6月の阪神競馬場は春のグランプリ・宝塚記念が掉尾を飾る1ヶ月間の開催。その開催初日に組まれているのが、宝塚記念へのステップレースとなるGⅢ鳴尾記念(阪神芝内回り2000m)です。
今年の鳴尾記念は出走が10頭と寂しい顔ぶれになったものの、実力の拮抗したメンバーが集まり混戦模様。現役最強馬と言われるキタサンブラックの待つ宝塚記念へ向けて、高いパフォーマンスを見せる馬が現れるのか?注目の1戦になります。
6月開催の阪神競馬場の馬場
6月開催の阪神競馬場は梅雨の時期にあたること、次開催(9月中旬)までの期間が他の競馬場に比べて短く、芝の養生期間が十分にとれないことなどから、路盤を柔らかくするエアレーション作業は実施していません(エアレーション作業が実施された場合はJRAのHP内「馬場情報」にて記載されます)。
1年を通して「時計のかかりやすい」馬場と言われる阪神の芝コースはエアレーション作業が実施されないため、開幕週は内有利、開催が進むにつれて外差しというのがデフォルトです。
今年も開幕週は時計が多少かかっても内枠+インコース有利の前提で予想を組み立てます。
GⅢ鳴尾記念は内回り芝2000m
鳴尾記念は阪神の内回りコースを使用する芝2000mの中距離戦です。内回りコースはホームストレッチの4角過ぎからゴールまでの長さが356.5mと外回りの473.6mに較べて100m以上短いのが特徴で、また、3〜4角のコーナーもカーブが外回りよりもきついため、ストライドで走る馬よりも器用にコーナーを立ち回れるピッチ走法の馬に向いています。
今年の出走馬をピッチとストライドに分けると
今年の鳴尾記念に出走する10頭の内、ピッチとストライド走法に分けると以下の通りになります。
ピッチ走法
スピリッツミノル
デニムアンドルビー
レッドソロモン
スピリッツミノルは父ディープスカイ×母父ラムタラで速い脚に欠ける緩慢ピッチ走法。抜群のスタミナを誇るKey to the Mintからも急加速ができるピッチではありません。
デニムアンドルビーは3歳時のフローラSとローズSの1着を観てもストライドが伸びるタイプでしたが、古馬になってからは母系のパワーが発現して来たのかスローペースをピッチで捲るタイプへと変わっています。
レッドソロモンは無駄のない脚さばきで、いかにも内回り・小回りが合うタイプのピッチ走法です。
ストライド
ラストインパクト
バンドワゴン
スマートレイアー
ラストインパクトは持続力に優れたストライド走法。びゅんと反応ができない分、ペースがそこそこ流れるレースに向くタイプです。
バンドワゴンはダービー2着のスワーヴリチャードの半兄で、しなやかなストライド走法。前走は、阪神内回りをイン差しで好走しましたが、本来は外回り向きのタイプ。
スマートレイアーは古馬になって母系のスタミナが発現した分、しなやかさが失われた分だけ先行できるようになったストライド走法。
前脚の搔き込みが強くややピッチ
スズカデヴィアス
ステイインシアトル
ミュゼエイリアン
この3頭は前脚でぐいっと搔き込んで走るので、そこまで脚の回転の速いピッチではないですが、ストライドが伸びないという点では共通しています。直線の長いコースでも先行すれば良さが出るタイプで、どちらかと言えば内回りがベターな馬たちです。
前脚の搔き込みが強いストライド
マイネルフロスト
マイネルフロストはストライドで走るのですが、母父グラスワンダーの影響からか前駆が勝っているので先行脚質に出ています。父ブラックタイドからバキューンと外回りでキレるストライド走法ではなく、コーナーで捲る脚があるため内回り>外回りという適性。
しなやかなストライドタイプの馬は……
上記の馬の中で、しなやかなストライド走法で走る馬はバンドワゴンが挙げられます。3〜4角のペースが上がるところで、どうしてもペースアップができずに置かれてしまうおそれがある(コーナーでペースアップしないような展開になればOK)この馬にとって、阪神の内回りは適性としては外れており、評価を下げたい1頭。
鳴尾記念の予想
10頭と少頭数ながら前に行きたい馬が揃った今年の鳴尾記念。逃げる馬がどれなのか、どのようなペースでの逃げになるのか、有利なインのポケットに入るのはどの馬なのか、そこが予想のポイントになります。
展開
内からマイネルフロスト、外からステイインシアトルとミュゼエイリアンが上がっていっての先行争い。その後ろはM・デムーロ騎手のスタートが決まればスマートレイアー、岩田騎手のレッドソロモンもインコースを取り切るために前へ取り付きます。
外枠に入った武豊騎手は内へ切り込んでいくためにもかなりスタートから出して行くことを考えると、マイネルフロストとの競り合いはなくステイインシアトルがハナヘ。外からミュゼエイリアンが2番手につけて、マイネルフロストがインのポケットに入るのか外目に出すのかは五分五分でしょう。
スマートレイアーは外目をスムーズが理想なので4、5番手に入り、岩田騎手がいつものインに固執するならレッドソロモンは先行勢を見る形で内へ。
武豊騎手の逃げですから、3角過ぎからのペースアップで差し追い込み馬には厳しい展開になります。
◎レッドソロモン 5歳牡馬
3歳時に鳴尾記念と同じ舞台の若葉ステークスを勝利したように、内回りと小回りコースでは(5 - 0 - 1 - 2)の得意条件。メイショウサムソン産駒ながら時計の速い決着もOKです。
岩田騎手がすっとインのポケットを確保できればチャンスは十分にあります。ステイインシアトルの逃げをミュゼエイリアンとマイネルフロストが突ついてくれるのであれば、4角ではインコースにスペースができるのでそこをずばっと差してくることを期待しての◎を。
◯ミュゼエイリアン 5歳騸馬
3歳時に阪神外回り1800mの毎日杯を勝っている実力馬です。菊花賞後に1年近い休養があり、復帰後はなかなか結果を出せませんでしたが、ここ数戦は見所たっぷりの競馬をしています。
前脚を搔き込んで走るので、時計のかかる馬場+最後の急坂はドンと来いのタイプ。今回はステイインシアトルの逃げを見ながら番手で競馬ができるのが有利で、鞍上の松山騎手が強気に乗れればチャンスは十分に。
キレるタイプの馬ではありませんから、3角過ぎからペースを上げて粘り込みを図りたいところでしょう。
▲ステイインシアトル 6歳牡馬
ステイゴールド産駒らしく、内回り・小回りをパワーで捲る競馬が合っている1頭。前走の福島民放杯はハイペースに巻き込まれながら6着と大きく崩れなかったところに成長が窺えます。6歳馬ながら脚元が弱い関係でまだ10戦しか戦っていない馬。1戦1戦が勝負の馬ですから、池江寿調教師がきっちりと仕上げて送り出して来ていることは間違いありません。
内回りの阪神はベストの舞台で、少頭数のこのメンバーであればペースを握れるアドバンテージが大きいのが魅力。開幕週の馬場を味方につけての粘り込みに期待します。
以下は3着候補として
△スマートレイアー
年を重ねるにつれて母系のスタミナが発現し、キレよりも末脚の持続力で勝負するタイプにモデルチェンジしました。ゆったりとしたストライドで走る馬で内回りはマイナス。ただ、勝負所でスピードに乗せるのが巧いM・デムーロ騎手とは手が合うはずで、3着までは確保するのではないか……と。
△デニムアンドルビー
スローペースの追い込み馬で、道中の流れが遅くなりそうな今走はこの馬のキレ味が見られる場面も。福永騎手が馬群を捌いてインをつくことができれば……。
人気のバンドワゴンは……
上位の人気に支持されているバンドワゴンはしなやかなストライドタイプなので、中団から差しに構えるようだと差し遅れるとみて買い目からは外します。
買い目
◎◯▲からの3連単で。
3連単
1着:7. 10. 9
2着:7. 10. 9
3着:7. 10. 9. 8. 6
武豊騎手の巧みなペースメイクで先行勢が残るという方向で馬券を組み立てたいですね。
皆様にとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。