秋競馬の2週目は9月15(土)〜17(祝)の変則3日間開催。中山と阪神の東西で牡馬と牝馬のクラシックのトライアルが行われます。
・ローズS(GⅡ・阪神芝1800m)
→1〜3着馬に秋華賞の優先出走権
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・セントライト記念(GⅡ・中山芝2200m)
→1〜3着馬に菊花賞の優先出走権
ローズSとセントライト記念はGⅠ馬の出走はないものの、春のクラシックを賑わせた実績馬と夏の上がり馬が揃い、好レースの期待できるメンバーとなりました。
週末の天気は雨模様
阪神競馬場と中山競馬場はともに、週末の天気がグズつく予報。そのため、ローズSとセントライト記念が「良」馬場で行われるのかは微妙なラインです。とくに、開幕週の芝コースが「重」馬場となった阪神競馬場は、今週末に雨が降るようだとさらにコンディションが悪くなる怖れがあります。
中山の芝は高速馬場
秋の中山開幕週に行われた秋華賞トライアルの紫苑S(GⅢ・中山芝2000m)は、ノームコアが1分58秒0の好タイムで完勝しました。3歳牝馬がこの好タイムをマークするのですから、中山の芝コースは「高速馬場」と言えます。
ベースとなる芝が「高速」のコンディションとあって、少し雨が降ったくらいでは時計がかかることはありません。また、中山競馬場は排水性が良いため、陽射しが出て気温が上がれば、すぐに時計の速い馬場へと回復します。
前日に重馬場まで悪化した昨年のセントライト記念は、晴れ間が出た当日に「良」まで回復すると、速い上りタイムがマークされました。現在のJRAの芝は「重→良」へと変化したときに、時計が速くなってしまう傾向にあるので、注意が必要です。
重馬場になって影響が出るのは?
もし、阪神と中山で15〜17日に雨が降り続き、馬場が悪くなったとしたら、どのような影響が出るでしょうか?
セントライト記念の1人気が想定されるレイエンダは、前走1000万下の松前特別で札幌の洋芝をこなしていることから、重馬場になったときに大きくパフォーマンスを落とすことはないでしょう。
ローズSの1人気サトノワルキューレはディープインパクト産駒なので、重馬場が不得手な印象を受けるものの、母父Roi Normandが北米の非主流血統で固められ、2代母Ascot Belleがパワーとスタミナを伝えるHyperionの血を豊富(Northern Dancerのクロス)に含んでおり、母系からは重馬場がプラスとも取れます。
✳︎サトノワルキューレは母系の配合から、ディープインパクト産駒としてはキレよりも前々で粘り込むのがのがベター。
ディープインパクト産駒は不利?
ローズSとセントライト記念は多くのディープインパクト産駒が出馬登録をしており、重馬場になるといくらかの影響は出るでしょう。
ディープインパクト産駒はパワーよりもしなやかさに優れているため、一般的には重馬場を苦手します。ただ、母系からパワーを受け取った馬は重馬場に適性を示すことがあるので、「ディープインパクト産駒だから」と切り捨てるのは危険です。
また、現在の阪神と中山の芝は高速馬場(阪神の芝は道悪での開催となったものの、時計が大きくかかることはありませんでした。これはベースが高速馬場だからです)。多少の雨であれば馬場に影響はなく、ディープインパクト産駒であっても十分に対応できます。
重馬場になるとすればローズS
重馬場になるとすれば、セントライト記念よりもローズSでしょう。阪神は前週に重馬場まで悪化しており、週末に雨が降るようだと……。ローズS出走予定馬の重馬場適性はチェックしておく必要がありますね。
ローズSは重馬場だと上りがかかる
阪神の芝外回りは長い直線(473.6m)とゴール前の急坂が特徴的なコースです。また、3コーナーから下り始める内回りコースと異なり、4コーナーから下り坂となります。
ローズSを含めて近年の阪神外回りコースの上り3Fが速いのは馬場が高速化していることと、4コーナーから直線の半ばにある下り坂でスピードに乗れるからです。
直線の長い阪神外回りは、Mill Reefやトニービン、Nureyevに代表される重厚な末脚が活きるコース。ただ、ローズSは良馬場であれば勝ち馬の上り3Fは33秒台になるのがデフォルトなので、上記の血が力を発揮するのは重馬場になったときでしょう。
✳︎2016年は重馬場だったものの、1着シンハライトの上りは33秒台でした
ローズSは「トニービンもち」?
ローズSが阪神外回りコースで行われるようになってから、トニービンをもつ馬が好走しています。さて、上りの速いレースでトニービンが走れるのはどんなときなのでしょうか?
▼トニービンをもつローズS好走馬
2009年
〔勝ちタイム:1分44秒7〕
〔前半1000m:58.1〕
3着:クーデグレイス(10人気)
上り3F:35.0
通過順位:2 - 2
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2011年
〔勝ちタイム:1分48秒1〕
〔前半1000m:61.7〕
2着:マイネイサベル(10人気)
上り3F:33.3
通過順位:7 - 8
3着:キョウワジャンヌ(7人気)
上り3F:33.7
通過順位:5 - 5
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2013年
〔勝ちタイム:1分47秒7〕重馬場
〔前半1000m:58.2〕
2着:シャトーブランシュ(9人気)
上り3F:35.7
通過順位:17 - 15
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2014年
〔勝ちタイム:1分46秒0〕
〔前半1000m:59.8〕
1着:ヌーヴォレコルト(2人気)
上り3F:33.6
通過順位:4 - 4
2着:タガノエトワール(15人気)
上り3F:33.3
通過順位:9 - 9
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2017年
〔勝ちタイム:1分45秒5〕
〔前半1000m:58.6〕
3着:リスグラシュー(3人気)
上り3F:33.7
通過順位:13 - 15
さて、過去の成績を見れば、トニービン的な重厚な末脚で好走したのはシャトーブランシュとリスグラシューくらいだとわかります。2009年のクーデグレイスはHyperionのスタミナとパワーでの粘り込みですし、2011年は極端なスローペースの上り勝負、2014年のタガノエトワールは内枠を利したのが好走の要因でしょう。
ひとつひとつのレースを紐解けば、トニービン的な持続的な末脚(=上り35秒台でも後方から差せる)が活きたレースは、重馬場だった2013年だけです。つまり、重馬場にならないとトニービン的な血で差せるわけではありません。
✳︎ちなみに、もっとも上り3Fの速いタガノエトワールは、「キングカメハメハ×サンデーサイレンス×トニービン」という配合。これは2冠馬ドゥラメンテと同じで、しなやかさなストライドも伝えます。
今年の注目馬はウラヌスチャーム?
今年のローズS出走馬のなかで、5代血統表にトニービンをもつのはウラヌスチャーム、アンコールプリュの2頭。ゴージャスランチの母系に入るBikalaはHyperionを2本ほど引いていると「トニービンと似た配合」と呼べるのですが、ここでは除きます。
それでは、トニービンをもつウラヌスチャームはローズSを好走できるのでしょうか?
ウラヌスチャームはしなやかなストライド
ウラヌスチャームは母系にSir Ivorなどのしなやかな血が豊富なため、柔らかいストライドで走ります。トニービン的な持続的な末脚というよりも、サンデーサイレンスの瞬発力がONになっており、速い上りを使えるのが最大の長所です。
ウラヌスチャームはここまでに好走したレースにおいて、上り3Fが32〜33秒台の末脚を使っており、「パンパンの良馬場+直線の長いコース+スローの瞬発力勝負」がベスト。ローズSが重馬場になるようだと不安が残ります。
まとめ
ローズSとセントライト記念ともに、パンパンの良馬場になるかは不透明……。それぞれに重馬場適性のある馬を探したいところです。まずは土曜日の馬場をチェックしなければいけませんね。
以上、お読みいただきありがとうございました。