'17年8月6日(日)、新潟競馬場で行われた3歳限定のダート重賞「GⅢレパードS」(新潟ダート1800m)は、12番人気のサルサディオーネが逃げ粘って2着に入り、1着になった11番人気のローズプリンスダムともども波乱の立役者となりました。単勝1倍台の圧倒的な支持を集めたエピカリスが3着に敗れたことによって、馬連は95,320円の高配当に。
吉田豊騎手の巧みな逃げ
エピカリスが馬群に包まれ、直線を向いても進路がなくゴールまで残り200mまでまともに追えなかったことを差し引いたとしても、この波乱を演出したのは一貫して緩みのないペースで逃げ脚を伸ばしたサルサディオーネと吉田豊騎手のコンビだったことは間違いありません。2人気のタガノディグオや3人気のテンザワールド、4人気のハルクンノテソーロはこのペースで外を回って追い上げるのはさすがに厳しかった……。レパードSは外目を追走した先行馬や3コーナーから押し上げたい差し馬にとっては苦しい流れで、吉田豊騎手の巧みなペースメイクとそれに応えたサルサディオーネには脱帽です。
▼レパードSのレースラップ
12.3 - 11.1 - 12.7 - 13.1 - 12.5 - 12.8 - 12.9 - 12.7 - 12.8
13秒台に緩んだのが2コーナーから向正面にかけての区間のみで、後は平均して速いラップを踏んでいることから、最後の直線まで脚をためてズバっと速い上りを出して差し切るか、逃げか先行でしっかりと脚を残している馬でないと好走するのは難しいレースになりました。
夏の福島開催から不調の吉田豊騎手がこんな逃げを打つなんて聞いてない……
レパードSの回顧記事でも書きましたが、吉田豊騎手は夏の福島開催から不調モードに入っています。2歳戦や3歳未勝利戦などの条件を除いて、特別戦などの上級条件ではまったく勝てていません。
GⅢレパードS('17年)は伏兵ローズプリンスダムが制し、エピカリスは3着にーー回顧 - ずんどば競馬
7月1日(土)に開幕した夏の福島開催から、現在(8月6日終了時点)までの特別戦における吉田豊騎手の全成績は(0 - 3 - 2 - 20)と未勝利。この内、8月5、6日の土日が(0 - 2 - 0 - 2)と好成績だっただけに、それまでの不調ぶりが際立ちます。
イヤ、もうね、レパードSの出走表に「吉田豊」の文字を見た瞬間にサルサディオーネは来ても3着までだろうと、過去のレース内容を検討すらせずにすぐ切り捨てたことを反省しています。まさか、不調の吉田豊騎手が重賞でこれほどケレン味のない逃げを打つなんて想定外。もう、加齢とともにいろいろな想像力が枯渇しているのだな、と改めて実感したレースとなりました。
WIN5ではまだまだ買えない……
8月5、6日は2歳OPのダリア賞をシャインカメリアで逃げて2着、3歳限定GⅢレパードSをサルサディオーネで逃げて2着と、特別戦でも連対を果たした吉田豊騎手。でもね、「WIN5で買える騎手なのか?」と聞かれたら答えは「NO!」です。
吉田豊騎手が最後にWIN5対象レースを勝ったのは4月16日の中山10R春雷S(OP)。ちょうどGⅠ皐月賞のひとつ前のレースで、今年のGⅢアイビスサマーダッシュを2着したフィドゥーシアでの勝利。もう3ヶ月以上WIN5対象レースを勝っていないわけで、さすがに買いにくい……。もちろん、またいつかWIN5対象レースを吉田豊騎手が勝つこともあるとは言え、「1着に来たら、それは事故」というくらいの広い気持ちで「買わない」方がベターです。どうしても点数が多くなってしまうWIN5の買い目を決めるときに、ザックリと取捨選択できる「方法」として騎手で選ぶというのは理に適った方法ではあります。
吉田豊騎手が勝利した重賞での馬連高配当は?
吉田豊騎手は'17年8月6日終了時点で、JRAの重賞勝利数は34。オークスやエリザベス女王杯などGⅠを5勝した名牝メジロドーベルの主戦として活躍していたこともあり、重賞実績は十分なものがありますね。この34勝の内、馬連が2万円以上の高配当となったのは3回。最近のものから年代順に並べると以下の通りです。
▼単勝オッズが190倍という高配当!
年 | 2012 |
レース名 | GⅢダイヤモンドS |
馬名 | ケイアイドウソジン |
通過順 | 1 - 1 - 1 - 1 |
人気 | 15人気 |
単勝配当 | 19,000円 |
馬連配当 | 52,520円 |
▼逃げ馬ミヤビランベリでの勝利!
年 | 2008 |
レース名 | GⅢ七夕賞 |
馬名 | ミヤビランベリ |
通過順 | 1 - 1 - 1 - 1 |
人気 | 7人気 |
単勝配当 | 1,920円 |
馬連配当 | 21,570円 |
▼8歳馬メジロマントルでの逃げ切り勝ち!
年 | 2005 |
レース名 | GⅢ鳴尾記念 |
馬名 | メジロマントル |
通過順 | 1 - 1 - 1 - 1 |
人気 | 10人気 |
単勝配当 | 5,120円 |
馬連配当 | 35,040円 |
上記の3回ともに「逃げ切り」勝ちでのもの。ダイヤモンドSなどは驚異の単勝オッズ190倍ですから、もう溜息しか出ませんね……。吉田豊騎手が高配当を演出しているときは逃げていることが多く、今年のレパードSのサルサディオーネもこれに当てはまります。関東の中堅ジョッキーとしてペース判断は確かなものがありますから、重賞の舞台で人気薄の逃げ・先行馬に乗ったときには思わぬ波乱を演出できるのでしょう。
GⅠの舞台でも人気薄の先行馬に騎乗して高配当
GⅠの舞台でも吉田豊騎手は人気薄の先行馬で高配当を演出しています。直近では'15年のヴィクトリアマイル。ミナレットが3着に入り3連単が2,000万円オーバーのレースとして有名ですが、吉田豊騎手が騎乗して2着に入ったケイアイエレガントも12番人気ですから、この馬も波乱の立役者です。ハイペースで逃げるミナレットを2番手で追いかけ、直線で先頭に立つと「勝ってしまうのでは?」という粘り腰を見せての2着。ストレイトガールがアタマ差交わしたために、3連単の配当が2,070万円でおさまりましたが、もしケイアイエレガントが勝っていたとするとびっくり仰天の配当になっていたでしょうね。
'01年の安田記念
もうひとつ、吉田豊騎手がGⅠレースで高配当を演出したのは'01年の安田記念。単勝オッズ120.5倍のブレイクタイムが残り100mまで先頭に立ち、「おおー! 吉田豊が勝っちゃうの?」とゾクゾクしたのを覚えています。勝ったのは大外を一気に伸びた横山典弘騎手の9人気ブラックホーク。1、2着の2頭ともに人気薄だったために、馬連は120,600円の高配当となりました。
このレースは今でもはっきりと覚えていて、初めて馬連で10万円を超える配当を手にしたのがこのときです。ブレイクタイムからズバーっと流していたので、吉田豊騎手のムチに応えて直線で抜け出したシーンには胸が熱くなり、「何でもいいから人気薄の馬を連れてきて!」と叫んでいました。
競馬場のプリントサービス(馬券を1枚10円でコピーしてもらえる)ではなくカラコピーなのは、この日は競馬場ではなく自宅でTV観戦していたから。昔は今のようにスマホでパシャっと写真を手軽に取れなかったので、高配当の馬券は払い戻しの前にコピーしておくのが習慣に。この頃はまだ3連単複系の馬券は発売していませんから、10万超の高配当はなかなか出ない時代で、本当に興奮しましたね。
ダート→芝替わりで高配当
先に挙げたダイヤモンドSのケイアイドウソジンもダート競走のOP師走S(中山ダート1800m)からの芝替わりで好走を果たしましたが、安田記念のブレイクタイムも前走はダートOPのオアシスS(東京ダート1600m)でした。今も昔もダート→芝替わりは高配当が出やすく、チェックをしなければ……とは思うものの、ほとんどはレースが終わってから「あっ!」と気付くことが多いのですから困ります。
昔のマイルGⅠは前傾ラップが多かった……
'01年の安田記念も前後半の800mが45.8 - 47.2の前傾ラップになっていて、昔のマイルGⅠはこのようなペースになることがほとんどでした。このペースを先行して直線で抜け出したブレイクタイムは父デインヒルのスピードとパワーで走るマイラー。サンデーサイレンス産駒がマイルやスプリント戦をしなやかに差して好走する時代が来るとは、このときはまったく想像もできませんでしたね。
これは良いとか悪いとかではなく、現在の日本の競走馬の多くが血統表のなかにしなやかなサンデーサイレンスの血をもっていて、だからこそマイルやスプリントGⅠでも後傾ラップが現れます。現代の日本競馬において、スピードとパワーでゴリゴリと前々で押し切るパワー・マイラーは少なくなってきているのは、瞬発力を問われるようなレースがマイルやスプリント戦でも多くなっているからです。
'15年のヴィクトリアマイルカップもミナレットが大外枠からガンガン飛ばしたために、前後半の800mは45.5 - 46.4のハイペース。しなやかに差したい馬たちにとっては苦しいペーストなり、530kgと牝馬としては恵まれた馬体を誇るケイアイエレガントがもち前のパワーで前々から粘り込んだのも納得できます。吉田豊騎手の強気な先行策が功を奏した好走でしたね。
吉田豊騎手は人気薄の逃げ・先行馬がよく似合う
レパードSのサルサディオーネもペースを緩めることなく積極的に逃げ脚を伸ばしたからこその今回の好走だったわけで、重賞の舞台で人気薄の逃げ・先行馬に乗ったときの吉田豊騎手のペースメイクはさすがの一言です。
吉田豊騎手は人気薄の逃げ・先行馬がよく似合う
レパードSのサルサディオーネを観て、ふと思い出したのは'01年の安田記念で2着に好走したブレイクタイム。この頃も吉田豊騎手は前々からしっかりとペースを作っていくレースをしていました。
以上、お読みいただきありがとうございました。