西村真幸調教師は開業3年目となる新進気鋭のトレーナー。今年はここまで19勝を上げ、昨年の勝ち星に「あと1勝」とせまる活躍ぶり。全国調教師リーディングは22位と着実に厩舎力がレベルアップしているステイブルです。
今年の西村厩舎の成績は(19 - 18 - 21 - 147)と勝率0.093、連対率0.180、3着内率0.283ともに過去2年を大きく上回り、とくに2歳戦が好調。今週は札幌2歳Sにシスターフラッグ、小倉2歳Sにジュンドリームとタイセイソニックが出馬登録をしており、厩舎の初重賞制覇に期待が集まります。
西村真幸厩舎の2歳戦成績 8月27日(日)終了時点
西村真幸厩舎の2歳馬は8月27日(日)終了時点で計25レースに出走し、成績は(5 - 5 - 3 - 12)。デビューした11頭の内4頭が勝ち上がり、勝率0.200、連対率0.400、3着内率0.520と好成績をおさめています。2歳の早い時期からしっかりと仕上げて好走させているのは、この厩舎の大きな特徴でしょう。
▼西村真幸厩舎の2歳戦成績 8月27日(日)終了時点
日付 | 場所 | 馬 名 | 着順 | 人気 | 前走レース | コース |
6/3 | 阪神 | タイセイソニック | 4 | 9 | 2歳新馬 | 芝1600m |
6/4 | 阪神 | キムケンロード | 4 | 6 | 2歳新馬 | 芝1400m |
6/11 | 阪神 | フリーダムソード | 8 | 6 | 2歳新馬 | 芝1200m |
6/17 | 阪神 | タイセイソニック | 3 | 1 | 2歳未勝利 | 芝1400m |
6/18 | 東京 | エンパイアミライ | 11 | 8 | 2歳新馬 | 芝1600m |
6/24 | 阪神 | ジュンドリーム | 3 | 2 | 2歳新馬 | 芝1200m |
6/24 | 函館 | スギノアルテミス | 8 | 9 | 2歳新馬 | 芝1200m |
6/25 | 函館 | タイセイアベニール | 2 | 6 | 2歳新馬 | 芝1200m |
7/2 | 中京 | タイセイプライド | 1 | 1 | 2歳新馬 | 芝1400m |
7/4 | 中京 | ジュンドリーム | 2 | 3 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
7/8 | 函館 | アクアリブラ | 6 | 3 | 2歳新馬 | ダ1000m |
7/9 | 中京 | タイセイソニック | 3 | 1 | 2歳未勝利 | 芝1600m |
7/9 | 函館 | タイセイアベニール | 2 | 3 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
7/16 | 中京 | フリーダムソード | 11 | 9 | 2歳未勝利 | 芝1400m |
7/16 | 中京 | アイランドクイーン | 5 | 5 | 2歳新馬 | 芝1200m |
7/23 | 函館 | タイセイアベニール | 2 | 2 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
7/23 | 函館 | シスターフラッグ | 1 | 3 | 2歳新馬 | 芝1800m |
7/29 | 小倉 | タイセイソニック | 2 | 1 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
7/30 | 小倉 | ジュンドリーム | 1 | 1 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
8/5 | 新潟 | タイセイプライド | 1 | 1 | ダリア賞 | 芝1400m |
8/12 | 小倉 | ジュンドリーム | 9 | 3 | フェニックス賞 | 芝1200m |
8/13 | 札幌 | タイセイアベニール | 5 | 1 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
8/19 | 札幌 | スギノアルテミス | 5 | 4 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
8/20 | 小倉 | タイセイソニック | 1 | 1 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
8/26 | 小倉 | アイランドクイーン | 8 | 8 | 2歳未勝利 | 芝1200m |
西村厩舎の2歳戦の連対率と3着内率の数字が高いのは、ジュンドリームやタイセイソニックなどが未勝利戦をなかなか勝ち上がれずに足踏みしたことによるところが大きく、そのためここでの出走回数も「25」と多くなっています。
勝ち上がった4頭のなかで、厩舎の期待を背負うのは新馬→ダリア賞と連勝したタイセイプライド、札幌芝1800mの新馬戦を楽々と差し切ったシスターフラッグの2頭。タイセイプライドはソエのため小倉2歳Sを自重して放牧に出されましたが、ゴールドシップの姪としても注目を集めるシスターフラッグは札幌2歳Sへ向けて順調に調整されています。
札幌2歳Sと小倉2歳Sに出走する3頭を解説
札幌2歳Sに出走予定のシスターフラッグ、小倉2歳Sに出走予定のジュンドリームとタイセイソニックの3頭について、これまでのレース内容と血統をそれぞれ見ていきましょう。
シスターフラッグ 2歳牝馬
父:ルーラーシップ
母:ミラクルフラッグ(母父:スパイキュール)
馬主:小林正和
生産:出口牧場
通算成績:(1 - 0 - 0 - 0)
母ミラクルフラッグはゴールドシップ(父ステイゴールド)の半姉で、クロスを引かないアウトブリードの血統構成。母父のスパイキュールはサンデーサイレンス×Crafty Prospector×Secretariatですから、しなやかな血が重ねられ直線の長いコース向きのストライドで走る産駒を多く出しています。シスターフラッグはそこに重厚ストライドのルーラーシップが配され、東京や中京、阪神や京都の外回りコースに向いています。パワー型の配合なので札幌の洋芝は合いますが、小回りそのものは不向き。少頭数でコーナーをスムーズに追走できるような流れになればチャンスも……。
新馬戦の内容
シスターフラッグは7月23日の札幌芝1800mでデビュー。そのレース内容を振り返ってみましょう。
▼札幌芝1800m 2歳新馬戦 出走頭数:9頭
レース | 時計 | 着順 | 人気 | 馬 名 | 通過順位 | 上り |
7/23 | 1:51.1 | 1 | 3 | シスターフラッグ | 8 - 8 - 8 -6 | 35.1 |
5R | 2 | 2 | ノストラダムス | 3 - 4 - 4 - 4 | 35.7 | |
9頭 | 62.3 - 48.8 | 3 | 1 | ジェネラーレウーノ | 7 - 7 - 6 - 6 | 35.6 |
レースラップ:12.9 - 11.8 - 12.1 - 12.5 - 13.0 - 12.8 - 12.0 - 11.9 - 12.1
大外枠からスタートをもっさりと出ると控えて後方。2コーナーで内ラチにつけたものの、騎手がうながしながらの追走。馬群は縦長になりましたが前半1000mの通過が62.3のスロー。3〜4コーナーにかけて鞍上の岩田騎手が一気に前へと押し上げ、スピードに乗せたまま直線は大外へ進路を取っての差し切り勝ち。スピードに乗り切ってしまってからは重厚なストライドでグイグイと伸びての完勝。上り3Fが12.0 - 11.9 - 12.1と最後までワンペースの走りで、ギアがスッとは変わらないものの長く脚を使えることは示しました。
札幌2歳Sに向けて
舞台が函館から札幌へと替わり、よりコーナーの距離が長くなるのはこの馬にとってはプラスになるかは微妙なところ。ただ、新馬戦でも3コーナー過ぎからしっかりとポジションを押し上げられたように、残り600m〜400m区間で12.0の脚を使えたのは収穫。
札幌2歳Sは上り4Fが48秒台の流れになることが多く、コーナーでしっかりとポジションを押し上げられるならチャンスも。パワーが必要な今の札幌の馬場も合うはずで、西村厩舎の初重賞制覇も……。
ジュンドリーム 2歳牝馬
父:トビーズコーナー
母:ディアコトミ(母父:プリサイスエンド)
馬主:河合純二
生産:小島牧場
通算成績:(1 - 1 - 1 - 1)
母ディアコトミはここまで3頭の産駒がJRAに出走し、すべてが勝ち上がっている好繁殖牝馬。ジュンドリームの父トビーズコーナーはコテコテのアメリカ血統ながら強いクロスをもたないので、Mr. Prospectorのクロスがあるディアコトミとは好相性。
しなやかな脚さばきで走るのは母父プリサイスエンドの柔さが強く出ているのでしょう。また、前脚の掻き込みが強いのはトビーズコーナーの影響。ダートも走れそうですが、走法からは芝もOKな馬で、距離は1400mあたりがベストかなという体型です。
近2走の内容
ジュンドリームは7月30日の未勝利戦を勝ち上がり、その後はOPのフェニックス賞に出走しますが、3番人気9着と敗退しました。ここではその2走を振り返ります。
▼小倉芝1200m 2歳未勝利戦 出走頭数:6頭
勝ち時計 | 着順 | 馬 名 | 通過順位 | 上り |
1:09.2 | 1 | ジュンドリーム | 1 - 1 | 34.7 |
2 | アサクサゲンキ | 2 - 2 | 34.6 | |
34.5 - 34.7 | 3 | レッツゴードンキ | 4 - 3 | 34.9 |
2着のアサクサゲンキは次走の小倉芝1200m戦を7馬身差で楽勝したように、決して低レベルの1戦ではありませんでした。勝ち時計の1分09秒2は同日の2歳新馬戦が1分10秒7ですからソコソコの好時計。気性的な難しさはレースからは感じられず、逃げなくても競馬はできそうです。
▼小倉芝1200m フェニックス賞2歳OP 出走頭数:9頭
勝ち時計 | 着順 | 馬 名 | 通過順位 | 上り |
1:09.6 | 1 | ゴールドクイーン | 1 - 1 | 35.5 |
2 | レグルドール | 2 - 2 | 35.5 | |
34.1 - 35.5 | 3 | アイアンクロー | 5 - 5 | 35.3 |
… | ||||
34.3 - 36.3 | 9 | ジュンドリーム | 2 - 3 | 36.3 |
このレースは不可解な敗戦となりました。いくらか出負けしたものの内枠を利して2、3番手のインを確保し、道中はしっかりと折り合っての追走。直線に入って追い出されるもまったく反応せずにずるずると後退しての9着。前半の3Fは勝ち上がった未勝利戦とほぼ同じような流れでしたし、逃げ・先行した馬が1、2着ですから決して苦しいペースではありませんでした。馬込みに入るのがダメなのか、ちょっと難しい敗戦。
小倉2歳Sに向けて
小倉の芝1200mはどうしても前半の3Fが速くなるのがデフォルトです。ほぼ33秒台のペースになるので、まずは追走でしっかりと脚を残せるかがポイント。逃げて好走している馬ですが、フェニックス賞も好位のインを追走しているレースぶりは決して悪いものではなく、前走からの立て直しができれば……。重賞だからと言ってここで力が劣るということもなく、前走の敗因をしっかりと分析して対策が立てられているならチャンスも……。
'17年夏の小倉開催における芝1200mの傾向についてまとめましたーー逃げ・先行馬を狙って! - ずんどば競馬
タイセイソニック 2歳牡馬
父:ディープブリランテ
母:ヴィエナトウショウ(母父:ワイルドラッシュ)
馬主:田中成奉
生産:荻澤國男
通算成績:(1 - 1 - 1 - 2)
父ディープブリランテはディープインパクト直仔で昨年デビューの新種牡馬。ディープインパクトのような瞬発力やキレを伝える代わりに、しぶとく長く良い脚を使えるのが特徴です。ディープブリランテ産駒の2勝馬はここまで11頭いて、その内の7頭は牝馬。ただ、GⅢラジオNIKKEI賞を勝ったセダブリランテスは牡馬ですから、フィリーサイアーかどうかはまだわかりません。母ヴィエナトウショウの仔として勝ち上がったのはタイセイソニックのみで、牝系からJRAで目立った活躍馬は出ていないのが現状。
タイセイソニックは小気味のよいフットワークが目立ち、追い出されるとしなやかなフォームで走るのが特徴。マイルがベストの距離に見えますが、2歳のこの時期であれば1200mにも十分に対応できるでしょう。
未勝利勝ちの内容
タイセイソニックはここまで掲示板を外さない安定した走りを見せています。8月20日の未勝利戦を勝ち上がりました。それではそのレースを振り返ってみましょう。
▼小倉芝1200m 2歳未勝利 出走頭数:15頭
勝ち時計 | 着順 | 馬 名 | 通過順位 | 上り |
1:09.5 | 1 | タイセイソニック | 10 - 9 | 35.0 |
2 | アサクサゲンキ | 2 - 2 | 36.1 | |
33.4 - 36.1 | 3 | レッツゴードンキ | 1 - 1 | 36.2 |
前半33.4と未勝利戦としては厳しいペースになりました。タイセイソニックは後方からレースを進めると3〜4コーナーで外から少しずつポジションを押し上げ、直線の外から差し切り勝ち。上りのかかるレースでもしっかりと速い脚を使えており、この内容であれば前半のペースが速くなる小倉2歳Sでも強気になれます。しなやかにストライドを伸ばして走るので、理想は小回りよりも直線の長いコース。
小倉2歳Sに向けて
前半のペースが速くなる小倉2歳Sで、しっかりと脚をためることができればチャンスもありそうです。不安点は前走から連闘になることとここまで押せ押せのローテーションで来ていること。しっかりと体調面のケアができていればここでもチャンスはあるでしょう。
まとめ
小倉2歳Sと札幌2歳Sに管理馬がスタンバイしている西村調教師。ここで初重賞制覇となるのかどうか、注目が集まります。今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。