GⅢ小倉2歳('17年)は名繁殖牝馬Ameliaの仔アサクサゲンキが勝利ーー回顧

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夏の小倉開催の最終週を飾る2歳限定の重賞「GⅢ小倉2歳(芝1200m)」は、3番人気のアサクサゲンキ(2歳牡馬音無厩舎)が好位の外目から直線で抜け出しての押し切り勝ち。2着には好位の直後から差してきたアイアンクロー、3着は中団から馬場の真ん中をついて差したバーニングペスカが入線しました。勝ちタイムは1分09秒1(良)。

 

名牝Amelia産駒のアサクサゲンキが初重賞制覇

アサクサゲンキの母Ameliaは、Green Desert、Archなどの種牡馬が出るCourtly Dee牝系の出身。Alyder、DixielandBandと代々名種牡馬がかけられ、ピカピカの良血馬と言えるこの母はすでに2勝を上げた現3歳のラビットラン(父Tapit)を出しており、名繁殖牝馬への道を着々歩んでいます。

アサクサゲンキの父Stormy Atlanticは現在、北米のサイアーランキング82位(BloodHorse.com)につける中堅の種牡馬。父Storm Cat×Seattle Slewという配合で、いかにもコテコテの北米ダート血統です。この馬は父がどうこうというよりも良質な母の血で走っている馬で、どんな種牡馬をつけてもAmeliaであればほぼ外すことはないでしょう。

半姉のラビットランは吉田和子氏の所有馬で、この後は繁殖牝馬として輝ける未来が待っています。アサクサゲンキは牡馬ですから繁殖牝馬になることはできず、だからこそ、吉田和美氏が所有しなかったのだと言えます。今後この馬がGⅠを勝てるかどうかはわかりませんが、名門牝系の出身として血が受け継がれるとするなら、素晴らしいことですね。

GⅢ小倉2歳S('17年)はSpeightstown産駒の好配合馬モズスーパーフレアに◎をーー予想 - ずんどば競馬

 

凡戦と言われても仕方のない1戦

小倉2歳ステークスの勝ちタイム1分09秒1は、同日の2歳未勝利でマークされた1分09秒0より0.1秒、3歳未勝利の1分08秒7より0.4秒劣ることから、「凡戦」と評価する人が多いでしょう。以下の表は上記3レースの前後半3Fのラップです。

 

小倉2歳S 勝ちタイムと前後半3Fのラップ

勝ち時計 着順 人気 馬 名 上り
1:09.1 1 3 ワンアフター 35.7
2 5 アドマイヤスカイ 35.6
33.3 - 35.8 3 7 アイファープリティ 35.4

 

2歳未勝利 勝ちタイムと前後半3Fのラップ

勝ち時計 着順 人気 馬 名 上り
1:09/0 1 2 アンヴァル 34.9
2 1 ラブカンプー 35.2
34.0 - 35.0 3 5 ライリー 35.4

 

3歳未勝利 勝ちタイムと前後半3Fのラップ

勝ち時計 着順 人気 馬 名 上り
1:08.7 1 1 マジョラム 34.3
2 2 サンブリリアント 34.9
33.8 - 34.9 3 7 タガノハウオリ 34.7

小倉2歳Sの前半3Fは33.3とかなり速く、2.5秒の前傾ラップは3つのレースのなかでもダントツのハイペースとなりました。逃げ・先行馬にとっては苦しい流れで、かかり気味に2番手を追走した1番人気のモズスーパーフレアは直線で失速。レースの上りがかかり過ぎたために瞬発力で差すタイプの馬にも不向きでした。

レースのラップは11.8 - 10.2 - 11.3 - 11.6 - 12.0 - 12.2と、残り800mから少しずつ減速していくダートの短距離戦のような流れ。スピードだけではなくパワーも問われるレースとなりました。これだと、どうしても速い時計は出ません。凡戦と言えば凡戦ですが、レースの時計だけで判断するのは危険と言えるでしょう。

 

Speightstown産駒のアレコレ

小倉2歳Sで1番人気に支持されたモズスーパーフレアの父は、芝・ダートを問わずに日本でも素質馬を出しているSpeightstown。今春のNHKマイルC2着のリエノテソーロがその代表産駒で、日本での出走数は少ないものの、高い勝ち上がり率を誇るのがその特徴です。

小倉2歳Sと同日に行われた2歳OPのすずらん賞(札幌競馬場 芝1200m)で、Speightstown産駒のモルトアレグロが2着と好走したように、この父は早い時期から活躍できる豊かなスピードを確実に仔どもたちに伝えます。Gone West系らしい素軽いスピードとパワーが武器で、1400m以下の距離であれば芝・ダートは問いません。大物感のある産駒は少ないものの、3歳春までに2勝は計算できる手堅さがあり、モズスーパーフレアもローカルのスプリント重賞であればぶっこ抜けるかなと思ったのですが、今回はレースで折り合うことができませんでした。

モズスーパーフレアとモルトアレグロの馬体を見ても、2頭ともにいかにもスプリンターらしい身体つきで、レースぶりに味があるのは母系にスタミナの入る後者。小倉2歳Sの展望記事でも書いたように、モズスーパーフレアはBold RulerとTom Foolをしつようにクロスした配合で、だからこそ小回りを器用に加速できるかな……と期待をしました。Tom Foolは気性的な難しさがある血ではないので、小倉2歳Sで折り合えなかったのはどの2歳馬に言える「デビュー2戦目の難しさ……」につきます。

3歳になってからも楽しめるのはクロスのうるさくないモルトアレグロが優勢とは言え、モズスーパーフレアも単調なスピード馬ではないはずで、仕切り直しとなる次走に注目です。

モルトアレグロの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

ソニンク牝系のヴァイザーは4着

今夏の函館スプリントSをレースレコードで勝ったジューヌエコールと同じソニンク牝系のヴァイザーは4コーナーから直線にかけてスムーズさを欠く走りながらも4着まで押し上げました。この牝系は直線の長いコースでズバッとキレるよりも、パワーとスピードで小回り・内回りをゴリゴリと先行するのが合っていますから、今走はノーカウントでOK。

新馬戦からプラス12kgの馬体も決して太くはなく、小気味の良いフットワークで走るので、現状は1400mがベストかなという印象を受けました。後は阪神1400m内回りがベストの舞台で、セカンドベストは京都芝1400m内回りでしょう。牡馬ですから2歳の大目標は朝日杯FSとなりますが、ノヴェリスト産駒というよりは「ソニンク牝系」が強く出た体型と走りで、1600mの外回りコースだとキレ負けしてしまう恐れは十分にありますね……。

ただ、好素質馬であることは間違いなく、今年の小倉2歳Sが「凡戦」と判断され、次走で人気を落とすようであれば、直線の短いコースに出走することを条件に積極的に狙いたい1頭です。

 

その他の気になった馬について

最内枠に入ったイイコトズクシは直線でインから追い込んで5着。この馬は母父アフリートという血統で馬込みが苦手なので、今回は枠順が厳しすぎました。次走で揉まれない外枠に入ったのなら積極的に狙いたい1頭です。

半兄にダートのオープン馬スーサンジョイ(父エンパイアメーカー)がいるスーサンドンは父がフサイチセブン(Fusaichi Pegasus直仔)に替わり、Northern Dancer系の中でもパワー型のVice Regentの血を引くことから、よりパワーに寄った馬。次走はダートに矛先を変えるのであれば狙いたいですし、最後の直線に急坂が待っている阪神であれば芝でも……。兄にてワンペースの走りなので、スローからの瞬発力勝負に持ち込まなければ……。

 

まとめ

札幌2歳Sの2着ファストアプローチの母ジョリージョコンダはサトノクラウンの全姉という良血馬で、小倉2歳Sを勝ったアサクサゲンキの母Ameliaも間違いなく名牝。今週のご当地2歳重賞シリーズはいずれも「偉大な母」の仔どもたちが好走しましたね。それにしても、ジョリージョコンダもAmeliaもどんな父でも「走る仔」を出してしまうその遺伝力の強さには目を見張るものがあります。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。