マイルの日本レコードがマークされた京成杯AH(2019年)の傾向変化と勝ち馬トロワゼトワルについてのアレコレ

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秋の中山開幕週を飾るマイル重賞の京成杯AH(中山芝1600m・GⅢ)は、トロワゼトワル(4歳牝馬・安田隆行厩舎)が日本レコードとなる1分30秒3で快勝。

鞍上の横山典弘騎手はこれで、京成杯AHのレコードを3度更新するということ記録を打ち立てました。

横山典騎手と京成杯AHのレコード

2001年:1分31秒5(ゼンノエルシド)

2012年:1分30秒7(レオアクティブ)

2019年:1分30秒3(トロワゼトワル)new!

この内、2012と19年は日本レコードですから、横山典弘騎手の「馬を気持ちよく走らせたら日本NO.1」という評価はまさにその通りと言えるでしょう。

さて、そんな記憶に残る今年の京成杯AHは、今後の馬券に活かせるポイントがいくつかあったので、メモとして(自分用のものも含めて)残しておきます。

 

京成杯AHのポイント!

京成杯AHのポイントは以下の3つです。

POINT

1. エアレーションの傾向が変化

2. 高速+インベタ馬場

3. 高速決着ならロードカナロア

それではひとつずつ見ておきましょう。

 

1. エアレーションの傾向が変化

秋の中山開催はエアレーション作業が実施されています。馬場を柔らかくほぐして通気を良くするエアレーションを行う(✳︎)と、「外差し馬場」となるのがここ数年のデフォルトでした。

✳︎)クッションの効いてソフトな芝となり、先行勢よりも差し馬勢に有利となる

ところが、今秋の中山開催の開幕週は「高速+先行有利」な馬場。そのため、近年の「エアレーション馬場」とは傾向が異なっています。

京成杯AHは昨年までの「差し馬が有利」な傾向から一転して、「日本レコード+先行勢でのワンツースリー」という結果。それにしても、ここまでガラリと馬場が変わるとは予想できませんでしたね。

 

2. 高速+インベタ馬場

エアレーション作業の実施された馬場の特徴は簡単にまとめると以下の点です。

開幕週はやや時計がかかる

外差し有利

開催が進むにつれて高速馬場へ

→「インベタ+先行勢」も粘れる

一般的に、エアレーション作業の実施された芝コースは開催が進むにつれて路盤が踏み固められ、高速馬場となるのが大きな特徴と言えます。

ただ、今年は京成杯AHで日本レコードがマークされたように、開幕週から「超」のつく高速馬場でレースが行われました。

さらには、京成杯の1〜3着は「逃げ・先行+頭を立ち回った」馬であることから、これまでの「外差し有利」の傾向もガラリと一変しています。

 

3. 高速決着ならロードカナロア

1着トロワゼトワルはロードカナロアを父にもち、2着ディメンシオンの父はディープインパクト。この2頭の種牡馬は高速決着に向いた「しなやかさ=柔らかさ」と「キレ」をもつのが最大の長所です。

柔らかいストライドで走る馬はトップスピードを長く維持するのに優れているため、高速決着を得意とします。また、ゴールまでのラスト3Fでバキューンと弾ける脚(キレ)を使えるのも高速馬場への高い適性を示していると言えるでしょう。

 

ロードカナロア=ディープインパクト

昨年な牝馬3冠を達成したアーモンドアイ、今年の皐月賞馬サートゥルナーリアなどの走るフォームの柔らかさを観ても、種牡馬ロードカナロアはしなやかな体質を産駒に伝えることがわかります。

この「柔らかさ=しなやかさ」は大種牡馬ディープインパクトの伝えたものと同じ質のものです。そのため、今後のロードカナロアはディープと似た適性(✳︎)をもつ産駒を多く出すことになるでしょう。

✳︎)距離適性は除く

つまり、「ロードカナロア=ディープインパクト」産駒という図式が成り立ち、好走するスイートスポットは似ていると考えられます。ロードカナロアの柔らかさについては以下の記事に詳しく書いているので、よければご覧下さい。

 

小回り中山コースはディープインパクトの不得手なコース「だった」のに

中山競馬場は2014年の路盤改修(芝コース)によって排水性(水はけのよさ)が向上し、馬場が荒れにくくなりました。その結果、時計の速い芝がデフォルトになりつつあります。

それまでは年末の中山開催は有馬記念の行われる頃には時計のかかる馬場になることがほとんどでした。ところが、近年は時計の速い決着も多く見受けられます。

✳︎)冬場は芝の発育が遅く、どうしても馬場が荒れてしまい、時計がかかるようになっていました

これによって、それまで小回りコース+時計のかかる馬場を不得手だったディープインパクト産駒が、中山競馬場をそれほど苦にすることなく走れるようになりました。

ディープインパクト産駒と似た適性をもつロードカナロアにとって、高速馬場は大歓迎。中山の芝が速い時計の出るコンディションになれば、より産駒の好走確率は高まると言えるでしょう。

 

3つのポイントをまとめると

上記のポイントをまとめると、来年以降の秋の中山開催は「外差しのイメージ」に固執しないこと、高速馬場であれば「インベタ+先行有利」であることを頭に入れておく必要があります。

ただ、JRAは極端な馬場傾向になることを嫌う面があり、今年(2019年)にこれほどの高速馬場を作ってしまったことに対する反動として、来年はまたソフトな外差し馬場になるよう調整するかもしれません。

高速馬場とやや時計のかかるソフトな馬場のどちらになるのかは、開幕初日のレースを観てしっかりと判断するようにしましょう。

 

トロワゼトワルについてのアレコレ

ここまでは京成杯AHについて気になったポイントをまとめました。ここからは勝ち馬のトロワゼトワルについての所感をパラパラと述べます。

 

横山典騎手の「天才的な逃げ」

天才・横山典弘騎手はGⅠの前哨戦において、時おりスーパーな逃げの手を敢行します。これについてはTwitterにも投稿したので、それを引用するとーー

これはクイーンSを逃げて圧勝したアエロリットが秋華賞に向かうときにも不安視し、ブログにもアップしました。

で、以下が結論です。

スーパーな騎乗は2戦続けてハマることがほとんどない!

アエロリットやトロワゼトワルの逃げが素晴らしいものであればあるほど、次のレースでは周りもきちんと警戒します。横山典騎手もGⅠでこの戦法を遂行するならよいものの、前哨戦で先出ししてしまうのはマイナスです。

 

安田隆行厩舎の存在感

トロワゼトワルを預かる安田隆行調教師は、スプリント〜マイル路線の素質馬を管理するのに長けています。そのため、今年のキーンランドCを制したダノンスマッシュなど、短距離路線の重賞馬だ出す手腕は見事という他ありません。

 

非ノーザンF生産馬なのでスプリント路線がベター?

マイルの重賞を制したことで、トロワゼトワルのローテは富士S→マイルCSになる可能性も……。ただ、京成杯AHでのレースぶりからも1400mがベストではないかと……。

また先日の記事でも書きましたが、マイル以上の距離のGⅠは「ノーザンF、ノーザンF、ノーザンF」なので、社台F生産馬のこの馬にとってはマイナス材料。

それであれば、非ノーザンFでもOKのスプリント路線に向かうのもアリなのでは、と。もしスプリンターズS(中山芝1200m)に向かうのであれば、あのダッシュ力が通用するのかはとても興味が湧きます。今後のローテにも注目しましょう。

 

まとめ

今年の京成杯AHは週中に注目馬として上げた2頭が2・3着と好走したものの、1着馬のトロワゼトワルをガン無視していたのでカスリもせずでした。

10人気のジャンダルムを◎にできたのはせめてもの慰めです。

今回の記事では「おっ!」と思った京成杯AHの傾向の変化について書いたので、少しでも皆さまの参考になれば。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。