ストライドが輝く東京のダートーーユニコーンS('17年)回顧

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GⅠフェブラリーSと同じ舞台で行われるGⅢユニコーンSは、ダート路線を歩む3歳馬にとって今後を占う「登竜門」のレース。今年はNHKマイルC2着から参戦した牝馬リエノテソーロが1番人気の支持を集めたように、JRAの3歳ダート路線で高いパフォーマンスを見せてきた馬が不在の難解なレースになりました。

1着でゴール板を駆け抜けたのは、道中で中団より後方にいたサンライズノヴァ。直線でしなやかにストライドを伸ばすと、2着以下を突き放して完勝しました。勝ちタイムは1分35秒9(馬場状態:良)。2着にハルクンノテソーロ、3着にサンライズソアが入線し、1番人気のリエノテソーロは7着に敗退。

それでは、ユニコーンSを振り返ってみましょう。

GⅢユニコーンSはストライド走法の馬を探そう!ーー展望として - ずんどば競馬

 

レース内容

ユニコーンSは10R芦ノ湖特別のスタート前に降り出した雨の影響を受け、馬場状態は良の発表ながら「パサパサの乾いたダート」とは言えないなかでレースが行われました。

スタートが切られてダッシュ良く飛び出したのは外のテイエムヒッタマゲとタガノカトレア、そして内のリエノテソーロの3頭。テイエムがハナに立ってペースを落とそうとしたところを、砂を被りたくないシゲルコングが最内から押して押して強引に先手を奪う展開になり、前半の3Fは34.1と速いペースでレースが流れます。

前半の入りが速かったために馬群は縦長になりましたが、3角からはシゲルコングが息を入れながら12秒台のラップに落とし、最後の直線までペースを上げない逃げに持ち込みました。参考までにJRAが公式に発表しているユニコーンSのラップは以下の通りです。

 

ユニコーンS:東京ダート1600m

12.0 - 10.6 - 11.5 - 12.3 - 12.8 - 12.7 - 12.1 - 11.9

 

3〜4角にかけて12.3 - 12.8とペースが緩み、グッとレースのスピードが上がったのは直線に向いてからというのが、このラップからも読み取れます。

リエノテソーロを含む2番手以下の先行勢はこの緩んだペースのなかでもシゲルコングとの差を詰めることなく直線へ入り、中団以降を追走していた馬たちは4角地点でもペースが上がらなかったことから、余力を持って前へ取り付くことができました。

リエノテソーロやサンライズソアといった人気上位の馬たちが4角地点でもペースを引き上げなかった理由は2つ考えられます。

 

1. 前半3Fのペースが速かった

シゲルコングが強引にハナを奪ったことで前半3Fが速くなり、オーバーペースを避けたいという意識が先行勢の騎手に4角でのペースアップを躊躇させました。

 

2. テイエムヒッタマゲが壁になった

2番手でスムーズに追走していたテイエムヒッタマゲはシゲルコングを追いかけることなく4角を回りました。ペースが遅ければ逃げ馬にプレッシャーを掛けるのは番手のテイエムヒッタマゲになるのですが、この馬がペースを上げられなかったことで後ろにいた先行勢も緩いペースに付き合ってしまうことに……。結果として、「テイエムヒッタマゲが壁」になってしまい……。

 

4角地点のペースが引き上げられなかったことで、余力を持って直線に向いた差し馬勢が馬場の真ん中よりも外目を通って伸び、サンライズノヴァが突き抜けて完勝という内容。先行勢のなかでの最先着は3着に入ったサンライズソアで、リエノテソーロは直線で追い出されてもNHKマイルCの時のような鋭い脚を見せることはできずに7着に敗れる結果になりました。

 

1着:サンライズノヴァ 3歳牡馬

父:ゴールドアリュール

母:ブライトサファイヤ(母父:サンダーガルチ)

厩舎:音無秀孝(栗東)

新馬戦以来の東京ダート1600m戦を素晴らしいストライドで駆け抜け、このコースは2戦2勝。首を上手に使い、前肢をグイッグイッと力強く伸ばす走りはいかにも長い直線が合うタイプの馬です。

母ブライトサファイヤの半弟サンライズバッカスもGⅠフェブラリーSを勝った追い込み馬(ストレッチ・ランナー:直線でスピードを上げる差し・追い込み馬のこと)。この母系はサーペンフロ(Sir Ivor直仔)のしなやかさを子孫に伝えるため、直線の長いコースに良績のある仔を出すのが特徴と言えます。

サンライズノヴァは道中のペースが緩んだところを前へ取り付けたという展開の助けがあったとしても、最後まで脚取りが乱れることなく伸び切っての完勝ですから、今後に向けて視界良好と言えるレース内容でした。

前走の鳳雛S(京都ダート1800m)はハイペースを先行して4着と敗れているので、道中一貫して締まったペースになった時に直線の長いコースでも今回のような脚が使えるのかは未知数です。この点が今後に向けてサンライズノヴァの課題だと思います。

レース前の音無師へのインタビューで、ユニコーンSを勝てばJDDへの参戦を示唆するコメントが出ていたこともあり、次走にも注目です。

 

2着:ハルクンノテソーロ 3歳牡馬

父:ファスリエフ

母:トウカイベルタ(母父:ワイルドラッシュ)

厩舎:高木登(美浦)

ストライドで走るハルクンノテソーロにとって、東京コースは適性として合っている舞台でした。ただ、この好走は馬の力だけではなく、鞍上の見事な手綱捌きによるところも大きかった……

スタートで後手を踏み、最後方からの競馬になったハルクンノテソーロと田辺騎手。ここで慌てることなく道中は内目をロスなく追走すると、4角地点で前へ取り付き直線に向いた時はサンライズソアの外へスムーズに出して追い出されます。

田辺騎手の3〜4角、そして直線に向くまでの馬群の捌きは見事で、「楽々と余裕をもって馬を誘導している」ような印象を受けるのは、それだけ馬を動かせる技術に優れているからでしょう。内からスルスルと前へ取り付き、4角から直線にかけてスムーズに外へ進路を取る、このため息が出るほど美しい騎乗を観れただけで、ユニコーンSの馬券代としては十分でした。

ハルクンノテソーロは現状では後肢に較べて前肢が勝っている馬体。もう少し後ろに力が付いてくればスタートもポンと出られるようになるでしょう。脚長のストライド走法なので、小回りよりは直線の長いコースに向いています。

 

3着:サンライズソア 3歳牡馬

父:シンボリクリスエス

母:アメーリア(母父:スペシャルウィーク)

厩舎:河内洋(栗東)

シンボリクリスエスらしい胴の長い馬体で、前脚がすっと伸びるストライド走法の馬。

前走に較べてプラス体重で出てきたことは好感が持てました。ただ、まだパドックを落ち着いて周回することができず、どうしてもここで余計な体力を使ってしまいます。

好スタートから4、5番手の外を追走し、4角ではリエノテソーロに馬体を併せて仕掛けると、直線の坂下からジリジリと伸びますが……。まだ馬体に緩さが残る造りからも、直線ではビュンと反応するというよりジワジワと加速していくタイプ。そのため、今日の流れだと3〜4角にかけてもう少し流れて欲しかったかなとは思います。

大外枠でスムーズに走れたのもこの馬にとっては大きなプラスで、青竜Sで完勝したハルクンノテソーロに逆転されたのは展開のアヤと前走時ほどのデキにはなかったからでしょう。

 

4着:サンオークランド 3歳牡馬

◎に期待した馬。前半3Fが34.1の流れだと中距離馬のこの馬にとってはスタートから後方へ置かれるのは仕方のないところです。

道中でペースが緩んでからもう少し前へ積極的に取り付いていれば、2着もあったかなという内容。直線での伸び脚を観てもやはりストライドで走る馬なので、今後も直線の長いコースに出走してくるようなら狙いたいですね。

角居厩舎の管理馬なので、今後は成長を促しながらこの馬の適性に合ったレース選択をしてくれるはずてすから、長い目で見ていきたい馬です。

GⅢユニコーンSはダービーのようなスローもあり得るメンバーだけにーー予想 - ずんどば競馬

 

リエノテソーロについて

大野騎手負傷による内田騎手への乗り替わりで、ポジショニングもいつもより前に付けました。この位置取りによって、馬群で揉まれることなくスムーズに追走できた反面、速い→遅いという緩急のつくペースに巻き込まれ、直線で再加速を求められる流れになったのが1番の敗因でしょう。

1400mベストのこの馬にとっては、NHKマイルCのような一貫したペースでスピードを問われるレースが合っていて、東京のダートのマイル戦でこの流れだと最後に苦しくなってしまいます。

スピードとパワーを活かすのであれば、古馬との斤量差を考えてもサマースプリントシリーズを目指すと面白いのでは……と個人的には思います。少なくともユニコーンSよりも距離が延長されるJDDやレパードSは厳しいかな、という印象。

この馬の次走には注目ですね。

 

まとめ

前半の600mが34.1と速いペースの序盤戦になったものの、蓋を開けてみれば中弛みのレースになりました。ダート戦としては残り400mの瞬発力勝負になったので、直線に向くまでに余力を残していた馬が瞬発力を活かすレースに。

サンライズノヴァが1分35秒9で鮮やかに勝ち切りましたが、昨年のゴールドドリームや一昨年のノンコノユメほどのパフォーマンスだったのかは「?」が付きます。

サンライズノヴァは広々としたコースが合っているので、次走大井競馬場で行われるJDDに出走するなら、小回りコースへの対応ができるかが試金石になるでしょう。

前走芝→ダート替わりのリエノテソーロはアジアエクスプレスと同じように好走できず……芝とダートの二刀流の馬については、来年以降も疑ってかかった方が良さそうですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。