皐月賞(2018年)はディープインパクト産駒向きの高速馬場か、Roberto向きの重馬場か?

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2014年、中山競馬場の芝コースは「排水性」を高めるため、馬場の改造工事を行いました。それ以降の2015年〜17年、3歳牡馬クラシックの第1冠・皐月賞は「高速馬場」のなかでのレースとなり、速い時計の決着が続いています。

2015〜17年の皐月賞の勝ち時計

2015年:1分58秒2

2016年:1分57秒9

2017年:1分57秒8

馬場が「軽く」なったことによる変化は時計面だけではありません。2015年こそキングカメハメハ産駒のドゥラメンテが制したものの、16年ディーマジェスティ、17年アルアインとディープインパクト産駒が2連覇。

時計のかかる(=上り3Fがかかる)中山コースで行われる皐月賞は、「ディープインパクト産駒にとっては鬼門」と言われていましたが、それも今は昔となりつつあります。

今年の皐月賞の行われる15日(日)は雨の予報が出ており、ここ3年のような高速馬場でのレースとなるのかは不透明です。重馬場になるのか、それともディープインパクト産駒の得意とする「速い馬場」になるのでしょうか?

 

2014年以降、中山競馬場は排水性がアップ

2014年の馬場改造工事によって、中山競馬場の芝コースは排水性が向上し、雨が降ったとしても馬場が重くなることは少なくなりました。15年以降、中山の芝コースが「重」まで悪化したのは、17年の4月9日、9月17日と18日の3日間のみ。

また、昨年の皐月賞は前週の4月9日(日)に馬場が重まで悪化したにもかかわらず、高速馬場へと変化したことから、好天に恵まれれば芝がすぐに乾くほど排水性が良くなっています。

 

降雨があっても時計がかからない?

芝コースの時計が速くなるかどうかは、馬場に含まれる「水分量」によります。そのため、降雨があっても日差しが出て馬場が乾けば、すぐに速い時計の出るコンディションになるのです。

例えば、2017年の9月18日は、前日の雨の影響で午前中が重馬場でのレースとなったものの、晴天に恵まれたことで午後にはみるみる回復し、メインレースのセントライト記念は「良」馬場で行われました。そのレースを制したミッキースワローの上り3Fが33.4ですから、時計の速い馬場へとすぐに変化したことがわかりますね。

 

今年の皐月賞は重馬場か、それとも……

今年の皐月賞当日は「雨」の予報。レースの行われる時間帯(10〜16時)にどれほどの雨量があるのかによって、馬場への影響も変わります。

先週は日曜日のメインレース・春雷S(OP・芝1200m)で1分07秒4の勝ち時計がマークされていたように、現在の中山芝は速いタイムの出るコンディションです。芝コースの排水性の高さを考えると、1日を通して雨が降り続くことがなければ、時計がかかるタフな馬場まで悪化はしないでしょう。

 

雨が降らなければ「高速馬場」へ

JRAの馬場造園課は日曜日に「雨の予報」が出ている場合、週末の散水を控えるのが一般的です。もし雨が降らずに晴天になると、馬場が乾くために「高速化」します。

JRAのHP内にある「馬場情報(中山競馬場) JRA」では、10日(火)と12日(木)に散水を実施しており、先週よりもさらに時計が速くなる心配はなさそうです。週末に散水の予定はなく、このまま雨が降らなければ高速馬場のままでしょう。

 

ディープインパクト産駒の得意な馬場になる?

もし、雨が降らないとなれば、皐月賞は速い時計の出る馬場でレースが行われることになります。3年連続の「レースレコード更新」があっても驚けませんね。

高速馬場でのレースとなったときは、ここ3年の傾向からもディープインパクト産駒に有利。とくに、1分58秒を切る勝ちタイムになると、1着まで突き抜けてしまいます。

今年の皐月賞に出走するディープインパクト産駒は以下の2頭。

ワグネリアン

キタノコマンドール

(内枠から降順)

この2頭は「ノーザンファーム生産馬」+「関西の名門厩舎」+「リーディング上位騎手」という組み合わせが共通しています。また、ワグネリアンを管理する友道厩舎、キタノコマンドールを管理する池江寿厩舎はこのレースに2頭出しという点も同じ……。これらの要素を並べるだけで、いかにも好走しそうな雰囲気が漂いますね。

 

1800mの重賞を制したディープインパクト産駒が好相性

馬場改造後の皐月賞は、1800mの重賞を連対したディープインパクト産駒が好走するシーンが目立つのも特徴のひとつです。パっと例を上げてみるとーー

2015年

1着 ドゥラメンテ:共同通信杯(東京芝1800m)2着

2着 リアルスティール:共同通信杯1着

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2016年

1着 ディーマジェスティ:共同通信杯1着

3着 サトノダイヤモンド:きさらぎ賞(京都芝1800m)1着

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2017年

1着 アルアイン:毎日杯(阪神芝1800m)1着

これだけで判断するなら、東京スポーツ杯2歳S1着のワグネリアンはキタノコマンドールよりも有力ですね。

 

父ディープインパクト×母父キングカメハメハ

ワグネリアンとキタノコマンドールは「父ディープインパクト×母父キングカメハメハ」というリーディングサイアー同士の配合形。同じ父と母父をもつとは言え、2頭のタイプは異なっています。

 

ワグネリアン

ワグネリアンは先日の記事にも書いたように、母系にTurn-toやPrinsquilloなどのスピード血脈を多く引くことで、ディープインパクトらしいしなやかな走りをするタイプ。ややコーナーでズブさを見せるのも、スピードが偏り過ぎてパワーが足りないからでしょう。

似たような配合形のディープインパクト産駒にアルアインとミッキークイーンの2頭。ワグネリアンはこのGⅠ馬の2頭とタイプが似ており、一言で表すなら「細身でしなやかなアルアイン」がイメージにピッタリです。

 

キタノコマンドール

全姉デニムアンドルビー、同じフェアリードール牝系出身のキングカメハメハ産駒トゥザグローリー=トゥザワールドの全兄弟がピッチ走法だったように、キタノコマンドールは阪神内回りのすみれSを回転の速いフットワークでビュンと捲りました。

4分の3同血のトゥザワールドが皐月賞を2着と好走していることから、こちらはいかにも中山コース向き。トゥザワールドは池江寿調教師の管理馬でしたから、この牝系の特徴をしっかりと把握しているのも大きな強みです。

 

ディープインパクト≒ロードカナロア

新種牡馬のロードカナロアはディープインパクトと同じく、初年度産駒から桜花賞馬を出しました。また、この2頭の種牡馬は柔らかい体質としなやかなフットワークを仔に伝えます。産駒の特徴が似通っていることから、馬場改造後の皐月賞であれば、ロードカナロア産駒にもチャンスはあるでしょう。

上位の人気に推されるステルヴィオについては詳しい解説記事を書いているので、よければそちらをご覧下さい。

 

どのコースが軽くなるのか?

中山の芝コースは昨秋の大雨の影響が残っていることもあり、内ラチ沿いに傷みが見られる状態です。開催前にエアレーション作業がされている場合は、レース数を重ねるにつれて芝が踏み固められ、インがより硬くなる傾向があります。

開催の最終週になって、「いつもの」インが伸びる馬場が出現したとしても、「内ラチから2頭分ほどはそれほど軽くならないのではないか?」というのが私的な見立てです。昨年の皐月賞でアルアインが通ったコースが今年もベターでしょう。

そのもっとも伸びるコースを通れる馬として、最有力候補はジャンダルム+武豊騎手のコンビ。逃げ・先行馬の直後のポジションが取れること、3〜4コーナーを俊敏に回れる脚をもっていることから、この馬がベストのコースを通れますね。

 

重馬場になるならRobertoとDanzigもち

想像以上の雨が降り、時計のかかるタフな馬場になれば、歴史的な不良馬場だった昨秋の菊花賞と同じく「RobertoとDanzig」もちが有利です。これについては先日の記事で解説しているので、詳しくはそちらを参照して頂くとして、ここでは簡単に触れておきます。

 

RobertoとDanzigもち

今年の皐月賞にはRobertoとDanzigを合わせもつ馬が4頭エントリー。

ジャンダルム

ケイティクレバー

ジェネラーレウーノ

グレイル

まるっと逃げ・先行馬が揃いましたね。この4頭のイメージがそのままRobertoらしさと言ってもOKで、「しなやかさにキレる」のではなく「パワーで捲り・粘る」のがこの血の真骨頂です。

ジャンダルムはデイリー杯2歳Sでビュンと加速して勝ちましたが、アレはピッチ走法で俊敏に抜け出したもの。ピッチで走る馬はトップスピードまですぐに到達できるので、「キレ」があるように見えます。

このなかでもっとも重馬場向きのパワーがあるのはいいグレイルで、器用さがあるのがジャンダルム。2頭ともに渋った馬場は大歓迎です。

 

まとめ

高速馬場になればディープインパクトとロードカナロア産駒に向き、重馬場になればRobertoとDanzigもちの馬にチャンスが出てきます。今年の皐月賞はどんな馬場コンディションになるのでしょうか?

以上、お読みいただきありがとうございました。