ターコイズS(2017年)はスローを俊敏に抜け出すオートクレールに◎をーーラビットランについての解説も

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12月16日(土)、中山芝1600で行われる牝馬重賞ターコイズS(GⅢ)は、ラビットランやリエノテソーロなどGⅠで好走した3歳馬と古馬との対決に注目が集まる1戦です。

今年の3歳牝馬はアエロリットが古馬相手のクイーンS(GⅢ・札幌芝1800m)を完勝し、モズカッチャンがエリザベス女王杯(GⅠ・京都芝2200m)を制したように、世代としてはハイレベル。

ラビットランはローズS1着→秋華賞4着と世代トップレベルの走りからも、「牝馬限定重賞」であれば1人気に推されても不思議ではない戦績をもっています。この馬が3歳牝馬の代表としてターコイズSをブッコ抜くことができるのでしょうか?

 

ハイレベルな3歳馬について

今年のターコイズSに出走する3歳馬は以下の4頭です。

ハローユニコーン

ミスパンテール

ラビットラン

リエノテソーロ

(50音順)

この内、このレースで上位の人気に推されるのは赤色でマークした3頭。このなかで1人気に推されるのは好素質馬の揃ったローズS(GⅡ・阪神芝1800m)を好タイムで制したラビットラン。エリザベス女王杯(GⅠ・京都芝2200m)をパスし、わざわざ関東へ遠征することからも、陣営の「マイルへのこだわり」が感じられます。

 

ラビットラン 3歳牝馬

父:Tapit

母:Amelia(母父:DixielandBand)

厩舎:角居勝彦(栗東)

騎手:C・デムーロ

京都ダート1400mの新馬戦を楽勝すると、その後ダートを2戦してから芝へと路線を変更。前走の芝1600m戦(500万下)を後方から大外一気の脚で勝利したことで、ローズSへと駒を進めることができました。

北米の名種牡馬が代々かけられたラビットランはしなやかで軽い走りをするのが大きな特徴で、ストライドを伸ばせる直線の長いコースであれば芝・ダートは不問。阪神芝外回りコースのローズSを1分45秒5の好タイムで駆け抜けたのも納得です。

前走の秋華賞は京都の内回りコース+重馬場としなやかにストライドを伸ばして走るこの馬には不向きな条件だったものの、インコースをソツなく立ち回って4着と好走しました。

 

血統

母AmeliaはBCジュヴェナイル2着のHe's Had Enough(父Tapit)など北米のGⅠや重賞レースで活躍する仔を多く出している名繁殖牝馬。日本ではラビットランと小倉2歳Sを勝ったアサクサゲンキ(父Stormy Atlamtic)の2頭がJRAで出走し、どちらも重賞ウィナーとなりました。

日米と国を問わず、芝・ダートも不問の仔を出しているAmeliaは名繁殖牝馬Courtly Deeにさかのぼる牝系。ラビットランの父Tapitは今年も北米のサイアー・ランキングの上位に位置し、A.P. IndyやUnbridledなどしなやかな血が凝縮した名血・名種牡馬です。

父Tapit×母父DixielandBandという配合とこの馬の胴の長い体型を見ても、ベストの距離は1800mでしょう。父からしなやかを受け継いでおり、マイルをゴリゴリとパワーで押し切るタイプではありません。

この父と母から産まれたラビットランは「世界的な良血」。ローズSを制したことで、競走馬としてだけではなく繁殖牝馬としての価値も大きく高めました。数年後、この馬にディープインパクトが配された仔がセレクトセールに上場し、どれほどの落札額になるのか、今から胸がドキドキしますね。

 

ターコイズSに向けて

小回り中山のマイル戦は、しなやかにストライドを伸ばすこの馬に不向きな舞台。ただ、名伯楽の角居調教師が「わざわざ」関東に遠征してまで出走させるのですから、勝算はあるのでしょう。

能力は疑いようがなく、不安点はコースと体調とトップハンデの3つ。斤量の55kgは古馬のフロンテアクイーンよりも2kg重く、いくらハイレベルの世代と言ってもハンデはかなり見込まれました。

1人気としてはかなり苦しい条件での走りとなるだけに、「素質」だけで中山のマイル重賞をぶっこ抜けるのかには注目です。

 

リエノテソーロとミスパンテール

リエノテソーロはアエロリットが1分32秒3の好タイムで勝ったNHKマイルCの2着馬。その後に出走したダート重賞は馬券圏内に入れず、前走でふたたび芝路線へと戻ってきました。豊かなスピードを伝えるSpeightstown産駒ながら、母系には底力のある血を多く引いているように、奥行きのある配合。ただ、クロスがうるさい馬だけにこれからさらに成長するのかは「?」がつきます。

スピードが優勢なタイプなので、ベストの距離は1400m。マイルの距離であれば時計の速い馬場でスタミナを問われにくい流れがベター。今走は逃げ・先行馬が薄く、ビュンビュンと飛ばすような馬が見当たらないので、スローからの瞬発力勝負になったときにも不安が残ります。

ミスパンテールは今春のチューリップ賞(GⅢ・阪神芝1600m)でソウルスターリングの2着と好走した素質馬。その後はクラシック路線を歩んだものの、桜花賞→オークスと2桁着順の敗退を喫しました。前走の清水S(1600万下・京都芝1600m)は古馬+牡馬相手に快勝。その勢いに乗ってここへ臨みます。

母父シンボリクリスエスと母系に入るNijinskyの影響が出た胴の長い体型で、ダイワメジャー産駒としてはストライドが伸びるタイプ。前走は京都の外回りで33秒台の末脚を使ったように、直線の長いコースに向いています。小回りの中山だとやや割引が必要です。

 

予想

素質(ポテンシャル)だけで言えば、3歳馬のラビットランは頭1つ抜けた存在です。ただ、古馬のワンブレスアウェイとフロンテアクイーンよりも斤量を背負うのは不利な条件。前走の秋華賞は中団のインでソツのない競馬ができたものの、中山のマイルを同じようにこなせるのかは不安が……。

 

スローがベターな馬の多いターコイズS

今年のターコイズSはラビットランをのぞくと、「スロー+上りの速い競馬」を得意とする馬が多く出走しています。上位人気馬でスローがベターなのは以下の通りです。

エテルナミノル

オートクレール

デンコウアンジュ

バンゴール

フロンテアクイーン

ミスパンテール

ワンブレスアウェイ

これだけズラリとスローバランスで良さの出る馬が揃うと、「ペースが落ち着く→前残り」が発生する可能性もありますね。

 

レース展開

ピュアな逃げ馬が不在のため、ハナに立つとすればディープジュエリーかペイシャフェリスの2頭。後者は休み明けのためスタートから出脚がつくのかは不安です。前者は「ペースを落とせるだけ落としたい」馬なので、もし逃げの手に出るのであれば、まずスロー・バランスにもち込むでしょう。

✳︎)逃げ馬候補の2頭はともに外枠に入りました。多少無理をしないとハナに立てない枠だけに、前半3Fだけは速くなるかもしれません。

ワンブレスアウェイやオートクレールなどの先行馬も上りの速い競馬はOKのタイプなだけに、逃げ馬にプレッシャーをかけるようなレースにはならず、府中牝馬Sのようなスローになる公算が大。ラビットランがストライド・ロスを覚悟して4コーナー手前から外目を捲っていけるのかが展開の鍵を握ります。

 

◎オートクレール 6歳牝馬

父:デュランダル

母:ジョイアサーティン(母父:フォーティナイナー)

厩舎:中野栄二(美浦)

騎手:黛弘人

小気味の良いピッチ走法が特徴で、小回り+スローペース向きの馬。東京コースでの良績は不良馬場やドスローでのもの。本質的には中山に向いています。

前走のキャピタルSは重賞好走馬がズラリと揃い、OP特別としてはかなりハイレベルの1戦。17着と大きく敗れたのは東京コース+持続戦になったためで、ノーカウントでOK。

 

ターコイズSに向けて

今走はスンナリと好ポジションを取れる内枠に入りました。スローバランスで先行できさえすれば、直線で俊敏に抜け出してくるシーンも十分に。

ラビットランよりも前目のポジションが取れるだけに、53kgの斤量を利してスローから上手く出し抜ければ……。主戦の黛騎手はこの馬の脚質を理解しているので、仕掛けどころを間違うことはないでしょう。

 

◯エテルナミノル 4歳牝馬

父:エンパイアメーカー

母:ダイワジェラート(母父:フジキセキ)

厩舎:本田優(栗東)

騎手:和田竜二

母ダイワジェラートがフジキセキ×リアルシャダイという配合。いかにも小回りを捲るタイプかと思いきや、この馬は父エンパイアメーカーのしなやかさも感じさせるタイプに出ました。

スローバランスであれば、シルバーステートやアドマイヤリードと好勝負にもち込める馬。本質的には1800mがベストなものの、ペースが緩むのなら1600mもOKです。

 

ターコイズSに向けて

和田騎手はラビットランではなくこちらに騎乗します。マイルCSでレーヌミノル(エテルナミノルと同調教師+同馬主)に騎乗したことから、この馬の騎乗依頼が早くから入っていたのでしょう。

母ダイワジェラートがHaloとRobertoを通じるHail to Reasonのクロスをもつことから、パワーを求められる小回り+急坂の中山コースは合っています。前々のポジションから押し切る競馬が理想で、和田騎手ならこの馬のもち味を活かしきれるはずです。

斤量の54kgはやや見込まれたことと、6枠と外目に入ったぶんだけオートクレールよりも割引いてこの印に。

 

その他の馬について

ラビットランはコースや斤量などの条件が厳しく、素質は認めてもこの人気だと買いにくく……。このメンバーならばアッサリとひと捲りで勝ってしまうシーンも描けますが、不安は大きい……。

スローになるなら、ワンブレスアウェイもフロンテアクイーンも素直に有力。前者はしなやかなストライドで走るので、本質的には東京向きです。後者はどこで走っても2、3着のイメージがあり、後は馬群を捌けるかどうか……。

それならば、△ペイシャフェリスが単騎でスンナリと逃げられたの粘り込みに期待したいところです。この馬だけが平均ペースで逃げれば、アレヨアレヨと粘るシーンも。

それと、スローバランスで良さが出る△バンゴールもこれだけ人気がないなら押さえます。メンバー的にもインベタで回ってこれると思うので。

もう1頭、最内枠に入った△リーサルウェポンは陣営が先行策を示唆しており、このメンバーでスンナリと好位のインを取り切れれば、スルスルと抜け出してくるのでは、期待します。

 

買い目

◎の単勝、◎◯の馬連、◎◯△の3連複を買います。

 

単勝

3

 

馬連

3 - 11

 

3連複

3 - 11 →1. 10. 13

 

まとめ

好メンバーが揃い、どの馬からも狙いが立つ今年のターコイズS。重賞ウイナーに輝くのはどの牝馬でしょうか?

 

以上、お読みいただきありがとうございました。