今春のGⅠオークスを制した3歳牝馬のソウルスターリングが古馬+牡馬のGⅠ馬と対戦することで注目を集めたGⅡ毎日王冠(東京芝1800m)は、M・デムーロ騎手の手綱に導かれたリアルスティールが直線で鋭く伸びて完勝し、天皇賞・秋の優先出走権を獲得しました。2着にはリアルスティールと同じように直線外から伸びてきたサトノアラジン、3着にこれも後方から伸びたグレーターロンドンが入線。勝ちタイムは1分45秒6(良)。
リアルスティールが上り3F32.6で完勝する毎日王冠
4コーナーから直線半ばにかけて、スパートするタイミングを計っていたM・デムーロ騎手と気持ち良さそうに走っていたリアルスティールは、上り3F32.6の鋭さで完勝しました。2、3着馬が今春の安田記念の1、4着馬ですから、今年の毎日王冠はマイルの適性を問われるような質のレースになったのは間違いありません。速い時計の出る馬場で、後半の4Fが45.6だとマイラー>中距離馬という結果になります。
ジェンティルドンナやラブリーデイなどのピッチ走法の馬が直線の長い東京コースで好走するには、俊敏な加速(スムーズにギアチェンジできる)が活きる後傾くラップになることが必要です。リアルスティールが2着と好走した昨年の天皇賞・秋がスローペースだったことは記憶に新しいところでしょう。東京やドバイなどの直線の長いコースで好走していることから、今後もワンターンのコース形態に絞ったローテーションが組まれるのでしょうが、リアルスティールのベストコースは中山芝1800mです。もちろん、昨年と同じように緩いペースになるなら天皇賞・秋も有力と言えます。
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リアルスティールの天皇賞・秋の鞍上は?
俊敏に加速するリアルスティールと勝負所におけるギアチェンジのスムーズなM・デムーロ騎手は手が合っていて、できれば次走の天皇賞・秋もコンビを継続したいところです。
堀宣行厩舎の管理馬サトノクラウンは、天皇賞・秋→ジャパンカップ→香港ヴァーズとすべてR・ムーア騎手が乗れますし、この2頭の乗り替わりは両陣営にとってプラスになります。後は堀先生がムーア騎手をブッキングできるかどうか……。
それがムリなら素直にムーア騎手をリアルスティールに乗せるのが1番でしょう。昨年のジャパンカップでこのコンビは実現していますし、もうこの馬の特性をムーア騎手はつかんでいるはずですから、心強いパートナーと言えます。
現5歳牡馬は近年のなかでもっともハイレベルな世代
それにしても、ドゥラメンテ、キタサンブラック、リアルスティール、シュヴァルグランの現5歳は近年のなかでもっともハイレベルな世代で、惜しまれるのはアンビシャスのオーストラリア移籍とリアファルの脚部不安による長期戦線離脱……。今年の天皇賞・秋はドゥラメンテを除いた馬たちの対決が楽しみだったのですが……。
◎ソウルスターリングは8着
最内枠からジワリとハナに立ったソウルスターリングは、直線でマイラータイプの馬に次々と交わされて8着に敗退。3歳牡馬ダイワキャグニー(高速決着が得意な馬)に直線で競り落とされたことを観ても、ソウルスターリングが能力を出し切ったとは言えない敗戦となりました。
桜花賞を3着と敗退したことから、やはり1600〜1800mの距離でマイラーとしての質が問われるようなレースになるとどうしても脆さが出てしまいますね。ただ、秋初戦のレースでルメール騎手が後続に脚を使わせるようなペースの「逃げ」を打つのは難しく、「どれだけキレる脚を使えるのか試した」らキレ負けしたという内容。このまま天皇賞・秋に向かうのであれば、前後半1000mが59.0 - 59.0のイーブンペースで好位から抜け出すようなレースをしたいですね。
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負けたからこそ分かることもある
ソウルスターリングの父Frankelのように14戦14勝の無敗の名馬というのはそうそう出るものではなく、コースもペースも馬場も不問のスーパーホースは一握りです。藤沢和雄調教師とルメール騎手のコンビであれば、今回の敗戦を糧に次走はきっちりと立て直しを図れるはず。ソウルスターリングは今年の凱旋門賞を勝ったEnableと同じくGalileoの孫ですから、上り32秒台の世界ではノーチャンス。天皇賞・秋は上り3F34秒台で勝てるようなレースプランを立てたいところでしょう。
まだ成長途上
毎日王冠でのソウルスターリングの馬体重は前走から+6kgの480kg。パドックでの発汗が目立っていましたし、まだ細っそりとした身体つきでした。一度レースに使われたことで馬体に身が入りパンとしてくれば、あのしなやかで小気味の良いストライドが戻ってくるはずです。母スタセリタの牝系は奥手の血統なので、まだまだこれから成長途上してくるでしょう。
1600〜1800mベストの馬が上位を独占
1着〜5着までを1600〜1800mベストの馬が独占したように、今年の毎日王冠はマイラーが活躍する質のレースとなりました。もともとスローペースになりやすいレースだったことに加え、今年は安田記念からの直行組が多かったことも影響したのでしょう。
サトノアラジン:2着
サトノアラジンはいかにも前哨戦的なレース運びで、大外枠からスムーズにスピードに乗れたのが好走の要因。末脚を出し切れたときはほぼ好走するタイプですが、直線の坂を駆け上がってから、ピッチ走法のリアルスティールと脚色が同じになってしまったのは休み明けによるものなのか、それとも距離によるものなのか……。天皇賞・秋だと毎日王冠のようにペースが緩んでくれないと苦しそうです。
名繁殖牝馬マジックストームの仔は、ラキシスもサトノアラジンも古馬になってからグングンと力をつけるので、現3歳のフローレスマジックも来年が楽しみですね。
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グレーターロンドン:3着
順調に使えないなかで、安田記念に続く好走を見せたグレーターロンドン。前走はマイルGⅠを1分31秒台で走破し、1800mの今走は上り3F32秒台で3着ですから、現時点では1600mがベストのマイラー。鋭い脚に定評のある同馬ですが、GⅠを勝ち切るにはリアルインパクトのように長く末脚を使う戦法にモデルチェンジする必要があります。かかる馬ではないので、今後は母ロンドンブリッジのパワーを前面に押し出すようなレースに期待したいですね。
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ダイワキャグニー:4着
ワンターンの左回りは、ダイワキャグニーのスピード能力を最大限に活かせるコース。高速馬場+後傾ラップ+スムーズに先行できたとは言え、今年の毎日王冠はこの馬が4着に残ってしまうレベルのレースでした。
ヤングマンパワー:5着
外枠から揉まれずに先行し、後傾ラップになったのはOKでしたが……ヤングマンパワーにはこのレース上りだと速過ぎます。少なくともダイワキャグニーよりも早く仕掛けないと……。ただ、大きな力の衰えはなく、いよいよ本調子に近づいてきましたね。
天皇賞・秋へ向けて
天皇賞・秋はキタサンブラックがペースメイクをするでしょうから、少なくとも大阪杯のような前後半イープンのペースで、上り34秒台の決着になる公算が大。人気を背負うであろうもう1頭のサトノクラウンもロングスパート戦が得意ですし、さすがに全体のペースは引き上げられるでしょう。
(✳︎最近のJRAのレースは想定以上にペースが緩むので、楽観はできないものの……)
今年の毎日王冠で上位に入線した馬たちは東京コースの2000mであればスローペースがベター。もし、天皇賞・秋が締まったペースになるのであれば苦しくなります。
反対にら上り3Fが34秒台のゾーンのレースになるのであれば、ソウルスターリングにはチャンスが出てきます。馬体重をさらに増やして出走できるようなら、楽しみですね。
まとめ
ソウルスターリングがアッサリと負けてしまった今年の毎日王冠ですが、まだまだ3歳牝馬ですし、次走は1番人気のプレッシャーからは解放される気楽な立場になります。今走は敗因がはっきりとしているので、陣営としてもそれほどショックを引きずらないでしょう。ソウルスターリングがふたたび輝きを取り戻すことができるのか、天皇賞・秋はそのレースぶりに注目です。
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