GⅠ秋華賞は3年連続社台系ファームが1〜3着を独占!ーー2017年はどうなるのか?

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牝馬クラシック最後の1冠は、京都芝2000m内回りコースで行われるGⅠ秋華賞。天皇賞・秋へ向かうことが発表されたオークス馬ソウルスターリングの名前はなくとも、秋華賞はNHKマイルカップを制したアエロリット、ローズSを33.5の鋭脚で突き抜けたラビットランなど春の実績馬と夏の上がり馬が顔を揃え、豪華メンバーで争われます。白熱したレースを制するのはどの馬なのでしょうか?

 

クラシックは社台系ファーム生産馬が強い?

秋華賞トライアルのGⅢ紫苑S(中山芝2000m)は1着ディアドラと3着ポールヴァンドルがノーザンファームの生産馬。また、菊花賞トライアルのGⅡセントライト記念(中山芝2200m)はノーザンファーム生産のミッキースワロー、アルアイン、サトノクロニクルの3頭が出走し、1〜3着を独占するという結果になりました。

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桜花賞からダービーまでの今春のクラシックもノーザンファーム生産馬の活躍が目立ち、今年のダービーは1〜3着を独占。生産者にとって「クラシック」はGⅠのなかでも特別の舞台ですから、レースに向けてより多くのリソース(資源)を競走馬に注ぐことのできるメジャーな生産者が好成績を上げるのは自然なことです。以下の表は2017年春のクラシックで1〜3着に入線した馬の「生産牧場」をまとめたものになります。

 

2017年 春の3歳クラシック1〜3着馬と生産牧場

レース 着順 馬 名 生産牧場
桜花賞 1 レーヌミノル フジワラファーム
2 リスグラシュー ノーザンファーム
3 ソウルスターリング 社台ファーム
皐月賞 1 アルアイン ノーザンファーム
2 ペルシアンナイト 追分ファーム
3 ダンビュライト ノーザンファーム
オークス 1 ソウルスターリング 社台ファーム
2 モズカッチャン 目黒牧場
3 アドマイヤミヤビ ノーザンファーム
ダービー 1 レイデオロ ノーザンファーム
2 スワーヴリチャード ノーザンファーム
3 アドミラブル ノーザンファーム

ノーザンファームを赤色でマークし、社台系ファーム(社台ファーム、社台コーポレーション白老ファーム、追分ファーム)を青色でマークしました。4つのレースの1〜3着馬12頭の内、非社台系ファームの生産馬はわずかに2頭。3連単が100万円を超えた大荒れの皐月賞もキッチリと社台系ファームが好走しています。この成績からも、3歳クラシックが「社台の運動会」と揶揄されるのも致し方のないことです。

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秋華賞も社台系ファーム生産馬が強いレース

秋華賞も社台系ファームの生産馬が強いレースのひとつです。過去5年では、2013年を除いた全てのレースの1〜3着を独占しています。以下は秋華賞の1〜3着の生産馬をまとめた表です。

 

秋華賞の過去5年 1〜3着馬とその生産牧場

着順 人気 馬 名 生産牧場
2016 1 3 ヴィブロス ノーザンファーム
2 4 パールコード 社台ファーム
3 8 カイザーバル 社台ファーム
2015 1 1 ミッキークイーン ノーザンファーム
2 5 クイーンズリング 社台ファーム
3 8 マキシマムドパリ 社台ファーム
2014 1 3 ショウナンパンドラ 社台コーポレーション白老F
2 1 ヌーヴォレコルト 社台ファーム
3 4 タガノエトワール 社台コーポレーション白老F
2013 1 3 メイショウマンボ 高昭牧場
2 2 スマートレイアー 岡田スタッド
3 15 リラコサージュ ケイアイファーム
2012 1 1 ジェンティルドンナ ノーザンファーム
2 2 ヴィルシーナ ノーザンファーム
3 6 アロマティコ ノーザンファーム

ここまで「寡占状態」が進むといろいろと心配にはなってきますね……。過去5年だと5分の4の確率で、社台系ファーム生産馬の3連複ボックスを勝っていれば当たるということですから恐ろしい現実です……。2013年だけは非社台系ファームの1 - 2 - 3となっていて、これだけ綺麗に「社台か否か」が分かれているのであれば、どちらかに決め打って馬券を買うことも可能になります。今年はどちらの目が出るのでしょうか?

 

2017年の秋華賞出走予定馬のなかで社台系ファームの生産馬は?

今年の秋華賞に出走予定馬は、優先出走権を得ている7頭(桜花賞1着、紫苑S1〜3着、ローズS1〜3着)と獲得賞金上位の馬となります。ここから何頭が出馬登録をするのかは未定なものの、優先出走権をもつ7頭と獲得賞金上位(1400万以上)の馬のなかから社台系ファームをピックアップしてみましょう。

(✳︎賞金上位ながら、カラクレナイやクイーンマンボのようにすでに回避を表明している馬を除く)

 

ノーザンファーム

ディアドラ:橋田満廐舎(栗東)

ポールヴァンドル:上原博之廐舎(美浦

リスグラシュー:矢作芳人廐舎(栗東)

アエロリット:菊沢隆徳廐舎(美浦

リカビトス:奥村武廐舎(美浦

ミリッサ:石坂正廐舎(栗東)

サロニカ:角居勝彦廐舎(栗東)△

 

社台ファーム

ブラックスビーチ:角居勝彦廐舎(栗東)△

(✳︎△は獲得賞金1400万)

今年はノーザンファームが大攻勢。社台ファームのブラックスビーチは出否が未定ですから、ノーザンファームの7頭が秋華賞を目指します。ズラリと有力馬が並んだものの、気になるのはそう、関東馬の3頭です。

 

過去5年の秋華賞は関東馬が苦戦

過去5年の1〜3着に入線した15頭の内、関東馬は2014年2着のヌーヴォレコルトのみ。ヌーヴォレコルトはGⅠオークス1着→GⅡローズS1着とこの年の牝馬クラシックで主役を張り続けた1頭。関東馬であればこれくらいの実績が欲しいところでしょう。今年で言えば、NHKマイルカップ1着→クイーンS1着のアエロリットがこれに当たりますね。リカビトスやポールヴァンドルはいくらか割引が必要かもしれません。

 

アエロリットは前走の「逃げ」がどうしても引っ掛かる……

秋華賞で1番人気が想定されるアエロリットは牡馬相手のGⅠ「NHKマイルカップ」を制し、前走のクイーンSはヴィクトリアマイル勝ち馬のアドマイヤリードなどの古馬牝馬を問題にしない圧巻の逃げ切り勝ち。同世代の牝馬相手に加え、器用さが求められる内回りの京都コースが舞台となる秋華賞では、すっと先行できるアエロリットに大きなアドバンテージがあります。

このGⅠ牝馬の不安点をひとつだけ挙げるなら、前走で「逃げ」てしまったことです。アエロリットの主戦を務める横山典弘騎手は大舞台に強く、変幻自在でトリッキーな騎乗から「天才」と称されるほどの騎乗技術とレースセンスをもっています。クイーンSでも1枠からアエロリットをハナに立たせて圧巻の逃げ切りを演じましたが、この逃げは本来、GⅠ本番に向けて取っておきたかった戦法でした。

アエロリットはまだ馬群に揉まれた経験がなく、四肢を伸ばすこの馬の大きなフォームはインコースのポケットで窮屈な競馬になったときにスムーズさを欠く恐れがあります。クイーンSは秋華賞の試走としてはダメージを少なく乗り越えられたことからもベターではあるものの、インで揉まれる競馬を経験できなかったためにベストとは言えません。もし、秋華賞で1、2枠に入り、それよりも外に逃げ・先行馬が入る並びになったときは、再度「逃げ」なければならず、今度は後続のマークも厳しくなるでしょう。「逃げ」という選択は、本番の秋華賞に取っておけたら……。

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関西馬からはディアドラとリスグラシューが上位の人気に

ノーザンファーム生産の関西馬からは、ディアドラとリスグラシューの2頭が上位の人気に支持されそうです。そのなかでも、紫苑Sを鮮やかに追い込んだディアドラは岩田騎手からルメール騎手への乗り替わりとあって、実績以上の人気を被ることに……。この2頭については紫苑SとローズSの回顧記事で秋華賞の展望を書いているので、ここでは簡単に触れておきます。

 

ディアドラ

ハービンジャー産駒として初GⅠ制覇がかかるディアドラは、ルメール騎手を鞍上に迎えて秋華賞を走ります。父の産駒としては馬体に伸びがあり、パドックで歩いている姿も上品さを感じさせるディアドラ。500万下の矢車賞から馬体もレースぶりもガラリと一変し、オークス4着はGⅠで好走できるだけの能力を十分に示しました。

前走の紫苑Sはスローな流れを後方から直線大外を伸び、他馬を「格の違い」でねじ伏せたレース。夏の札幌戦で大きく減らした馬体も紫苑Sではしっかりと戻しており、秋華賞に向けて視界良好と言える高いパフォーマンス。ルメール騎手への乗り替わりさえプラスに働けば、GⅠに手が届く1頭です。

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リスグラシュー

2歳の早い時期から一線級で活躍し、阪神JF2着→桜花賞2着→オークス5着とGⅠで好走を続ける実力馬。ローズSもしぶとく伸びて3着に入線し、秋華賞で悲願のGⅠ制覇を目指します。

ローズSはオークス以来のレースながら、馬体重は+4kgとやや寂しい身体つきでの出走。見た目にも腹が巻き上がっていて、秋華賞に向けてさらに上積みがあるのかは微妙……。母リリサイドがクロスのうるさい繁殖牝馬なだけに、春先から一夏を越してグングンと成長するのかは「?」がつき、秋華賞には不安が先立ちます。

ストライドで走るリスグラシューにとっては京都内回りの秋華賞は割引ですし、ハーツクライ産駒は京都のGⅠを未勝利と不安材料が多く、ノーザンファーム生産馬という以外は強調材料に乏しいのが現状です。

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出走するのならミリッサは魅力がたっぷり

ローズS4着のミリッサ(父ダイワメジャー)はオークス馬シンハライト(父ディープインパクト)の半妹という良血馬。母シンハリーズは、どんな種牡馬をつけても重賞級の活躍馬を出す名繁殖牝馬なだけに、ミリッサにも大きな期待がかかります。

能力が傑出していたシンハライトを除けば、母シンハリーズの産む仔はピッチ走法で器用に走るのが最大の長所です。ミリッサも前脚がしなやかに伸びない走りのため、直線の長いコースよりは小回り・内回りに向いたタイプ。直線が長い+レースのペースが速かったローズSは、この馬にとっては噛み合っていない条件だったにもかかわらず、上位勢とはそれほど差のない4着。京都内回りコースの秋華賞は前走よりも条件が好転するため、ミリッサの走りには注目です。

 

外国産馬のラビットランは準社台ファームの馬

ローズSを素晴らしい脚で差し切った「世界的な良血馬」のラビットランは吉田和子氏の所有する外国産馬。2015年のキーンランドセプテンバーセールに上場され、社台ファームが落札した「準社台系」の馬です。

ラビットランは競走馬としただけではなく、ディープインパクトを種付けするために社台ファームが購入した牝馬ですから、吉田和美氏名義だったアルビアーノと同じく、最優先は「ダメージを少なく繁殖に上げる」ことになります。もちろん、繁殖牝馬としての価値を高めるためにもGⅠのタイトルは欲しいところでしょうが、「無理をさせない」のが基本戦の馬です。だからこそ、角居廐舎に預託をしているのでしょうしね。

母Ameliaはピカピカの良血馬+名繁殖牝馬で、そこに北米リーディングサイアーランキング上位のTapitが種付けされたのがラピットランですから、秋華賞を勝っても驚くことはありません。生産は外国ですが、社台ファームの一員として、秋華賞では検討しなくてはいけませんね。

 

まとめ

今年の秋華賞は社台系ファーム(ノーザンファームがメイン)が上位を独占するのか、それとも非社台系が奮起するのか……予想の入口としてはここがもっとも入りやすいポイントでしょう。牝馬クラシックのラスト1冠は豪華なメンバーの争いになるだけに、今から胸がドキドキします。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。