引用:NAKAUCHIDA Stable | Nakauchida Stable's official Website.
3歳牡馬クラシックの第1冠「GⅠ皐月賞(中山芝2000m)」に向けてのトライアル・レース「GⅡ弥生賞(GⅡ・中山芝2000m)」は、1番人気に推されたダノンプレミアムが4コーナー過ぎから先頭に立ち、後続を寄せ付けない走りで1着となりました。
ダノンプレミアムは4連勝で皐月賞へ
弥生賞を勝ったダノンプレミアムはデビューから4連勝となり、無敗で皐月賞へと駒を進めます。ここまでの4戦すべてで高いパフォーマンスを示しており、今春のクラシックの中心となることは間違いありません。
弱点の少ないレースぶり
ダノンプレミアムはこれまで危なげなく勝利を積み重ねています。現状、大きな弱点は見当たりません。この安定感のあるレースぶりはディープインパクト産駒らしくないある特徴によるものです。
好スタートが切れること
ダノンプレミアムはデビュー以来、すべてのレースにおいて好スタートを切っています。「ポンとスタートを切れる」のは、この馬が後肢をしっかりと踏ん張れることによるものです。もともと後肢が非力なタイプの多いディープインパクト産駒としては異例なタイプと言えるでしょう。
ダノンプレミアムが危なげなく好位から抜け出して勝つのは、このスタートセンスと後肢の筋肉量によるところが大きいのです。小回りの中山芝2000mで行われる皐月賞において、好位のポジションを取れることは何よりのアドバンテージになります。
DanzigのクロスとRobertoの血を引くパワー型
ダノンプレミアムの血統については以下の記事で詳しく触れているので、よければそちらをご参照頂くとして、ここでは主な特徴について書いておきましょう。
母のインディアナギャルはDanzig4×3の強いクロスをもち、このパワーが仔どもに豊かな筋肉量を伝える源となっています。ダノンプレミアムが2歳の早い段階からムキムキの馬体をしているのは、パワーに富んだDanzigの血のなせるものです。
DanzigとBuckpasserを通じるZienelleとデインヒル(血統構成が似ている)のクロス、そして父Borealis×母父DonatelloのQueen of Lightがディープインパクトの祖母Burghclereの血と脈略し、スタミナとパワーをより増したのがダノンプレミアムだと言えるでしょう。
また、母父Intikhabはパワーとスタミナに優れたRobertoの血を引くことも、この馬がディープインパクト産駒としては「らしくない」パワータイプに出ている遠因となっています。
中山芝2000mを苦にしないパワー
ダノンプレミアムはパワーのあるストライドで実直に伸び続けられるので、本質的には直線の長いコースがベストですが、小回りの中山コースに対応できるパワーももっています。
弥生賞のレースを観てもらえればわかるように、川田騎手が4コーナーでラチから4頭ほど外を回していたのは、内側の芝が荒れていたからだけではなく、ストライドロス(スピードを落とさずにコーナーを回る)のないレースを心がけたからでしょう。
Roberto的なパワーも馬体に現れているダノンプレミアムは、コーナーをバキューンと力強く捲ることができるはずで、小回りコースを苦手とするディープインパクト産駒らしくない競走馬です。
ダノンプレミアムの不安点は?
弱点らしい弱点が見当たらないダノンプレミアムですが、皐月賞に向けて不安点がゼロかと言えば、そうではありません。考えられる不安点は以下の2点です。
1. 皐月賞は高速馬場
2. 皐月賞は平均ペースがデフォルト
それぞれ解説していきます。
皐月賞は高速馬場
16年、17年と2年連続でレコード決着となっているように、皐月賞の週は速い時計の出る馬場になるのが近年のトレンドです。また、16年は強風とハイペースによって外からの差しが決まったものの、高速馬場は距離のロスなく走れるインが有利となります。
昨年の皐月賞はペルシアンナイトがインをさばいて2着と好走したように、外目をバキューンと捲るような大味な競馬だとやや不利になるのです。ダノンプレミアムはストライドが大きいので、あまりにも馬場が速いのはマイナスでしょう。
皐月賞は平均ペースがデフォルト
皐月賞は小回りで行われるGⅠということもあって、スローペースになることがほとんどありません。そのため、3〜4コーナーをスピードに乗った状態で走らなければならなく、ストライドの大きなダノンプレミアムにとって、皐月賞のペースは鬼門となります。
2つの不安点を上げましたが、そもそもの競走能力がズバ抜けていることも考えられるので、今から皐月賞が楽しみになりますね。
そうそう、不安点はもうひとつ。春のクラシックは社台系ファーム生産馬が圧倒的に強いため、ケイアイファーム生産のダノンプレミアムにとっては「クラシックを好走する」には不安材料が……。とは言え、重箱の隅をつつくような話なので、気にしなくてもOKかもしれません。
2着のワグネリアンについて
デビューから3連勝を上げて弥生賞に参戦したワグネリアンは直線でしっかりと伸びて2着を確保しました。4コーナーで福永騎手が追い出してから、反応がモタモタとしていたのはエンジンのかかりが遅いこの馬の特性と休み明けによるものでしょう。
ダノンプレミアムよりもバネの利いた走りで、ディープインパクト産駒らしいしなやかさがある分だけ、仕掛けられたからの反応が鈍くなります。4コーナーでもたつく姿はミッキークイーンと似ていますね。
ゴール前の坂を駆け上がってからまた伸び始めていたように、本質的には中山よりも東京がベターなタイプです。昨年のスワーヴリチャードやレイデオロのように、皐月賞でもダービーを見据えたレースをするのかどうか、福永騎手の騎乗に注目しましょう。
3着のジャンダルムについて
「これぞEl Prado!」とエクスクラメーションマークを付けたくなるほどのコーナー加速力で3着を確保しました。ジャンダルムの父Kitten's Joyは小回り向きの器用さを強く伝えるEl Prado直仔ですから、血統の字面通りにコーナーでの立ち回りだったと言えるでしょう。
上位の2頭とは力の差を感じさせる内容ではあったものの、中山芝2000mの舞台はこの馬にとってベストだとわかりました。後はこのコーナー加速力と皐月賞特有の高速馬場を味方につけ、有力馬を出し抜けるかどうか……。本番は弥生賞よりも頭数も多くなり、この馬の器用さがより活きる流れになることから、チャンスもあるかもしれません。
まとめ
弥生賞のレース内容そのものは、各馬ともに高いパフォーマンスを示したとは言えません。ただ、上位に入線した馬たちはダメージを残すことなく皐月賞に向かえるので、その点は大きなプラスと言えます。
スプリングSから毎日杯まで現在の勢力図が大きく変化するのか、今からそのほかのトライアルレースが楽しみですね。
以上、お読み頂きありがとうございました。