セントウルS(2018年)はGⅠ馬ファインニードルが完勝し、春秋スプリントGⅠ連覇に向けて好発進!ーー回顧

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スプリンターズSへの前哨戦・セントウルS(GⅡ・阪神芝1200m)は、1人気のファインニードルが「休み明け+58kg」をものともせず、素晴らしい内容での完勝。GⅠ馬としての格の違いを見せつけました。

セントウルS1着馬はここ10年以上、スプリンターズSを勝っていないだけに、ファインニードルがその壁を破れるのかに注目です。仕上がり途上の段階で道悪馬場を好走した反動が出なければ、次走のGⅠでも期待がもてます。

 

前哨戦としては珍しい前傾ラップ

今年のセントウルSは道悪馬場にもかかわらず、逃げたラブカンプーにネロが競りかけ、前半3F33.3と速いペースになりました。前後半3Fが33.3 - 35.5と2秒以上の前傾ラップとなり、ゴールまで少しずつスピードが落ちる消耗戦。近年の1200m重賞としては珍しいペースになったと言えるでしょう。

2018年 セントウルSのレースラップ

12.0 - 10.5 - 10.8 - 11.3 - 11.5 - 12.7

勝ちタイム:1分8秒8

前後半3F:33.3 - 35.5(2.3秒の前傾)

香港のスプリントGⅠ4着の実績があるファインニードルはパワーを求められるレースを苦にしません。5歳となった今年は馬体がパワフルになっており、いよいよスプリンターとして完成の域に入りました。

 

ファインニードルはスプリンターズSを好走できるのか?

ファインニードルはセントウルSを快勝したことで、余力をもってスプリンターズSへ向かいます。休み明けをひと叩きし、どれほどの上積みを見込めるのかが大きなポイントです。

 

スプリンターズSは前傾ラップにならない?

過去3年のスプリンターズSは1.0秒以上の前傾ラップになっておらず、2015年と17年は後傾ラップになっています。

過去3年のスプリンターズS

2017年

勝ちタイム:1分7秒6

前後半3F:33.9 - 33.7

1着:レッドファルクス

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2016年

勝ちタイム:1分7秒6

前後半3F:33.4 - 34.2

1着:レッドファルクス

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2015年

勝ちタイム:1分8秒1

前後半3F:34.1 - 34.0

1着:ストレイトガール

近3年の勝ち馬が1400mベストの「しなやかスプリンター」なのは、パワーの求められる1秒以上の前傾ラップではないから。スプリンターズSはどのようなペースになるのかによって、好走するタイプが異なります。

 

ファインニードルはペースの対応幅が広い

ファインニードルが連覇したセントウルSは、昨年が33.8 - 33.7の後傾ラップ、今年が33.3 - 35.5の前傾ラップ。まったく異なるペースを好走していることは、スプリンターズSに向けて大きな強みです。

ペースの対応幅が広いので、体調さえしっかりと整っていれば、好走の可能性は高いでしょう。ただ、あまりにもペースが緩いとしなやかさに優れた馬に負けることも考えられます。

 

2着のラブカンプーについて

M・デムーロ騎手でもポンと好スタートを切れるのですから、ラブカンプーのダッシュ・センスは一級品です。スタートしてから3コーナーまでネロ+福永騎手に絡まれましたが、ハナを取りきりました。先行馬は外から被されるのをイヤがるので、あのスタートを切ったのならハナを譲ることはありません。

先にも上げたように、レースラップはゴールに向かって失速していく消耗戦。ただ、速いペースを踏んでいたのはラブカンプーとネロだけ。3〜4コーナーで前を走る2頭と馬群が離れており、ラブカンプーはこのリードを保てたおかげで2着に粘り込めました。

また、重馬場に実績のないコウエイタケルが4着、ラインスピリットが5着と好走していることから、「重」馬場というほどは芝が悪くなかったのでしょう。この点もラブカンプーに味方したと言えます。

 

今後に向けて

ネロが競りかけてきたときにM・デムーロ騎手が引かなかったのも、ラブカンプーにとってはこの1戦が「メイチ」だったからです。スプリンターズSに向かうとしてもさらなる上積みは望み薄ですし、ファインニードルとの間には大きな力差があります。

今走後にリフレッシュを図るのか、それともスプリンターズSに向かうのか……今後のスプリント路線の展開面を握る馬なので、ローテーションが注目の1頭です。

 

◎アドマイヤゴッドは8着

馬場コンディションはこの馬向きのもので、2着ラブカンプーから0.3差を考えると少しもったいない競馬となりました。アドマイヤゴッドが好走できなかったポイントは2つあります。

1. 前々のポジョンを取れなかった

2. 4コーナーでスピードに乗せられなかった

ペースが速かったとは言え、前と離れすぎてしまうとバキューンと差すことはできません。内枠に入っていたのですから、コウエイタケルのポジションが欲しかったですね。

ファインニードルが4コーナー手前から仕掛けていたように、短い直線でトップスピードに乗るためには、コーナーでスピードを上げなければなりません。仕掛けどころで内で包まれてしまっては、この馬場だと差すのは難しくなります。

 

2着以下は混戦

1着のファインニードルを除く2着以下の馬たちは、馬場やペース、道中の並びによって着順が入れ替わる混戦でした。1着馬の強さが目立ったレースで、スプリンターズSのトライアルとしては見応えのある1戦だったと言えるでしょう。

これほどの消耗戦になりながら1・2番人気で決まったのは意外で、この路線はトップクラスとセカンドクラスにはっきりとした力の差があるのかもしれませんね。

 

まとめ

セントウルSを完勝したファインニードルは、春秋のスプリントGⅠ連覇に向けて好スタートを切りました。ここをひと叩きし、どれほど体調が上向くのか……。前傾ラップを勝ち切れるパワー・スプリンターが久しぶりに現れ、今後のこの路線がより楽しみです。

以上、お読みいただきありがとうございました。