6月にデビューした現2歳馬にとって、世代初の重賞となるGⅢ函館2歳S。まだデビューして日が浅い若馬たちの争いですから、現時点での身体的・精神的な完成度(早熟性)と競走馬としてのスピード能力が問われる1戦となります。
今年初めての2歳重賞ウィナーに輝くのはどの馬なのでしょうか?
土曜日の函館芝は重馬場
7月22日(土)の函館競馬場は朝方にかなりの雨が降ったため、芝は「重」でのスタートとなりました。JRAのHPに載っている「馬場情報→週末情報」によると土曜日は63.5mmの雨量があったとのこと。現在は「稍重」まで回復していますが、日曜日は時計のかかる馬場でのレースとなりそうです。
函館競馬場でデビューした2歳馬は……
函館開幕週に行われた重賞「函館スプリントS(芝1200m)」は、3歳牝馬のジューヌエコールが50kgの軽量を活かし、1分6秒8のレコードで勝利しました。開幕週の函館競馬場はレコードの叩き売り状態で、17、18日の土日で5つのレコードタイムが出るなど、史上最速と言える馬場コンディション。
今年の函館2歳Sの出走馬は時計の速い馬場を好タイムで勝ち上がってきた馬が多く、道悪の芝への適性は各馬未知数です。時計のかかる決着になったときにズドーンと好走するのはどの馬なのか、函館2歳Sを予想する上で馬場への適性も大きなポイントになります。
人気上位馬について
今年は1分9秒台の好タイムで勝ち上がってきた馬たちが上位の人気に支持されています。前日の時点で1〜3人気に支持されているナンヨープランタン、カシアス、アリアの3頭については週中に解説の記事を書きましたので、そちらをご参照下さい。
函館2歳S('17年)の注目馬5頭をズバっと解説ーーナンヨープランタンは好走できるのか? - ずんどば競馬
函館芝1200mの2歳レコードは昨年の函館2歳Sでレヴァンテライオンがマークした1分9秒2ですから、今年の出走馬の内9秒台の走破時計をもつ4頭が上位の人気に支持されるのも自然なことと言えます。
予想
馬場と展開が読みにくい今年の函館2歳S。馬場がどこまで回復するのか、そして、ガンガン飛ばしたい馬が少なくためにどのようなペースになるのかを予想するのも難しいレースになりました。
レース展開
最内枠からサンダベンポートが押して押して先手を主張するところを、池添騎手のダンツクレイオーが外から交わしてハナに立つ展開が有力。内枠のパッセが外から被されることを嫌がるのであれば、ダンツの内からハナを奪うこともありそうですが……。人気のカシアスは逃げ馬を見ながら好位の外目を追走、アリアはインのポケットへ、ナンヨープランタンは中団の内という位置に落ち着きそうです。
パッセがどこまで先手を主張するのかによってペースも変わりますが、ダンツクレイオーの逃げだと前半3Fは34秒半ばが想定されます。この馬場と出走メンバーから考えると、勝ちタイムは1分9秒台には入らずに10秒台の決着になりそうなだけに……。前後半のバランスは34.5 - 35.5 =70秒(1分10秒台)で、上りがかかればそれだけ前の馬には厳しい流れになります。前半3Fが34秒半ばを切るようだと差し馬台頭のシーンも十分にあります。
◎デルマキセキ 2歳牝馬
父:スキャットダディ
母:Tashawak(母父:Night Shift)
厩舎:友道康夫(栗東)
6月25日の2歳新馬戦(1分10秒4)の勝ちタイムが時計の出る馬場としては平凡だったこととハナ差の辛勝だったのもあって、前日の時点では2桁人気に甘んじているデルマキセキ。追い出されてからビュンとキレる脚はありませんが、父と母父の影響を受けたいかにもパワー型らしいピッチ走法は道悪+小回りの条件はおそらくベストでしょう。
血統
父スキャットダディは日本でも馴染みのあるヨハネスブルグ直仔で、アメリカで繁養されていながらヨーロッパの芝でも好走馬を出しています。産駒は血統の字面以上にしなやかな走りを見せるのが特徴です。母父のナイトシフトは日本で大成功を上げたノーザンテーストと血統構成が類似している良血馬。ノーザンテーストはパワーとピッチ走法を伝える種牡馬ですから、デルマキセキにとって小回りの函館1200mはずんどばな舞台です。
新馬戦の内容
好スタートから騎手が促して2、3番手の外目をスムーズな追走。脚が短く前躯をかき込んで走るのはいかにもNight Shit=ノーザンテーストらしさが出ています。デルマキセキは回転の速いピッチ走法でコーナーにおける加速もスムーズ、もち前のパワーで直線をジリジリと粘り込んで勝ち上がりました。勝ちタイムの1分10秒4は平凡なものですが、34.7 - 35.7のややハイペースでしぶとく脚を使えたのはいかにも消耗戦に向いた走りだったと言えます。新馬戦では気性的な幼さも見受けられず、落ち着いた走りをしていたことから2戦目の上積みは十分に見込めます。
函館2歳Sに向けて
関西の名門・友道康夫厩舎はそれほど2歳馬の使い出しが早くありません。デルマキセキを函館2歳Sに出走させたということは、早期に賞金を稼げるだけ稼ぎたいという表れで、リーディング上位の厩舎らしくキッチリと仕上げての参戦になるはずです。
新馬戦で気性的な幼さや揉まれ弱さを見せていないことから、ムリをせずにインのポケットを取れる内枠に入ったのはプラス。ダンツクレイオーが前半3F34.5を切るペースで逃げるのなら消耗戦になる可能性があり、この馬のバテ差しに期待します。
◯パッセ 2歳牝馬
父:パイロ
母:パドブレ(母父:ホワイトマズル)
厩舎:蛯名利弘(美浦)
福島芝1200mの新馬戦のレース内容が素晴らしかったのがパッセです。速い時計の出る馬場コンディションだったことを差し引いても、余力十分に1分9秒7のタイムを出したのは能力の高さを示すもので、楽に好位を取り切れたことから前半のペースがもう少し速くなっても後半での踏ん張りが利くタイプ。直線で岩部騎手がパッセに気を遣いながらゆっくりと追い出していたのも、2戦目に向けてダメージを残さない好騎乗でした。この走りからも時計はまだまだ詰められます。
この時期の2歳馬ですから未知の部分も多く、パッセにも不安点はいくつかあります。気になるところを上げると以下の通りです。
不安点
1. 福島→函館という臨戦過程
2. パイロ産駒の2戦目は……
3. 岩部騎手が重賞で上位人気
パイロ産駒は新馬戦の回収率が高いものの、2戦目でアッサリと敗れる馬が多く見られます。また、前走からの間隔が短いなかでの函館参戦は明らかにプラスの要素ではありません。
不安点はあるものの、それ以上に新馬戦で見せたパフォーマンスは「重賞でも!」と期待したくなる走り。岩部騎手もマイナー騎手ながらソツのない騎乗をするベテランですから、ここで初重賞制覇を期待したくなりますが……。
▲ナンヨープランタン 2歳牡馬
父:ルーラーシップ
母:テキサスルビー(母父:スペシャルウィーク)
厩舎:松永幹夫(栗東)
内枠に入ったので、これなら前に壁を作ってソコソコ前目のポジションを取れるはずです。新馬戦は岩田騎手が押っつけながらの追走になっていたため、ナンヨープランタンにとっては1200mは距離が短いのではないかと言われているのを目にします。ただ、短い距離についていけなかったというよりも、前にいた馬の影響でブレーキをかけたことが追走に苦労した最大の原因で、その点はそれほど気にしなくてもOK。
細身のマイラー体型ですから、スプリント色の強いハイペースだと脚が溜まらないおそれはあり、確かに3〜4コーナーにかけての上り坂でペースが緩んだ方が好走できるタイプではあります。そのため、道悪で多少時計がかかるのはプラスで、グリグリの◎にはなりませんから、積極的に狙いたい1頭です。
2、3着候補としての△
△馬は2頭をピックアップ
△ダンツクレイオー
△リンガラポップス
馬場の回復が遅く、より消耗戦になることを想定してこの2頭を拾います。
その他の有力馬について
カシアスは外枠で前に壁を作れないことと本質的にはスピードを活かしたい馬なので道悪はマイナス。アリアはカシアスと反対に揉まれ弱さがあるため内枠でインに閉じ込められるようだと不安があります。
買い目
◎→◯▲△への馬単と3連複を。
馬単
3→4. 2. 10. 12
3連複
3→4. 2. 10. 12
現2歳世代の初重賞を手にするのはどの馬なのか、今からレースが楽しみですね。皆様にとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。
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