優勝馬にGⅠ天皇賞・秋への優先出走権が与えられるGⅡ毎日王冠が10月8日(日)、東京競馬場の芝1800mで行われます。今年のオークス馬ソウルスターリングが秋の初戦を古馬+牡馬相手のレースに定めました。昨年のダービー馬マカヒキ、今春の安田記念を制したサトノアラジン、ドバイターフを勝ったリアルスティールなど1600〜2000mのチャンピオン級の馬がズラリと揃い、ソウルスターリングにとっては試金石となる1戦。来年、海外遠征を視野に入れる怪物牝馬がここでどのようなレースをするのか、注目が集まります。
10月8日(日)の東京芝は高速馬場に
10月7日(土)の東京競馬場のメインは2歳重賞「GⅢサウジアラビアロイヤルC」が行われ、勝ったダノンプレミアム(2歳牡馬・中内田充正厩舎)の走破タイムが1分33秒0の2歳レコード。金曜日の雨が残った「稍重」のコンディションでも好タイムが出たことから、カラリと晴れる日曜日は芝が乾きさらに速い時計が出ることが想定されます。
この馬場だと前半を速いタイムで入っても、後半がそれほど落ちずに上りの速い決着になるはずです。スピードの持続力に長け、500m超の直線をしっかりと伸び切れる馬をピックアップしたくなりますね。
分かり合えているからこそ
今年の毎日王冠に出走する12頭のなかで、前走からの乗り替わりがないのは半数の6頭。さらに、デビューから全戦で手綱を取っているのは、ソウルスターリング+ルメール騎手とダイワキャグニー+北村宏騎手のコンビのみ。
ルメール騎手が日本で通年騎乗をすることが決まったときのインタビューで、「デビューからクラシックまで乗り続けられることが嬉しい」と言っていたことが今春のオークスとダービーで実ったように、騎手と馬とがお互いに分かり合えているからこそ「勝てる」レースもあるのです。
最内枠に入ったソウルスターリングは逃げるのか?
ソウルスターリングは前走のオークスと同じく、レースで揉まれるおそれのある最内枠に入りました。ルメール騎手がソウルスターリングをどの位置でレースの流れに乗せるのかはスタートを切るまでわかりませんが、お互いのコンタクトに不安がないからこそ、かかることをおそれずに前々の位置をとることができますし、「逃げる」という選択肢も取れるのです。
今年の毎日王冠は純粋な逃げ馬が不在。ヤングマンパワー、ダイワキャグニー、リアルスティールと前々からレースを進められる馬が揃ったものの、どの馬が逃げるのかははっきりしません。このようなメンバーが揃ったときに、ずっとコンビを組んでいるソウルスターリングとルメール騎手は有利になります。イザとなればこのコンビは逃げることだってできるのですから。
ヨークシャーオークスのEnableのように
今年の凱旋門賞を制したイギリス調教馬の3歳牝馬Enableは、少頭数のヨークシャーオークスで押し出されるようにハナに立つとそのまま押し切り勝ちを上げました。
来年に海外遠征のプランがあるソウルスターリングにとって、毎日王冠は天皇賞・秋の前哨戦としてだけではなく、今後に向けての大切なレースとなります。もし、凱旋門賞馬Enableとソウルスターリングが海外のどこかのレースで対決することになるのなら、毎日王冠を「逃げ」て勝ち切った経験が生きることになるでしょう。
◎ソウルスターリング 3歳牝馬
父:Frankel
母:スタセリタ(母父:Monsun)
厩舎:藤沢和雄(美浦)
生産:社台ファーム
阪神JFを無敗で制した「天才少女」は、桜花賞の3着で初めて戦歴に土がついたものの、オークスをきっちりと勝ち、3歳女王の座に就きました。夏を休養にあてて迎える秋は同年代の牝馬との戦いとなる秋華賞ではなく、古馬+牡馬との走る天皇賞・秋を目標に定めました。
斤量差があるとは言え、3歳秋の時点で歴戦の古馬と対戦することは並大抵のことではありません。ただ、この馬が来年に海外遠征をするなら、そして、Enableと戦うことを考えるのであれば、ここは通過点にしたいレースです。毎日王冠は、競走馬としてだけではなく繁殖牝馬としても素晴らしい価値を秘めている「ソウルスターリング」に◎を。
ソウルスターリングの血統やその素晴らしいレースぶりについては過去にいくつか記事にしてきたので、詳しい解説はそちらをお読み下さい。
才女ソウルスターリングが毎日王冠へ出走ーーエネイブルと対戦することはできるのか? - ずんどば競馬
美しく、そして大胆にソウルスターリングが第78回優駿牝馬(オークス)を戴冠 - ずんどば競馬
◯リアルスティール 5歳牡馬
父:ディープインパクト
母:ラヴズオンリーミー(母父:Storm Cat)
厩舎:矢作芳人(栗東)
昨年の国際GⅠドバイターフの勝ち馬。ドゥラメンテ、キタサンブラック世代の素質馬として、今秋は国内GⅠ初制覇を目指します。昨秋の天皇賞・秋はモーリスの2着、距離が長かったジャパンカップはキタサンブラックの5着と中距離路線における大関級の1頭です。
ディープインパクト×Storm CatはキズナやエイシンヒカリなどのGⅠ馬が出る好相性の配合。リアルスティールの祖母Monevassiaは名種牡馬Kingmamboの全妹で、そこにStorm Catを配されたのが母ラヴズオンリーミー。つまり、名血・名種牡馬が代々重ねられたのが本馬です。この名牝母系はマイラーらしいパワーにあふれていて、それがディープインパクトの非力さをしっかりと補っています。リアルスティールの本質がもっとも現れたのは、ドゥラメンテが豪快に外から差し切った皐月賞で2着になったあの先行抜け出しのレース。しなやかだけれども小気味の良いこの馬のピッチ走法はジェンティルドンナやラブリーデイに似ていて、直線の長い東京コースであれば後傾ラップがベスト。
近年でもっとも世代間レベルが高かったのは、ドゥラメンテやキタサンブラック、そしてリアルスティールの現5歳世代。毎日王冠の行われる東京芝1800mは、リアルスティールがドゥラメンテを下した共同通信杯と同じ舞台です。今回のメンバーであれば、前半がソコソコ緩みのないペースになったとしても、後傾ラップになるはずで、競走馬のギアをチェンジすることが得意なM・デムーロ騎手もこの馬に合っています。ソウルスターリングを負かせるとしたら、国際GⅠ勝ちのあるリアルスティールだけだと考えて◯の印を。
その他の有力馬
3歳牡馬のダイワキャグニーとウインブライトは世代間レベルの差を考えるとここで通用するとは考えにくく、無印に。
昨年のダービー馬マカヒキは友道厩舎+内田博幸騎手というのは、どう控えめに言っても「騎手を確保できなかった」と捉えるべきですし、ここのところ芝の重賞で好結果の出ていない鞍上も不安です。
グレーターロンドンは安田記念後は自厩舎での調整。同厩舎の看板馬ルージュバックは外厩帰りでしか好走していないように、グレーターロンドンのこの調整過程は不安が先行します。
サトノアラジンは高速馬場で後傾ラップになれば1800mでも対応できるでしょうが、秋のGⅠに向けてのステップレースだと考えると、後方からどれだけ脚を使えるのかというレースをするでしょう。
△ヤングマンパワーは揉まれない外枠で、高速馬場+後傾ラップと好走できる条件が揃いました。勝ち切るまではどうかもこのメンバーであれば3着内は十分にあり得ます。△ヒストリカルはピッチ走法なので、小回りであればペースが流れてもOKで、東京なら昨年の毎日王冠のようにスローがベスト。今回は後傾ラップになる可能性が高く、昨年のように3着になる可能性も十分です。
買い目
◎と◯を1、2着に固定した3連単を。
3連単
1着:1. 8
2着:1. 8
3着:5. 9
まとめ
ソウルスターリングが毎日王冠から始動。この天才少女が古馬+牡馬相手のレースをEnableのように楽々と突破し、天皇賞・秋へと向かうことができるのか、馬券以上だけではなくそのレースぶりに注目です。
皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。