秋のマイル王を決めるマイルCS(GⅠ・京都芝1600m)はW・ビュイック騎手の手綱に導かれた3歳馬ステルヴィオが、直線の内を鋭く抜け出して初GⅠ制覇を飾りました。2着には勝ち馬と同じように内を突いたペルシアンナイト、3着に先行して粘ったアルアインが入線。1・2枠の馬が上位を独占する結果となりました。勝ちタイムは1分33秒3(良)。
マイルCSのポイントは3つ
今年のマイルCSのポイントとなったのは以下の3つです。
1. 1800〜2000mベストの馬が上位独占
2. インベタ馬場
3. ロードカナロア産駒
1. 1800〜2000mベストの馬が上位独占
今年のマイルCSは3コーナー手前からハナを取ったR・ムーア騎手のアエロリットが、前半800mを47.1と緩いペースにコントロールしたため、「1800〜2000mベスト」の中距離馬が脚を削がれることなく追走することができました。
1〜3着のステルヴィオ、ペルシアンナイト、アルアインの3頭は1800〜2000mに適性のあるタイプなだけに、このペースはシメシメだったと言えるでしょう。ピュアマイラーのモズアスコットが直線でビュンと弾ける脚を使えなかったのも、ペースが緩かったからです。
マイルGⅠは前半800mの通過タイムによって、「マイラーと中距離馬」のどちらのタイプも好走できます。詳しくは以下の記事に解説しているので、よければそちらをご覧下さい。
2. インベタ馬場
京都競馬場は今週からCコース替わりました。ただ、17日(土)のレースを観ていると、各騎手が直線で内側を空けていたことから、コースが替わってもそれほどインベタ馬場になっていないのかとばっかり……。
一転してマイルCS当日はインを立ち回った馬が好走しており、馬場の変化が難しかったですね。マイルCSは3〜4コーナーにかけてラチ沿いを走った馬のワンツーでしたから、ここまでインベタになっているとお手上げです。
3. ロードカナロア産駒
現3歳が初年度産駒となるロードカナロアは、3冠牝馬アーモンドアイに続き、ステルヴィオが2頭目のGⅠ馬となりました。産駒の多くは父譲りの柔らかな体質を受け継ぎ、しなやかなフットワークで走るのが特徴です。
ロードカナロアは産駒に伝える特徴がディープインパクトと似ており、京都の外回りや東京コースを得意とします。マイルCSはディープインパクトと好相性のGⅠですが、今後はそこにロードカナロアも加わってくるのでしょう。
1着:ステルヴィオ3歳牡馬
父:ロードカナロア
母:ラルケット(母父ファルブラヴ)
厩舎:木村哲也(美浦)
生産:ノーザンファーム
C・ルメール騎手がデビューから前走の毎日王冠まで手綱を取り続けた馬で、素質を期待されている1頭です。マイルCSはW・ビュイック騎手を確保し、GⅠへの準備は整っていました。
伸びのある馬体からも純正(ピュア)なマイラーではなく、ベストは1800mの中距離馬。アーモンドアイと同じく、父譲りのしなやかなフットワークが最大の長所で、直線の長いコースに向いています。
✳︎ステルヴィオとペルシアンナイトは距離適性やフットワークから、似たタイプの馬です
この馬の血統や走りについては以下の記事に詳しく解説しているので、よければご覧下さい。
W・ビュイック騎手の好騎乗
マイルCSにおけるビュイック騎手は、スタートからステルヴィオを促し、好位のインに取り付いくファインプレーを見せました。この日の馬場を考えると、アルアインの直後のポジションを取れたことが勝利に直結したと言えるでしょう。
直線では最内を突いたペルシアンナイトに馬体を併せての追い比べ。ゴール前は外からペルシアンナイトにプレッシャーをかけており、これが最後のひと踏ん張りにつながりました。
木村哲也厩舎はGⅠ初勝利!
美浦所属の木村哲也厩舎は吉田和美氏の所有するアルビアーノで重賞を制覇すると、その後はゼーヴィント、ステルヴィオ、プリモシーンとノーザンファーム生産の素質馬を多く手がけています。
関東では藤沢和雄、国枝栄、手塚貴久調教師に次いでノーザンファームからの信頼が厚く、ステルヴィオがGⅠを制したことによって、今後はさらに有力馬を抱えることになるでしょう。
2着:ペルシアンナイト
前半800mが47.1と遅くなったことは1800mベストのペルシアンナイトにとって、願ってもないペースでした。昨年と同じ程度のパフォーマンスは出せており、ステルヴィオと枠の並びから逆だったなら勝てていたのかもしれませんね。
高速馬場+1分31秒台の決着となった今春の安田記念では、不利があったことを差し引いても直線で伸びを欠いており、マイルなら前半800mが46秒台より遅くなるのがベストです。
叩き2・3戦目がもっとも力を発揮するなど、キャラの個性がはっきりとしている馬なので、買うポイントがわかりやすいタイプ。1分31秒台の決着となる安田記念は割引で、大阪杯なら高速決着がベターと言えます。
3着:アルアイン
好スタートからアエロリットを先に行かせ、3番手のインにおさまると、直線では一旦先頭に立ちました。ディープインパクト産駒としてはビュンと弾ける脚を使えない馬なので、そこからはジリジリ……。1800mベストの中距離馬なので、前半のペースが緩かったことは功を奏したものの、キレ味勝負だとゴール前が甘くなってしまいます。
好位から抜け出す競馬がベターで、川田騎手とも手が合うタイプ。今年はGⅠレースにおいても再三好走しているものの、後1歩が足りません。後続に脚を使わせるようなペースを作ることができれば、もう少し前進できると思うのですが……。
私的には天皇賞・秋→有馬記念のローテーションを希望していたので、マイルCSを挟んだのはマイナス。ただ、もし有馬記念に出走するなら、この馬から買うことになりますね。
アエロリットとモズアスコット
アエロリットにとっては前半800m47.1のペースは遅すぎるもの。いかにR・ムーア騎手とは言え、テン乗りのGⅠでもっとペースを引き上げて逃げるのは難しかった……。アルアインかロジクライが前半800m46.0くらいのペースを作れればチャンスもあったはずですが。マイラーとしての資質が開花した今となっては、この馬にとって1分33秒台の決着だとパフォーマンスが落ちてしまいますね。
モズアスコットはあきらかに高速馬場適性の高いピュアマイラーですから、1分33秒台の決着だと苦しかった……。京都コースそのものは苦にしないタイプなので、もう少し速いタイムの出る馬場でないとパフォーマンスは上がりません。
レッドアヴァンセは7着
この馬もピュアマイラーなので、前半800mはもう少し速くなって欲しかった……。ただ、4コーナーから直線にかけての脚は「おおっ!」と声が出るほどで、完成が遅めのエリモピクシーの仔ですから、これからが本格化のときなのでしょう。
繁殖に上がるため、このマイルCSがラストラン。この馬と馬券の相性は良くなかったものの、エリモピクシーの仔らしい走りを見せてくれたので、「お疲れさまでした」の言葉しかありません。
まとめ
近年のマイルCSは時計のかかる決着となっているため、高速馬場で行われる安田記念と求められる適性が異なっています。
マイルCS → 1800mベストの馬
安田記念 → 1400〜1600mベストの馬
もちろん、マイルCSが1分31秒台になるなら、ダノンシャーク、フィエロ、エーシンフォワード、ダノンヨーヨーなどの1400〜1600mベストの馬が連対するので、予想をする上では勝ちタイムに注目のGⅠと言えるでしょう。
来年はピュアマイラーが好走する馬場となるのか?
今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。