GⅡ神戸新聞杯(2017年)はダービー馬レイデオロが貫禄を見せての快勝ーー現3歳牡馬のレベルは?

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菊花賞トライアルのGⅡ神戸新聞杯は、1番人気のレイデオロが好位から直線で楽々と抜け出して快勝しました。ダービー、神戸新聞杯と連勝し、3歳牡馬NO.1の座をしっかりと固めたレイデオロは、古馬と初対戦となるジャパンカップへ向かいます。後方からレースを進め直線で馬群を割って伸びたキセキが2着、直線で大外を伸びたサトノアーサーが3着に入線。勝ちタイムは2分24秒6(良)。

 

3歳牡馬NO.1はレイデオロ?

菊花賞をパスしてジャパンカップへ向かうレイデオロにとって、3歳世代限定のレースに出走するのは神戸新聞杯が最後になります。ダービー→神戸新聞杯と連勝したレイデオロは、クラシック3冠目の菊花賞がどのような結果になったとしても、ほぼ「最優秀3歳牡馬」の座が当確。

歴史的な「超」スローとなり、凡戦とも形容された今年のダービーをルメール騎手の好騎乗に導かれて勝利したレイデオロの評価は、歴代のダービー馬と較べても決して高いものではありませんでした。秋の初戦となった神戸新聞杯で、ダンビュライトやサトノアーサーなどのダービー組と夏の上がり馬のキセキをまとめて負かしたレイデオロは、名実ともに3歳牡馬NO.1を証明したことに。

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イスラボニータとワンアンドオンリー世代

近年のなかで、もっとも世代的なレベルが「高くない」とされているのが、ワンアンドオンリーやイスラボニータが春のクラシックを制した現6歳牡馬。

皐月賞馬のイスラボニータは、古馬になると中距離から層の薄いマイルへと路線を変更し、ダービー馬のワンアンドオンリーは神戸新聞杯を勝った後、国内のレースで3着以内の好走がないなど、やや寂しい成績……。

この世代の牡馬で古馬GⅠを勝ったのはスプリンターズSを制したレッドファルクス、マイルCSのミッキーアイル、安田記念のサトノアラジンとマイルよりも短い距離でのもの。また、サウンズオブアースやステファノスがGⅠ2着を重ねているとは言え、中距離以上ではなかなか好結果が出ていません。

この世代のダービー馬ワンアンドオンリーも神戸新聞杯は単勝1倍台の人気を背負って勝ち切っているので、レイデオロにとっても古馬との初対戦となるジャパンカップがこの馬の「真価」を問われるレースとなるでしょう。

 

ラブリーデイ的な素軽いピッチ走法

レイデオロは素軽い脚さばきから俊敏に加速するピッチ走法の馬。直線の長いコースだと「不利」と言われるこの走法も、スローペースになれば話は別です。今年のダービー、そして神戸新聞杯と直線の長いコースでレイデオロが快勝したのは、緩いペースからの瞬発力勝負になったから。それでは、神戸新聞杯のレースラップを見てみましょう。

 

2017年 神戸新聞杯

12.9 - 11.8 - 12.2 - 12.4 - 12.1 - 12.3 - 12.3 - 12.2 - 11.9 - 11.3 - 11.4 - 11.8

前後半1000mが61.4 - 58.6ですから、2.8秒の後傾ラップとなっています。重賞競走だけあって、スタート直後の1Fをのぞくと12.5以上のラップを踏んでいる区間はありませんが、3歳以上500万下の1600m戦で1分32秒7がマークされたこの日の馬場状態を考えると、かなりのスローとなりました。

一夏を越しても、素軽い脚さばきでピュンと加速するレイデオロのピッチ走法はそのままで、ゴール前のキセキやサトノアーサーのストライドと較べれば、前脚がしなやかに伸びていないことはすぐにわかります。この無駄のない器用な走りがこの馬の最大の武器で、抜け出すときの加速力はこの世代トップクラス。ジャパンカップではペースが流れたときにダービーや神戸新聞杯のような脚が使えるのかがポイントとなりますが、コーナーをスムーズに回る器用さとペースのアップとダウンが自在な馬ですから、気性的な難しさを出さなければ好走も十分に可能でしょう。

 

2着と好走したキセキについて

角居廐舎らしい成長曲線を描いて神戸新聞杯に出走したキセキは、直線で馬群を割って伸びるとレイデオロに迫る2着と好走しました。500万下→1000万下信濃川特別と連勝したときの圧巻のパフォーマンスからするといくらか物足りないものがありますが、ペースが大きく緩まず、後方から前へとポジションを押し上げるタイミングがなかったことを考えると、初の2400mの距離で上々の内容だったと言えます。

時計の速い阪神の馬場もこの馬には合っていたはずで、後はポジション取りの部分でしょうか。上り33.9の脚で突っ込んでいるので、これ以上の脚を……というのは厳しいですよね。レイデオロがラストの1Fをもう少し落としていれば差し込めたかも……というレースでした。

大きなストライドで走るキセキは、神戸新聞杯や前走の信濃川特別のように、一定のペースで走った上で鋭さを引き出せるタイプ。菊花賞のように緩急がつく距離でのレースだとスタミナのロスが大きく、次走の選択は難しくなりましたね。胴の長い馬体から3000mの距離そのものが合わないとは言えないものの、1F13秒の区間をリラックスして走れるのかは微妙なところですね。角居調教師はそれぞれの馬の適性に合わせたレースを選択するので、次走はどこへ向かうのかを楽しみに待ちましょう。

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3着サトノアーサー

「池江寿廐舎+ノーザンファーム+冠名サトノ」の3点セットの恐ろしさを改めて感じさせるサトノアーサーの3着。3歳春の時点で馬体は完成しており、この馬が一夏を越してグンとパワーアップするイメージはまったくもてなかったのですが……。サトノアーサーはディープインパクトらしいストライド走法で、直線でのファームのしなやかさはレイデオロよりも上でしたね。阪神の外回りコースはこの馬にとってはベストのコースなので、レイデオロをマークする形でレースを進め、しっかりと脚を使って伸びたのは収穫のある1戦。終わってみれば神戸新聞杯も1着と3着がノーザンファームでしたが、4頭出して外した2頭がワン・スリーですから、「うわ〜ん」な結果でした。

神戸新聞杯のパドックでは春よりも背が伸びた印象で、プラス10kgの馬体重でもややトモの張りが物足りなく……いかにも、休み明けという状態での3着ですから、この馬の成長を甘く見ていたのは大きな反省点。池江寿廐舎ウォッチャーとしては恥ずかしいかぎりです……。

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サトノアーサーは父ディープインパクト×母父Redoute's Choice(デインヒル直仔)×母母父Nureyev(Northern Dancer直仔)ですから、マイル重賞で活躍したフィエロと似たような配合。この2頭の大きな違いはサトノアーサーの母キングスローズが「これでもかっ!」とエクスクラメーション・マークを付けたくなってしまうほどにNorthern Dancerが執拗にクロスされていることと、母系に重厚なキレをもつRivermanを引くことです。サトノアーサーがフィエロよりも脚が長く中距離馬の身体つきをしているのは、この母系に引くRivermanによるところが大きく、菊花賞ではこの重厚なキレ味を活かせる流れになるのかどうか……。もう少しパワーアップするかどうかも含めて今秋の走りに注目したい1頭です。

サトノアーサーの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

フィエロの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

◎ダンビュライトは4着

好スタートからアダムバローズを先に行かせ、1コーナーの手前で外目に進路を取り2番手を確保したときは「さすが武豊!」と声を出してしまうほどで、「最低でも2着は取れたな」と楽観的に見ていました。アダムバローズがソコソコのペースで逃げていたため、積極的に前を突つく必要のない展開になり、直線で追われてからの伸びに期待しましたが、手応えの割には脚を使えずに4着と敗退。

休養明け+時計の速い馬場が合わなかったのはあるとしても、阪神の外回りコースはずんどばの舞台だっただけに、直線であっさりと交わされた上位3頭には完敗という内容。この馬自身の上り3Fが35.0ですから、休み明けの分で最後に息切れしたのだとしても、この馬の力通りには走っています。それほどびゅんとキレる馬ではないので、直線の入り口でもう少し後続馬に対してリードが欲しかったとは思うものの、脚をためずに早く仕掛けていたとしてもレイデオロには交わされていたでしょうしね。

菊花賞に出走できるのであれば、叩いての変わり身とキャサリーンパー牝系らしいスタミナに期待をかけたいところです。もし雨が降って馬場が重くなるようなら、稍重のエリザベス女王杯を勝ったマリアライトのようなレースができるかもしれませんしね。ダンビュライトが正攻法で菊花賞を勝つとしたら、3コーナーの上り坂でペースを引き上げて後続の脚を削ぐ形が取れれば。京都の外回りでトニービンのスタミナを活かすには、有名な淀の下り坂ではなく上り坂で勝負しなければチャンスはありません。ただ、そんな「横山典弘的な騎乗」を武豊騎手がするのかは不明です。

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その他の有力馬

5着アドマイヤウイナーは直線で伸びずバテずの内容。サトノアーサーと枠の内外が反対だったら、着順は入れ替わっていたかもしれません。スタミナが豊富でしなやかさもあるタイプですから、菊花賞に出走して欲しかった1頭。う〜ん、もし万が一菊花賞への出走が叶うならこの馬が◎候補ですね。

6着の◯ベストアプローチは4コーナー手前での手応えが青葉賞のときとは違っていました。あそこでポジションを押し上げられないと苦しくなります。これは休み明けも影響しているのかもしれないですし、藤原英厩舎のひと叩きらしい負け方でした。神戸新聞杯のレースが終わったときに、「ベストアプローチが着外に飛んだから、ステファノスの好走確率が上がったな〜」などとぼんやりと考えていたら……。藤原英厩舎のメインは神戸新聞杯ではなくオールカマーだったのですね……。

 

まとめ

ダービー馬としての貫禄をまざまざと見せつけたレイデオロは、ジャパンカップでキタサンブラックやサトノクラウンなど古馬のトップクラスと初めて争います。東京芝2400mだとサトノクラウンは宝塚記念よりもパフォーマンスが上がるはずですから、この強敵相手にレイデオロがどのようなレースをするのかが楽しみになりましたね。

それにしても菊花賞はどうなってしまうのか……メンバーもはっきりとはしない段階から不安が先立ちます。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。