と昨年の31勝を上回る勝ち星を積み重ね、その活躍ぶりからは目が離せません。
管理する現2歳馬はここまで7頭がデビューし、4頭が新馬戦を勝ち上がるなど好調なスタートを切りました。中京芝1600mの新馬戦を快勝したフロンティア(2歳牡馬・父ダイワメジャー)がGⅢ新潟2歳Sを制するなど、中内田厩舎の2歳馬は年末の2歳GⅠや来年のクラシックに向けても楽しみな馬が揃っています。
10月7日(土)、東京競馬場で行われるGⅢサウジアラビアロイヤルC(芝1600m)に厩舎の期待馬ダノンプレミアムが出走。阪神芝1800mの新馬戦を楽勝した素質馬が、フロンティアに次ぐ2歳重賞ウィナーとなれるのかに注目です。
中内田厩舎が現在の成績をキープするためには、2歳馬の活躍が欠かせません。今回の記事ではダノンプレミアムについて考察していきます。その前に、中内田調教師の成績について確認しておきましょう。
10月1日(日)時点での中内田厩舎の成績
10月1日(日)終了時点での中内田厩舎の成績は以下の通りです。
1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 出走回数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
平地 | 33 | 12 | 18 | 104 | 167 | 0.198 | 0.269 | 0.377 |
障害 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1.000 | 1.000 | 1.000 |
JRA合計 | 35 | 12 | 18 | 104 | 169 | 0.207 | 0.278 | 0.385 |
参照元:JRA日本中央競馬会
全国調教師リーディング6位
勝率が3割を超えていた3月初めの頃から較べると、さすがにそれぞれの率は下がりましたが、まだ全体的にはハイアベレージをキープ。リーディング1〜3位の池江泰寿厩舎、角居勝彦厩舎、藤原英昭厩舎といった名門にヒケを取らない「好走率」を上げています。中内田厩舎のなかでもっとも特徴的なのは出走回数の少なさ。リーディング上位の厩舎と比較するとその差は歴然です。
▼リーディング1〜3位の厩舎と中内田厩舎の出走数と1着数
順位 | 調教師名 | 出走数 | 勝数 |
1位 | 池江泰寿 | 248 | 48 |
2位 | 角居勝彦 | 266 | 45 |
3位 | 藤原英昭 | 236 | 39 |
…… | |||
6位 | 中内田充正 | 169 | 35 |
調教師は過去2年の成績をもとに管理できる馬房が決まるため、開業4年目の中内田厩舎とこれまでに実績を積み上げてきた名門厩舎ではどうしても出走数に差が出てしまいます。中内田厩舎はその出走数の少なさから勝率や連対率、3着内率が高くなっていると言えるでしょう。とは言え、少ない出走数にもかかわらずリーディング6位につけているのは1着の数が多いためで、2、3着の数からすると「勝ち切っている」のも特徴のひとつです。
ダノンプレミアム 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:インディアナギャル(母父:Intikhab)
厩舎:中内田充正(栗東)
生産:ケイアイファーム
馬名登録されている中内田厩舎の2歳馬のなかで、ディープインパクト産駒はダノンプレミアムとフォックスクリーク(✳︎)の2頭。来年の3歳クラシック路線は、この2頭が中心となるのでしょう。
(✳︎フォックスクリークはPOG御用達の名繁殖牝馬クロウキャニオンの仔。全兄のカミノタサハラ、ボレアス、マウントシャスタ、ベルキャニオンなどを見てもわかるように、3歳春シーズンまでに2勝以上を計算できる配合です。ドーンと大物は出さないものの、まず外さない一族なので厩舎の期待馬と言えます)
フォックスクリーク | 競走馬データ - netkeiba.com
ダノンプレミアムはディープインパクト産駒としては「非力」さがなく、ガッチリとした馬体から悠然とした大きなフォームで走るので、2歳の早い時期からレースに使うことができました。新馬を勝った後は秋に向けて成長を促すため放牧に出され、夏を休養にあてることに。サウジアラビアロイヤルCは、一段とたくましさを増したパワフルな馬体になっているのかもチェックポイントです。
2歳新馬(6月25日) 阪神芝1800m外回り
頭数:10頭 馬場:稍重
着順:1着(1人気)
勝ちタイム:1分48秒7(2着馬との着差:0.7)
上り3F:34.6 通過順:2 - 1
騎手:川田将雅
レース解説
ダノンプレミアムは好スタートから内のウインルーカスを先に行かせ、2番手でしっかりと折り合います。3コーナー手前で外から押し上げたアドマイヤビクターがハナを奪い、ダノンプレミアムとウインルーカスも内から引かずにペースを上げると3頭が雁行状態で直線に入りました。
ダノンプレミアムは鞍上の川田騎手のアクションに応えて直線で先頭に立つと、馬場の内から4分所を重厚なストライドで伸び切って完勝。次走が楽しみとなる新馬戦の内容だったと言えます。
血統
アイルランド産の母インディアナギャルは父Intikhab×母父デインヒルという配合で、Danzig4×3とBuckpasser5×5のクロスをもちます。この北米的なパワー優先の血をクロスさせることによって、種牡馬ディープインパクトの「非力」さをしっかりと補っているのでしょう。3歳春に高いパフォーマンスを発揮するディープインパクト産駒は、馬体に筋肉をつけるための良質なパワーを母系から受け継いでおり、ダノンプレミアムもそのオーソドックスな配合パターンに当てはまります。
ダノンプレミアムの母父IntikhabはRed Ransom×Crafty Prospectorという血統通りのマイラー。種牡馬としては2011、12年のGⅠエリザベス女王杯を連覇したイギリス調教馬スノフェアリーを出しているように、フィリーサイアーとしても知られています。この父は活躍馬が牝馬に偏っていたことからBMSとしても優秀です。昨年の凱旋門賞を勝った牝馬Found(父Galileo)や2015年の日本ダービー2着サトノラーゼン(父:ディープインパクト)の母父としてその名前を見ることができます。
種牡馬ディープインパクトはダノンプレミアムの母父Intikhabとも母母父デインヒルとも好相性ですし、母インディアナギャルのもつDanzig4×3のクロスもプラスに働いているのでしょう。ダノンプレミアムのムキムキの馬体はこの母系によるところが大きく、その重厚なストライドは父と母の血が上手くマッチしたからだと考えられます。
ダノンプレミアムの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com
サウジアラビヤロイヤルCに向けて
直線の長い東京の芝1600mで行われるサウジアラビヤロイヤルCは、ダノンプレミアムにとって適性に合った舞台です。パワフルで重厚なストライドは直線の坂を駆け上がるのに適していますし、大きなフォームからワンターンの広々としたコースはプラス。マイラーにも見えるムキムキの馬体からも新馬戦から200m距離が短縮されるマイル戦にも不安がなく、ここで好走ができるのかは休養明けの仕上がり具合と相手関係だけでしょう。
不安点は、ディープインパクト産駒としてはキレ味が並みなので、後ろからバキューンと差すのではなく前々から抜け出す競馬がベスト。スタートで後手を踏んだり、脚を測るために意識的に後ろへ下がるような競馬だと……。中内田厩舎は新進のトレーナーですから、目の前の重賞をキッチリ勝ちにくるとは思いますが……。
上位人気はステルヴィオ
サウジアラビアロイヤルCで人気の上位を形成するのは、2戦2勝の内容が素晴らしいステルヴィオとノーステッキで新馬戦を勝ち上がったスワーヴエドワード、札幌2歳S3着の地方馬ダブルシャープの3頭。
レース内容から奥行きがありそうなのは、新種牡馬ロードカナロア産駒のステルヴィオ。東京のマイル戦をしなやかに差せる馬で、サウジアラビアロイヤルCは適した舞台です。前走のOPコスモス賞(札幌芝1800m)は小回り+重馬場と適した条件ではなかったにもかかわらず、ひと捲りで快勝したことを考えると、この馬のスケールも計り知れないものがあります。
クラシックに向けて
新潟2歳Sを勝ったフロンティアとダノンプレミアムは同厩舎ということあり、レースを使い分けながらの出走となるでしょう。ダノンプレミアムがクラシック路線を予定通りに歩むためには、サウジアラビアロイヤルCで2着以上に入り賞金を上積みしないといけません。それを考えても、後ろからではなく前々から抜け出す競馬をした方がベター。来春のクラシックを展望するためにも、今走はこの馬にとって大きな意味をもつ1戦となります。
まとめ
調教師リーディングの上位を目指す中内田厩舎にとって、2歳戦は勝ち鞍を増やすために欠かすことのできないカテゴリーです。ここでどれだけ勝ち星を稼ぐことができるのか……ダノンプレミアムやこの後にデビューを控える馬たちにかかる期待も大きいものがあります。以前に中内田厩舎の注目の2歳馬について紹介した記事を書いていますので、よければそちらもご覧下さい。
中内田充正厩舎の期待の2歳馬('17年)をズバっと解説!&私的なベスト3を発表 - ずんどば競馬
まずは、厩舎全体にさらなる勢いをつけるためにも、サウジアラビアロイヤルCでダノンプレミアムが好走できるのかに注目しましょう。
以上、お読みいただきありがとうございました。