函館記念(2018年)はアイドリームドアドリーム牝系のエアアンセムがイン捲りで快勝!ーー回顧

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2018年の函館記念(GⅢ・芝2000m)は5人気のエアアンセムが好位のインから抜け出すと、サクラアンプルールの追撃を振り切って1着でゴールを駆け抜けました。名門アイドリームドアドリーム牝系出身の良血馬とあって、今後の活躍が期待されます。

 

日本で繁栄するアイドリームドアドリーム牝系

エアアンセムの曾祖母にあたるアイドリームドアドリーム(I Dreamed a Dream)は、牝馬クラシックを好走したエアデジャヴー(父ノーザンテースト)、皐月賞と菊花賞の2冠を制したエアシャカール(父サンデーサイレンス)といった活躍馬を産んだ名繁殖牝馬。

さらに、エアデジャヴーの仔から、2年続けて有馬記念3着など長く重賞戦線で活躍したエアシェイディ(父サンデーサイレンス)、秋華賞馬エアメサイア(父サンデーサイレンス)が出ており、この牝系は日本で大きな繁栄を遂げています。

 

アイドリームドアドリーム牝系の特長

アイドリームドアドリーム牝系のなかで、牝馬と牡馬の3歳クラシックを好走したのは、エアスピネルを含めて4頭に上ります。デジャヴー、シャカール、メサイア、スピネルはいずれも3冠すべてのレースを走り、かつ掲示板内に好走。4頭のクラシックにおける成績を見てみましょう。

4頭のクラシックにおける成績

エアデジャヴー(1995年産)

桜花賞:3着

オークス:2

秋華賞:3着

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エアシャカール(1997年産)

皐月賞:1着

ダービー:2

菊花賞:1着

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エアメサイア(2002年産)

桜花賞:4着

オークス:2

秋華賞:1着

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エアスピネル(2013年産)

皐月賞:4着

ダービー:4

菊花賞:3着

ケガをすることなくクラシック3冠を走り切っていること、そして、コースや距離を問わない安定感は素晴らしいの一言です。この戦績を見るだけで、アイドリームドアドリーム牝系のもつポテンシャルの高さがわかります。

上の表で青色でマークした数字は東京芝2400mで行われたダービーとオークスの成績を表し、デジャヴー、シャカール、メサイアはいずれも2着と「あと1歩」で栄冠をつかむことができませんでした。

この直線の長いコースで「あと1歩」届かないレースぶりこそ、この牝系の特長をもっとも表していると言えるでしょう。

 

小回り・内回り向きの器用さ

エアシャカールとエアメサイアはそれぞれ小回り・内回りコースのGⅠを制し、デジャヴーも中山1800mのクイーンS1着(当時は秋華賞トライアルのGⅢ)で高いパフォーマンスを発揮したように、この牝系は内回り・小回りコースがベストです。

この器用さはアイドリームドアドリームの伝える「ピッチ走法」によるもの。コーナーを俊敏に加速できるピッチ走法は、直線の長いコースよりも小回り・内回りがベター。また、パワーにも優れているため、上りのかかるレースを得意とするのもおおきな特長です。

函館記念におけるエアアンセムの走りは、「これぞアイドリームドアドリーム!」と呼べるもの。藤岡佑介騎手がスタートしてすぐに好位のインへ誘導したのも、この馬の器用さを信頼していたからでしょう。

 

エアアンセム 7歳牡馬

父:シンボリクリスエス

母:エアマグダラ(母父サンデーサイレンス)

厩舎:吉村圭司(栗東)

エアアンセムは新馬戦→ホープフルSを連勝し、早くから高いポテンシャルを示していました。この牝系らしい「小回り向きの機動力」を発揮すれば、重賞でも力は見劣りません。

アンセムは父シンボリクリスエスから長手の体型とRoberto的なパワーを受け継いでいるため、スピネルよりも「洋芝+小回り」向きのタイプ。今後も小回りコースであれば、函館記念のようにソツなく好走できるでしょう。

 

血統

エアメサイアとエアマグダラが全姉妹の間柄のため、スピネルとアンセムは半同血となります。どちらもこの牝系らしい器用さをもち、小回り・内回りコースがベストです。

アンセムはHail to Reason4×4のクロスをもつことから、よりパワーと器用さが前面に出ています。ピッチ走法の活きるスローペースであれば、直線の長いコースでもOK。タイプとしては宝塚記念と天皇賞・秋を制したラブリーデイに似ています。

 

今後に向けて

JRAの古馬・中距離GⅠの内、小回り・内回りコースで行われるのは有馬記念、宝塚記念、大阪杯の3レース。近親のエアシェイディが2年続けて有馬記念を3着と好走しており、小回りであればGⅠでも……と思わせる1頭です。

今後、どのようなレースを使うのかはわからないものの、有馬記念を最大目標にするローテが組まれるのであれば、入着の期待をかけたくなります。

 

今年の函館記念はRobertoもちが上位に

今年の函館記念はカレンラストショーがペースを作り、前後半1000mが60.3 - 59.5(1分59秒8)のスローとなり、3〜4コーナーをロスなく走った馬が上位を独占しました。

上り3Fが11.6 - 11.8 - 11.8ですから、例年とは異なる「非ロングスパート戦」。そのため、3コーナーから外を押し上げて行く馬にノーチャンスの競馬で、直線の手前からいかに加速できるのかのレースになりました。

コーナーでスピードを落とさずに走れるのはパワータイプの種牡馬「Roberto」の得意とするところで、今年の函館記念の1、3、4着馬はすべてこの血を引いています。同じようなペースになるなら、来年以降もRobertoもちには注意を払いたいですね。

 

2着サクラアンプルールと3着エテルナミノル

サクラアンプルールはエアアンセムの直後に付け、道中も抜群の手応えで回ってきました。成績からもわかるように、小回り向きの差し馬。インでロスなく脚を溜められたときに好走しており、小回り・内回りコースで同じようなレースができれば今後も期待できる1頭です。

エンパイアメーカー産駒のエテルナミノルはとにかくスタートがカギ。好スタートを決められるのかは半々なだけに、買い時が難しいですね。愛知杯は差しての好走でしたが、本質的には前々からしぶとく粘りこむタイプで、函館記念のレースぶりがこの馬「らしさ」を表しています。

 

上位人気馬は?

1人気トリコロールブルーは6着と掲示板外へ。スローペースで馬群が凝縮し、上り3F勝負となってしまったことで、中団に位置したこの馬には難しい展開となりました。スムーズにスピードを上げるタイミングがなく、致し方なしという敗戦。もともと小回り向きのタイプなだけに、もう少し前目のポジションを取れるようになれば……。

 

ロジチャリス12着、ブラックバゴ10着

Robertoもちのロジチャリスはエテルナミノルの直後のポジションを取ったものの、このスローペースでも3コーナーから手応えが怪しくなり、ズルズルと後退しての12着。う〜ん、馬体は見た目にも緩さが残っていたものの、ここまで負けてしまうのは体調が整っていなかったのでしょう。札幌記念に向かうようであれば、もうワンチャンスですね。

ブラックバゴはスタートしてから3コーナーまで掛かり通しの追走。サクラアンプルールの直後のポジションだっただけに、もったいない競馬となりました。これほど折り合いに苦労するようだと、さすがに苦しいですね。これでガス抜きができたと思うので、札幌記念に出走するようならチャンスがあります。

 

まとめ

函館記念は今年もRobertoもちの馬が好走しました。例年とは異なるペースになってもしっかりと上位に走るのですから、パワーとスタミナに長けたこの種牡馬のポテンシャルには頭が下がります。

来年以降も小回り向きのRobertoもちをチェックしないといけませんね……。

以上、お読みいただきありがとうございました。