阪神JFと朝日杯FSのステップレースとされる、デイリー杯2歳S(GⅡ・京都芝1600m)は、新潟2歳S(GⅢ・新潟芝1600m)を制したフロンティア、良血馬のジャンダルムなどの期待馬が顔を揃えました。年末のGⅠに向けて、好走を果たすのはどの馬なのでしょうか?
今回の記事では有力馬(1〜5人気の想定)とされるフロンティア、ジャンダルム、メガリージョン、ケイアイノーテック、カツジの5頭について、血統やレースぶりを解説します。
中内田厩舎は2歳戦が好調
開業4年目の中内田充正厩舎はここまで(11月5日終了時点)、2歳戦の成績が(9 - 3 - 2 - 4)とトンデモナイことに……。
この内、重賞を3勝、掲示板を外したのは2歳未勝利戦のノーブルジュエリー(10着)のみという「うわ〜ん、もうナカウッチーについて行くよ〜」と叫びたくなるほど。
フロンティアと中内田厩舎
絶好調の中内田厩舎がデイリー杯2歳Sにエントリーしたのは、新潟2歳Sの勝ち馬フロンティア。このレースで無傷の3連勝となるのかに注目です。
中内田厩舎と期待の2歳馬については、以下の記事に詳しい解説を書いたので、よければご覧下さい。
デイリー杯2歳Sの上位人気5頭について
今年のデイリー杯2歳Sで上位の人気に推されるのは、以下の5頭です。1頭ずつ解説をしていきます。
▼1〜5人気(想定)
フロンティア
ジャンダルム
メガリージョン
ケイアイノーテック
カツジ
(予想される人気順)
フロンティア 2歳牡馬
父:ダイワメジャー
母:グレースランド(母父:トニービン)
厩舎:中内田充正(栗東)
生産:社台コーポレーション白老ファーム
新馬→新潟2歳Sと芝のマイル戦を連勝し、ここへ臨みます。2戦ともに前々から押し切る安定感のあるレースぶりで、2歳馬としては気性的な難しさを見せていないのは好印象。
前走は上り3F32.9の脚を使っており、スローペースだったことを差し引いてもこの馬の素質の高さが伺えます。新潟2歳Sで上り3F32秒台の脚を使ったのは、ジャスタウェイ、ハープスター、イスラボニータなど後にGⅠを勝った馬が揃うので、フロンティアも今後が楽しみな1頭です。
血統やレースぶりについては、以下の記事に詳しく解説しているので、よければご覧下さい。
デイリー杯2歳Sに向けて
京都芝1400mで行われた2歳牝馬重賞のファンタジーS(GⅢ)は、上位人気に推されたダイワメジャー産駒の2頭、コーディエライトとアマルフィコーストが2、3着と好走したものの、勝ち切ることはできませんでした。
ダイワメジャー産駒は上りの脚に限界のあるタイプが多く、最後の直線が平坦で時計の速い京都の芝コースだと、どうしても切れ負けしてしまいます。
✳︎コーディエライトは新潟2歳Sでフロンティアの2着に入線した馬ですから、この馬がファンタジーSを勝ち切れなかったのは、不安点の1つです。
馬群に揉まれたり、スタートで大きく後手を踏まないかぎり、フロンティアの凡走はイメージできないものの、京都のマイル重賞をスパっと勝てるのかは「?」が……。
ジャンダルム 2歳牡馬
父:Kitten's Joy
母:ビリーヴ(母父:サンデーサイレンス)
厩舎:池江泰寿(栗東)
生産:North Hills Co. Limited
ビリーヴの仔は、母を管理した松元茂樹厩舎に入ることが多く(ファリダットやフィドゥーシア)、ここで池江寿厩舎に預託したのは意外ですね。
新馬戦(阪神芝1600m)はスローペースを好位で流れに乗り、前脚がキレイに伸びない走りで抜け出しての勝利。上り3F33.7を出したものの、しなやかにキレたとは言えない走りでした。
血統
父Kitten's Joyは北米のリーディングサイアーライン・ランキングで上位に入る人気の種牡馬で、その父El PradoはSadler's Wells直仔の早熟なマイラー。日本で活躍するKitten's Joy産駒は、今年のエプソムカップ(GⅢ・東京芝1800m)を勝ったダッシングブレイズが挙げられます。
Kitten's Joyは父El Prado×母父Lea Fan(Roberto直仔)という配合なので、父に入るSir IvorやTom Foolといった柔らかな血をクロスするとダッシングブレイズのようなしなやかに差す馬が出ます。それに対して、パワーとスタミナを伝えるRobertoをクロスすると、小回り向きをグングンと捲るタイプが出るでしょう。
ビリーヴの母グレードクリスティーヌはNorthern Dancer×Icecapade2×2(どちらの種牡馬も父Nearctic×母父Native Dancerという配合)という強いクロスをもち、これがどんな種牡馬をつけてもスプリンターが産まれる要因です。
ジャンダルム自身はRobertoとサンデーサイレンスを通じるHail to Reasonのクロスをもつため、小回り・内回り向きの1400mベストのスプリンター。柔らかな体質ではないため、ダートや直線に坂のコースに向きます。
デイリー杯2歳Sに向けて
新馬戦の走りと血統から、京都芝1600m外回りコースは割引です。ただ、小回り向きの機動力に優れたタイプは、スローだと力を発揮するので、2歳戦でペースが緩くなるならチャンスも……。
直線が平坦な京都の外回りでパフォーマンスが上がる馬ではないため、武豊騎手がどこまでごまかして乗れるのかにかかっていますね。
メガリージョン 2歳牡馬
父:キングカメハメハ
母:サンクスノート(母父:サクラバクシンオー)
厩舎:野中賢二(栗東)
生産:下河辺牧場
新馬戦2着→未勝利戦1着の2戦ともに、福永騎手が折り合いに苦労するほど前進気勢の強い馬で、それだけスピードが豊かなのでしょう。しなやかな体質の馬なので、折り合えればびゅんとキレる脚を使えます。
血統
母サンクスノートは京王杯SC(GⅡ・東京芝1400m)を勝ち、父サクラバクシンオー×母父Halo×母母父Secretariatという血統そのもののしなやかなスプリンター。走法や体質はレッドファルクスに近いものがあります。
父キングカメハメハは母系の特徴を受け継ぐ産駒を多く出しています。メガリージョン自身はNorthern Dancer5・5×5の薄いクロスしか引かず、母サンクスノートのスピードと柔らかさそのままと言える競走馬。
将来的には1400mベストのスプリンターに完成するのでしょうが、Haloらしいふわっとしたスピードタイプですから、京都の外回り1600mはマイナスにはなりません。
デイリー杯2歳Sに向けて
上位人気馬のなかでは、もっとも京都芝1600mに向く走りと配合をしています。折り合いの難しい馬なので、M・デムーロ騎手がそこをコントロールできれば好勝負でしょう。
母譲りのしなやか体質なので、スローからの瞬発力勝負だと、新馬戦のように踏み遅れてしまうかもしれませんが……。スパっと勝ち切ったとしても驚けない素質馬です。
ケイアイノーテック 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:ケイアイガーベラ(母父:Smarty Jones)
厩舎:平田修(栗東)
生産:隆栄牧場
今年の2歳馬として、1番初めに勝ち名乗りを上げたのがケイアイノーテック。新馬戦は好位のポケットで我慢する競馬で、直線を向いてインをしなやかに差してきました。
まだ、馬体がパンとしていない印象で、休養を挟みどれだけ成長しているのかが楽しみな1頭です。
血統
母ケイアイガーベラはダートの短距離重賞で2勝(GⅢカペラS・GⅢプロキオンS)を上げたスプリンター。その父Smarty JonesはElusive Quality直仔で、北米の血で固められた配合です。
スピードとパワーが過多なSmarty Jonesは柔らかなディープインパクトとは合うはずで、2歳の早期にデビューしたというのは、それだけ馬体に筋肉が付いているからでしょう。
父ディープインパクト×母スプリンターという配合は、ジェンティルドンナなど多くの活躍馬を出している好配合形。3歳春までに馬体も完成するタイプで、ここからが稼ぎ時です。
デイリー杯2歳Sに向けて
母よりも柔らかな走りをするのは、父ディープインパクトによるもの。新馬戦の内容から、京都芝1600mは適性として合っている舞台ですし、ここは力が入る1戦になります。将来的には1400mベストのしなやかスプリンターになりそうですが、3歳のこの時期で京都のマイル戦であれば、不安はまったくありません。
スピードが豊か+折り合いが難しい馬なので、福永騎手から当たりの強い川田騎手への乗り替わりはややマイナス。ただ、しっかりと前々好位のポジションを取れる騎手なので、その点はプラスになります。
カツジ 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:メリッサ(母父:ホワイトマズル)
厩舎:池添兼雄(栗東)
生産:岡田スタッド
重馬場の新馬戦(京都芝1600m)を小気味の良いピッチ走法で快勝し、ふたたび同じ舞台の重賞に挑みます。
血統
母メリッサは北九州記念(GⅢ・小倉芝1200m)に勝ったスプリンターで、小回り向きの回転の良いフットワークで走った馬でした。全兄のミッキーグローリーは7戦3勝の現役馬。
カツジは兄よりも胴が詰まった体型をしているため、前脚がしなやかに伸びない走り。新馬戦で重馬場を苦にしなかったのは、母のピッチ走法を受け継いでいるからでしょう。
(✳︎全兄のミッキーグローリーは、直線の長いコースだと前脚をグイッと伸ばせる走法に変わるので、カツジもその可能性はあります)
ディープインパクト×母スプリンターは好配合ですから、メリッサはミッキーグローリーやカツジのような馬をコンスタントに出せるでしょう。
デイリー杯2歳Sに向けて
良馬場に変わり、今度はしなやかに前脚を伸ばして走れるかがポイント。全兄よりも胴が短く、どうしてもピッチになりがちな馬なので、京都の外回りコースであればスローの上り3F勝負がベスト。ジャンダルムとセットで抜け出してくるイメージですね。
京都のマイル戦は3コーナーの下りから勢いをつけられるので、そこからペースアップするようだと苦しくなります。器用なタイプなので、できれば内枠を引き当てたいところでしょう。
まとめ
京都芝1600mであれば、メガリージョンが一歩リード。ダイワメジャー産駒のフロンティアは、直線が平坦の京都でどのようなレースを組み立てるのか……。メンバー的には最上位ですから、中内田調教師の手腕に注目が集まりますね。
少頭数ながら、なかなかの好素質馬が揃ったデイリー杯2歳S。今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。