夏競馬の始まりを告げる函館開催が6月17日からスタートします。
函館競馬場は札幌競馬場と同じく、3種類(ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスク)が混合した洋芝でレースが行われるのが大きな特徴です。洋芝は柔らかい(芝の硬度が低く、クッションが効く)ため、他の競馬場に比べて時計がかかりやすくなります。ところが、昨年は「函館競馬史上最速なのでは?」と言うほどに速い時計が続出しました。今年も昨年に似た馬場状態になっているのか、注目したいところです。
今回の記事では、函館競馬場の開幕週に行われる重賞「GⅢ函館スプリントステークス」を展望します。
GⅢ函館スプリントステークス
函館スプリントステークスは、昨年のこのレースの覇者ソルヴェイグがGⅠスプリンターズSで3着と好走したように、秋の大舞台へつながる1戦です。
今年は出走登録馬が13頭と少ないながらも、GⅠ高松宮記念の覇者セイウンコウセイが出走を予定しており、例年以上に注目を集めることになりそうです。
サマースプリントシリーズの第1戦
サマースプリントシリーズ(2017年)は6月18日の函館SSを皮切りに、9月10日のセントウルSまでの1000〜1200mの短距離重賞6レースを対象として、着順に応じたポイント制でチャンピオンを決めるシリーズ。
スプリントシリーズのチャンピオンには関係者に対してJRAから褒賞金が交付されることから、毎年白熱した争いが繰り広げられます。
函館競馬場の芝1200mというコースは?
函館競馬場の1200m戦はスタートしてから3角過ぎまで上り坂が続き、4角からは下り坂というコースレイアウトになっています。この3角過ぎまで続く上り坂を上手に走ることがポイントで、逃げ・先行馬はどこかで息を入れることができないとゴールまで粘るのが厳しいコース。
前半の600mの時計が他場と比べてかかるのもこの上り坂と洋芝によるもので、また、3〜4角で全体のペースが緩むのも大きな特徴です。直線が短いため、差し・追い込み馬にとってはこのペースが緩んだところで前へ取り付けるかが好走のポイントになります。
開幕週は内が渋滞することも
函館SSは開幕週の絶好の馬場状態で行われことから、インコース+内枠の先行馬が有利と言われます。ただし、1.6倍台という圧倒的な支持を受けたストレイトガールがインに詰まったまま追い出せずに11着と大敗した'14年のように、4角でインコースが渋滞することがあるので注意が必要です。
その'14年は内から4頭分ほど外に進路を取った差し馬が1〜3着を独占しました。先行馬がどっと内に押し寄せてコースが開かないと外差しも決まるので、どのような展開になるのかも予想をする上でのキーポイントになります。
出走予定馬とレース展望
ここからは出走を予定している馬の中から上位の人気に支持されそうな馬をピックアップし、レース全体を展望していきましょう!
セイウンコウセイ 4歳牡馬
父:アドマイヤムーン
母:オブザーヴァント(母父:Capote)
厩舎:上原博之(美浦)
昨秋からメキメキと力をつけて条件戦を勝ち上がり、初重賞挑戦となったシルクロードSで2着と好走した勢いそのままに高松宮記念を制したGⅠウイナーとなりました。
高松宮記念を制覇
高松宮記念は小雨の降る中でのレース。セイウンコウセイは道中4番手でレースを進め、直線は馬場の真ん中へ出すと、1頭だけ際立つ伸び脚で抜け出してのゴール。道悪の適性があったとしても、初GⅠ出走とは思えないほどの落ち着いた走りはこの馬のポテンシャルの高さを示すのに十分なものでした。
函館競馬場の適性
函館競馬場の芝1200mは上にも書いた通りスタートから上り坂が続くコース設定。これに似たレイアウトのコースは京都競馬場が挙げられます。京都もスタートしてから上り坂が続くため、前半の3Fが33秒台の前半のペースになることが少ないコースです。
セイウンコウセイは京都競馬場の1200m戦はGⅢシルクロードS2着を含めて(1 - 1 - 0 - 0)と好走を見せており、おそらく函館もOK。
小回りコースは?
セイウンコウセイの母系はSeattle Slew、Miswakiと柔らかい血が入っているため、小回りコースの適性は疑問……本来は直線の長いコースが合っているはずです。
洋芝適性は?
道悪が得意なことからも時計のかかる洋芝はこなすはずで、大きな不安はありません。心配なのは昨年のような高速の芝になっている場合です。持ち時計のない馬なので、どこまで函館の芝が高速化しているのかは注目しましょう。
レース展開としては?
先行馬ですが、インのポケットから投げ出すタイプではなく、外目をスムーズに回ってこそ力を発揮できるタイプ。開幕週で露骨なインコース有利な馬場になっていたとしても、内にこだわるようなレースはマイナスです。
最内枠に入ってしまった場合などは逃げの手も考えられるので、枠の並び次第では作戦も変わってくるでしょう。
シュウジ 4歳牡馬
父:キンシャサノキセキ
母:カストリア(母父:Kingmanbo)
厩舎:須貝尚介(栗東)
2歳〜3歳春はあり余るスピードで重賞戦線でも活躍を見せたものの、前進気勢が強すぎることもあって折り合う欠くシーンも度々見られました。
3歳の夏以降はスプリント路線にローテーションを絞って参戦すると、函館SS2着→キーンランドC2着→スプリンターズS4着とこれが大成功。昨年末にはGⅡ阪神Cで1着になるなどスプリント路線の主役を張れる活躍ぶりを見せることに。
年明け初戦の阪急杯と続く高松宮記念では大敗を喫してしまい、ここへ向けて力を発揮できる状態に戻っているのかが大きな鍵です。
コースと洋芝適性はOK
騎手が抑えるのに苦労するほどのパワースプリンター。先行力があるため、小回りコースと時計のかかる洋芝はOKなタイプ。
不安はとにかく折り合い
シュウジの気性をなだめらららことができるのかが最大の焦点で、気分良く走ることができればここでも好走する力は十分にあります。
古馬になって母カストリアのパワーが発現してきており、馬体もスプリンターとして完成しつつあります。短距離であれば無理に抑えるのではなく、スピードとパワーで押し切る競馬をした方がベター。
昨年の阪神C(阪神芝1400m)はイスラボニータを鮮やかに差し切っていることから、陣営が抑えて競馬をしたい気持ちもわかりますが……。
レース展開としては?
出走メンバーの中で逃げ馬はイッテツ。この馬がペースを落とすようであれば、シュウジが思い切ってハナに立つ展開も考えたいところです。
内枠に入り前に馬を置いてなだめるようなレースを選択すると「引っかかる」+「インに詰まる」という2つのリスクがあるので、できれば外枠からスムーズに先行するのが理想でしょう。
内枠になった場合は、キーンランドC2着のような逃げのレースができれば。
その他の注目馬
上記の2頭以外にも函館の小回りコースで注目したい馬がいます。
クリスマス 6歳牝馬
2歳時に「函館2歳S」を制して重賞ウィナーになったものの、その後はなかなか勝ち星を上げることができませんでした。昨年の夏に1600万下→オープンと連勝すると、その後は重賞でも好走するなど安定した走りを見せています。
函館は重賞勝ちを含めて(3 - 0 - 1 - 0)と好相性の舞台。今回は少頭数のレースになりそうで、差し脚を活かすこの馬にとっては捌きやすいのもプラスです。
ジューヌエコール 3歳牝馬
2歳時には3連勝でデイリー杯2歳Sを制しました。その後は阪神JF、桜花賞とGⅠ路線を歩みますが、好結果が出ずに矛先をスプリント路線へ。
ダートのOPで活躍した母ルミナスポイントからパワーを受け継ぎ、小気味好いピッチ走法でコーナー加速と一瞬の加速力に優れたタイプです。3歳牝馬は斤量面で有利なこと、函館コースへの適性があることなどから、注目したい1頭です。
まとめ
GⅠ高松宮記念を制したセイウンコウセイの参戦で、例年以上に白熱したレースが期待できる函館SS。
小回り+洋芝、そして開幕週のイン有利な馬場が影響して波乱の要素もある重賞です。今年はどのような展開になるのでしょうか?
今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。