朝日杯FSのステップレース「京王杯2歳S」は、1人気に推されたタワーオブロンドンが直線残り200m過ぎで前を走るアサクサゲンキを捕らえると、1着でゴール板を駆け抜けました。2着にインを抜けたカシアス、3着に直線で一旦は先頭に立ったアサクサゲンキが入線。勝ちタイムは1分21秒9(良)。
タワーオブロンドン 2歳牡馬
父:Raven's Pass
母:スノーパイン(母父:Dalakhani)
厩舎:藤沢和雄(美浦)
まだまだ「顔」が大きく、アンバランスな馬体をしているタワーオブロンドン。走り出すと実にパワフルで、いかにも欧州風なマイラーといった趣のある馬です。
血統などの詳しい解説については、以下の記事をご覧下さい。
タワーオブロンドンは、スピードが上がるとピッチ→ストライドへと走法が変わり、前脚をグンと伸ばせるのが最大の長所です。京王杯2歳Sは直線の坂をパワーピッチで駆け上がり、仕掛けられたラスト200mでビュンとストライドを伸ばしました。
Raven's Passは種牡馬として優秀
Raven's Passは、母Ascutneyが非Northern Dancerの血を引かず、父Elusive Qualityも母父父にNorthern Dancerを引くだけで、欧州で活躍した馬としては傍流の血統構成をしています。
Raven's Pass自身はNasrullahやPrincequilloなどのスピード血脈を多く引いているため、父としても、そして母父に回っても優秀な成績を上げるのではないでしょうか。
タワーオブロンドンの母系は?
タワーオブロンドンの母系は、英ダービー馬ジェネラスを出したDoff the Derbyに遡り、スタミナとパワーに優れた欧州の種牡馬がかけられてきました。母スノーパインの父Dalakhaniは父Darshaan(フランス血統)×母父Miswakiですから、ここが母系のなかでアクセントとなっています。
タワーオブロンドンがマイルで重厚なキレを発揮するのは、父 Raven's Passだけではなく、母父Dalakhaniの影響も大きいはずです。
今後は?
脚が短くガッチリとした馬体から、いかにも短い距離をパワーで突進するマイラー。スピードの乗りがスプリンターとは思えないので、現状は1400〜1600mの距離がこの馬には走りやすいでしょう。
朝日杯FSに向けて
2歳のチャンピオン・マイラーを決める朝日杯FSは、長い直線+ゴール前に急坂のある阪神外回りコースで行われます。タワーオブロンドンは京王杯2歳Sをパワーで差し切ったので、200mの距離延長は心配ナシ。
阪神のマイル戦はバキューンと弾ける脚の使えるディープインパクト産駒の得意コース。タワーオブロンドンが直線の長いコースでキレ負けしないかが不安です。
朝日杯FSの結果がどうであれ、この馬は奥行きのある配合をしているため、今後の成長が楽しみな1頭。
2着カシアスと3着アサクサゲンキについて
2着と3着には、函館と小倉の2歳Sを制した2頭が入線しました。
カシアスはマイナス14kgと前走より大幅に馬体を減らしたものの、直線で馬群を割って伸びての2着。アサクサゲンキは逃げるタイセイプライドを直線で交わして先頭に立つと、ジリジリと脚を使っての3着。
カシアス 2歳牡馬
カシアス自身がもつHis Majesty4×5のクロスは、母ラブディランのDanzigクロスを累進(✳︎)するもので、キンシャサノキセキ産駒としては1400mベストのスプリンターに完成しそうです。
✳︎Danzigの母父がHis Majesty
ゴリゴリとパワーで押せるスプリンターですが、函館2歳Sも京王杯2歳Sも差して好走したのは、まだ馬体にパワーが付ききっていないからだと言えます。
朝日杯FSはペースが緩めば好走の可能性も……ただ、マイル戦で京王杯2歳Sよりもパフォーマンスを上げられるのかは「?」がつくのも確かです。
アサクサゲンキ 2歳牡馬
母Ameliaが世界的な良血馬で、その良質な母系がアサクサゲンキの競走能力を支えています。スピード能力の高さは見せたものの、京王杯2歳Sの走りから1400mはギリギリの印象。さらに距離を延ばして良さが出るかは「?」なので、朝日杯FSに向かうようなら割引が必要でしょう。
本馬はNorthern Dancer4×3のクロスをもつので、馬体の完成が早めのタイプ。今後は好走の可能性が高いレースをシビアに選択し、少しでも賞金を積み上げたいですね。
その他の注目馬
エントシャイデンはスプリント重賞を2勝した全姉のブランボヌールよりも体型に伸びがあり、東京コースがベストのしなやかマイラー。スタートで後手を踏み、イン優勢の馬場で外を回され続けたのは痛かったですし、上位馬とは完成度の差が出ました。直線に向いて伸びかかった脚は見所十分で、長い目で見たい1頭です。
タイセイプライドは馬体の緩さもあったのでしょうが、上位馬とは完成度の差が出た敗戦。ヨハネスブルグ産駒は2歳の早期に活躍した後は、3歳の秋以降にまた成長しますから、この馬も長い目で……。
まとめ
タワーオブロンドンは、この相手関係だとどのような展開になっても勝ったのだろうなと思わせる完勝。馬場の外へスムーズに出せた時点で1着は間違いなしでした。
朝日杯FSに向かうとなれば上位人気が確実な馬だけに、今後のローテーションに注目です。
以上、お読みいただきありがとうございました。