エアレーション馬場の京成杯(2019年)はディープインパクトの差しとRobertoの捲りがポイント!

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2012年の京成杯AH(GⅢ・中山芝1600m)でレオアクティブがマークした1分30秒7は、今年のヴィクトリアマイル(GⅠ・東京芝1600m)でノームコアが1分30秒5の勝ちタイムをマークするまで、JRAの芝1600m戦における日本レコードでした。

今でこそ、マイル重賞(またはOP競争)では1分31秒台がポンポンと出るようになっていますが、2012年当時では芝1600mで1分30秒台の決着となるのは、「え?! 本当に?!」と驚くレベルのタイムだったと言えます。

レオアクティブの日本レコードが出た後では、「速い時計が出るのは芝の硬度が高い」ことが原因であるとされました。競馬関係者やメディアから「競走馬の事故を減らすために、芝の硬度を下げる必要があるのでは?」との指摘を受け、JRAは馬場の硬度を低下させる対策に乗り出します。

そして、2013年から秋の中山開催の3週間前に、馬場をソフトにする(柔らかくする)エアレーション作業を実施することとしました。開催の1ヶ月前、路盤に穴を開けて馬場の硬度を下げる作業(エアレーション作業の中でもバーチドレインと呼ばれる方法)は、2013年と2015〜17年にかけて中山競馬場で行われています(2014年は秋の中山開催の替わりに新潟競馬場でレースが行われました)。

 

開催1ヶ月前のエアレーション作業による馬場の変化は?

秋の阪神開催や年初の京都開催の開幕週は「インコース+逃げ・先行」が有利な馬場としてよく知られています。開幕仕立ての芝は馬場のコンディションが良いため、コースロスの少ないインコースを走った馬が有利になるのがデフォルトだからです。

ただ、ここ数年の中山開催は開幕週だからといって逃げ・先行馬がバンバンと残るわけではなく、外から差してくる馬も好走できる馬場。芝コースはやや時計がかかり、RobertoやDanzigの血をもつパワータイプが好走する柔らかい(ソフトな)馬場となっています。

 

時計のかかるソフトな馬場へ

エアレーション作業によって馬場が柔らかくなると、それほど速いタイムは出ないのが通例です。京成杯AHの過去の勝ちタイムを見ておきましょう。

京成杯AHの勝ちタイムと1着馬

2018年

1分32秒4

ミッキーグローリー(10 - 9 - 8)

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2017年

1分31秒6

グランシルク(8 - 9 - 7)

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2016年

1分33秒0

ロードクエスト(12 - 10 - 6)

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2015年

1分33秒3

フラアンジェリコ (15 - 15 - 15)

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2013年

1分31秒8

エクセラントカーヴ(6 - 5 - 4)

)2014年は中山ではなく新潟競馬場の代替開催だったために除いています

2013と17年はエアレーション作業が行われたにもかかわらず「速い時計」の出る馬場となり、勝ちタイムは1分31秒台となりました。それを除くと32〜33秒台の決着となっているように、JRAの施策は成功していると言えるでしょう。

また、5年間の結果を見ると、京成杯AHは開幕週に行われるにもかかわらず、外差し優勢の馬場がデフォルト。クッションの効いたソフトな芝は、外からの差しも届くのが大きな特徴です。

 

今年の京成杯「も」外差しになるのか?

秋の中山開催の芝は「エアレーション作業」によってクッションが効いて柔らかく、インコースを通った逃げ・先行馬がバンバン残るような馬場ではありません。京成杯AHもここ数年はこの傾向が顕著で、ハイペースでなくとも外からの差しが決まりやすい馬場になっています。

以下は京成杯AHの過去5年(2014年は新潟開催のため除く)における、1〜3着馬の通過順位をまとめたものです。

京成杯AHの1〜3着馬

2018年

勝ちタイム:1分32秒4(46.9 - 45.5)

1着:ミッキーグローリー(10 - 9 - 8)

2着:ワントゥワン(14 - 15 - 14)

3着:ロジクライ(6 - 6 - 4)

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2017年

勝ちタイム:1分31秒6(45.8 - 45.8)

1着:グランシルク(8 - 9 - 7)

2着:ガリバルディ(12 - 11 - 11)

3着:ダノンリバティ(8 - 7 - 7)

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2016年

勝ちタイム:1分33秒0(46.4 - 46.6)

1着:ロードクエスト(12 - 10 - 6)

2着:カフェブリリアント(8 - 7 - 8)

3着:ダノンプラチナ(13 - 12 - 10)

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2015年

勝ちタイム:1分33秒3(47.0 - 46.3)

1着:フランジェリコ(15 - 15 - 15)

2着:エキストラエンド(9 - 4 - 4)

3着:ヤングマンパワー(6 - 9 - 9)

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2013年

勝ちタイム:1分31秒8(45.2 - 46.6)

1着:エクセラントカーヴ(6 - 5 - 4)

2着:ダノンシャーク(9 - 8 - 7)

3着:ゴットフリート(2 - 3 - 3)

昨年は1.4秒の後傾ラップながら、1・2着は外から差して来た馬でした。上記を見れば、前後半800mのラップに関わりなく、差し決着となっていることがわかります。また、赤色でマークしたディープインパクト産駒は毎年3着内に好走しており、その点も注目です。しなやかなディープ産駒が差し届いてしまうのが京成杯AHと言えるでしょう。

青色でマークしたのはRobertoの血を引く馬

 

Robertoもちの馬に注目!

京成杯AHにおいてディープインパンクトとともに注目したいのは、パワーとスタミナにあふれるRobertoの血です。ブログに同じことを書き続けるのも気が引けるものの、この種牡馬が伝えるパワーは「小回り+直線急坂」の中山コースがずんどば!

京成杯AHにおいても、2017年グランシルクと2016年ロードクエストが連覇しています。この2頭は通過順からも、3〜4コーナーにかけて捲りながら直線で差す競馬をしての快勝。Roberto的なパワフルな捲りを得意とする馬を積極的にピックしたいのが京成杯AHと言えますね。

 

今年の出走予定馬のなかで捲り差しの馬は?

キャプテンペリー

クリノガウディー

グルーヴィット

ジャンダルム

ストーミーシー

ディメンシオン

トウウショウドラフタ

ヒーズインラブ

プロディガルサン

レインボーフラッグ

ロードクエスト

(50音順)

捲り・差し馬のなかでディープインパクト産駒は赤色でマークした2頭。また、Robertoの血を引くのは青色でマークした3頭となりました。クリノガウディーとプロディガルサン、ロードクエストの3頭は上位人気になりそうとあって、人気的に妙味があるのはジャンダルムとディメンシオンの2頭ですかね。

 

ジャンダルム 4歳牡馬

父:Kitten's Joy

母:ビリーヴ(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:池江泰寿(栗東)

生産:North Hills Co. Limited

ビリーヴの仔は母も管理した松元茂樹厩舎に預けられることが多いのですが、この馬は池江寿厩舎に入りました。この点からもこの馬への期待の高さが窺えます。 新馬戦とデイリー杯2歳S(1着)を観てもわかるように、スローからの上り2〜3F勝負になると強さを発揮するタイプ。これはSadler's Wells直仔ながら早熟なマイラーだったEl Pradoらしいパワーと機動力がジャンダルムにしっかりと伝わっているから。 ダービー以降はなぜか「直線の長いコース」ばかり走りましたが、今走で「やっと」小回りコースへの出走となりました。京成杯はジャンダルムのパワーと機動力に優れたピッチ走法が活かせる舞台。ホープフルS(2着)や弥生賞(3着)だけ走ればここでの好走も十分です。

 

血統

母ビリーヴはサンデーサイレンス直仔ながら、高松宮記念とスプリンターズSのGⅠを制した短距離馬。その母グレートクリスティーヌがNorthern Dancer×Icecapade2×2(✳︎)という濃いクロスに加え、似たような血統構成をしている父Dnzigと母Great Lady Mの配合により、コテコテのパワーとスピードが詰め込まれています。

この2頭の種牡馬は父Nearcticと母父Native Dancerが共通

ビリーヴの仔は祖母グレートクリスティーヌの影響が強いスピードタイプに出ます。ジャンダルムもその例に漏れず、母系のパワーと祖父El Pradoのイメージ通りの機動力型です。 Kitten's Joy産駒は、父のもつSir Ivorを刺激するとダッシングブレイズのような東京コースでびゅーんとキレるタイプになり、Robertoを刺激するとパワータイプが出ます。ジャンダルムはRobertoを活かす形なので、しなやかにキレるタイプではありません。そのため、ベストは小回り・内回りコースと言えるでしょう。

 

京成杯AHに向けて

ジャンダルムは「小回り・内回り+直線急坂」コースと1600〜1800mの距離に適性をもつ馬。そのため、京成杯AHへの出走は今後を占う意味でも大切な1戦となります。武豊騎手が乗るようだとムダに人気に推される可能性があるので、想定が藤井勘一郎騎手というのもプラスです。

パワーと機動力(器用さで立ち回る)で勝負する馬だけに、ペースは後傾〜平均が理想。ビュンと加速するタイプなので、エアレーション馬場だとしなやかにキレるディープインパクト産駒に差し切られるおそれもありますが、好走の可能性は十分にあります。

 

ディメンシオン 5歳牝馬

 父:ディープインパクト

母:ミスペンバリー(母父モンジュー)

厩舎:藤原英昭(栗東)

生産:木村秀則

昨年、500万下から1600万下を3連勝すると、続くターコイズS(GⅢ・中山芝1600m)で5着と好走し、重賞でも十分に好走できる力をあることを証明しました。2ヶ月の休み明けだった前走の関屋記念は牡馬に混じっての4着。ひと叩きの効果があれば、京成杯AHも好勝負が期待できます。

 

血統

母ミスペンバリーはモンジュー×ハイエステイト×Thatchingと欧州を代表する種牡馬がかけ合わされ、自身はSpecial=Thatch4×4の全姉弟クロスをもつ繁殖牝馬。ゴリゴリの欧州血脈にディープインパクトが配され、ディメンシオンは器用さとしなやかさのあるタイプとなりました。

ディープインパクト×Mil Reefはしなやかなキレ、Special=ThatchのクロスはForliの機動力をONにしています。そのため、小回り中山のターコイズSでも、新潟外回りの関屋記念でもソコソコに走れるのは、この馬の万能性によるものでしょう。

どのようなコースでもソコソコに走れる万能性というのは、裏を返せばズドンと勝ち切る力に欠けるということです。ディメンシオンの課題は、適性のあるコースがどこなのかハッキリとわからないことにあります。

 

京成杯AHに向けて

牡馬相手のマイル重賞であっても力が通用するのは前走で実証済。5歳ながらもまだ12戦(藤原英厩舎の管理馬らしく、レースのムダ使いをしない)と使い減りもなく、まだまだ成長の余地も十分です。中山コースもOKですし、ここは好走のチャンスでしょう。

この馬の不安点は血統のところでも書いた「万能性」。どのコースでもソコソコに走れてしまうだけに、ここも掲示板内あたりの着に落ち着いてしまうことも……。想定上では人気も薄そうなので、このままなら狙いたい1頭ですね。

 

まとめ

エアレーションの実施された京成杯AHは近年、ディープインパクト産駒がしなやかに外差しを決めるレースとなりつつあります。今年はどの馬がバキューンと弾ける脚を使って勝つのでしょうか?

今からレースが楽しみですね!

以上、お読みいただきありがとうございました。