夏競馬の開幕を告げる函館開催がいよいよ6月16日(土)からスタート。開幕週のメイン・レースは「サマー・スプリント・シリーズ」の第1戦となる函館スプリントS(GⅢ・函館芝1200m)が組まれています。過去にはキンシャサノキセキ、カレンチャン、ロードカナロア、ストレイトガールなどのGⅠ馬が出走しており、GⅢながらハイレベルな争いが期待できるレースです。今年はここからスプリンターズSへと向かう馬が現れるのでしょうか?
函館競馬場は札幌競馬場と同じく、3種混合の洋芝(ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスク)でレースが行われます。洋芝は柔らかい(芝の硬度が低く、クッションが効く)ため、他の競馬場に比べて時計がかかるのが特徴です。ところが、昨年は「函館競馬史上最速なのでは?」と言うほどに速い時計が続出しました。今年も昨年に似た高速な馬場コンディションになっているのか、注目しましょう。
今回の記事では、函館競馬場の開幕週に行われる重賞「GⅢ函館スプリントステークス」を展望します。
昨夏の函館芝コースはレコードの叩き売り!
昨夏の函館芝コースは開幕週に5回のレコードタイムがマークされるほどの「高速馬場」となりました。函館スプリントSの勝ちタイムは従来のレコードを1秒更新する1分6秒8。洋芝の1200mで1分6秒台の時計が出るのは驚きでした。
函館と札幌競馬場はケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスクの3種混合の洋芝を使用し、他の競馬場に較べて時計がかかりやすいと言われています。これまではクッションが効いて柔らかい芝を求めて、北海道に遠征してくる馬もいました。ただ、これだけ時計が速くなるとパワー型の洋芝巧者の優位性が薄らいでしまうでしょう。
高速馬場でもパワーのあるピッチ走法が優勢
レコード決着となった2016、17年の函館スプリントSはパワーのあるピッチ走法の馬が好走しています。
▼2016年
勝ちタイム:1分07秒8
前後半3F:33.4 - 34.4(1.0秒の前傾)
1着:ソルヴェイグ
2着:シュウジ
3着:レッツゴードンキ
-----
▼2017年
勝ちタイム:1分06秒8
前後半3F:32.2 - 34.6(2.4秒の前傾)
1着:ジューヌエコール
2着:キングハート
3着:エポワス
上の6頭のなかで、あきらかにピッチ走法でないのはキングハートとソルヴェイグのみ。また、シュウジ、レッツゴードンキ、ジューヌエコール、エポワスの4頭はパワーに優れたピッチ走法の馬です。レコードが出るほどの高速馬場であっても、「重馬場」の得意な馬が上位に入線しているのは注目のポイントと言えます。
パワーのあるピッチ走法の馬は?
それでは、今年の函館スプリントSに出走登録をしている17頭から「パワーのあるピッチ走法」の馬をピックアップしてみましょう。
エポワス
ジューヌエコール
ティーハーフ
(50音順)
ダイアナヘイローやナックビーナスも小回り向きの器用さとパワーのある馬ですが、ピッチ走法とは言えないので除きました。
エポワスは10歳の高齢馬とあって、休み明けから動けるのかは微妙なところです。昨年のようなタフな流れになるなら可能性も……。
ジューヌエコールは昨年の勝ち馬ですから、コースと馬場の適性はOK。問題は昨秋から4戦続けて2桁着順の大敗をしており、体調面だけではなく精神面の立て直しができているのかに不安が残ります。
2015年の同レースを制したティーハーフもコースと馬場の適性はOK。前走の鞍馬S(OP)は3年ぶりの勝利とあって、好ムードでここへ臨みます。ただ、この馬が好走しているのは1分8秒台のレース。高速馬場でビュンと弾ける脚を使えるのかは不安です。
近年の函館スプリントSは高配当が!
函館スプリントSは近年、高配当の出る重賞として定着しつつあります。過去5年の3連単の配当が以下の通りですから、「今年も!」と期待をかけたくなるレースです。
▼函館スプリントSの3連単の配当
2017年:55,520円
2016年:397,650円
2015年:944,140円
2014年:872,270円
2013年:162,690円
注目したいのは2014〜16年の3年間の荒れっぷり。それぞれのレースには高配当になる理由があるので、ひとつずつ見ていきましょう。
2014年
この年の1人気は後にGⅠを勝つストレイトガール。2枠2番と好枠を引いたこととGⅠ級のスプリンターが不在だったことから、単勝1.6倍の支持を受けました。ところが、ストレイトガールは4コーナーから直線にかけて進路が開かず、11着と大敗。直線外から差してきた8人気のガルボが1着に入線し、3連単87万円の高配当となりました。
函館スプリントSは開幕週ということもあって、「インコース+好位」が有利と言われます。この年は逃げたフォーエバーマーク、2番手のメモリアルイヤーが直線半ばまで大きくバテずに粘っていたため、インが大渋滞に……。勝ったガルボは外目をスムーズに押し上げてきたので、インの渋滞にハマることはありませんでした。
2015年
この年は1人気コパノリチャード、2人気アンバルブライベンの先行馬のハナを叩いたフギンが前半3F33.0とハイペースを作り、外からの捲り差しが決まったレース。
1着ティーハーフが直線半ばで先頭に立つほどの素晴らしい捲り差しを決めたので、先行馬たちは苦しくなり、後方で待機していた2桁人気の2頭が2・3着に好走し波乱となりました。
2016年
この年は12人気の3歳牝馬ソルヴェイグが2番手から押し切っての高配当。フィリーズレビューの勝ち馬ながら、桜花賞を17着と大敗後のローテーションだったこと、大外の8枠16番だったこともあって、人気薄だったと言えるでしょう。
ソルヴェイグはこの年のスプリンターズS3着馬。函館スプリントSの時点で、この馬のスプリント能力の高さに気付いている人はウハウハだったはずです。14・15年と異なり、この年は前後半3Fが33.4 - 34.4とハイペースながらも前残りの決着でした。
今年はどうなるのか?
人気薄の馬が好走するパターンは以下の2通りです。
1. 直線外からの差し
2. 先行して粘り込む
1のパターンはさらに2つに分けられます。ひとつは14年のようにインが渋滞しての外差し、もうひとつは15年のように上位人気の逃げ・先行馬がハイペースに巻き込まれての外差しです。
また、斤量が軽くなる3歳馬や牝馬が前々から粘ることもあり、このパターンもしっかりとケアしておきましょう。どちらのパターンにするのかは今から悩みます。
今年のポイントはダイアナヘイロー
函館スプリントSにおける展開のカギを握るのは、GⅠ馬モズアスコットを相手に阪急杯を逃げ切ったダイアナヘイローです。この馬は逃げなくても競馬ができることから、鞍上の武豊騎手がどのようなレースを組み立てるのかがレースの大きなポイントとなります。
ダイアナヘイローがワンスインナムーンを制して逃げてしまうのか、それとも昨年のスプリンターズSのように消極的なレースをするのか……。北九州記念や阪急杯からも高速馬場は得意なので、昨年のような馬場なら積極的なレースがベター。
✳︎ワンスインナムーンは1400mベストのスプリンターとあって、1200mだと前半3Fが33秒台前半のペースだと苦しくなります。
昨年のようなハイペースだと……
昨年の函館スプリントSはハナを切った武豊騎手+シュウジが前半3F32.2の猛烈なラップをマーク。高速馬場だったことを加味してもかなりのハイペースとなり、4コーナーから捲り気味に前へ進出した2頭のワンツーとなりました。ペースが速すぎると、後方からの追い込みが利きにくくなるため、馬場コンディションも高配当が出るかどうかのポイントと言えます。
まとめ
今年は3歳馬が不在の1戦とあって、このレースと好相性の牝馬3頭(ナックビーナス、ダイアナヘイロー、ワンスインナムーン)が上位の人気になりそうです。いずれも逃げ・先行タイプとあって、2015年のようにその他の馬がハナを叩くと、「あっ!」と驚く高配当が出るかもしれませんね。
以上、お読みいただきありがとうございました。