12月15日(土)、中山芝1600で行われる牝馬重賞のターコイズS(GⅢ)は、プリモシーン、フローレスマジック、フロンテアクイーン、カワキタエンカ、ミスパンテール、レッドオルガなどの力量馬が揃った注目の1戦です。
中山のマイル戦ながら、直線の長いコースに向くディープインパクト産駒が6頭登録し、上位の人気を形成しています。小回りの中山をしなやかなストライドでバキューンと差し切ることはできるのでしょうか?
ディープインパクト産駒の6頭
今年のターコイズSは6頭のディープインパクト産駒が出馬登録をしています。
アンコールプリュ 藤岡康太
カワキタエンカ 池添謙一
ディメンシオン 福永祐一
プリモシーン W・ビュイック
フローレスマジック C・ルメール
レッドオルガ C・デムーロ
(50音順)
このなかで上位の人気になるのはフローレスマジック、プリモシーン、カワキタエンカ、レッドオルガの4頭。赤色でマークしたノーザンファーム生産馬は上位人気の馬にしっかりと外国人騎手を配置していますし、ここもスコーンと勝ってしまうのでしょうか……。
注目しているのは今夏に関屋記念を制した3歳馬のプリモシーン、名繁殖エリモピクシーの仔レッドオルガの2頭です。どちらもGⅠ級の能力があるだけに、牝馬限定のGⅢなら好走を期待できます。今回の記事ではこの2頭を中心に、上位人気になるディープインパクト産駒をサクッとチェックしてみましょう!
プリモシーン 3歳牝馬
父:ディープインパクト
母:モシーン(母父:Fastnet Rock)
厩舎:木村哲也(美浦)
生産:ノーザンファーム
騎手:W・ビュイック
プリモシーンはディープインパクト産駒らしい上品な馬体をもち、これまでにマイル重賞を2勝しています。今夏の関屋記念(GⅢ・新潟芝1600m)は4歳以上の牡馬たちを相手に快勝し、改めて素質の高さを示しました。
ディープインパクト産駒らしいしなやかなストライドがこの馬の最大の長所。フットワークの柔らかさと軽さは見とれてしまうほどに素晴らしく、バキューンと弾ける脚はGⅠ級です。
前走の秋華賞は「小回りコース+2000mの距離」から7着と敗れたものの、直線の伸びは目立つものでした。このときの馬体はアーモンドアイに劣らないほど素晴らしかっただけに、牝馬限定のマイル重賞なら主役を張れる馬だと言えます。
血統
母モシーンはオーストラリアのGⅠを4勝した活躍馬。母父Fastnet Rockはメラグラーナの父として知られ、スピードとパワーを産駒に伝えます。デインヒル←Danzigとつながるサイアーラインはパワーあふれるスプリンターを産む血で、母系に入るとしなやかさを伝えるディープインパクトと好相性。
プリモシーンは「父ディープインパクト×母父Northern Dancer系のパワー・スプリンター」という組み合わせ。父の弱点とも言える「パワー不足」を母系から取り込んでおり、3歳の早い時期から活躍できる配合です。この馬が牝馬としては馬格がある(前走は490kg台)のも、母系にパワー系の血を引くからでしょう。
ターコイズSに向けて
「ノーザンファーム生産馬+木村哲也厩舎+W・ビュイック騎手」は、マイルCSを制したステルヴィオと同じ組み合わせ。プリモシーンへの期待の高さがうかがえる騎手配置となっており、レースに向けての不安はありません。
しなやかなストライドで走るディープインパクト産駒なので、本質的には小回りの中山コースは不向き。ただ、同じコースで行なわれたフェアリーSを快勝していること、中山の芝が高速化してからはディープインパクト産駒の好走率が上がっていることから、そこまで神経質にならなくてもOKです。
スムーズなレースができればGⅠ級の末脚を使える馬で、斤量の55kgをこなせれば……。ゴチャつくのを嫌って大外から追い込む競馬になるでしょうから、最内枠だと割引です。
レッドオルガ 4歳牝馬
父:ディープインパクト
母:エリモピクシー(母父ダンシングブレーヴ)
厩舎:藤原英昭(栗東)
生産:ノーザンファーム
騎手:C・デムーロ
名繁殖牝馬エリモピクシーの仔は高確率でOPまで出世します。今春、レッドオルガの全姉となるレッドアヴァンセがヴィクトリアマイルを3着、半弟のレッドヴェイロンがNHKマイルCを3着と好走しており、この牝系の活力はまだまだ健在です。
レッドオルガはここまで(5 - 0 - 3 - 2)と安定した成績を上げています。ターコイズSが重賞レースへの初出走となりますが、OPが壁になる血統ではありませんし、ここは楽しみな1戦と言えるでしょう。
血統
母エリモピクシーはOP〜重賞級の馬を高確率で産む「名繁殖牝馬」です。この牝系の血統的な特徴については以下の記事に詳しく解説しているので、よければご覧下さい。ここでは簡単に特徴だけ触れておきます。
▼産駒の特徴
1. 距離適性はマイル前後
2. 脚質は先行
3. 揉まれ弱い
4. 緩やかな成長曲線
レースのなかでもっとも問題となるのは、この牝系の大きな特徴と言える「揉まれ弱さ」です。外から被されると嫌気を差してズルズルと下がってしまうことがあり、いかに外目をスムーズに先行できるかがカギとなります。
ターコイズSに向けて
全姉のレッドアヴァンセと同じく、この馬のベストは東京・京都・阪神のマイル戦です。ディープインパクト産駒らしいしなやかなフットワークが最大の長所なので、小回りの中山コースはやや割引と言えます。ただ、前々のポジションを取れる先行力があるので、小回りコースもそれほど苦にはしないでしょう。
不安は内枠で揉まれたとき……。C・デムーロ騎手はテン乗りなので、揉まれ弱さを理解した騎乗ができるどうかが大きなポイントです。外目をスムーズに先行することができれば、大きく崩れることはないはずですが……。
兄姉馬の活躍からも重賞が壁になる血統ではなく、ここは楽しみな1戦となります。ノーザンファーム生産馬+藤原英昭厩舎のコンビとあって、レースに向けての仕上げに不安はありません。自身より外枠に逃げ・先行馬がいなければ、ここでも能力を発揮できます。
フローレスマジックについて
フローレスマジックは名牝マジックストームの仔で、全姉ラキシスと全兄サトノアラジンがともにGⅠ馬という良血馬。3歳の早くから大きな期待をかけられたものの、条件戦を勝ち上がるまでにやや時間がかかりました。
この牝系は姉兄ともに完成が遅め。フローレスマジックのここ2走はいよいよ本格化かと思わせるもの。ラキシスやサトノアラジンと似た成長曲線を描いており、この馬も重賞が壁になるようなタイプではないでしょう。
ターコイズSに向けて
フローレスマジックは全姉のラキシスよりも前進気勢が強く、2000m前後の距離だと折り合いに気を使うタイプです。気性面を考えるとマイル戦はプラス。本質的には直線の長いコースに向いているため、中山コースは割引となります。
カワキタエンカについて
カワキタエンカはローズSと中山牝馬Sを制している力量馬。1800mの重賞を2つ勝っていることからも、ピュアなマイラーではありません。この馬の長所はしぶとい先行力です。レースのペースを引き上げ、後続に脚を使わせるような展開にもち込めるかが好走のカギを握ります。
ターコイズSに向けて
今走は1600m戦とあって、しっかりとペースを引き上げられるかどうか……。スローの逃げだともち味が活きませんし、マイルでペースが速くなり過ぎるのもマイナスです。
ディープインパクト産駒ながら器用さのあるタイプなので、中山コースは苦にしません。マイル戦なら時計のかかる決着がベター。雨が降ってタフなコンディションになるのはプラスです。
非ノーザンファーム生産馬なので、仕上がりの面には不安が……。今秋の2走はこの馬の良さが発揮できていないので、体調面がしっかりと整っているのかも「?」が付きます。
まとめ
今年のターコイズSは来春のヴィクトリアマイルを展望する素質馬がズラリと顔を揃えました。フローレスマジック、プリモシーン、レッドオルガetc……ここを制して来春のGⅠへ向かうのはどの馬なのでしょうか?
以上、お読みいただきありがとうございました。