東京競馬場の芝はダービーの週のレースを観ても速い時計が出ていることが分かります。東京優秀が2分26秒9という遅いタイムの決着になっものの、古馬1000万下の青嵐賞(芝2400m)では2分23秒6の速い時計が出ていたように、まだ高速馬場は継続中です。土日のレース中にまとまった雨が降らなければ、安田記念が行われる今週もこの時計の速い馬場でレースが行われることになります。
今回の記事では、高速馬場で行われる安田記念のポイントをまとめておさらいします。
高速馬場で行われる安田記念のポイント
時計の速い馬場で行われる安田記念のポイントは大きく2つ。
1. スプリンターvs中距離馬
安田記念は春のマイルチャンピオンを決める頂上決戦。そのため、マイラーだけではなく1200〜2000mに距離適性のある馬が集まります。ペースや時計の出方によってはスプリンターでも中距離馬でも走れてしまうGⅠであることから、高速馬場になるかは予想をする上で大切なポイントになるのです。
一般的に言えば、全体のペース(=時計)が速ければスピードのあるスプリンターが、遅ければ追走で脚を溜められる中距離馬が好走できるレンジのレースになります。
1分32秒0の勝ちタイムだとすると
例えば、勝ちタイムを1分32秒0とすると、前後半イーブンのペースは46 - 46(=92秒)。
もし45 - 47の前傾ラップになれば、追走するためのスピード能力が問われることになり、1200〜1400mに適性のあるスプリンターが台頭する可能性が高まります。反対に47 - 45の後傾ラップであれば、追走で脚を溜められる中距離馬にもチャンスが生まれるのです。
同じ勝ちタイムだったとしてもペースによっては距離適性の差が結果を左右することもあり得ます。
高速馬場だとスピード能力が問われる
高速馬場でのレースは自然とスピードが出て、全体の時計が速くなることがままあります。レースレコードになった今年の皐月賞も、先行争いが激しくなったわけではないのにペースはそこそこ流れ、結果としてマイル戦で好走していたアルアインとペルシアンナイトのワンツーになりました。高速馬場でのレースはスピード能力も問われることになるのです。
今年の出走馬のなかでは……
今年の出走馬のなかで、スプリンターと中距離馬を分けるとどうなるでしょうか?
(ここでは、1400m以下をスプリンター、1800m以上に適性のある馬を中距離馬とします)
スプリンター
サトノアラジン
レッドファルクス
中距離馬
アンビシャス
ステファノス
ディサイファ
ロゴタイプ
レッドファルクスはスプリンターズS1着、高松宮記念3着と1200mのGⅠで好走しているものの、おそらく1400ベストのスプリンター。高速決着にも強く、今の東京コースの馬場はずんどばにハマる可能性があります。
サトノアラジンは姉のラキシスよりも牡馬の分だけパワーの勝ったタイプ。マイルのGⅠでは詰めの甘さを見せることからも1400mベストのスプリンターと言えるでしょう。
アンビシャス、ステファノス、ディサイファの3頭は今年GⅠに昇格した大阪杯(阪神芝2000m内回り)からの参戦となります。戦歴を見ても2000m前後の距離で好走している中距離馬。マイルの高速決着で、追走に脚を使ってしまうようだと伸びきれないシーンも考えられます。
昨年の安田記念の覇者ロゴタイプは1800ベストの中距離馬。その時の勝ちタイムが1分33秒0だったことからも、中距離馬が好走できるレンジのレースに持ち込んでの勝利でした。
今年は全体の時計が速くなるのか?
今年、東京競馬場で行われた芝のGⅠのなかで、ピュアな逃げ馬が不在だったヴィクトリアマイル、オークス、ダービーともにかなりのスローペースになりました。
安田記念もどの馬が逃げるのか予想できないだけに、高速馬場であってもスローになる可能性はあります。
もしペースがイーブンからややスローの範囲におさまり、1分32秒後半の決着になるようであれば、上記の中距離馬にもチャンスのあるレースに。
2. 上りの脚と位置取り
安田記念が1分31秒台の高速決着になったのは3回あります。
'13年 1分31秒5
1着 ロードカナロア
上り:33.8
通過順位:8 - 8
2着 ショウナンマイティ
上り:32.8
通過順位:15 - 14
3着 ダノンシャーク
上り:33.2
通過順位:11 - 11
'12年 1分31秒3
1着 ストロングリターン
上り:33.8
通過順位:13 - 12
2着 グランプリボス
上り:33.9
通過順位:11 - 10
3着 コスモセンサー
上り:34.8
通過順位:4 - 4
'10年 1分31秒7
1着 ショウワモダン
上り:34.6
通過順位:10 - 8
2着 スーパーホーネット
上り:34.2
通過順位:15 - 15
3着 スマイルジャック
上り:34.3
通過順位:10 - 14
注目は'10年〜'13年にかけて上りの速さが増しているということです。全体的な時計と1〜3着馬の通過順位が中団〜後方という傾向は大きく変わっていないのにも関わらず、上りの速さだけが変わっているというのは、馬場が高速化しているからだと考えられます。
また、東京競馬場で初めてエアレーション作業(路盤を柔らかくするために開催前に行われる作業)が行われたのが'09年。エアレーションによって柔らかくなった馬場は、開催が進むにつれて馬に踏み固められ少しずつ硬度が増します。この効果が出たのが'12と'13年とすると、上りの速さも納得できるものです。
'13年のレースを観ると分かりますが、先行勢の後ろに控えた馬たちは最後の直線でみな伸びていて、どれだけ上りの速さを出せるのかが問われたレースに。高速馬場になれば直線で速い脚を使える馬が有利になるので、その点も頭に入れて予想をしたいところですね。
まとめ
ヴィクトリアマイルもオークスもダービーも終わってみればスローペースになり、もう東京競馬場で行われるGⅠはほとんど平均よりも速く流れるようなことはないのだな、と改めて痛感したこのGⅠ5連戦。
そのなかで、安田記念は中弛みのないペースで流れることが多いレースですから、今年は前半800mの入りがどれくらいの時計になるのかが楽しみです。例年以上に有力とされる中距離馬が参戦した今年の安田記念、今からレースが楽しみです。
以上、お読みいただきありがとうございました。