淀の1600mでスピードを競うマイルCS(GⅠ)は、秋のマイル王決定戦。今年の安田記念1、3着のサトノアラジン、レッドファルクス、さらにはエアスピネルやイスラボニータなどのマイルの実績馬が集まり、混戦模様と言われています。
先週のエリザベス女王杯と同じように、上位人気の馬たちはみな「1着」の可能性があり、馬場や展開、位置取りなどのちょっとしたことで、着順がガラリと入れ替わってしまうメンバーです。
今回の記事では、1〜5人気が想定される5頭について、詳しく解説します。
上位1〜5人気の馬たち
マイルCSで1〜5人気が想定されるのは以下の5頭です。
イスラボニータ:C・ルメール
エアスピネル:R・ムーア
サトノアラジン:川田将雅
ペルシアンナイト:M・デムーロ
レッドファルクス:C・デムーロ
(50音順)
エアスピネルは武豊騎手→R・ムーア騎手へと乗り替わりとなり、これで上位人気の5分の4が外国人騎手となります。それにしても、どれが1着になっても驚かない面々がズラリと……。
それでは、1頭ずつ見ていきましょう。
イスラボニータ 6歳牡馬
父:フジキセキ
母:イスラコジーン(母父:Cozzene)
厩舎:栗田博憲(栗東)
生産:社台コーポレーション白老ファーム
皐月賞馬のイスラボニータは古馬になってからもコンスタントに重賞で活躍。マイルへと路線を転向してからはGⅠ制覇へもう「あと一歩」のところまで来ました。
今春の安田記念は前後半800mのラップが45.5 - 46.0(1分31秒5)と、もともと中距離馬のイスラボニータにとって、外枠からのスタートでこのペースを追走すると、脚が削がれてしまいます。昨年のマイルCSのように前半を46秒台で入れれば……。
血統
イスラボニータが驚くほどにしなやかな全身運動をするのは、柔らかい血が豊富な母父Cozzeneの血によるもの。
父フジキセキ×母父Cozzene×母母父Crafty Prospectorですから、マイラーのよう配合ですが、独特なしなやかさが中距離を走れる適性を高めたのでしょう。
古馬になってからマイルへとシフトしてきたのは、成長とともに筋肉がついたからだと言えます。
マイルCSへ向けて
前走の富士Sは不良馬場+58kgの斤量を背負いながら、2着と好走しました。勝ちタイムが1分34秒8、上り3F35.0ですから、馬場は次の日に行われた天皇賞・秋よりも悪くはなっていませんでした。イスラボニータにとってはGⅠ馬としての格で好走できる馬場の範囲だったと言えます。
昨年と同じ安田記念→富士S→マイルCSというローテーションで臨み、C・ルメール騎手とのコンビも1年以上継続。加齢による衰えもそれほど見られないことから、ここに向けて大きな不安はありません。
マイルであれば時計の速い馬場だとペースによっては追走で脚を削がれてしまう可能性があるため、今のややタフなコンディションの京都芝はベター。
好走しているときも「手応え」以上にびゅんと伸びないので、昨年のマイルCSのようにジワジワと加速していくレースが合っています。3コーナー過ぎの下り坂からスピードをアップするレースができれば。
エアスピネル 4歳牡馬
父:キングカメハメハ
母:エアメサイア(母父:サンデーサイレンス )
厩舎:笹田和秀(栗東)
生産:社台ファーム
前走の富士Sを快勝し、初GⅠ制覇へ向けて舞台は整った……かのように見えましたが、武豊騎手→R・ムーア騎手へと乗り替わりが決まりました。
世界NO.1ジョッキーと呼ばれるムーア騎手への乗り替わりそのものがマイナスになるとは思えないものの、エアスピネルのファンにとっては心穏やかでないでしょうし、不満に思う人も多いでしょう。
ムーア騎手の1ファンとしては、スピネルが好走しても凡走しても「批判」が待っている上での騎乗となるわけで、レース前から憂鬱な気分になります。
エアスピネルの血統やマイルCSに向けての展望はすでに別の記事に書いていますので、よければそちらをご覧下さい。
I Dreamed a Dream エアスピネルの「夢」はどこにあるのか?ーーマイルCS(2017年)展望 - ずんどば競馬
サトノアラジン 6歳牡馬
父:ディープインパクト
母:マジックストーム(母父:Storm Cat)
厩舎:池江泰寿(栗東)
生産:ノーザンファーム
4歳春から直線の長いコースの1400〜1800mに絞ったローテーションが組まれ、ついに今春の安田記念でGⅠを制覇しました。
前走の天皇賞・秋は不良馬場だったこともあり、雨の降ったコンディションが苦手なこの馬にとっては、できるかぎりダメージを残さない走りでの18着。
サトノアラジンについてはマイルに向けての展望記事を書いていますので、よければそちらをご覧下さい。
ペルシアンナイト 3歳牡馬
父:ハービンジャー
母:オリエントチャーム(母父:サンデーサイレンス )
厩舎:池江泰寿(栗東)
生産:追分ファーム
アーリントンC1着の後はクラシック路線を歩み、皐月賞はM・デムーロ騎手の好騎乗もあって2着と好走しました。ダービーはスローペースでかかってしまい、直線では見せ場もなく7着と敗退。この結果を受けて、今秋からはマイル路線へと転向することに。
ペルシアンナイトについては、血統やマイルCSに向けての詳しい展望記事を書いていますので、よければそちらをご覧下さい。
レッドファルクス 6歳牡馬
父:スウェプトオーヴァーボード
母:ベルモット(母父:サンデーサイレンス )
厩舎:尾関知人(美浦)
生産:社台ファーム
昨年、今年とスプリンターズSを連覇し、6歳になってもまだまだレースぶりは若々しいまま。今春の安田記念を3着と好走しているように、1400mベストのスプリンター。
スプリンターズSを勝った後、スワンSに向かうプランもあったものの、長距離輸送などを考慮して、前哨戦を使わずにマイルCSへ向かいます。ここで1600mのGⅠを勝つことができるのかな注目です。
安田記念は(2017年)は1400mベストのサトノアラジンが1分31秒5の好タイムで勝利ーー回顧 - ずんどば競馬
GⅠスプリンターズS(2017年)は今年も1400mベストの馬が後傾ラップをしなやかに差し切るレースにーー回顧 - ずんどば競馬
血統
母ベルモットはGⅠ馬スティンガー(重賞5勝)の全妹で、競走馬としてもJRAで3勝を上げました。父スウェプトオーヴァーボードはMr. Prospector系のなかでもっとも柔らかいエンドスウィープ直仔とあって、産駒は芝・ダートを問わずにしなやかなストライドで走る馬が多く出ています。
レッドファルクスは父スウェプトオーヴァーボード×母父サンデーサイレンスですから、よりしなやかさに振れた配合。初重賞制覇となった昨年のCBC賞や斤量58kgで快勝した今春の京王杯SCを見ても、しなやかな差し脚が大きな武器です。
マイルCSに向けて
1400mベストのスプリンターのため、今春の安田記念のように「高速馬場+上り33秒台」で差せるレースになるのが理想。
京都の芝外回りは3〜4コーナーの下り坂からスピードアップし、その惰性で直線を伸びるレースがベストですから、コーナーをスムーズに立ち回れるのかは鍵になります。
ややタフな馬場は苦にしないものの、雨で滑るようなコンディションだとマイナス。また、後傾ラップをしなやかに差す馬なので、高速馬場がベターです。
今年のマイルCSはマルターズアポジーとウインガニオンという逃げ・先行馬が揃い、ややタフな馬場を考えると上りのかかるレースが想定され、この馬に合っている条件とは言えません。
また、エリザベス女王杯の日は、インコース+前目のポジションが有利でしたから、マイルCS当日の馬場が外からも差せるコンディションになっているのかは大きなポイントになります。
まとめ
上位人気の5頭は枠順やペースや展開、馬場コンディションなどによって、着順が変わってしまう馬たち。モーリスのようなマイル王が不在なので、1つ間違えると「あっ!」と声が出るような人気薄の馬の好走も考えられます。
どの馬がマイルCSで勝つのかはともかく、武豊騎手→R・ムーア騎手への乗り替わりが……もうね……。だから、マイルCSは馬ではなく、大好きなR・ムーア騎手に◎を。
R・ムーア騎手とマイルCSについては以下の記事をご参照下さい。
あの頃のマイラーは痺れる手応えでマイルCSの4コーナーを回っていたーーR・ムーア騎手は馬にハミを噛ませて走らせる - ずんどば競馬
ムーア騎手は本当のプロフェッショナルですから……
公式サイト:avex - YouTube
以上、お読みいただきありがとうございました。